記者会見

岩屋外務大臣会見記録

(令和6年11月22日(金曜日)13時46分 於:本省会見室)

岩屋外務大臣会見の様子

冒頭発言

G7外相会合への出席

【岩屋外務大臣】まず、冒頭、御報告が1点ございます。
 11月24日から27日まで、G7外相会合に出席するために、イタリアを訪問いたします。
 先般のAPEC閣僚会議出席、その後のウクライナ訪問に続きまして、私(岩屋大臣)にとりましては、二度目の海外出張となります。また、G7外相会合への出席は、初めてとなります。
 ここでは、ロシアによるウクライナ侵略、あるいは中東情勢、インド太平洋情勢を含めて、国際社会の諸課題に、G7が連携し、結束して、役割を果たしていく重要性が高まっておりますので、しっかりと議論に参画していきたいと考えております。
 また、今回の会合では、G7のメンバーに加えまして、アウトリーチ国も招待されております。これらの幅広い国々とも、きめ細やかに連携して、法の支配に基づく国際秩序を堅持すべく、議論をリードしていきたいと考えております。日本として、このG7外相会合の議論にしっかり貢献してまいりたいと考えております。
 冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。

G7外相会合

【日経新聞 馬場記者】今、冒頭で御紹介のありました、G7外務大臣会合についてお伺いします。米国の次期大統領のトランプ氏は、1期目の政権で、二国間のディールを重視し、マルチ会合などは、あまり重視されない姿勢を見せていました。今、ウクライナやガザ情勢が深刻化している中で、G7の結束をどう深める機会に、今回の会合をされるか、また、日本として、これからのG7の在り方をどのように考えるかお伺いします。

【岩屋外務大臣】現在の国際社会では、ウクライナ情勢や中東情勢を含めて、分断や対立が深刻化しております。このような状況だからこそ、価値や原則を共有するG7が、しっかり連携を維持すること、強化することが重要だと考えております。
 したがって、今回の会合では、各国の外相が膝を突き合わせて、二日間にわたって、国際社会が直面する様々な課題について、じっくり議論を行う予定となっております。各国のカウンターパートと、率直な意見交換を行いまして、G7としての結束を強めたいと考えております。
 これからの在り方ということですが、こういう国際場裡で、情勢であればこそ、G7が、しっかり連携を維持・強化することが大切だと考えておりますし、また、先ほど申し上げたように、G7以外の国々とも、きめ細やかに連携することが大事になっていると思います。
 こういう取組を通じて、法の支配に基づく、自由で開かれた国際秩序を堅持していきたいと考えているところでございます。

ウクライナ情勢(ロシア軍による攻撃)

【読売新聞 大藪記者】ウクライナ情勢についてお伺いいたします。ウクライナは、ロシア軍が、ICBMを発射し、攻撃してきたと発表いたしました。ロシアが、核ドクトリンを改定した後でもあり、核兵器の使用をちらつかせる行為だという指摘もありますが、今回の発射に関する発表への受け止めをお伺いいたします。また、事態のエスカレーション防止のために、日本政府として、どのように取り組むお考えかも、併せてお聞きしたいと思います。

【岩屋外務大臣】21日に、ウクライナ政府は、ロシアにより、ウクライナ中部・ドニプロ市に対して、ICBMの特徴を有するミサイルによる攻撃が行われた旨を発表したものと承知しております。また、同21日、ロシア政府及び米国政府は、本件について、当該攻撃が中距離弾道ミサイルによるものである旨、対外的に述べたということも承知しております。
 こういった戦況における事象一つ一つについて、政府として、詳細に評価を述べるということは控えたいと思いますが、いずれにしても、これまで述べてまいりましたように、ロシアによるウクライナ侵略そのものが、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であると考えております。
 今回の攻撃を含むロシア側による一連の攻撃を、改めて強く非難したいと思いますし、政府として、現在の戦況について、引き続いて、緊張感を持って注視していきたいと考えているところでございます。
 引き続き、一日も早く、公正で永続的な平和がウクライナに戻りますように、国際社会としっかり連携していきたいと考えております。

ウクライナ情勢(米国によるウクライナへの対人地雷供与容認)

【毎日新聞 金記者】引き続き、ウクライナに対する米国の対人地雷供与についてお尋ねします。米国は、ウクライナの求めに応じて、対人地雷を供与することを、新たに先日表明しました。日本やウクライナは、対人地雷禁止条約に参加し、先日の大臣のウクライナ訪問でも、ウクライナ政府に対して、対人地雷対策の支援の継続を説明したところと承知しております。米国も、バイデン政権下で、条約に参加せずとも、規定を尊重する姿勢をこれまで維持し、ウクライナへの対戦車地雷の供与に限ってきたところであると思いますが、このほど、国際情勢の変動を受けて、方針の転換をすることになったと承知しております。日本は、これまで、世界における地雷対策において、主導的な役割を果たしてきたと思いますが、このような条約の理念と、それに反する戦場の現実について、大臣御自身の所感があれば、お伺いしたいと思います。

【岩屋外務大臣】対人地雷禁止条約を、我が国は重視しております。したがって、対人地雷が使用されなければならない事態になるとすれば、そのことを強く憂慮いたします。
 御案内のように、この対人地雷は、ばら撒かれてしまえば、長きに渡って、多くの被害をもたらすわけですね。その除去のために、我が国は、これまでも、貢献してまいりましたけれども、それは、これからもしっかり続けていかなければならないと思っております。その意味において、もしそういう事態になるとするならば、これを強く憂慮いたします。
 いずれにしても、現下の状況が早急に終結するように、また、言い換えれば、ロシア側が侵略を一日も早く止めるということが大事であって、そのことを改めて強く求めていきたいと思います。
 なお、本件については、詳細な事実関係を、承知しているわけではありませんので、法的な評価について、この段階でコメントすることは控えたいと思っております。

ウクライナ情勢(ロシアによる核兵器の使用示唆)

【北海道新聞 松下記者】私もウクライナに関連して、核兵器についてお伺いしたいと思うんですけれども。先ほどもありましたが、ロシアのプーチン大統領が、核ドクトリンを改定、これを了承して、核兵器の使用条件を緩和しました。欧米への警告と見られる一方で、実際の核使用の可能性は低いんじゃないかという見方もありますけれども、外務省として、核リスクの、この現状というのをどう分析されているのか教えてください。その上でなんですけれども、この核保有国による、こうした核威嚇というのは、日本が核廃絶の基盤としてきたNPT体制を根本から揺るがしかねないことかと思いますが、この戦争被爆国の政府として、具体的に、どのように核リスクの低減を促していって、核軍縮や廃絶に向けた機運を、再びその醸成をどのようにしていくか、そのお考えをお聞かせください。

【岩屋外務大臣】先ほども申し上げたように、ウクライナ政府は、ICBM級の特徴を有するものが、ロシアから発射されたと発表しておりますし、ロシア、米国両政府は、本件について、当該攻撃が中距離弾道ミサイルによるものであるということを、対外的に述べたと承知しております。
 この核の使用は、もちろん言うまでもないことながら、あってはならないことでありまして、核兵器の使用をちらつかせるという行為そのものを、強く非難をしたいと思っております。
 我が国としては、最終的なその核廃絶の目標に向かって、これからも努力をしっかりと続けていきたいと、こういうふうに思っているところでございます。

「佐渡島の金山」(追悼式)

【朝日新聞 里見記者】話題変わりまして、佐渡金山の24日に行われる予定の追悼式について、お尋ねいたします。今年7月のユネスコでのステートメントで、日本政府は開催を約束したわけですけれども、まず、追悼式の意義についてお尋ねできたらと思います。その上で、今回、民間と新潟県佐渡市の実行委員会の開催の公表が、タイミング、結構ギリギリの、一昨日だったかと承知しているんですけれども、になりました。生稲晃子政務官の参加についても、今日、先ほど発表があったということで、このタイミングが、直前となったことについて、これ要因をお尋ねできたらと思います。

【岩屋外務大臣】今回の御指摘の式典は、第46回の世界遺産委員会における、我が国政府代表のステートメントに沿って、地元自治体や、世界遺産登録に関係した民間団体で構成される実行委員会が開催する関連行事であると承知しております。
 そして、外務省ホームページにより、既に公表しましたとおり、御指摘があったとおり、日本政府からは、生稲晃子外務大臣政務官が参列する予定でございます。
 行事の詳細については、主催者が、地元の実行委員会でございますので、そこにお尋ねいただければと思います。
 本行事につきましては、政府として、主催者である地元と連携をしながら、日韓政府間でも意思疎通を行ってまいりました。その詳細については、外交上のやり取りでございますので、控えさせていただきたいと思っております。

日中関係(中国短期滞在査証の査免措置)

【日経新聞 馬場記者】中国のビザについてお伺いします。中国が、日本人に対する短期の滞在ビザの免除措置を、近く再開する方向で調整しているとの報道があります。日本政府に、このことについて既に通知があったのかを、まずお伺いして、重ねて、日本企業からは、その免除の要望の声というのが多く出ていたわけですけれども、このビザの免除を通じた、その経済や人的交流の活発化に対して日本政府としての期待をお伺いします。併せて、中国側からは、相互主義というのを主張して、訪日する中国人へのビザの情報というのを求めてきていますけれども、これに対する政府の日本政府の検討状況も併せてお伺いします。

【岩屋外務大臣】御指摘の報道については、承知しております。中国政府は、2020年3月に、新型コロナウイルス感染拡大を理由に、日本人に対する15日以内の中国短期滞在の査証免除措置を暫定的に停止して、現時点まで再開されていないところでございます。
 日中関係の基礎は、何よりも両国の国民間の交流にこそございます。そういう意味で、査証免除の再開は、人的往来の円滑化に資するものとして、御指摘あったように、経済界からも要望を受けてまいりました。
 これも踏まえて、中国側に対しましては、査証免除措置の早期再開を、累次にわたって要請してまいりました。また、そのために、様々なレベルで意思疎通を行ってきたところでございまして、近く再開されるということを、期待しているところでございますが、この間の詳細なやり取りについては、控えさせていただきたいと思っております。
 それから、中国人の訪日査証につきましては、人的往来の便宜を図る観点から、これまでも関連の措置を進めてきておりますが、今後とも、状況の変化に応じて、引き続き検討を進めていきたいと思っております。

APEC首脳会議

【TBS 大崎記者】話題変わりまして、石破総理の南米での概要についてお伺いします。ペルーで開かれたAPEC首脳会議では、総理が、各国の首脳と座ったまま握手をしたり、日中首脳会談では、習近平(しゅう・きんぺい)氏に対して、両手で握手するなど、石破総理の外交上のマナーに対して疑問視する声が上がっております。これについて、外交のプロである外務省として、大臣のお考えをお聞かせください。あと、外務省の方からの石破総理に対して、事前に外交マナーについて、しっかり伝えておくべきだったという、外務省の責任を問う声も一部ありますが、これについて大臣の受け止めをお願いいたします。

【岩屋外務大臣】御指摘の点について、様々な報道が出ていることは承知しております。議場内で、既に着席している際に、他国の首脳から歩み寄られたということで、そこでつい、座ったまま手を出してしまわれたということではなかったかなと思いますし、両手で握手するから、それがよろしくないということでは、私(岩屋大臣)はないのではないか、と思いますけれども、いずれにしても、その外交上特段の問題があったとは考えておりません。
 ただ、様々な指摘や報道が出ていることを、やはり、しっかり外務省としては受け止めて、サポートを体制を、しっかりとっていかなければならないと考えております。
総理は、2日間にわたって各セッションに出席して、我が国の立場をしっかり発信していただいておりますし、存在感を示していただいたと思っております。また、米中とも、二国間会談を行うなど、首脳間の信頼関係もしっかり築いていただいたと思っておりますので、引き続き、種々の外交を外務省としてしっかり支えてまいりたいと考えております。

閣僚資産公開

【共同通信 阪口記者】話題変わりまして、本日、閣僚の資産公開が予定されております。大臣自身の資産への評価と御所感についてお尋ねします。併せて、制度自体の意義であるとか、効果、今後の必要性について、どのようにお考えか、お考えになっているかお尋ねいたします。よろしく願います。

【岩屋外務大臣】自分の資産については、正直あまりしっかり把握できておりません。他と比較するような性格のものではないと考えておりますので、特段感想があるわけではありません。
 それから、この資産公開制度は、政治と行政への国民の信頼を確保するという目的で、行われていることでございますので、政治家として、また現在、国務大臣の公職にある者として、その目的に沿って、適切に対応してまいりたいと考えております。

日中関係(中国軍機による領空侵犯)

【読売新聞 大藪記者】話題変わりまして、8月の中国軍機による領空侵犯に関してお伺いいたします。先日、外務省が防衛省とともに、中国側から気流の都合で入ってしまったという説明を受けたという発表がございましたが、この中国側の説明をどのように受け止めていらっしゃるかということと、再発防止に向けて、どのように働きかけていきたいお考えでしょうか。

【岩屋外務大臣】8月26日に生じた、中国軍機による、我が国領空侵犯事案についてですけれども、これまで、日本側は、中国側に対しまして、様々なレベルで、しかるべき説明を速やかに行うように強く求めてまいりました。そして、今般、中国側から一定の説明があったところでございます。
 政府としては、中国側が本件事案の事実関係を認めて、類似の事案の再発防止に努める旨、説明してきたことに留意をいたしまして、今後の中国側の行動を注視していきたいと思います。
 いずれにしても、我が国としては、引き続き、中国軍の我が国周辺における活動の活発化を深刻に懸念をしておりまして、首脳間を含む様々なレベルで、中国側に対して、状況の改善をしっかり求めていきたいと思います。

中東情勢(国連安保理におけるガザ停戦決議案)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
 (以下は英語にて発言)
 一昨日、国連安保理でガザ停戦に対するアメリカの拒否権が発動されましたが、これはレバノンにまで着実に拡大しつつあるイスラエルの「ガザ戦争」(発言ママ)を終結させ、中東に平和をもたらすための一助となるか、又は障害になると考えますか。また、それに関し、イスラエルのレバノン市民に対する「戦争」(発言ママ)に対する日本の公式見解はいかがでしょうか。

【岩屋外務大臣】御指摘の決議案について、我が国は、安保理理事国として、様々な外交努力を行ってまいりましたけれども、採択に至らなかったことは残念に思っております。
 一方で、我が国は、即時停戦・人質解放に向けて、米国が、精力的な外交努力を行っていることは、評価しておりまして、引き続き、関係国への働きかけを粘り強く行っていきたいと思います。
 また、我が国は、イスラエルとヒズボッラー間の緊張の高まりについても強く懸念しております。多数の民間人に死傷者が出ていることに、大変、心を痛めております。
 全ての当事者に対しまして、民間人の犠牲の防止、国際人道法を含む国際法の遵守、国連の安保理決議の完全な履行を求めていくとともに、更なるエスカレーションを回避するように、全ての当事者に対して、最大限の自制を、これからも強く求めてまいりたいと思っております。

ウクライナ情勢(G7外相会合での議論)

【NHK 米津記者】ウクライナ問題の関係でお伺いします。これまでの御質問のやり取りでもありましたけれども、直近のロシアによるICBMの特徴のあるミサイル発射などを受けて、今も、そのような、欧米が供与した長射程ミサイルが発射されたりとか、それに報復として、ミサイル発射されたりということが続いている。この状況の中で、G7外相会合において、日本として、どのようなスタンスで主張、発信していきたいかということをお伺いしたいと思います。G7としての結束を強化するということも重要だと思いますし、日本ならではの立場での発信ということもあるかと思うんですけど、この点いかがでしょうか。お願いします。

【岩屋外務大臣】ウクライナでの現況というのは、日々刻々、今、変わっていっているわけですが、当然、G7の外相会合の場でも、議題に上ってくる、議論される事柄になっていくだろうと思います。
 大事なことは、一日も早く、公正で永続的な平和がウクライナに戻る。そのために、G7として何ができるか、何をすべきか、ということが最も大事なことではありますが、そのために、現況、今、起こっている事柄について、これをどう評価するのかということも、議論をされていくことになると思います。
 基本的には、やはり、事態がエスカレーションしていくということは、避けなければならない。そうでなければ、停戦や、永続的な平和につながっていかないので、そういうことだと思いますが、最新の状況を踏まえた上で、G7の場において、しっかり議論をさせていただきたいと思っております。
 現段階で、我が国として、この状況をどう評価するかということについては、確定的なことを申し上げることは、この段階では控えたいと思っております。

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