記者会見

上川外務大臣会見記録

(令和6年4月26日(金曜日)15時46分 於:本省会見室)

上川外務大臣の記者会見

冒頭発言

上川大臣のOECD閣僚理事会出席及びアフリカ、南西アジア訪問

【上川外務大臣】4月26日から5月5日まで、私(上川大臣)は、マダガスカル、コートジボワール、ナイジェリア、フランス、スリランカ及びネパールを訪問します。サブサハラ・アフリカ地域及び南西アジア2か国については、大臣就任以来初の訪問となります。また、マダガスカルについては、1960年、同国独立以来、初の外務大臣訪問になります。
 アフリカの3か国とは、8月に開催予定のTICAD閣僚会合に向けて、経済関係や連結性の強化、法の支配やWPSを含むグローバルな課題における、連携強化を図りたいと考えます。
 具体的には、まず、シーレーンの要衝であるマダガスカルでは、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」や、経済安全保障に関する協力、日本企業支援、さらには文化外交の取組を含め、二国間関係を強化します。
 仏語圏アフリカのハブであるコートジボワールでは、地域の経済を牽引している同国との経済関係の強化、ギニア湾沿岸の政治的・経済的安定への後押しを目指します。
 また、今やアフリカ最大の経済大国であるナイジェリアでは、同国の成長の活力の日本への取り込みや、西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS(エコワス))議長国である同国の地域での取組について、意見交換したいと思います。
 また、日本企業を効果的にサポートするため、先般、新たに「経済広域担当官」を設置する旨発表しましたが、まずは、経済成長のポテンシャルが高い一方、ビジネスを展開する上でも課題も比較的多いことが指摘されるアフリカに進出する日本企業への支援のために、パイロット公館として、5か国6公館において、経済広域担当官を指名することとしました。
 具体的には、在南アフリカ大使館、在ドバイ総領事館、在英国大使館、在インド大使館、在トルコ大使館、在イスタンブール総領事館です。
 今回のアフリカ出張で、現場の日本企業の声を聴くとともに、経済界等からも幅広いフィードバックを得て、私(上川大臣)自身がリーダーシップをとって、今後の展開につなげていく考えであります。
 本年は、日本のOECD加盟60周年の節目の年です。フランス滞在中の5月2日から3日まで、日本が議長国を務めるOECD閣僚理事会に出席し、議事進行を務めるほか、豪州主催のWTO非公式閣僚会合に出席いたします。また、EUとの間で、日・EUハイレベル経済対話を開催します。
 国際社会の分断や対立が深まる中、共通の価値の下に結束するOECDの重要性は一層増しています。我が国としては、昨年のG7議長国としての成果を踏まえ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて、経済・社会分野の諸課題について、議論を主導していきます。
 また、セジュルネ外相との間で日仏外相会談を実施し、フランスとの協力強化や地域情勢等に関する意見交換を行う予定です。
 我が国は、スリランカ、ネパール両国との間で、長年の開発協力及び人的交流を基盤とした深い信頼関係を確立してきており、今回の訪問を通じ、協力を一層強化していきます。
 具体的には、まず、スリランカでは、債務再編を進めるスリランカ政府への協力を改めて表明するとともに、FOIP、WPS、軍縮・不拡散分野での協力を確認します。
 また、ネパールは、日本の外務大臣として約5年ぶりの訪問です。2026年の国交樹立70周年及びネパールのLDC卒業に向け、二国間関係の強化に向けた協力を確認します。
 今回は、経済、そして海洋及び連結性が通底するテーマです。アフリカの特色あるリーダー的存在3か国、OECD、陸と海の結節点である南アジアの2か国を巡り、グローバル・サウスとG7を始めとする同志国との橋渡しとなる外交を行ってまいります。
 以上です。

今回の出張における「グローバル・サウス」への発信

【共同通信 林記者】今、大臣、言及あったように、今回の出張は様々な分野での協力を、確認されたり連携されたりというお話がありましたけれども、アフリカや南アジアで、アジアを中心に、やはり中国が影響力を強めている現状もあろうかと思いますが、その点において、今回どういったメッセージを発信されたり、あるいは会談等でお伝えされたりするお考えでしょうか。その辺り、ちょっとお伺いできればと思います。

【上川外務大臣】分断や、また、対立が深まる現在の国際情勢におきまして、いわゆる「グローバル・サウス」として、今、世界に大きな存在感を示す途上国、また新興国との連携を強化し、それらの国々をパートナーとしていくということにつきましては、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序維持・強化のために、大変重要であると認識しております。
 私(上川大臣)自身、就任以来でありますが、「グローバル・サウス」の各国からの日本外交への信頼と期待の高さ、また、日本と協力を深めていきたいと、こうした意欲を肌で感じてきてまいりました。今般の訪問におきましても、これまで我が国が築いてきた信頼を基に、日本とアフリカ、また南アジアがともに繁栄し、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の実現や、またWPSを含みますグローバルな課題の解決に向けまして、協調・連携していくとの力強いメッセージを、発信してまいりたいと考えております。
 特に、OECDの閣僚理事会におきましては、東南アジア諸国からの加盟に向けた動き、これを踏まえまして、これまで日本が主導してきたインド太平洋地域、とりわけ東南アジアへのOECDによるアウトリーチを一層強化する必要性について発信してまいりたいと思っております。
 この間の長い歴史に基づく途上国等との信頼関係の蓄積の上に、さらにこの先の未来に向けて、「グローバル・サウス」と言われている国々と、更に連携を深めてまいりたいと考えております。

米国のウクライナ追加支援予算の成立と岸田総理の米国議会演説への反応、ロシアの凍結資産の活用

【毎日新聞 森口記者】ウクライナへの追加支援を盛り込んだ米国の予算が成立しました。予算審議では、岸田総理が合同議会で行った演説に言及した上で、予算へ賛同する声が複数あったとされますが、大臣の受け止めをお聞かせください。
 また、今回成立した法案は、ロシアの凍結資産をウクライナ支援に充てることを可能にする内容でもあります。ロシアの凍結資産をめぐっては、その利息を、ウクライナ支援へ活用する選択肢が浮上しており、今後のG7首脳会議で議論されるとの報道もあります。ロシアの凍結資産の扱いについて、日本としては、具体的にどのような活用方法があるとお考えでしょうか。利息を活用する案は有力な選択肢になり得るとお考えでしょうか。よろしくお願いします。

【上川外務大臣】まず、1点目の御質問でございますが、ロシアによりますウクライナの侵略は、国際秩序全体の根幹を揺るがす暴挙であります。ウクライナに、一日も早く、公正かつ永続的な平和を実現するべく、引き続き、国際社会が結束し、対露制裁とウクライナ支援を強力に推進していく必要があると考えております。
 こうした中におきまして、4月24日、米国におきまして、ウクライナへの追加支援を含む予算法案が成立し、また、米国政府が、今般成立した予算に基づきまして、ウクライナに更なる支援を供与すること、これにつきましては、日本政府として、歓迎をしたいと思っております。
 予算の成立に当たってありますが、上院での本件予算法案の審議等の過程におきまして、複数議員が、岸田総理による上下両院合同会議での演説の内容に言及したものと承知しております。岸田総理が演説におきまして、ロシアによるウクライナ侵略に言及しつつ、米国のリーダーシップが必要不可欠であると訴えたメッセージ、これが米国議会の議員の皆様方にしっかりと伝わったのではないかと考えております。
 日本政府といたしましては、引き続き、グローバルなパートナーとして、米国とともに取り組んでまいりたいと考えております。
 2点目の御質問でございますが、凍結されましたロシアの国有資産の活用についてでありますが、2月24日のG7の首脳声明にもあるとおり、引き続き、関係国間でよく議論していくこととなっております。
 関係国間の議論の見通しにつきまして、予断を持って申し上げることについては、差し控えさせていただきますが、日本としては、今後ともG7を始めとする国関係国と緊密に連携しつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。

外国人材の受入れ

【読売新聞 工藤記者】読売新聞は26日の朝刊で、人口減少に関する提言を発表しました。労働力人口が減る中、政府は育成就労制度の創設など、外国人材に着目した施策を打ち出していますが、提言では外国人材に関する長期的な国家戦略の策定を促しています。提言に対する大臣の御所感をお聞かせください。

【上川外務大臣】御提言にもあるとおり、近年の我が国におきまして、労働力の不足が深刻化していること、また国際的な人材獲得競争が激化している状況を鑑みますと、我が国が魅力ある働き先として、選ばれる国になる必要があると考えております。
 このような観点からは、一定の技能等をもって我が国で働こうとする外国人の方々に対し、今まで以上に門戸を開いた上で、そのような方々との共生社会を実現していくということが、必要不可欠と認識しているところであります。
 外務省といたしましても、「外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議」で策定されました「外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ」に沿いまして、関係省庁との緊密な連携の下、関連の取組を進めてきているところでございます。
 具体的に申し上げますと、まず、第一に、国際交流基金を通じた来日前の外国人に対する日本語教育環境の整備であります。そして、第二に、国際移住機関IOMとの共催によります、国際フォーラムを通じましての啓発活動であります。そして、第三に、JICAとの連携によります外国人日本人の双方が共生社会の担い手となるような仕組み作りに取り組んでいるところでございます。こうした取組を通じまして、引き続き、外務省としても、積極的に役割を果たしてまいりたいと考えております。

対馬盗難仏像

【産経新聞 原川記者】長崎県対馬市の観音寺から盗まれた、韓国に持ち込まれた仏像に関してお伺いします。この仏像の所有権が観音寺にあるという韓国最高裁の判決が確定してから今日で半年になるわけですけれども、いまだに返還がなされていません。この件については、私、1月30日のこの記者会見で、政府の対応を質問させていただきまして、その際大臣は、「早期の返還に向けまして、韓国政府への働きかけを継続するとともに、観音寺を含む関係者と連絡を取りつつ、適切に対応してまいりたいと考えております」とお答えいただきました。ところが、この観音寺の関係者によると、いまだにどこからも音沙汰がないと、お寺の関係者おっしゃっています。そこでお伺いしたいんですが、大臣が1月にそのように答弁されたにもかかわらず、外務省として、お寺に連絡を取られてないのでしょうか。ちょっとその点を確認させていただきたいのと、あと、今後返還に向けて、どのように取り組まれ、また、返還はどのような見通しになっているのか、この辺りについてもお聞かせください。

【上川外務大臣】御指摘の仏像についてでありますが、昨年10月に韓国において判決が確定したことを踏まえまして、仏像が、早期に、所有者であります観音寺さんの方に返還されるよう累次の機会に韓国政府に働きかけをし、また意思疎通を継続している状況でございます。韓国政府からは、返還手続につきましては、関連法令に従いまして、関係機関で決定していく旨明らかにしている状況でございます。
 日本政府としては、早期の返還に向けまして、これまでどおり韓国政府に、引き続き、働きかけを継続してまいりたいと考えておりますし、また観音寺さんを含みます関係者と連絡を取りつつ、適切に対応してまいりたいと考えております。
 詳細につきましては、十分にまた情報をしっかりと共有をしながら進めていくべき事柄であると考えておりますので、その方向に向かって最善の努力してまいりたいと考えております。

次期総理への期待の声

【時事通信 村上記者】世論調査についてお伺いします。上川大臣の外務大臣就任から7か月が経過しました。この間、弊社の世論調査では、次期総理大臣にふさわしい人物として上川大臣と回答した人の割合が約2倍に増加しました。大臣を次期総理大臣に期待する声の受け止めと、こうした声は、大臣がこれまでおっしゃってきた「一意専心、脇目も振らずに」外交に取り組んできた結果であると考えるか、大臣のご認識を教えてください。

【上川外務大臣】私(上川大臣)は、初当選が2000年でありますが、その当選以来、信念に基づきまして、政治家としての職責を果たすということに専念し、政治活動をこの間行ってまいりました。現在は内閣の一員として、全力で岸田総理をお支えしているところでございます。
 私(上川大臣)が今、一心不乱に取り組んでいる外交と、また、内政面の危機的な状況については、表裏一体の関係でございまして、日本の内政が安定していることが非常に外交的にも重要な要素になるということを考えているところであります。
 豊かで明るい可能性に満ちた日本、そして世界から尊敬され、信頼される日本、更に必要とされる日本と、これを次の世代にしっかりと引き継いでいきたいと考えておりまして、今の私(上川大臣)に与えられた外務大臣の職責、これに「一意専心の思い」で取り組んでいるところでございます。

イタリアにおける邦人事件

【読売新聞 畑記者】2021年の1月に、イタリアのベローナという街で日本人の女性の遺体が見つかって、最初、イタリアの警察は自殺だとして、ちゃんと捜査しなかったのですけど、日本に住むご両親が、これは殺人事件だということを訴えて、この4月3日にイタリアの裁判所が、警察ちゃんと再捜査せよというような判決が出ました。これまでの日本政府として、事件なのか自殺なのか分かりませんけど、これへの対応と、この裁判所の判決を受けて、今後イタリア政府に対して何か働きかけをするかとか、そのあたりの対応方針を教えてください。

【上川外務大臣】まず、亡くなられましたご本人とご家族の皆様に対しまして、深い哀悼の意を表したいと思っております。
 外務省は、本件の事案発生当初から御家族と連絡を取りつつ、ご遺体の日本への搬送を始め、必要な支援を行ってまいりました。
 本事案につきましては、4月3日にイタリア・ベローナ市の裁判所が刑事事件として、再捜査することを決定したものと承知しております。今後、御家族のご要望も踏まえながら、できる限りの支援をしてまいりたいと考えております。

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