記者会見

上川外務大臣臨時会見記録

(令和6年7月8日(月曜日)17時14分 於:マニラ)

冒頭発言

 (大臣)フィリピンの滞在はあと一日ありますが、今般のカンボジアとフィリピンの訪問の総括を申し上げたいと思います。

 ASEAN諸国とは、昨年10月の私のASEAN4か国訪問、その後の日ASEAN友好協力50周年特別首脳会合といった機会を通じ、「心と心」の繋がる真の友人としての関係の深化に努めてきました。今回の両国訪問も、そうした外交努力の一環です。
 この地域で先人達が積み重ねてきた「信頼」に基づく「共創」により、「平和と繁栄」を共に目指すパートナーとして、共通の今日的課題に対処するための具体的な協力に取り組んでいます。今回の両国訪問も、とりわけ次の2点において、更なる一歩に繋げることができたと評価しています。

 第一に、「平和と安定」のための具体的な取組です。
 カンボジアでは、日本が長年協力してきたカンボジア地雷対策センター(CMAC)を訪れ、私から、日本の地雷対策協力に関する新たなビジョンを示すとともに、カンボジアをハブとして協力を進めていくための「日カンボジア地雷イニシアティブ」を打ち出しました。カンボジア側からも高い評価をいただき、今後の具体的協力を加速していきたいと思います。
 フィリピンにおいては、本日のマルコス大統領表敬及び外務・防衛閣僚会合(「2+2」)、マナロ外務大臣との会談を通じ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持及び強化に向けた連携が、地域の平和と安定、そして経済的繁栄につながることを確認できました。
 そして、今日署名した部隊間協力円滑化協定(RAA)が、両国間の安全保障・防衛協力を一層促進する新たな基盤となり、インド太平洋地域の平和と安定に寄与することを期待しています。

 第二に、「繁栄」のための取組です。日本の知見・技術を活かした社会基盤整備と、海の連結性の強化を進めます。
 カンボジアでは、両国間の協力の実績を踏まえ、私から、社会基盤整備、海の連結性の強化を含む「3つの新たな協力アプローチ」を打ち出し、支持を得ました。
 また、海で結ばれた隣国であり、基本的な価値と原則を共有する戦略的パートナーであるフィリピンとの間でも、今回視察した首都圏鉄道3号線に見られるようなインフラ整備やOSA、そして沿岸警備隊への巡視船供与といった海洋協力を引き続き進めていくことで一致しました。2026年の日・フィリピン国交正常化70周年を見据え、両国関係を新たな高みに引き上げていきたいと思います。
 カンボジアとフィリピンの双方において、先人達の努力の積み重ねに基づく、日本への高い信頼を感じました。また、フィリピンでは、現地で活躍する若い世代の日本の方々とも意見交換を行い、私自身、大変大きな刺激を受けるとともに、未来への希望を感じました。今月下旬にはASEAN関連外相会議がラオスで開催される予定であります。その際、日ASEAN外相会議などを行います。今回の訪問を含め、先週の会見で申し上げた「南部アジア外交ウィーク」の成果をしっかり活かして、ASEAN諸国との関係を強化し、平和と繁栄を未来に繋ぐための外交を更に展開していきます。

 私(大臣)からは以上です。

質疑

 (記者)日比RAAが本日署名に至ったことの意義と南シナ海で緊張感が増す中で日比関係を強化することの重要性についてどのように認識しているでしょうか。

 (大臣)本日署名した日・フィリピンRAAにより、両国間の安全保障・防衛協力が更に促進され、インド太平洋地域の平和と安定が一層強固なものとなることを期待しております。
 御指摘の南シナ海情勢については、今回の「2+2」において、先ず力又は威圧による一方的な現状変更の試みへの強い反対、第2に最近のセカンド・トーマス礁における危険な活動を始め、地域の緊張を高める行為に対し深刻な懸念の表明、そして国連海洋法条約を始めとする国際法の遵守を求めていく、このことについて確認いたしました。
 世界が複合的な危機に直面している中、基本的な価値と原則を共有する戦略的パートナーであるフィリピンとの連携を強化することは、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化する上で、極めて重要であると考えております。

 (記者)比との2+2を終え、今度は米との2+2も控えていると思います。一連の2+2で中国に一方的な現状変更を許さないメッセージになっていると思いますが、早速中国の外務省は今回のRAAについて否定的なコメントを出していますが、今後の対中国外交はどのように進めていくのか、伺います。

 (大臣)日・フィリピンであれ、日米であれ、「2+2」は特定の国を対象としたものではなく、安全保障分野における協力に関わる多様な問題を検討するための協議機関であり、今回のフィリピンとの「2+2」では、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて、安全保障・防衛協力の促進、そして、地域及び国際社会の諸課題に対する連携を確認したところです。
 その上で中国との間では「戦略的互恵関係」を包括的に推進するとともに、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸課題を含め対話をしっかり重ね、共通の課題については協力する、「建設的かつ安定的な関係」の構築を双方の努力で進めていくというのが日本政府の一貫した方針です。
 この大きな方向性に沿って、引き続き首脳レベルを含むあらゆるレベルで重層的に意思疎通を重ねて行きたいと考えています。

 (記者)カンボジアでは地雷支援のパッケージや今後の協力の方向性を打ち出しましたが、昨年発足したフン・マネット政権とこうした協力を打ち出したことの狙いはあるのでしょうか。選挙へのあり方などでカンボジアには一部から厳しい視線も注がれているが、今後どのようにカンボジアとの関係を構築していきたいと考えているのでしょうか。

 (大臣)今回の訪問では、日本がカンボジア和平以来30年にわたり、カンボジアに寄り添って同国の発展を支援してきていることに対して深い謝意が表明され、両国間には、人と人との真の信頼関係があることを感じたところです。
 カンボジアは、日本の重要政策を一貫して支持してきた重要なパートナーであり、フン・マネット政権とは、「包括的戦略的パートナーシップ」の下、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・推進するため、連携を強化していきたいと考えています。今回打ち出した日カンボジア地雷イニシアティブを含む3つの協力アプローチは、両国間の信頼関係を基盤として進めていくことにより、地域の安定につながるものと考えています。
 また、「日カンボジア地雷イニシアティブ」と併せて発表した日本の地雷対策支援パッケージは、カンボジアに限らず世界における地雷対策のビジョンを示すものであり、このビジョンの下、国際社会全体の平和と安定にも貢献していきたいと考えています。
 同時に、カンボジアが民主的に発展することも重要です。今次訪問では、そうした点についてもカンボジア側と意見交換を行いました。今回の訪問の成果も踏まえ、カンボジアの民主的発展を引き続き後押ししていきたいと考えています。

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