記者会見
上川外務大臣会見記録
(令和6年6月21日(金曜日)11時35分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)大臣のイタリア訪問(Global Women Leaders Summit出席)
【上川外務大臣】私(上川大臣)から、四件ございます。
まず、一件目であります。
来週24日から26日まで、イタリア・ミラノ近郊において、世界各地から女性リーダーを集めたGlobal Women Leaders Summit会合が開催される予定であります。
私(上川大臣)も、主催者側から招待を受けまして、本会合に出席することといたしました。
本会合におきましては、現下の国際情勢や、また、地球的規模の課題を踏まえ、WPSを含め、紛争下における女性の参画及びリーダーシップ等について議論される予定であります。
WPSを主要外交政策の一つとして、力強く推進している我が国として、本会合での議論を今後の外交政策にいかし、国際社会の平和と安定に一層貢献していく考えであります。
(2)第二回外務省WPSタスクフォース会合の開催
【上川外務大臣】続きまして二件目であります。
本日午後、私(上川大臣)の下で、第二回「女性・平和・安全保障」WPSタスクフォース会合を開催いたします。今回の会合には、外務省内の各部局にとどまらず、内閣府、復興庁、消防庁、防衛省の関係者が参加いたします。
会合の目的は、二つあります。第一に、本年1月の第一回タスクフォース会合以降の外務省のWPSの取組の進展を、省内外で共有をすることであります。第二に、内閣府、復興庁、消防庁、防衛省の皆様から、それぞれの防災・災害対応・復興分野における、WPSの取組を伺い、それらを外交分野にいかすことを目的として、意見交換を実施することであります。
日本が進めるWPSは、人間由来の紛争への対応のみならず、自然由来の災害への対応における女性のリーダーシップや、また、ジェンダー視点での取組の重要性を掲げている点に、特徴がございます。本日のタスクフォース会合で共有をされます政府内の知見・経験、これを、WPSをさらにし力強く推進するための活動にいかしてまいりたいと考えております。
(3)我が国の地雷対策の取組
【上川外務大臣】続きまして、三件目であります。
先週、G7プーリア・サミットの際に、岸田総理が表明されたように、ウクライナにおける地雷対策に関する国際会合を、来年、日本が主催する考えであります。また、来年には、我が国は、ジュネーブでの対人地雷禁止条約第22回締約国会議の議長職を務めることとなっております。
この関連で、本日は、我が国の地雷対策分野の取組について述べさせていただきます。
対人地雷は、紛争終了後も、人々に大きな影響を及ぼすものであるため、我が国は、地雷対策分野に積極的に取り組んでおります。
具体的には、地雷除去機材の供与と技術協力、地雷リスクの回避教育・啓発支援、また、地雷被害者に対する支援等、WPSの視点も踏まえつつ、様々な側面から地雷対策を実施しております。
特に、地雷被害に苦しんできたカンボジアにおきましては、現地の地雷関連機関とも連携して、長年にわたり地雷対策に取り組んできました。そして、ウクライナの地雷対策においても、非常事態庁職員をカンボジアに招いて研修を行うといった協力を進めてまいりました。
さらに、先月、科学技術会議外交推進会議から、ODAを活用して科学技術外交を推進するために必要な取組をまとめた「科学技術外交とODA」に係る提言をいただいた際、地雷対策分野で先行して提言を実行していく旨、お話をいたしました。
地雷対策におきましては、これまで日本が積み重ねてきた協力と信頼を基に、カンボジアを始めとする多様なパートナーの協力を得て、この流れを更に発展させたいと思っております。このため、現在、新たな政策パッケージの策定に取り組んでいますので、近く打ち出したいと考えております。
(4)外務大臣就任以来一年の第三コーナーに立って
【上川外務大臣】最後でありますが、間もなく通常国会の会期末を迎えるに当たりまして、一言申し上げたいと思っております。
私(上川大臣)は、昨年9月の外務大臣就任以来、「一意専心、脇目も振らず」、外務大臣の職責に、全力で取り組んでまいりました。
就任当初、私(上川大臣)は、まず、第一に国益を守る、第二に国際社会での存在を示す、そして、第三に国民に理解され、支持される外交を推進すると、この三つを基本方針に掲げまして、日本が直面する喫緊の課題に、正面から立ち向かうと決意をしたところであります。
それから9か月が経過をいたしました。この間、同盟国・同志国のカウンターパートとの関係を構築し、緊密に協力してきたという実感がございます。
同時に、日本を取り巻く環境は、より一層混迷を深めております。日本の将来、とりわけ日本の未来を担う若者たちの顔を思い浮かべたとき、息を抜くわけにはいかないと、こういう状況にあると考えております。
外務大臣に就任して、あと3か月で1年を迎えるわけでございますが、新たな覚悟を持って日々の責任を果たしてまいりたいと考えております。
私(上川大臣)からは以上です。
露朝包括的戦略的パートナーシップ条約
【北海道新聞 今井記者】ロシアの関係でお伺いします。プーチン大統領が、北朝鮮を訪問して、ロシアと北朝鮮の間で、包括的戦略パートナーシップ条約が結ばれました。事実上の軍事同盟とも指摘されておりますけれども、こうしたロシアと北朝鮮の軍事面での接近が、対ロシア政策、対ロシア制裁を含めた、日本の対露政策やロシアとの外交に、どのように影響を与えると考えているか教えてください。
【上川外務大臣】御指摘の条約についてでありますが、説明する立場にはございません。
その上で申し上げれば、まず、北朝鮮側が露朝関係を「同盟」と表現し、軍事面での極めて密接な連携を示唆したということ、そして、第二に、ロシア側が、関連安保理決議への直接的な違反となり得る北朝鮮との軍事技術協力を、排除しないとしていること、等を踏まえますと、我が国を取り巻く地域の安全保障環境が、大きく損ないかねないものでありまして、政府として、深刻に憂慮しているところであります。
政府としては、今後の対露外交に対する影響も含めまして、今後の露朝関係の進展、これを、引き続き、重大な関心を持って、注視してまいりたいと考えております。
【日経新聞 三木記者】今の質問に関連してお伺いするんですけれども、大臣もおっしゃったように、日本周辺の安全保障環境への影響が懸念されますけれども、日本と米国のその拡大抑止であったり、多国間のその安全保障協力などで、どのように対応していくというふうなお考えでしょうか。
【上川外務大臣】まず、露朝間の、この軍事的な連携・協力の強化等を含めまして、我が国を取り巻く、この地域の安全保障環境が、一層厳しさを増す中において、政府としては、今般の露朝首脳会談の結果を、重大な関心を持って注視してきたところでございます。
御質問の条約について、その内容について、説明する立場にはございませんが、その上で、北朝鮮側が、露朝関係を「同盟」と表現し、軍事面での極めて密接な連携を示唆していること、また、ロシア側が、関連安保理決議への直接的な違反となり得る、こうした北朝鮮との軍事技術協力を排除しないとしていること、等を踏まえますと、我が国を取り巻く地域の安全保障環境を大きく損ないかねないものでございまして、政府として、深刻に憂慮しているところであります。
こうした刻々と変化をする安全保障環境を直視した上で、我が国の安全保障上の能力と役割、これを強化するとともに、日米同盟の抑止力・対処力を一層強化し、また韓国を始めとする同志国等との連携につきましても、密にして対応してまいりたいと考えております。
ガザ情勢(イスラエル軍の民間人に対する意図的な攻撃)
【アナドル通信社 メルジャン記者】
(以下は英語で質問)
アナドル通信社フルカンです。質問の機会をいただきありがとうございます。本日は英語で質問させていただきます。
今週、国連の独立調査委員会はイスラエル軍がガザ地区で重火器を「意図的に」使用したのは、「民間人に対する意図的な直接攻撃」であった旨指摘しました。独立調査委員会のナビ・ピレイ委員長は、今週、イスラエルは人道に対する罪、強制的な飢餓、絶滅、殺人、パレスチナ人に対する非人道的で残酷な扱いを犯したと述べたが、この問題に対する日本外務省のコメントをお聞かせください。また、日本政府の立場はいかがでしょうか。ありがとうございます。
【上川外務大臣】まず、御指摘の報告書についてでありますが、2021年5月の国連人権理事会特別会合における決議によりまして設立された独立調査委員会、これが本年6月12日に公表したものでございます。昨年10月以降に発生した、全ての紛争当事者による国際人権法及び国際人道法の違反、並びに国際犯罪の可能性について同委員会の独立した見解を述べたものと承知しております。
その上で、我が国といたしましては、ガザにおきましての危機的な人道状況、また空爆などによりまして、多数の民間人が犠牲となっていることについて、深刻に懸念しているところでございます。
我が国といたしましては、イスラエルに対しまして、4月以来カッツ外相との3度にわたります電話会談を含め、累次の機会に働きかけを行ってまいりました。また、国際人道を含みます国際法の遵守、持続可能な停戦の実現、そして、人道状況の改善等については、繰り返し求めてきているところでございます。引き続き、こうした取組を粘り強く、積極的に行ってまいりたいと考えております。
大臣の沖縄訪問
【共同通信 西山記者】沖縄慰霊の日に関連して伺います。上川大臣は、6月23日の沖縄全戦没者追悼式に参列される予定ですが、参列の意義を伺います。また、沖縄の基地負担をめぐっては、政府の具体策である、米軍嘉手納基地より南にある施設・区域の返還計画、これが思うように進んでないのではないかとも見受けられます。大臣の所感を伺います。
【上川外務大臣】6月23日でありますが、私(上川大臣)は諸般の事情が許せば、沖縄県を訪問し、そして、沖縄全戦没者追悼式に参列することを予定しております。この式典でありますが、沖縄戦におきまして、戦場に斃(たお)れられた御霊(みたま)、また、戦禍に遭われ亡くなられた御霊(みたま)に思いを致す、大切な機会であるということでございまして、外務大臣として、哀悼の誠をささげたいと思っております。
来年戦後80年を迎える今もなお、沖縄の皆様には、大きな基地負担を担っていただいています。そして、沖縄県内には、今もなお、全国の約70%の在日米軍専用施設、そして、区域が集中しておりまして、沖縄の基地負担軽減は、政権にとりましても最重要課題となっております。外務省といたしましても、米側及び関係省庁と連携をし、一つ一つ前に進めてきているところであります。
米国との間におきましては、4月に行われました総理の公式訪米時の日米首脳共同声明を含めまして、首脳・閣僚級を含みます様々なレベルで、累次の機会に、日米同盟の抑止力を維持・強化しつつ、沖縄を始めとする地元の負担軽減を図る観点から、沖縄統合計画を始めとする在日米軍再編を着実に推進すること等につきまして、確認してきているところでございます。
引き続き、外務省といたしましても、米側と協力しつつ、地元の基地負担軽減に取り組んでまいりたいと思っております。
訪日イスラエル人観光客への差別
【読売新聞 大藪記者】イスラエル情勢に関連してお伺いいたします。京都のホテルが、「イスラエルの戦争犯罪に加担しない」として、イスラエル人観光客の宿泊を拒否したと、イスラエル・メディアなどが報じております。既に、イスラエル国内では、「日本を安全に旅行できない」と懸念する声が上がっております。日本は、来年、万博で多くの国から観光客を迎える立場にあります。国籍や政治信条に関わらず、差別を許容しないという姿勢を明確にすべきだとも考えますが、ご見解をお聞かせください。
【上川外務大臣】国籍を理由とする宿泊拒否、これは許容することができるものではないと考えております。
本事案につきましては、京都市による調査が行われ、旅館業法に基づく指導等が行われていると承知しているところであります。外務省といたしましては、訪日する全ての観光客の皆様方が、安心して、日本で、様々な活動をされることができるように考えておりまして、その意味で、特に先ほど、来年の万博のお話がありましたけれども、そういう方向に向けまして、しっかりと対応してまいりたいと考えております。
第213回通常国会の所感
【静岡新聞 中村記者】先ほど会期末について、一言大臣からございましたけれども、今国会は、自民党の裏金問題が発端となった政治改革が、主なテーマになりました。そのことについて、岸田政権を支える閣僚の1人として、御所感ありましたらお願いいたします。
【上川外務大臣】今国会におきましては、外務省提出の条約11本の締結を承認、また、法律2本を成立させていただきました。
今年1月に今国会が開会した際、私(上川大臣)自身、我が国外交の重要な点の一つとして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化をし、「人間の尊厳」が守られる安全・安心な世界を実現するための外交を進めていく旨申し上げたところであります。今国会で、締結を承認いただきました条約、また成立させていただきました法律、いずれも、こうした外交を推進するために、非常に重要なものと考えているところであります。
今国会は、間もなく閉会となるわけでございますが、引き続き、「一意専心の思い」で外務大臣の職責に取り組んでまいりたいと考えております。
【朝日新聞 松山記者】関連して、内政の件で伺います。自民党の政治資金をめぐる問題については、先日、朝日新聞の世論調査で、自民党の支持率が、19%まで低下する事態に陥りました。こちらは、2001年4月の世論調査、現状の世論調査の方式で調査を始めて以降、初めて10%台に落ち込む結果となりましたが、こちらへの受け止めと、あと併せて、今後、閉会すると、総裁選の色がより濃くなってくると思います。上川大臣として、今後、自民党牽引していくリーダーとして、総裁選に立候補するお考えはあるか、もしくは立候補されないのであれば、どういった対応をとられるお考えであるか、お聞かせください。
【上川外務大臣】まず、国民の皆様の政治に対します厳しい声、これは、真摯に受け止めなければならないと考えております。
外務大臣として、外交するに当たりまして、何と言っても信頼、これをベースにした外交こそが、具体的な成果に繋がると、現場で実感してまいりました。
内政も外交と分けて考えることはできません。国民の皆様に理解をされ、そして、支持される外交を展開するべく、今後とも、内政も外交も同じ姿勢で臨んでまいりたいと考えております。
私(上川大臣)は、先ほども申し上げましたけれども、昨年9月の外務大臣就任以来「一意専心、脇目も振らず」、外務大臣の職責に全力で取り組んでまいりました。様々な期待についての言及もございましたけれども、期待は、ありがたく受け止めさせていただいております。期待される仕事をする、そして、今後も期待される仕事をし続けると、私(上川大臣)自身、政治家として、今自分としてのその姿勢として、そうした姿勢で臨んでまいりたいと思っております。