記者会見
茂木外務大臣会見記録
(令和7年12月19日(金曜日)17時38分 於:本省会見室)
冒頭発言
日韓国交正常化60周年
【茂木外務大臣】私から1点、日韓国交正常化60周年に関してです。
昨日、12月18日、日韓基本条約の発効から60年という節目の日を迎えたことを受けまして、外務省報道発表を発出したところであります。
この60年間、日本と韓国との間では、様々な交流・協力が積み重ねられてきました。特に、国民同士の交流は、現在の良好な日韓関係を支えており、若い世代の間では、今や自然な形で日韓交流が行われるようになっています。60周年を通じて育まれた交流の輪が、来年以降も大きく広がっていくことを期待いたします。 現下の厳しい戦略環境の下、地域・国際社会の様々な課題に、日韓が連携して取り組んでいくことは極めて重要であります。日韓関係を未来志向で安定的に発展させていくべく、「シャトル外交」の実施を含め、引き続き、両政府間のあらゆるレベルで緊密に意思疎通を行っていく考えであります。
私からは、以上です。
政府高官の核兵器保有発言
【共同通信 阪口記者】安全保障を担当する官邸筋が、「私は核を持つべきだ」との認識を記者団に語りました。まず、率直に、この発言についての大臣の受け止めを伺います。併せて、外務省は、これまでNPTに強く関与するなど「核なき世界」の実現に向けて、取組を進めてきたと思います。こうした発言が露見することで、これまで国際社会の核軍縮に取り組んできた日本への信頼を損なう可能性もありまして、被団協も抗議の談話を出しております。こうした懸念について、どのように考えるかお尋ねします。
【茂木外務大臣】報道については承知をいたしております。その上で、政府としては、非核三原則を政策上の方針として、堅持をしているところであります。
その上で、「核兵器のない世界」に向けた国際社会の取組、これを主導していくことは、唯一の戦争被爆国であります我が国の使命であり、その点について、国際社会から揺るぎない信頼を得ていると考えております。引き続き、国際社会とは緊密に連携をしながら、「核兵器のない世界」の実現に向けて、取組を進めていきたいと思います。
中東情勢への対応
【パン・オリエント・ニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
西アジア情勢について伺います。
同地域は、イスラエルによる占領の継続、ガザおよびヨルダン川西岸におけるパレスチナ人への軍事攻撃、さらにシリアやレバノンへの激しい空爆により、依然として戦争状態にあります。
日本の安全保障、とりわけエネルギー安全保障にとって重要な地域の安定を脅かす、こうしたイスラエルによる緊張激化に対し、日本はどのように対応しますか。
また、パレスチナ国家承認に関する日本の立場を見直す可能性はありますか。
【茂木外務大臣】まず、中東地域の平和と安定、これは我が国にとっても、天然資源・石油等の輸入を含め、中東地域に多くを依存している、こういった立場からも、ガザであったり、またシリア、そして、レバノンの情勢について、重大な関心を持って注視してきているところであります。
イスラエルに対して、これまで様々な機会において、地域の安定を損なうような行動を控えるよう、我が国の立場、直接伝えてきております。関係国とも連携しつつ、こうした外交努力を続けていきたいと考えております。
イスラエルに対する制裁についてでありますが、西岸情勢の悪化を受けて、昨年の7月、イスラエルの入植者に対する資産凍結等の措置を実施し、現在も同措置、継続中であります。
また、パレスチナ、今後どうしていくかと。国家承認の問題については、「二国家解決」の実現に向けて、最も効果的かつ実効的なタイミングについて、総合的に判断していきたいと、こんなふうに考えています。
米国政府による入国規制案
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】米政府は、12月10日、ビザなしで観光に訪れる外国人渡航者、ESTA申請者に対し、最大5年分のSNS利用情報や、過去10年間のメールアドレス、家族情報、出生地、生体情報などの提出を義務付ける規制案を公表しました。対象国は、日本や欧州諸国など、数十か国に上ります。日本国憲法19条では、「思想、良心の自由」を規定し、国家による思想強制や思想を理由にした不利益の強要を禁じており、「思想、良心の自由」という考え方は、人間の精神の自由を保障し、個人の尊厳を支える民主主義の前提です。これは、オーウェルが『1984』で描いたように、米国がビッグデータを収集し、人を支配することへと向かう端緒となるのではないでしょうか。米国入国時に、日本国内であれば、通信の秘密として保護され、個人情報保護の対象となる個人情報が、米政府により収集審査されることを、茂木大臣は、どのようにお考えでしょうか。また、日本国民の基本的人権と、米国との信頼関係を守るべく、外交ルートでの抗議などはできないのでしょうか。
【茂木外務大臣】ちょっと、質問の趣旨がよく分からないのですが、日本国憲法で「思想及び良心の自由」が保障されていると、これは日本の話だと思うんですけれど、それと、日本国憲法が米国で守られるべきであると、こういう趣旨なんでしょうか。
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】日本国憲法だけじゃなくて、人権条約とかも、世界の人権条約とかで保護されて、尊重されて保護されているような情報が、米国に入国する際に、収集審査の対象となるということが問題じゃないかと考えてまして、それを茂木大臣がどのようにお考えかという質問です。
【茂木外務大臣】お考えは分かりましたけれども、その国、それぞれの国によって制度というのは違うわけでありまして、その一つ一つについてコメントすることは控えたいと、こんなふうに思っておりますが。
米国に、多くの邦人が渡航しているのは事実でありまして、今回公表されましたESTA申請に関わる変更提案を含めまして、米国への渡航や、滞在に必要な手続きをめぐる動向、日本政府としても、高い関心を持って注視してまいりたいと思っておりますし、米国政府に対しても、日本人の渡航者への影響、これを抑える観点から、更なる情報提供、これを働きかけているところであります。
慰安婦問題に関する2015年12月の日韓合意から10年
【共同通信 阪口記者】冒頭、大臣から御発言ありました日韓関係について、少し伺いたいと思います。日韓両政府が、慰安婦の問題の最終解決を目指した2015年の日韓合意から、今月で10年となります。文在寅(ムン・ジェイン)政権の時代には、事実上、この合意を白紙化した経緯がありますけれども、改めて、日本政府の合意に対する立場と、韓国側に求める対応についてお尋ねします。日韓の周辺には、中国であったり、北朝鮮、ロシアが連携を深めていまして、日韓の協力の重要性は、ますます高まっていると思います。かつ今年は、冒頭御発言あったように、日韓基本条約から60年にもなります。どのように韓国との関係強化を図っていく考えかも併せてお尋ねします。
【茂木外務大臣】御指摘のありました慰安婦問題に関する日韓合意、これは日韓両政府における努力の末に、2015年、10年前の12月に、日韓外相会談において、慰安婦問題の「最終的かつ不可逆的な解決」、これを確認したものであります。
韓国政府も、この合意を両国政府の公式合意として尊重するとしているところ、引き続き、日韓両政府で、よく意思疎通をしながら、適切に対応していきたいと思っております。
その上で、10月の日韓首脳会談を含めまして、日韓両国間では、様々な機会に、国交正常化以来、これまで築かれてきた日韓関係の基盤に基づき、日韓関係を未来志向で安定的に発展させていくこと、これを確認しているところであります。
日本と韓国は、国際情勢の様々な課題に、パートナーとして協力すべき重要な隣国でありまして、一層厳しさを増しております、我が国周辺、また、東アジア、こういった戦略環境の下、日韓関係の重要性は一層高まっていると、このように考えておりまして、今後とも、シャトル外交の積極的な実施を含め、両政府間で緊密に連携してまいりたいと、こんなふうに考えております。

