記者会見
岩屋外務大臣会見記録
(令和7年3月4日(火曜日)13時41分 於:本省会見室)
冒頭発言
岩澤雄司国際司法裁判所(ICJ)所長の選出
【岩屋外務大臣】冒頭一つ御報告がございます。
昨日、オランダ、ハーグの国際司法裁判所(ICJ)におきまして、裁判所長選挙が行われ、我が国出身の岩澤雄司(いわさわ・ゆうじ)裁判官が裁判所長に選出されました。
私(岩屋大臣)から、外務大臣談話を発出いたしまして、祝意を表したところです。
国際司法裁判所は、国際社会で最も権威ある司法機関です。国際紛争の平和的解決及び国際社会における法の支配の維持強化のために果たす役割は、ますます増大しております。
今後の岩澤裁判官の所長としての更なる活躍を期待するとともに、我が国といたしましても、国際司法裁判所の発展に協力し、法の支配の推進に積極的に貢献してまいります。
冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。
ロシアによる制裁
【朝日新聞 里見記者】ロシア政府の制裁についてお尋ねしたいんですけども。
【岩屋外務大臣】ロシア政府の?
【朝日新聞 里見記者】ロシア政府の日本に対する、日本政府とか企業関係者の9人に対して、入国禁止をあちらが措置等取りました。その中に、岩屋さん含まれておりますけれども、まず、この受け止めを伺いたいのと、これまで、岸田首相も入国禁止となった経緯もありますけれども、今回石破首相は対象となっておりません。その辺りをどう見られているかというのを一つ。最後に、この年初の外交演説でも、北方四島の交流・訪問事業の再開、これ、最優先事項というふうに掲げておりましたけれども、特にこの北方墓参の再開、これについての影響などもお尋ねできたらと思います。
【岩屋外務大臣】御指摘の措置について、ロシア側は、日本の制裁措置への対応と説明していると承知していますが、我が国の措置は、全てロシアによるウクライナの侵略に起因してとられているものであります。したがって、日本側に責任を転嫁することは、全く受け入れられず、近々、遺憾の意をしっかりと申し入れたいと思っております。
また、我が国としては、日露関係は現在厳しい状況にありますが、特に外交当局間では、解決しなければならない懸案事項が山積をしておりますので、ロシアとの意思疎通が必要なこともございます。そのことは、累次にわたって明らかにしてきているところでございます。そのような観点からも、今回、私(岩屋大臣)が入国禁止になったことは誠に遺憾に思っております。
いずれにしても、我が国としては、ウクライナの公正かつ永続的な平和を実現するために何が効果的かという観点から、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して対応していきたいと考えております。
また、ロシアとの二国間関係を適切にマネージする観点から、引き続き、ロシア側との意思疎通も行っていきたいと思っています。
特に、北方四島交流・訪問事業の再開が最優先事項でございますので、政府としては、御高齢になられた元島民の方々の切実なお気持ちに応えなければなりません。したがって、北方墓参に重点を置いて、事業の再開を引き続き強く求めていきたいと考えております。
米国によるウクライナへの軍事支援の一時停止、日米安保
【日経新聞 馬場記者】米国のトランプ大統領が、ウクライナへの軍事支援の一時停止を指示しました。まず、こちらについての受け止めをお伺いします。また、今回の米国とウクライナの動きは、厳しい東アジアの安全保障環境下で、米国の拡大抑止が欠かせない日本にとっても他人ごとではありません。この米国の安全保障の不確実性について、どのように対応されていくか、お考えをお伺いします。
【岩屋外務大臣】御指摘の報道については承知しております。
現在、ウクライナをめぐっては、御承知のとおり、国際社会において様々な動きが続いております。政府としては、重大な関心を持ってこれを注視しておりますが、したがって、事態がまだ流動的でございますので、現時点で予断を持ってコメントすることは控えたい、時期尚早だというふうに考えております。
いずれにしても、和平を探っていくという非常に難しい作業に、国際社会が、今、知恵を絞って努力しているところだと認識しております。
一日も早い、ウクライナにおける公正で永続的な平和が実現するように、関係者が足並みを揃えて、たゆまぬ努力を続けるべきだと思います。石破総理もおっしゃっておられましたが、外交というのは、忍耐や思いやりというものが必要だということだと思いますので、粘り強く、意見が収斂していくように努力していくことが大事だと思いますし、我が国としても、しっかりとそのために役割を果たしていきたいと考えております。
米・ウクライナ首脳会談
【読売新聞 植村記者】トランプ大統領と、ゼレンスキー大統領の会談が決裂をしました。その後、英国やドイツは追加のウクライナ支援策を表明しました。米国とウクライナの首脳会談の受け止めを伺います。また、日本政府として、今後、ウクライナ支援は継続していきますでしょうか。その場合、規模はどのようなものになるでしょうか。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】先般の米・ウクライナ間のやり取りに関しては、ああいう形になってしまったことは残念に思っておりますが、しかし、必ずしも悲観はしておりません。先ほども申し上げたように、和平を探っていくというのは、そう容易な道のりではないと思っておりまして、これも一つの過程だというふうに受け止めたいと思っております。
米国のイニシアチブによって、膠着していた事態が動き出したことは事実でありますので、これが良い形に結実するように、国際社会がまとまっていかなければいけないと思っております。先ほども申し上げたように、忍耐を持ち、また、思いやりを持って、粘り強くその対話を続けていくことが大事だと思っておりまして、我が国もしっかり役割を果たしていきたいと思います。
来るG7の外相会合においても、主たるテーマは、やはりこのウクライナ問題になろうかと思いますので、そこでもしっかり議論していきたいと思います。
我が国の今後のウクライナ支援に関しましては、国際社会と緊密に連携しながら、様々な分野での取組を継続していきたいと考えております。その支援規模についても、これもまた国際社会と緊密に連携しながら、また、ウクライナ側のニーズも踏まえながら、検討していきたいと考えております。
米国の関税措置
【共同通信 阪口記者】米国の関税についてお尋ねします。トランプ大統領は現地時間の4日、メキシコ、カナダ、中国の、計3か国の関税措置の強化を発動するとしています。関税が発動されれば、各地に拠点を置く日本の自動車各社など影響は必至ですけれども、日本経済の影響をどう考え、今後、米国にどう働きかけていくか、お考えをお尋ねします。
【岩屋外務大臣】トランプ大統領によるといいますか、米国による御指摘の発表については承知しております。
我が国としては、引き続き、これらの措置の影響を十分に精査して、適切に対応していきたいと考えております。
近々、国会のお許しが得られれば、武藤経済産業大臣も訪米して、カウンターパートと協議をされると承知しておりますが、我が国の国益、そして、米国の国益の双方が、ウィン・ウィンになるように、協議していくことが大事だと思っておりまして、その方向で、今、調整が進められていると承知しております。
対ウクライナ支援
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本氏】先ほどの質問にもありましたけれども、対ウクライナ政策について質問します。トランプ・ゼレンスキー会談の決裂を受け、欧州諸国は、有志連合で更にウクライナ支援を拡大するようですが、日本も欧州に倣い、支援を拡大するのでしょうか。国民の税金からなるウクライナ支援金の拡大には、国民が納得できる説明が必要です。また、これまでのウクライナ支援金の使途を調査し、キックバックや使途不明金の有無を確かめることも併せて必要だと考えますが、大臣のお考えをお聞かせください。
【岩屋外務大臣】ロシアによるウクライナ侵略で、今、欧州で起こっていることというのは、決して他人ごとではないと受け止めております。その意味で、欧州とインド太平洋、アジアの安全保障は不可分であるという考え方の下に、これまで、このような力による一方的な現状変更の試みは世界のどこであっても許されてはならないという危機感に基づいて、我が国はこの問題に取り組んできましたし、また、ウクライナを支援し、ロシアに制裁を課してきたということでございます。
今後のウクライナ支援に関しては、先ほど申し上げたように、これからの関係各国との協議に基づき、また、ウクライナ側のニーズも踏まえて検討していきたいと思っておりますが、おっしゃるように、国民の皆様に対して、その意義を説明する努力は不可欠だと思っておりますので、この記者会見はもとよりですけれども、私(岩屋大臣)も様々な場、国会での議論もそうですが、様々な機会を捉えて、丁寧に説明を行っていきたい、その努力をしっかり尽くしていきたいと考えております。
ロシアとウクライナの停戦構想
【読売新聞 植村記者】ウクライナとロシアの停戦に関しては、欧州各国が軍を派遣して停戦監視を行う構想が取り沙汰されています。実際にフランスのマクロン大統領は、ロシアとウクライナが海や空での交戦などを1か月停止して、その後、停戦を地上に拡大して、欧州各国で編成した平和維持部隊をウクライナに駐留させるという停戦案も示しました。こうした停戦構想に日本が参加する可能性はありますでしょうか。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】先ほど来申し上げておりますように、今、ウクライナをめぐっては、和平に向けて、国際社会において様々な動きが続いておりますので、我々も重大な関心を持って情報を集め、また注視をいたしております。
英仏を中心に提案がまとまるやに報道もされておりますし、また、それを米国側に提示して協議をすることも言われておりますし、まだ事態は流動的でございますので、その議論の中の個別具体的論点、今、おっしゃった停戦監視軍みたいな仮定の質問にお答えすることは少し時期尚早だと思っております。
和平に向けて国際社会が分断・対立することなく、意見を寄せ合って、意見を収斂させていくということが大事だと思っておりまして、そのために、我が国もしっかりと努力を尽くし、また、役割を果たしていきたいと思っております。
日韓関係(韓国の3・1独立運動記念式典)
【TBSテレビ 大﨑記者】話題変わりまして、日韓関係についてお伺いします。今月1日、韓国で尹大統領の職務を代行する崔相穆(チェ・サンモク)副首相 は、3・1独立運動の記念式典で演説をしました。その中で、今年の日韓国交正常化60周年を機に、過去の傷を癒して新たな章を切り拓くことや、歴史問題をめぐる日本への批判を避けて、日韓関係を重視する姿勢というものを改めて打ち出しました。この演説に対する大臣の受け止めをお願いいたします。
【岩屋外務大臣】御指摘の崔相穆韓国大統領代行、私(岩屋大臣)も訪韓した際にお目にかかりましたけれども、先般の演説において、日韓国交正常化60周年を機に、日韓関係の新しい章を開くことへの期待や、現下の国際情勢を受けた日韓協力の必要性に言及をされたと承知しております。評価させていただきたいと思います。
日韓は、互いに、国際社会における様々な課題への対応にパートナーとして協力していくべき重要な隣国であります。現下の戦略環境の下、また、現下の国際情勢の下で、日韓関係の重要性は変わらない。むしろ、重要性を増していると考えております。
このような認識の下で、両国が様々な課題に協力して取り組んでいく必要があると思っております。国交正常化60周年の対応を含めて、韓国政府との間で、今後とも、引き続き、緊密に意思疎通していきたいと考えております。
日朝交渉記録の欠落
【産経新聞 原川記者】以前もこの記者会見でお伺いしました、かつての日朝交渉の記録の欠落に関する質問主意書とその政府答弁書に関して、今日もお伺いします。本日閣議決定された政府の答弁書においては、以前、2月4日の段階では記録の存否について、今後の日朝間の協議に支障をきたす恐れがあることから差し控えたいとされていたのに対して、本日の答弁書においては、安倍総理や岸田外務大臣の国会答弁を引く形で、これらの答弁のとおり存在しないということを認める内容の答弁書でありました。以上を踏まえて伺うんですけれども、そもそもこの記録が存在しないこと自体が今後の日朝間の協議に支障をきたすかと思うので、その引継ぎができないということもあり、それで、大臣御自身はこの記録が存在しないということをどう受け止めてらっしゃるかということと、今後の対応として、なぜその記録が残されなかったかという原因、理由の追求や、また、手っ取り早いのは交渉の当事者たる当時の田中均アジア局長に、一体どういう交渉をしたのかと聞くなり、記録の提出を求めるなどされればよいかと思うんでけれども、今後そうした対応をされるお考えはあるのかどうかについてお知らせください。
【岩屋外務大臣】御指摘の今回の質問主意書に対する答弁書においては、当時の安倍総理、また当時の岸田外相が、国会で「存在しない」と答弁した日朝間の交渉の記録については、これらの答弁のとおり、存在しない旨の答弁を閣議決定をしたところでございます。先般も申し上げましたが、閣議決定した答弁書ももちろん重要ですが、時の総理や外相が国会において答弁をしたという中身も重要で、そういうものが並立をしている状況にあったわけですが、今回それを整理させていただいたということでございます。
前回の質問主意書におきましては、日朝間の交渉の記録一般の存否について問われていたことから、過去に同様の内容を質問主意書で問われて、閣議決定を経て回答をした答弁書を踏まえて、今後の日朝間の協議に支障をきたす恐れがあることから、お答えすることは差し控えたい旨の答弁を閣議決定しておりました。
他方、御指摘の、今回の質問主意書につきましては、質問内容に基づきつつ、さらに、提出者の問題意識を丁寧に組んだ結果、当時の安倍総理や岸田外相が国会で「存在しない」と答弁した日朝間の交渉の記録について問うたものであると考えましたので、これらの答弁に沿って、それらの記録については存在しないことを丁寧に答弁書にしたものでございます。
政府としては、「存在しない」ということについては確認済みでございますので、これ以上の詳細な中身について、明らかにすることは差し控えたいと思いますが、その意味で、田中元局長への聴取も含め、改めて確認することは考えておりません。