記者会見
上川外務大臣臨時会見記録
(令和6年7月17日(水曜日)16時03分 於:ビラ・サン・ジョバンニ(イタリア))
冒頭発言
(大臣)16日から17日の二日間にわたり、ここビラ・サン・ジョバンニにおいて、G7貿易大臣会合が開催され、国際貿易を巡る課題について活発な議論を行いました。私(大臣)からは、昨年秋に私が議長として主催をいたしました、大阪・堺における前回の会合における成果を更に発展させることを目指し、特に次の3点を重点的に発信をいたしました 。
1つ目は、 WTOを中核とするルールに基づく自由で公正な多角的貿易体制の維持・強化は、世界経済の安定と成長のために不可欠であり、世界経済に責任を有するG7に今求められているのは、具体的な行動であるということです。具体的には、第13回WTO閣僚会議、MC13で積み残した3つの課題、第一に漁業補助金、第二に投資円滑化、第三に電子商取引について切迫感を持って取り組むことが重要です。さらに貿易と環境等に関するWTOの新しいルール作りの機能が健在であるということを目に見える成果で示していく必要があることを訴え、各国から賛同を得ました。
2つ目は、世界経済の持続可能な発展のために、気候変動や、包摂性の向上といった課題と貿易政策等を両立させる必要があるという点であります。私(大臣)からは、特に貿易における包摂性向上の観点から、貿易への女性の参画促進の重要性を指摘しました。これは「誰一人取り残さない」というSDGsの理念や女性・平和・安全保障(WPS)の観点からも重要です。各国と問題意識を共有できたとの手応えを感じました。
3つ目は、国際的なルールや規範に従わない特定国に過度に依存する状態は、経済安全保障上の大きなリスクであり、その対応において、G7を超えた同志国との更なる連携強化が重要である点であります。特に、過剰生産を生み出す非市場的政策・慣行に対しては、公平な競争条件を回復しつつ、過剰生産を正当化するナラティブに対抗していく必要があります。経済的威圧に対しては、重要鉱物のサプライチェーンの強靭化を含め、我々自身の対抗力の強化と共に、被害者支援の枠組みが不可欠です。私(大臣)からは、これらを指摘し、各国の賛同を得ました。昨年議長国であった日本が主導した経済安全保障の議論を本年議長国イタリアが引き継ぎ来年議長国カナダに繋げていくことの重要性が確認されました。
世界が複合的な危機に直面する中、 共通の価値や原則を有するG7が、世界経済の持続的な成長のために、率直に議論し、方向性を見出していくことは、これまでにも増して重要となっています。その上で、その方向性に沿って、G7を超えたグローバルサウスや企業を含む国際社会のパートナーとさらに連携していくことが不可欠であり、今後しっかりと取り組んでいく考えであります。
また、この機会を捉え、英国のレイノルズビジネス貿易大臣、EUのドムブロウスキス欧州委員会上級副委員長、カナダのイン輸出促進・国際貿易・経済開発担当大臣と個別に面会をし、貿易分野におけます各種共通課題につきまして幅広く意見交換を行いました。また議長国イタリアのタヤーニ副首相兼外務国際協力大臣やオコンジョWTO事務局長をはじめとする他の様々な出席者の皆様と懇談をいたしました。
今夜からは、西バルカン3か国を訪問します。ウクライナをはじめ紛争が各地で続く中、悲惨な紛争を経て平和と安定を目指す西バルカン地域に直接足を運ぶことは、日本政府が国際社会の平和と安定のために一貫して行ってきた外交努力の延長線上の取組として非常に重要な機会であります。是非有意義な訪問にしたいと思います。私からは以上です。
質疑
(記者)先ほどお話しのあった過剰生産について、今回の会合ではどのような議論があり、日本からどのような主張をされたのでしょうか。またG7サミットではコミュニケに中国を名指しした文言がありましたが、今回の閣僚声明には入っていなかったと思います。そちらにはどういう意図があるのでしょうか。
(大臣)まず、過剰生産についてのG7のぎろんについてでありますが、今次会合におきましては、経済安全保障に関する議論の中におきまして、非市場的政策・慣行の結果生じます市場の歪曲と過剰生産、これが国際経済秩序を損なうのみならず、新興国・途上国の持続可能な成長を妨げるとの共通認識につきましてG7として改めて確認したところであります。その上で、過剰生産への対処に共に取り組むとのG7プーリア・サミットでの首脳コミットメント、具体的には、非市場的政策・慣行がいかに有害な過剰生産や他の波及効果をいかに生み出しているかということを評価するためについての共同での監視モニタリング、情報交換、また、各国の対策についての協議、新興国・途上国との連携強化、過剰生産に貢献する者への外交的な取組の強化といった取組等を着実に実施していくことの重要性につき一致したところでございます。
また、成果文書における扱いということでありますが、G7プーリア首脳コミュニケにおきましては、インド太平洋地域情勢に関する部分におきましては、中国への言及はありますが、経済安全保障に関する部分においては中国への言及はありません。今般の閣僚声明におきましても、経済的強靱性・経済安全保障に関し同様に中国への言及はございません。昨年の広島サミットにおきます共同声明以来、こうした対応をとってきているところであります。
(記者)WTOに関して、紛争解決機能の改革を今年中におこなうため、引き続き議論を行っていくと声明にあると思います。WTOに関して今回改めてどういう議論があったのか、日本としてはどのような主張をしたのか教えてください。また、今年中というところで、今年も半分を切っておりますが、そういったものの実現の可能性はいかがでしょうか。
(大臣)今回の会合では、私(大臣)から、全てのWTOメンバーが、今一度、WTOを中核とする自由で公正なルールに基づいた多角的貿易体制、これが世界の安定と成長の基盤であることを思い返し、危機感をもってこのWTOを支えていく必要性について訴えたところであります。特に、紛争解決制度を含みますWTOの体制は、ビジネスに法的安定性や予見可能性を与える経済の大変重要なインフラであることを強調し、これまでにない新たな発想を持ってWTO改革を進めていくことを強く訴えさせていただきました。
その結果、第13回WTO閣僚会議、MC13でありますが、ここで合意されました2024年末までの紛争解決制度の改革の実現に向け、G7として取組を継続していくことを再確認したところであります。WTOは、発展段階や貿易構造が異なる国々で構成されておりまして、各国の立場は様々であります。そのため、164の国・地域が一致して、WTO改革を進めていくのは、容易なことではありませんが、コンセンサスの原則を踏まえつつ、意思決定を前に進めるべく、知恵を出し合いながら、より実効的な多角的貿易体制の実現に向けまして、G7が率先してWTO改革を推進してまいりたいと考えています。