記者会見

上川外務大臣臨時会見記録

(令和6年5月5日(日曜日)18時52分 於:ネパール)

冒頭発言

(大臣)アフリカ3か国及びフランスを経て、今回の外国訪問の締めくくりとして南西アジア2か国を訪問しました。まずは、スリランカとネパールの訪問の概要について、その上で、今回の外国訪問の全体の総括を申し上げたいと思います。
 今回の南西アジア訪問では、地域の持続的発展への日本の貢献を強化する機会とすることを目指しました。加えて、地域情勢、女性・平和・安全保障(WPS)や国連安保理改革、軍縮といった国際場裡での協力やグローバルな課題について認識を共有しました。

 スリランカにおいては、大統領表敬、首相表敬及び外相会談を行いました。債務問題については、透明性及び公平性が確保された形での債務再編の重要性を強調するとともに、円借款の再開の見通しを説明しました。また、古来より多くのヒトとモノが行き交うコロンボ港も視察しつつ、海図作成のためのソナーを備えた船舶の供与等を通じて、引き続き独立した交通の要衝として発展するよう日本政府として支援することを表明しました。

 ネパールでも、大統領表敬、首相表敬及び外相会談を行い、ネパールの持続可能な開発を引き続き後押ししていく旨伝えました。具体的には、ネパール初のトンネルとなる「ナグドゥンガ・トンネル」の供用開始に向け、両国で取組を進めていく旨で一致しました。また、2026年の日ネパール国交樹立70周年に向け、両国間で機運を醸成していくことで一致しました。
 あまり知られていませんが、サンフランシスコ講和会議で、スリランカ代表が仏陀の言葉を引用して、日本の国際社会への復帰を後押ししたこと、また、ネパールからは既に120年前から日本に留学生が来ていることなど、両国と日本の間には長年の友好関係の歴史があります。実際に両国を訪問して、こうした積み重ねに裏打ちされた友情こそが、日本と南西アジアを結びつけ、強い絆を形作っていると実感しました。

 今回の外国訪問では、経済、海洋、連結性を通底するテーマとし、アフリカ3か国と南西アジア2か国、そしてOECD閣僚会議が開催されたフランスを訪問し、グローバル・サウスとG7を始めとする同志国との架け橋になる外交を心がけました。
 一つの具体例として、それぞれの国から、ウクライナ情勢や中東情勢、さらには東アジア情勢について強い関心が示され、国際紛争による影響は否応なく自分たちに降りかかってくるとの認識の下、国際社会のあるべき姿について率直な意見が示されました。私からは、経済の発展の基礎には平和が不可欠であり、現代の国際紛争は、その発生場所にかかわらず連関しており、そういった全体像を踏まえた対処が必要であると述べました。
 また、日本企業関係者を含む海外の現場で活躍する方々の声に接して、経済及び連結性強化のために、地域のハブとなる拠点作りの重要性を改めて感じました。大学・病院・港湾・図書館といった視点に着目し、先進的な取組を「点」のレベルに止めず、「面」のレベルに展開していく発想と行動力が必要です。
 その観点から、今回の出張に先立って配置を発表した経済広域担当官の具体化や、マダガスカルの市立図書館の視察で着想を得た図書館を通じた発信や対日理解促進のためのエントリーポイント作りといった取組を展開していきたいと考えています。こうした地域レベルの発想は現場の実情や声を、実際に見聞きしなければわからなかったことです。
 今回、インド洋を大きく弧を描き、海と陸の結節点にある国々を訪問いたしました。これを通じて、法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の精神を広げていくことの意味合いを実感いたしました。これらの国々との間でこれまで築いてきた信頼に応え、国際社会を平和と発展に導くための日本ならではの外交を展開していきたいと思います。
 私(大臣)からは以上です。

質疑応答

(記者)今般のアフリカ、南西アジア訪問で、グローバルサウスの国々との間で経済、海洋等の分野等において連携を深めたが、中国も同様に途上国に対する影響力を強めています。今般の一連の外相会談を通じて、グローバルサウスとの関係で、日本にどのような役割が求められ、また、どのような課題があると感じたかについてお伺いします。

(大臣)今回、アフリカ及び南西アジアのそれぞれの外相等との間で、民主主義や法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性について議論しました。そして、これらを土台に、各国の持続的な発展、地域の平和と安定、さらにはグローバル課題への対応に共に取り組んでいくことで一致しました。
 今回の一連の会談を通じ、我が国としては、「グローバル・サウス」の国々が直面するそれぞれの諸課題ときめ細かに向き合いつつ、多様性、包摂性、さらには連結性を重視する多角的な外交を推進していくことの重要性を改めて認識をいたしました。
 国際社会が分断と対立を深める中、このような形で「グローバル・サウス」への関与を深めていくことは極めて重要であります。この観点から、今回、アフリカ3か国及び南西アジア2か国を訪問したことにより、こうした力強いメッセージを発信することができたと考えています。

(記者)スリランカとはソナー搭載の船舶の無償供与など海洋の安全分野について協力関係を深める方向を打ち出しました。スリランカはシーレーンの要衝にある国ですが、大臣自身、現在の海洋分野への危機感をどのように感じているのでしょうか。また、一方、本日訪問したネパールは内陸国でありますが、今回の訪問を通じてネパールと友好関係を深めることは日本の外交戦略上、日本にとってどのような重要性があると感じましたでしょうか。

(大臣)国際社会が分断と対立を深める中、法の支配に基づく自由で開かれた海洋秩序の維持・強化が大きな課題となっています。また、これに加え、近年、自然災害、海洋環境保全等のリスクも顕在化しています。
 こうした観点から、我が国は「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現に向け取り組んでいます。海洋保安分野における協力もその重要な要素であり、今回のスリランカへのソナーを搭載した船舶の供与はその一環であります。今後、海洋法や法の支配、物流など連結性の強化に向けた協力も積極的に行ってまいります。
 インドと中国という大国の間に位置する内陸国であるネパールの自律的な発展は、地域全体の安定に貢献。このような考えの下、日本は長年にわたりネパールの開発を後押ししてきました。
 2026年にネパールは後発開発途上国(LDC)卒業を控え、また、同じ年に日本とネパールは外交関係樹立70周年を迎えます。日本として、これらを契機に、ネパールが強靱な社会を築き上げることを支援しつつ、ネパールとの関係を一層発展させてまいります。

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