記者会見
上川外務大臣会見記録
(令和6年8月27日(火曜日)11時27分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)中東情勢
【上川外務大臣】私(上川大臣)から、2件ございます。まず、1件目であります。
現下の中東情勢につきまして、米国、エジプト及びカタールの仲介による人質開放と停戦の交渉に、関係者が尽力している一方、8月25日には、イスラエルとヒズボッラーの双方の間で攻撃が激化するなど、予断を許さない状況が続いています。
こうした中、我が国として、更なるエスカレーションを防ぐため、私(上川大臣)自身、関係者への働きかけを行っております。今月に入って以降、G7や、また、ヨルダン、イラン、レバノンの外相と会談をし、事態の更なる悪化を回避すべく、引き続き、ハイレベルでの緊密な意思疎通を維持していくことで確認をいたしました。
さらには、TICAD閣僚会合に出席するため来日していたエジプトのアブデルアーティ外相と、二度にわたり会談を行い、事態の沈静化の重要性と、そして、そのための連携について、改めて確認したところでございます。その後も現地の情勢について、随時報告を受けているところでございます。
引き続き、在留邦人の安全確保に万全を期すとともに、事態の更なる悪化を防ぐために、各国とも緊密に連携をしながら、外交努力を重ねてまいります。
(2)ロシアによるウクライナ侵略開始から2年半
【上川外務大臣】2件目であります。
この8月で、ロシアによるウクライナ侵略開始から2年半になります。この侵略は、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であります。我が国は、「今日のウクライナは明日の東アジアかもしれない」との強い危機感を持って、一貫して自らの問題として、この問題に取り組んでまいりました。
先般、8月24日のウクライナ独立記念日に際しましては、我が国を含みますG7外相が、ウクライナへの揺るぎない連帯を示す共同動画、これを作成し、公開をいたしました。
この動画では、本年1月、私(上川大臣)が、ウクライナを訪問したときの様子、模様も取り上げられておりますが、この訪問におきまして、直接目にした、侵略の生々しい傷痕は今でも忘れることはできません。日本として、ウクライナと共にあるという決意を、この節目に当たって、改めて表明いたします。
こうしている間も、今なお、ウクライナの人々は、ロシアによる侵略に日々苦しめられております。ロシアの侵略を止め、ウクライナに公正かつ永続的な平和を一日も早く実現すべく、G7やグローバル・サウスの国々とも、様々な形で連携をしつつ、全力で取り組んでまいる所存でございます。
私(上川大臣)からは以上です。
ウクライナ情勢
【NHK 五十嵐記者】先ほど、冒頭でもありましたが、ウクライナ情勢の関連で伺います。ロシアの南部や西部に、無人機による攻撃が行われる一方、ウクライナでも26日、ロシアのミサイルや無人機による大規模な攻撃が行われて、死者が出ています。受け止めを伺います。また、ウクライナによる越境攻撃について、日本政府として支持しているのかどうか、日本政府の立場も併せて伺います。
【上川外務大臣】まず、今般のロシアの攻撃についてでありますが、ウクライナ各地におきまして、市民の方の犠牲が出ていることで、極めて深刻に受け止めているところであります。民間人、また、民間施設への攻撃でありますが、これは、国際法違反であります。断じて正当化できないものでありまして、強く非難をいたします。
ウクライナ側によるロシア領内への攻撃についてでありますが、我が国としても、大きな関心をもって情報収集を進めているところでございます。
情勢は日々刻一刻と変化しているところでありまして、極めて流動的な状況ではございますが、今後の状況の推移については、引き続き、不断にこの情報の収集と、さらに分析を行ってまいりたいと考えております。
中国軍機の領空侵犯
【共同通信 西山記者】昨日、中国軍機の領空侵犯について伺います。長崎県の男女群島、南東上空を、2分間領空侵犯したということですが、外務省としての受け止め、今後の対応、中国軍が意図的かどうかも含めまして、よろしくお願いします。
【上川外務大臣】8月26日、午前11時29分から約2分間、中国の情報収集機・Y-9、1機が、長崎県男女群島の領空を侵犯したことを確認いたしました。
中国軍の所属航空機による我が国領空の侵犯でありますが、我が国の主権の重大な侵害であるだけでなく、安全を脅かすものであり、全く受け入れることはできません。
これを受けまして、同日、岡野正敬(おかの・まさたか)外務事務次官が、施泳(し・えい)在京中国大使館臨時代理大使を外務省へ召致し、極めて厳重に抗議をするとともに、再発防止を強く求めたところであります。
我が国といたしましては、日本の領土・領海・領空を断固として守るとの決意の下、主張すべきは主張しつつ、今後も冷静かつ毅然と対応してまいりたいと考えております。
国連総会への出席
【産経新聞 原川記者】9月下旬になると思いますが、国連総会が予定されています。24日から、ハイレベル・ウィークという、それが予定されていると思うんですが、大臣、自民党総裁選に立候補なさいますと、まさに、この時期というのは、総裁選の最終盤と重なると思います。それを踏まえてお伺いしているんですけれども、今年は、国連総会への出席については、どのようにお考えなんでしょうか。出席されるのか、あるいは総裁選を優先して出席されないのかについて、お伺いしたいと思います。
【上川外務大臣】私(上川大臣)の国連総会への出席につきましては、現時点では、何ら決まっておりません。
自民党総裁選
【読売新聞 上村記者】今の質問に関連するんですけれども、もうちょっと広く、総裁選と公務の関係でお伺いします。8月下旬から9月にかけて、調整中、または調整中だった外国訪問の予定があると承知しています。総裁選に向けた活動と、これら、特に外遊を含めた公務との兼ね合いというのは、どのようにお考えかお聞かせください。また、その総裁選に関してなんですが、これは政務になるわけですけれども、推薦人20人の確保のめどについてお聞かせください。
【上川外務大臣】私(上川大臣)といたしましては、外務大臣としての重責を、しっかりと認識しております。そして、目の前の外交課題を優先的に取り組んでいるところであります。
最近につきましては、8月19日に、この日印の「2+2」、及び日印外相間の戦略対話のために、インドを訪問いたしました。
また、一昨日まで、東京で開催されておりましたTICAD・アフリカ開発会議の閣僚会合におきまして、私(上川大臣)自身が議長を務めるとともに、2日間で、32か国の外相と、のべ33回のバイ会談を実施したところでございます。
こうした機会を通じまして、グローバル・サウスへの関与をいかに強化していくのかと、日本外交においての重要性が非常に高いなということを、改めて実感しているところであります。
この数年、国際情勢は、大変厳しさを増しておりまして、そうした中におきまして、同志国の外相と、いかに個人的な信頼関係も含めて創っていくのか。そして、その上で、率直な意見交換ができるのか、こういうことの重要性がますます高まっていると思っております。回を重ねるたびごとに、ある意味では、本音の議論というか、非常に率直な意見交換ができるということを、私(上川大臣)は実感しておりまして、こうした機会は、いかなる状況であっても、これからも日本の外交にとって極めて重要であると思っておりますので、その意味で、しっかりと取り組んでいきたいと思っております。
(2点目の推薦人ですが)体当たりで推薦人のお願いをするということをやっておりまして、その意味では、立候補するということの大変重要性は、推薦人の方が集まらないと立候補できませんので、何とか土俵に乗るために、今そういういう状況で取り組んでいるところであります。
昨日夕方、仲間のチームが、初めての会合を開いていただきました。私(上川大臣)も実は大阪におりまして、オンラインで参加をしたところでございますが、こうした初めての声を上げていただいたというのは、大変心強いところでありまして、私(上川大臣)の動きは、志を同じくする皆さんと一緒にチームになって入っていただきたいと、こういう中で、これからの日本の将来、これをしっかりと議論し、語りながら、そして、このプロセスを通して日本の変化を作っていくと、こういう大きな運動になっていくということの部分も共有することができましたので、大変初めての機会でありましたけれども、これからもどんどんやっていただけるということでありますので、仲間と共に、力を合わせて頑張っていきたいし、広げていきたいと思っております。
【毎日新聞 小田中記者】今の総裁選の関連で、総裁選と公務ということで、関連してお伺いします。総裁選も当然、外交政策等は重要な論点になってくるわけですけれども、現在、外務大臣として、かなり複雑化する、あるいは流動化する国際情勢の中で、日本外交を担ってらっしゃる立場というのが、この、今、最新の国際情勢等を認識している立場、ポジションというのが、その総裁選、総裁を目指す立場としての、その今のポジションの意義、あるいは、そのアドバンテージはどのようにお感じになってらっしゃるか、その点お伺いします。
【上川外務大臣】私(上川大臣)は、これまでありますが、留学時代も含めまして、海外の皆さんと、ある意味では、民間外交というか、外交を尽くしてまいりましたけれども、海外にもたくさんのネットワークがございます。
また、今、外務大臣という立場で、先ほども申し上げましたけれども、何といっても、信頼の関係を作っていき、そして、そのベースの上に国家の関係があるということについては、これは本当に重要な要素であると思っているところであります。
外交を外務大臣として、今、作り上げてきたこうした信頼関係、これも一つの大きなネットワークとして、私(上川大臣)としては、重要視しているところでありますので、まさに、今、御指摘のように国際情勢が非常に厳しい環境にあるということ、そしてこれに一緒に取り組んできた、たくさんの会話をしてきた仲間がおりますので、そういった方々と直接連携を取りながら、一つずつの課題解決に向けて力を合わせていく。これも国際社会の中で極めて重要だと認識しているところであります。
その意味では、現職であるからこそ、このことの実感というものも、直接これからの総裁選挙に向けて、極めて重要な要素となっておりますし、私(上川大臣)の強みではないかと思っております。
こうした時々刻々、今日もお話をいたしましたが、中東情勢、そして、ウクライナ情勢、そしてまた、東アジア情勢と、非常に動きが速い。こういう中で、どういうふうに取り組んでいくか。この一つのネットワーク。このことを最大限生かした形で、必ずや、女性総理というわけではありませんが、総理になったら連続して、これをしっかりと進めていきたいと思っております。
また、今、私(上川大臣)自身、外務大臣として、WPS、女性等が平和や安全保障の問題に取り組むということについて、これは就任以来、一貫して、強く打ち出してきたところでありまして、国内と、そして、国際社会の中で、この潮流を作っていく、こういう流れが、やっとここに来てというか、非常にスピードが増している状況です。気候変動の大きな変化がある中におきまして、飢饉や、あるいは洪水の被害や、あるいは紛争で、子供たちも、大変、命を落としていると、こういう状況の中で女性が、ある意味では被害者ではなく、平和を創っていく担い手として、この声を生かしていくことの重要性というのは、これは、この間、やり取り、対話をしながら、極めて大事な、しかし重要な、そして皆さんと一緒に取り組むミッションとしては、非常に重要なものであり、これが日本外交の大きな柱にしていきたいと、平和の国日本の柱にしていきたいと、こういう思いで進めてきたところでありますので、この反応が非常に強く、今度のTICADの中でも、アフリカにおいても、女性の視点をしっかり入れなくてはいけない、リーダーをしっかりと立てていかなくてはいけないと、このことについて、ある意味では、一つの大きな国際的コンセンサスができていることを、私(上川大臣)は、非常にうれしく思っているところであります。ますます、そうした動きを強めてまいりたいと思っております。