記者会見
茂木外務大臣会見記録
(令和7年11月21日(金曜日)16時58分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)ICC裁判官選挙への候補者の指名
【茂木外務大臣】冒頭、私の方から、2件の発言をさせていただきます。
まず、一つは、ICCの裁判官選挙への候補者の指名についてであります。
本日の閣議におきまして、来年末に行われる国際刑事裁判所(ICC)の裁判官選挙の我が国の候補者として、法務省法務総合研究所の国際連合研修協力部長を務める山内由光(やまうちよしみつ)氏を指名する旨の説明を行ったところであります。
山内氏は、刑事分野の専門家でありまして、国際司法協力担当大使も務めております。重大な犯罪の撲滅と予防、法の支配の徹底のため、ICCの役割は、昨今ますます重要となっており、我が国出身者がICC裁判官に選出をされることは、国際刑事法・人道法の発展に寄与する我が国の主体的な取組を示すものであります。
我が国として、引き続き、ICCの活動に積極的に貢献し、国際社会における法の支配の推進に貢献してまいりたいと考えております。
(2)AI政策担当官
【茂木外務大臣】もう一点、AI政策担当官についてであります。
AIは、今後の我が国の経済・社会の発展の基盤となる技術でありまして、これは我が国に限らず、世界全体で、そういうことを言えると思うのですが、安全保障にも直結する外交上の重要な分野でもあります。
本年9月、AI法が全面施行となり、現在、総理を本部長とするAI戦略本部において、AI基本計画の策定に向けて、政府一丸となって取り組んでいるところであります。
外務省としても、AIに関する各国の動向の把握や二国間協力等を推進していく観点から、全ての大使館及び全代表部等に「AI政策担当官」を指名することにいたしました。安全・安心で信頼できるAIエコシステムの実現に向けて、取組を進めてまいりたいと、このように考えております。
私の方からは以上です。
中国国内の在留邦人の保護
【共同通信 恩田記者】日中関係について伺います。昨日の自民党の外交部会の会議で、中国国内の邦人保護について、万全を期すよう政府に要求する意見が出ました。特に、12月13日は「南京事件」があった日で、反日感情が高まるとして、注意喚起を昨年も行っていますが、今年は、どういった対応をしていくのでしょうか。また、昨年は、在中国大使館が、12月6日に注意喚起を発していましたが、例えば、これを早めるなど、あり得るのかも伺います。よろしくお願いします。
【茂木外務大臣】海外で様々な活動をされる、また、海外に出向かれる邦人の保護、これは、外務省にとって、最も重要な役割の一つであると、こんなふうに考えております。海外に滞在する邦人への注意喚起の実施に当たっては、その国・地域の治安情勢を始めとする政治情勢であったりとか、社会情勢等を総合的に勘案して、これまでも判断してきております。
その上で、過去の日中間の歴史に関わる特定の日等に、特に注意喚起の必要があると考えられるケースにおいては、本省から「スポット情報」を発出し、注意喚起を行い、適切な対応を行ってきているところであります。
直近では、11月17日、最近の日中関係をめぐる現地での報道等の状況を踏まえまして、在中国の我が方公館から、改めて在留邦人に対して、十分な安全対策を呼びかけたところであります。
今後とも、引き続き、当省として、現地の状況を注視し、適時適切な方法での注意喚起を実施することを含めて、邦人の安全確保に万全を期してまいりたい、そのように考えております。
どの地域において、またどのタイミングで、こういった注意喚起を行うかということは、日々、世界の状況を見ておりますので、そういった中で判断してまいりたい、そんなふうに考えております。
G20サミット
【読売新聞 植村記者】G20サミットに関して伺います。G20サミットで、首脳宣言の採択が困難になっているとの一部報道もありますが、米国のトランプ大統領が不在の中、成果の取りまとめやG20の連携を高めるために、日本として、どういった役割を果たしますでしょうか。また、過去に首脳宣言がまとまらなかった事例があるかどうかも伺います。よろしくお願いします。
【茂木外務大臣】まず、過去に、G20サミットにおきまして、首脳宣言、または首脳声明、あるいは首脳コミュニケ、こういったものが発出されなかったことはない、発出されてきたと思っております。今回はまだ、G20が始まっていませんから、この時点で、大体この会議をやりながら、どういったものを成果物として出すかということを決めていきますので、現時点で、どうなるかということは決まっていないというのが事実であります。
国際社会、今、複合的な危機に直面する中で、G20各国が、共通点と一致点を見出していくこと、これは、ますます重要になってきていると、このように考えております。今回のサミットでは、日本の立場についてしっかりと発信をしつつ、全てのG20メンバーが責任を共有する形で、国際社会の課題解決を進める観点から、日本として積極的に貢献していきたいと、このように考えておりますけれど、確かに米国側から代表が出ないとか、いろいろな今のところ状況もあるようでありまして、そういったことも注視しながら、しかし、日本として、果たせる役割は、しっかり果たしていきたいと、こんなふうに思っています。
ワシントン条約におけるウナギの取引規制
【テレビ朝日 車田記者】ワシントン条約のウナギの取引規制についてお伺いします。来週から、ワシントン条約の締約国会議が始まり、ニホンウナギを含むウナギ全種を国際取引の規制対象とするEUなどの提案が採決されます。この提案に対する日本の立場を教えてください。また、その立場を理解してもらうために、どのように取り組むでしょうか。お願いします。
【茂木外務大臣】まず、ニホンウナギ、これにつきましては、EUが考えているウナギとは違うところというのがありまして、ニホンウナギについては、資源管理が徹底されておりまして、十分な資源量が確保され、国際取引によります絶滅のおそれ、これはないことから、御指摘のEU提案に対して、かねてから我が国は、反対の立場、これを明らかにしてきております。
政府としては、これまでも、あらゆる機会を通じて、このような我が国の立場に対する理解と支持を、関係各国に対して働きかけてきているところであります。
先日、インドのジャイシャンカル外相と会談をして、この話をしたのですけれども、“eel”と言ったら、”What is eel?“という話で、「ウナギ」と言ったら、逆に分かっていただけました。結構彼は親日家ですから、eelは分からなくてもウナギは分かったんだなと、こんなふうに思っていまして、そういったことも、いろいろ重ねてきておりますが、24日から始まるわけでありますね、このワシントン条約締約国会議。ここにおいても、立場の近い締約国と連携しつつ、我が国の立場への理解、これが関係国に広がるように、全力を尽くしたいと、こんなふうに考えております。
台湾に関する日本政府の立場
【フェニックステレビ 李記者】日本政府は、台湾に対する立場を、1972年の日中共同声明の文言を一貫して変更はないというふうに述べられていますが、大臣も、この前の記者会見で述べられました。具体的にどの文言を指していらっしゃるのかということは具体的に述べていなかったので、もう1度改めて、この日中共同声明の中のどの部分の文言を日本政府は、今、立場にしているのか、具体的に、ちょっと読んでいただいて説明をしていただきたいのですが、よろしいでしょうか。
【茂木外務大臣】様々なことについて、今まで記者会見でも丁寧に説明をしてきておりますけれど、台湾に関する記述がある部分というのは明らかでありますから、それは、ご質問された方が、よくご存じだと思っておりまして、まさに、我が国政府の台湾に関する基本的な立場、これは、1972年の日中共同声明のとおりであります。どこの部分が出てきているかはご案内だと、そんなふうに思います。
その上で、台湾海峡の平和と安定は、我が国はもとより、国際社会全体の安定にとっても極めて重要と考えております。台湾をめぐる問題が、対話により平和的に解決されることを期待するというのが、我が国の従来からの一貫した立場であります。
存立危機事態
【上海東方テレビ 宋記者】首相官邸前で行われている市民のデモや集会について質問させていただきます。参加者の多くは、高市首相が、存立危機事態を口実に日本を戦争に巻き込もうとしているのではないかという強い懸念を示しています。こうした国民の声をどういう形で受け止めていますか。お願いします。
【茂木外務大臣】まず、官邸前のデモでありますけれど、以前は、毎週金曜日には、必ず、原発反対と、こういうデモがあったり、様々なデモというのは、官邸前で行われてきたと、このように承知をいたしております。
その上で、ご指摘のような事実は全くない、ご懸念は当たらないと、はっきり申し上げたいと思っております。
いかなる事態が「存立危機事態」に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が、すべての情報を総合して、判断することになる、こうした説明は、総理ご自身も含めて、政府として繰り返して述べてきているとおりでありまして、政府の立場、一貫をいたしております。
中国による日本産水産物輸入
【読売新聞 植村記者】中国関係に関して伺います。中国が、日本産水産物の輸入をめぐって、追加の安全証明を求めている件について伺います。様々報道が出ていますが、今回の件は、到着した水産物が、通関手続きが完了していないことから、輸入停止、または事実上の輸入停止にあたると大臣はお考えでしょうか。また、それらに当たらないのであれば、中国側との技術的要件の交渉のやり取りは、ある程度ストップすることなく行われてきており、時間を置かず決着して、輸入再開となる可能性もそれなりにあるとお考えでしょうか。大臣の御見解を伺います。よろしくお願いします。
【茂木外務大臣】中国によります日本産の水産物の輸入規制につきましては、昨年の9月に、日中両政府が発表しました、これはIAEAに関わる部分でありますけれど、「日中間の共有された認識」をしっかり実行していくということが、何より重要だと、このように考えております。
政府としては、かねてより、中国側に対して、日本側輸出関連施設への中国側による速やかな再登録を含めまして、輸出の円滑化について働きかけをするとともに、残された10都県があるわけでありますけれど、ここの水産物の輸入規制の撤廃等を強く求めてきているところであります。
お尋ねの件につきまして、日本産の水産物の輸入を停止する旨の連絡を中国政府から受けたという事実はございません。政府としては、冷静に事態を注視しつつ、中国側と必要なやり取り、継続をしていきたいと、こんなふうに考えております。
台湾に関する日本政府の立場
【フェニックステレビ 李記者】 大臣、すみません。先ほどの質問の関連ですけれども、この日中共同声明の第3項の内容は、いくつか要素が入っているので、どの要素を日本政府は今堅持をしているのか、改めておきかかせください。そして、本日、高市総理が、戦略的互恵関係には変更はないということをおっしゃいました。中国の外交部が会見で、もし戦略的互恵関係を発展させたいのであれば、この発言をすぐに撤回すべきというふうに述べています。この外交部の反応について、どのように受け止めていらっしゃるのか、教えてください。
【茂木外務大臣】戦略的互恵関係の包括的な推進、そして建設的かつ安定的な関係の構築、これは両首脳間でも確認をされた事項でありまして、しっかりと、隣国ですから、やはり懸案であったりとかいうのはあるわけでありますけれど、課題であったりとか、そういったものを、できるだけ意思疎通をすることによって減らし、同時に、協力できる分野、理解を深めていく分野、こういった理解や協力というのは深めてまいりたいと、こんなふうに考えております。
前段につきましては、台湾に関する文言、出てくるところはご案内だと思いますので、これ以上申し上げません。
存立危機事態
【朝日新聞 小野記者】高市首相の存立事態の発言についてお聞きします。先ほど、木原官房長官が、記者会見の中で、引用いたしますが、「ケーススタディのようにとられてもおかしくないようなことを、高市総理が発言されたということもあり、そういったことが誤解を招くようなことがあれば、ここは、今後は極めて慎重に対応しなくてはいけないと思う」と発言されています。大臣は、この発言をどのように受け止められているか。日中関係の改善を念頭に置いた発言にも聞こえるんですけれども、いかがでしょうか。
【茂木外務大臣】我々、国会で、連日答弁をしております、様々なご質問いただく中で、事実関係をしっかりとお伝えをすると、また、それが、誤解がないような形にしていくということは、極めて重要だと思っておりまして、私も、この日中の問題だけではなくて、あらゆる諸外国との関係であったりとか、そういうことに関しても、そういったことを心がけて、国会答弁、また、こういった記者会見に臨んでいるところであります。

