記者会見
上川外務大臣臨時会見記録
(令和6年1月7日(日曜日)18時43分 於:ウクライナ(キーウ))
冒頭発言
【上川外務大臣】本日、私の就任以前から強い思いを抱いてきたウクライナの地を訪問いたしました。先程、クレーバ外相との会談の後、共同記者発表を行ったので、そこで触れなかったゼレンスキー大統領及びシュミハリ首相への表敬について各々申し上げます。
ゼレンスキー大統領への表敬では、昨年のG7議長国としての日本の取組や、ウクライナが進める平和フォーミュラへの日本の取組を高く評価いただきました。特に、岸田総理への謝意が繰り返し表されました。私からは、日本として、平和フォーミュラ第一項目である放射線・原子力安全作業部会の共同議長となることを決定した旨を伝達しました。我が国として、これを契機としつつ、ウクライナ側による公正かつ永続的な平和実現へ向けた貢献を一層強化していく考えです。
また、シュミハリ首相への表敬では、2月19日の日・ウクライナ経済復興推進会議の成功に向けて、同会議では、民間セクターが関与する10本以上の協力文書が署名できるよう取り組んでいくことを伝達しました。ウクライナの復興のためには民間の関与が不可欠です。我が国として、官民あげて、復興支援の面からウクライナを一層後押ししていく考えです。
私としましては、今回のウクライナ訪問の成果を基盤にしつつ、両国間の連携を更に強化しながら、引き続き、ウクライナを後押ししていく外交を展開していく決意です。今般、それぞれ大統領を始め、首相、そして外相ともお会いをいたしましたけれども、先般の能登半島地震の被害に対しましてゼレンスキー大統領から、また、シュミハリ首相からもお見舞いの言葉をいただきました。今、政府としては岸田総理を筆頭に、全力を懸けてこの被害の終息に向けての対応をしていくことで取り組んでいる旨お伝えをさせていただいたところであります。以上です。
質疑応答
【記者】今回のウクライナ訪問の意義について伺います。欧米各国では「支援疲れ」が指摘され、イスラエル・パレスチナ情勢もあって、ウクライナへの関心が相対的に下がっているとされていますが、そうした中での今回の大臣の訪問の意義はどのようにあったとお考えでしょうか。また、ゼレンスキー大統領との会談がおよそ1時間行われたということですが、先方のゼレンスキー大統領からはどういったことを求められましたでしょうか。
【上川外務大臣】本日、外務大臣就任以前からウクライナの状況を深く憂い、また就任後なるべく早い時期に訪問したいと考えておりましたウクライナを現に訪問することが出来ました。その中でブチャのアンドリュー教会、イルピニ川の橋、通称いのちの道を視察をし、侵略の生々しい傷跡を直接目にし、ウクライナの方々の厳しい経験を肌で感じたところであります。力による一方的な現状変更を決して認めてはならない、戦時において特に脆弱な立場にある女性や子どもたちをしっかり守り、「人間の尊厳」を確保されるようとりくまなければならないと確信をしたところでございます。国際的には支援疲れが指摘され、ウクライナへの国際的な関心が下がったともされる中にありまして、私自身がキーウを訪問することによりウクライナに寄り添いながら引き続き公正且つ永続的な平和実現に向けて支援をしていくとの姿勢は揺るがないとの我が国の基本的な立場について、ウクライナ側に直接伝達すると共に、国際社会に強いメッセージを発信できたこと、これが第一点であります。
第二点目としては、その上で、具体的支援メニュー、復興・復旧に向けた協力の方向性等について具体的に説明をしたことに対しまして、大変大きな意義があったというふうに考えているところです。
ゼレンスキー大統領からは、昨年のG7議長国としての日本の貢献や、日本からのこれまでの支援に対する謝意が繰り返し伝えられました。その上で2月の日ウクライナ復興推進会議に向けた官民あげての取り組みの期待や、平和フォーミュラについて関係国への働きかけを含む日本からの更なる協力への期待が表明されました。
【記者】戦闘が続くウクライナ訪問の意義を改めて伺います。その上で、2月の経済復興推進会議にどのように今日の訪問の成果を生かすお考えでしょうか。また、欧米などから「支援疲れ」が指摘される中、G7メンバーでもある日本として、どのように国際社会によるウクライナ支援を続けていく考えでしょうか。
【上川外務大臣】ご質問の訪問の意義については、先ほどの質問へのお答えと重複する部分もあるので詳細につきましては繰り返しませんが、ご質問の後段につきまして申し上げますと、今般の訪問では、本年2月の日ウクライナ経済復興推進会議に向けて、特に同会議に出席いただくシュミハリ首相との間で、直接、同会議の準備作業を今後どう仕上げていくかについて意見交換できたことは大変有意義であったと考えます。ウクライナの復興のためには民間の関与が不可欠であり、私から、民間セクターが関与する10本以上の協力文書署名に向けて取り組むことを伝達いたしました。この会議の開催を通じて、日本が官民をあげてウクライナの復旧・復興に取り組む姿勢を力強く内外に示すことで、ウクライナの復興支援に関する国際的な取組も後押ししていきたいと考えています。
また、昨年来我が国はG7議長として、現下のような厳しい国際情勢がある今こそ、強力な対ウクライナ支援を継続していくことでG7をはじめとする同志国が結束を示していく必要があるということを一貫して訴えてきました。この後、本年初めの外遊として欧州、北米各国を訪問いたしますが、今回ウクライナを実際に訪れて強く感じた思いを踏まえ、この点を強く訴えて参りたいと考えております。
【記者】今回の訪問において、対無人航空機(ドローン)の検知システムの構築のためにNATO信託基金への約3700万ドルの拠出を表明されました。またゼレンスキー大統領が提唱されている平和フォーミュラで第一項目となると大臣からもご紹介のあった放射線、あるいは原子力分野ですが、こちらの作業部会での共同議長を務めることを決めたということでしたが、それぞれの狙いについて詳しくお聞かせ頂けますでしょうか。
【上川外務大臣】今般の訪問を通じて、ロシアによる侵略の生々しい傷跡を自分自身の目で看て、またその惨状に衝撃を受けました。力による一方的な現状変更を決して認めてはならず、法の支配に基づく国際秩序を守り抜く決意を新たにしました。我が国として、ウクライナによる公正かつ永続的な平和実現に向けた取組を支援し、貢献していく考えです。
こうした考え方に基づき、NATO信託基金を通じて支援については、ウクライナ側の現下の情勢におけるニーズをよく踏まえた上で、我が国として行いうる支援として対無人航空機検知シスタムの供与を新たに決定しました。
また、ゼレンスキー大統領が提案した平和フォーミュラについては、ウクライナに一刻も早く公正且つ永続的な平和を実現するため我が国として具体的かつ積極的に貢献すべく、第一項目である放射線・原子力安全作業部会の共同議長となることを決定しました。これらの点につきましては自分(大臣)からゼレンスキー大統領に直接伝達し、大統領から、深い感謝の意が表されました。
【記者】昨年の12月に欧州連合(EU)がウクライナの加盟交渉開始で合意しました。EU加盟はウクライナにとって悲願である一方、ロシアは反発を強めています。ウクライナのEU加盟はロシアの侵略であったりウクライナの復興にも関わってくる話だと思いますので、この動きに対して、大臣ご自身、また日本としてどのようにご覧になっているかの受け止めをうかがいます。
【上川外務大臣】昨年12月に欧州理事会が開催されたところです。かねてからEU加盟を希望していたウクライナについて、同加盟交渉開始が決定されたものと承知しています。EUが、加盟を希望する関係国との間でいかに加盟に向けたプロセスを進めていくかについては、EU、現加盟国、対象国がさまざまな状況を見ながら決定していく事項であると考えます。
その上で、我が国として、現下の厳しい国際情勢下においても対ウクライナ支援を強力に継続していくべきとの考えは、今般の訪問に際しても幾度となく強調した通りです。ウクライナ側がEU加盟を強く希望していることはご指摘のとおりであり、我が国としては、EU側とウクライナ側の加盟交渉プロセスが円滑に進むことを期待します。