記者会見
上川外務大臣会見記録
(令和6年4月23日(火曜日)13時16分 於:本省会見室)
冒頭発言
第48回南極条約協議国会議の開催地の決定
【上川外務大臣】私(上川大臣)から、1件ございます。
2026年5月を目途に、第48回南極条約協議会協議国会議を日本で開催する予定です。日本での開催は、1994年以来32年ぶりになります。
この会議の開催地につきまして、日本政府として、公募の上、厳正な審査を行った結果、広島県広島市において開催することを決定しました。
南極条約は、南極地域の平和的利用、国際協力、核爆発・放射性物質の処理の禁止を基本原則としており、「国際平和文化都市」を掲げる広島市は、条約の精神にふさわしい開催地であると考えております。
南極は、将来の地球環境の保全を考え、国際協力を促進する上で重要な場所であり、日本は、南極条約の原署名国及び協議国として、南極を巡る議論に積極的に参加してきました。これまでに日本は、昭和基地を中心に、地球環境変動の解明に向けた観測・研究を進めるとともに、生物資源や環境の保護・保全に取り組んできました。
この会議の日本開催を、南極における国際協力を一層強化し、南極をめぐる課題の解決に向けた我が国の取組を示す機会とすべく、関係省庁及び自治体を始めとする関係者間で連携をし、しっかりと準備を進めてまいりたいと考えております。
私(上川大臣)からは、以上であります。
中東情勢で日本が果たす役割
【共同通信 桂田記者】中東情勢について伺います。イランとイスラエルの間で、情勢が緊迫していましたが、イラン側が、再報復攻撃の意図はないことを示唆するなど、一旦収束の形になったとの見方があります。大臣は、双方の外務大臣と電話会談し、事態の沈静化を直接呼び掛けるなどされましたが、改めて中東情勢で、日本の果たす役割をどうお考えかお聞かせください。また、イスラエルが、ガザ地区南部ラファハへ地上侵攻する姿勢を示していますが、イスラエル側に、今後はどのような働きかけをされる方針でしょうか。
【上川外務大臣】我が国といたしましては、この現下の中東情勢につきまして、極めて憂慮しておりまして、次回のエスカレーションに繋がるいかなる行動も強く非難いたします。我が国として、全ての当事者に対し、紛争の地域への更なる拡大を回避する必要性を強調し、自制を求めてきております。先般のイタリアでのG7外相会合におきましても、情勢の緊迫化が高まる中にありまして、事態の更なる悪化やエスカレーションを防ぐため、あらゆる外交努力を行っていくこと、そのためにG7で、引き続き、緊密に連携して対応していくことで一致をしたところであります。
また、ガザ情勢についてでありますが、先のG7外相会合におきましても、本件について議論をいたしました。G7といたしましては、第一に、ラファハへの全面的な軍事作戦に反対を表明をし、第二に、人質の即時解放と、人道支援の大幅な増加を可能にする持続可能な停戦を止めること。そして、第三に、「二国家解決」へのコメントなどを確認し、緊密に連携して対応していくことで一致をしたところであります。
人道支援活動が、可能な環境が持続的に確保され、また、人質の解放が実現するよう、我が国として即時の停戦を求めるとともに、それが持続可能な停戦に繋がることを強く期待しておりまして、イスラエル側に対しましても、ラファハの状況への懸念に言及しつつ、こうした行動を求めてきております。引き続き、あらゆる外交努力を粘り強く積極的に進めてまいりたいと考えております。
UNRWA(第三者検証グループの最終報告書)
【NHK 五十嵐記者】UNRWA国連パレスチナ難民救済事業機関の関連で伺います。フランスのコロナ前外相が率いる検証グループは、最終報告書で、中立性を確保するための仕組みや手続が確立されていると評価しました。一方、「UNRWAの一部の職員が、テロ組織のメンバーだ」と主張するイスラエルからは、それを裏付ける証拠が提供されていないとしています。最終報告書の受け止めや、今後の政府対応を伺います。
【上川外務大臣】4月22日ニューヨーク時間でありますが、コロンナ前仏外相が議長を務めていらっしゃいます、第三者検証グループから、UNRWAのガバナンス強化策を提言する最終報告書が、国連事務総長に提出・公表されたところであります。
同報告書には、日本が重視しております、UNRWA本部の現場へのグリップ強化や、また、UNRWA職員の中立性を保つためのスクリーニング及び教育・研修の拡充、また、女性のリーダーシップの強化等が含まれており、評価しているところであります。
今後、UNRWAが、こうした提言を確実に実行するということが重要でありまして、我が国といたしましても、引き続き、各ドナーと連携しつつ、UNRWAのガバナンス強化の取組を後押ししてまいりたいと考えております。
職員の中立性に関しまして、相当数のUNRWA職員が、テロリスト組織の構成員であるとする主張については、同報告書によりますと、イスラエル側から、未だ裏付けとなる証拠が提供されていない旨記載をされているところであります。
いずれにいたしましても、我が国といたしましては、今回の報告書に述べられている様々な取組と同時に、我が国として、日本とUNRWA間で成立をいたしました日・UNRWAモニタリング・メカニズムを通じまして、プロジェクトの適正性の確保、そして、その経験等につきましても、ドナーとも、よく共有してまいりたいと考えております。
パレスチナの国連正式加盟に係る安全保障理事会決議
【パンオリエントニュース アズハリ記者】(以下は英語にて発言)
日本が、国連安全保障理事会で、パレスチナの国連加盟に賛成票を投じ、日本の官房長官が、パレスチナ国家の樹立を支持する発言をしたことを踏まえ、イスラエルは、ガザ地区からパレスチナ人を避難させるというイスラエルの計画に反するとして、他国の大使たちとともに、日本大使を召喚し、抗議したとされています。
日本政府は、イスラエルのこの行動を非難しますか。日本政府は、パレスチナを国家承認する予定はありますか。
【上川外務大臣】パレスチナの国連正式加盟に係る安保理決議案について、我が国は、パレスチナが国連加盟に係る要件を満たしているとの認識の下、中東和平の実現に向けて、和平交渉を通じた国家の樹立を促進する等の観点を含め、総合的に判断をし、賛成をしました。他方で、今般、我が国が、パレスチナの国連加盟に関する安保理決議に賛成したことと、パレスチナを国家として承認することは、別個の問題であり、我が国の立場に変更はございません。
その上で、21日でありますが、イスラエル外務省の要請を受けまして、我が国を含む複数国の外交団関係者が、同国政府関係者と面会を行ったものと承知しております。この面会におきましては、イスラエル政府関係者から、本件決議案に係る同国の立場の説明があり、我が国から、日本政府の立場を然るべく説明をしたところでございます。
我が国は、引き続き、当事者間の交渉、これを通じました「二国家解決」を支持してきておりまして、我が国が、中東地域において築いてまいりました独自の立場を効果的に活用して、和平プロセスの進展に貢献してまいりたいと考えております。
ガザ情勢
【アナドル通信社 メルジャン・フルカン記者】イスラエルによるガザ攻撃は、まもなく約200日目に入ろうとしています。国際社会での停戦の求める声にもかかわらず、イスラエルの攻撃は続いています。ガザ地区で続く、イスラエルの虐殺に対する、日本政府の最新のアプローチについて説明してもらえますか。イスラエルが、新たな根拠のない主張をした場合、日本政府は、再びUNRWAへの援助を停止することを検討するでしょうか、お願いします。
【上川外務大臣】先ほども述べたとおりでございますが、我が国といたしましては、人道支援活動が可能な環境が持続的に確保され、また、人質の解放が実現するよう、即時の停戦を求めるとともに、それが持続可能な停戦につながることを強く期待しており、こうした考えの下、当事者に対しまして、直ちに人道的観点から行動するよう求めてきております。
今もなお、人質の解放と戦闘の休止をめぐって、関係国の仲介による調整が続いており、我が国としても、このような動きが実現するよう、関係国と密接に連携しつつ、環境整備に取り組んでおります、引き続き、外交努力を粘り強く積極的に行ってまいりたいと考えております。
UNRWAへの今後、ということでのご質問がございましたが、今、日本のプロジェクトのモニタリングを実施しながら、適正に適切に、子供たちや女性たちの手元に、こうした支援が届くようにということで、丁寧にモニタリングをしながら進めてきているところでありますので、こうした取組については、人道支援の立場から、しっかりと支援し続けてまいりたいと考えております。
香港の国家安全維持法
【産経新聞 原川記者】元衆議院議員の菅野志桜里さんが、2020年当時の中国や香港の人権問題に対する取組をめぐって、香港で今行われている刑事裁判で、被告の共謀者として名指しされているという、この件についてお伺いしたいと思います。この件については、日本の国会議員の言論活動が、海外の刑事裁判対象になるというのは、日本の主権の侵害であるという趣旨の議論が国会でも行われていて、「政府は、抗議すべきだ」という議論も行われているところですが、この件について、大臣は、3月6日の参院の予算委員会において、「主権の侵害に当たるかも含め個別具体的な状況を見極める必要がある」と答弁されています。そこでお伺いしたいんですけれども、その後、主権侵害であるかどうかという見極めがついたのか、ということも含めまして、現時点の、政府の、この件に対する、その認識について、教えていただけますでしょうか。
【上川外務大臣】御指摘の事案についてでありますが、黎智英(ジミー・ライ)氏の収監を含む一連の動きが、香港におきます言論の自由や結社の集会の自由にもたらす影響などを、我が国といたしましても、強く懸念しているところであります。
その上で、本裁判におきまして、元衆議院議員の菅野志桜里氏が名指しされていることについては、現時点では、この裁判が継続中であることから、裁判の行方等を引き続き注視しつつ、それが我が国主権の侵害に当たるか否かも含めまして、個別具体的な状況を見極める必要があると考えている状況でございます。
ウクライナにおける平和に関するハイレベル会議
【毎日新聞の森口記者】ウクライナ関連でお伺いします。大臣は、イタリアで行われたG7外相会合に出席されました。G7外相コミュニケでは、6月中旬に、スイスで予定されているハイレベルでの国際会議も視野に入れつつ、ウクライナの平和フォーミュラの主要原則及び目標に対し、可能な限り、幅広い国際的な支持を得るべく、引き続き、取り組むことが確認されました。日本は、この6月に予定されているハイレベル会議への出席の予定はありますでしょうか。また、ロシアが不参加という見通しもある中、ウクライナの平和実現に向けて、今後、日本として、どのように議論に貢献していくお考えでしょうか、お願いします。
【上川外務大臣】4月10日にスイス政府は、「ウクライナにおける平和に関するハイレベル会議」を6月にスイスのビュルゲンシュトックにおきまして開催する旨を発表したと承知しております。
この会議でありますが、公正かつ永続的な平和をウクライナに実現するために大変重要な会議であると認識しております。出席者につきましては、まだ決まっていないところではございますが、スイスやウクライナをはじめとする各国と連携をし、しっかりと対応してまいりたいと考えております。
また、本会議への参加国についてありますが、調整中であると認識しておりまして、他国の参加の見通しにつきましては、コメントすることは差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにせよ、侵略が長期化する中におきまして、我が国としての責務は、国際社会が結束して、ウクライナに寄り添った対応を続けていくための外交努力を継続していくことであります。
この点、私(上川大臣)自身、先般のカプリにおきましてのG7外相会合に出席をいたしまして、ウクライナと共にあるという日本の立場は揺るがないという旨強調して参りました。また、G7として、ウクライナにおきましての公正かつ永続的な平和の実現に向けて取り組んでいくということについては、改めて一致したところでございます。
引き続き、ウクライナに公正かつ永続的な平和を実現すべく、G7や、また、「グローバル・サウス」と呼ばれる諸国を含めます、各国と連携をしつつ、リーダーシップを発揮してまいりたいと考えております。
麻生自民党副総裁の訪米
【朝日新聞 松山記者】議員外交についてお伺いします。自民党の麻生副総裁は、現在訪米中ですけれども、「現地時間の23日にも、トランプ前大統領と面会する」と報道されています。先般、岸田首相は、国賓待遇で米国を訪問し、バイデン米大統領とグローバル・パートナーを確認し合ったということなんですが、元首相である麻生氏が訪米し、共和党のトランプ前大統領と会うことの意義について、大臣のお考えをお願いします。麻生氏とトランプ氏の面会が、実際に実現した場合、今後の日米関係に、どのような影響を与えるか、こちらも併せてお願いします。
【上川外務大臣】麻生副総裁の訪米についてのご質問でございますが、これは、一議員として行われるものと承知しているところであります。
政府として関与していない個人の立場としての活動ということでありまして、これにつきましては、コメントすることは差し控えさせていただきたいと思います。
受け止めについても、お答えする立場にはございませんので、差し控えさせていただきたいと思います。
中国人教授の行方不明事案
【毎日新聞 森口記者】亜細亜大の中国人教授が、昨年2月に一時帰国したまま、連絡が取れなくなっていることが分かりました。この事案における事実関係の把握状況と、中国人の教授の行方が分からなくなるという同様のケースが相次いでいますが、大臣の受け止めをお願いします。
【上川外務大臣】御指摘の報道については承知しているところであります。
同教授は、長年にわたりまして、我が国の大学におきまして、教職に就かれている方でありまして、同教授の人権に関わりうる事案でもあるため、過去の類似の事案も踏まえつつ、関心を持って本件を注視しておりますが、事柄の性質上、これ以上のコメントにつきましては、差し控えさせていただきたいと思っております。