記者会見
岩屋外務大臣会見記録
(令和7年2月28日(金曜日)16時01分 於:本省会見室)
冒頭発言
バトツェツェグ・モンゴル外相の訪日
【岩屋外務大臣】冒頭、一つ、私(岩屋大臣)から報告がございます。
本28日から3月5日まで、モンゴルのバトツェツェグ外務大臣が外務省の賓客として訪日をされます。
私(岩屋大臣)は、3月4日に、外相会談及びワーキング・ディナーを実施する予定です。
モンゴルは、日本にとって、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値を共有する「平和と繁栄のための特別な戦略的パートナー」です。二国間協力及びグローバルな課題の解決に向けた連携を一層を強化するべく、この機会に、突っ込んだ議論をさせていただきたいと思っております。
私(岩屋大臣)からは、以上です。
G7首脳テレビ会議(共同声明)
【読売新聞 植村記者】先日行われたG7首脳テレビ会合の、共同声明が、まだ発表されてない状況ですが、現在の調整状況について教えていただけますでしょうか、お願いします。
【岩屋外務大臣】G7の首脳声明につきましては、情勢が刻々と移り変わる中で、G7の首脳がいかなるタイミングで、どのようなメッセージを発出するのが適切かということについて、調整を続けてまいりました。そうした中で、現在までのところは、声明が発出されるには至っていないということでございます。
我が国としては、引き続き、ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の実現のために、G7を始めとする国際社会と緊密に連携していきたいと考えております。
G20・多国間連携
【共同通信 阪口記者】関連になるかもしれませんが、南アフリカで開催されていましたG20財務大臣・中央銀行総裁会議が、昨日閉幕しました。米中の貿易摩擦が再燃の恐れが高まっている中で、先日、岩屋さんも御出席されました外務大臣会合に続いて、国際協調の成果を示す共同声明を採択することができませんでした。G20を始めとする多国間連携の枠組みの形骸化が鮮明になった形ですけれども、こうした現状への所感と、日本として、どのように行動していくお考えなのかお尋ねします。よろしくお願いいたします。
【岩屋外務大臣】G20の財務相・中央銀行総裁会議の結果については、私(岩屋大臣)から申し上げることは差し控えたいと思いますけれども、先週、ヨハネスブルグで行われた、私(岩屋大臣)も出席したG20外相会合では、当初から成果文書を作成する予定はなかったと承知しております。
その上で、G20は、先進国及び主要な新興国をメンバーに擁しておりまして、そのGDPの合計は、世界の8割以上占めると、その重要性はますます高まってきております。
国際社会が直面する諸課題の解決に向けて、全ての国が、責任を共有した形で課題解決を主導していくことが重要であり、日本としても、引き続き、G20を始めとする多国間枠組みも活用しながら、積極的に役割を果たしていきたいと考えております。
なかなか、今が踏ん張りどころだと、私(岩屋大臣)は思っておりまして、G7にしてもG20にしても、一遍には、なかなかコンセンサスができずとも、対話を繰り返し重ねていくことによって、やはり国際社会の一致協力した形を作っていくことが大事だと思いますし、我々も、そのための努力をしっかりしていきたいというふうに考えております。
ウクライナ情勢(ゼレンスキー大統領の訪米)
【NHK 米津記者】ウクライナの関係でお伺いをします。米国のトランプ大統領は、現地時間の今週28日に、ウクライナのゼレンスキー大統領が訪米すると。鉱物資源の権益をめぐる合意文書に署名をすると明らかにしています。両首脳のギクシャクした関係の行方ですとか、ウクライナが求める安全の保障について、どのような結論が示されるかということが注目されていますけれども、日本として期待していることをお聞かせください。
【岩屋外務大臣】一見ギクシャクしているように見えるときもありますけれども、一方では、大統領の方も発言を訂正されたり、ゼレンスキー大統領の方も「良い会話ができた」というような話をされておったり、事態が、いずれにしても流動的なのだというふうに理解しております。我々としても、重大な関心を持って情報を集め、また、事態を注視していきたいと考えております。
したがって、今、個別具体的に踏み込んで、日本政府としての評価を述べるのは、ちょっと時期尚早だというふうに考えております。
我が国としては、同盟国である米国はもとよりですけれども、欧州を含む各国による外交努力が、国際社会の結束の下で、長年にわたるこのウクライナにおける戦闘行為が終結すると、さらには、一日も早く、度々重ねて申し上げておりますとおり、公正かつ永続的な平和がウクライナに実現することが重要だと考えておりまして、引き続いて、国際社会と緊密に連携して取り組んでいきたいと考えております。
米国の関税措置
【日経新聞 馬場記者】米国の関税政策についてお伺いします。トランプ政権が、鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税措置を、3月12日に発動すると表明して、その日程が近づいておりますけれども、経産大臣も訪米され、また、米側との意見交換に意欲を示されていますけれども、岩屋大臣として、対日関税の適用除外を、米国側にどのように求めていく方針か、引き続き、どのような方針を執られていくのか、お伺いします。
【岩屋外務大臣】御指摘の、米国による鉄鋼・アルミニウム製品に対する関税措置に関する発表については、もちろん承知しております。
米国政府には、措置の対象から我が国を除外するように、申入れを行っております。私(岩屋大臣)も、さきのミュンヘン安全保障会議において、ルビオ国務長官に対して、その旨申し入れたところでございます。
我が国としては、これらの措置の内容や、我が国への影響を十分に精査して、必要な対応を行っていきたいと思っておりますが、先ほど国会において、石破総理、及び武藤大臣からも発言がありましたけれども、武藤経済産業大臣は、国会のお許しが得られれば、米国に出張する方向で調整中と承知しております。
詳細については、経済産業省にお尋ねいただきたいと思います。
タイ当局によるウイグル族の強制送還
【産経新聞 原川記者】タイ政府が、収容していた40人以上のウイグル人を、中国に送還した件についてお伺いします。今回送還された人々は、中国当局による迫害から逃れるために中国を出て、その後、タイで収容されていた方々の一部ですけれども、今月初めのタイの首相の訪中に合わせて、そうした収容されている人々が送還されるのではないかという情報が出たことから、大臣も、二つの超党派議連から、強制送還阻止に向けた要請を受けられた経緯がありますけれども、質問ですけれども、そうした議連からの要請も踏まえて、これまで具体的にどういう外交をされてきたのかということと、今後、例えば米国政府と同様、タイ政府を非難したりするのかとか、あるいは中国政府に何らか働きかけをするのかしないのかといった、これまでの対応と今後の対応について、教えていただけますでしょうか、よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】御指摘の報道については、承知しております。
新疆ウイグル自治区に関しましては、重大な人権侵害が行われているとの報告がこれまでも数多く出されておりまして、我が国としても、同自治区の人権状況につきましては、深刻に懸念しております。
こうした立場を踏まえまして、タイ政府側に対しては、日本側の懸念を繰り返し伝達してまいりました。それにもかかわらず、今回、タイ政府が、ウイグル人を中国に送還したことは、誠に遺憾であります。
個別の外交上のやり取りについては、差し控えさせていただきたいと思いますが、先刻申し上げたとおり、タイ政府側に対しましては、我が方の懸念を繰り返し伝達してきております。
また、我が国として、国際社会における普遍的価値である自由、基本的人権、法の支配が、中国においても保障されることが重要であると考えておりまして、こうした立場を含めて、新疆ウイグル自治区の人権状況について、中国政府に対しては、様々なレベルで直接働きかけてきており、引き続き、このような取組を進めてまいります。
USAID閉鎖
【フリーランス 高橋氏】米国国際開発庁(USAID)閉鎖による我が国への影響についてお尋ねします。米国のトランプ政権が、USAID閉鎖を打ち出しました。USAID閉鎖が我が、国に及ぼす影響として、どんなものがあるか教えてください。特に国際保健分野については、外務省は、昨年9月にUSAIDと協力する覚書を交わしています。この中に日米両政府の間の国際保健分野での協力などの文言もあります。当然、こうした項目については「無効」と理解してよろしいのでしょうか。「パンデミック条約」締結や、UHCナレッジハブの国内設立はいかがでしょうか。また、USAIDから「グローバルヘルスの人間の安全保障運営委員会」、あるいは同委員会が事務局を置くJCIE(日本国際交流センター)に、資金が流れていた事実はございますでしょうか。以上よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】御指摘のUSAID閉鎖の件についてですけれども、とりあえず、一旦、90日活動を停止をすると。そして、現在、米国政府は、対外援助と外交政策の整合性について評価中だと承知しております。今後のUSAIDに関する動向、また、日本への支援の影響について、この段階で、予断を持ってお答えをするってことは差し控えたいと思います。
我が国は、これまで開発協力分野に関して、米国との間で、二国間対話に加えまして、G7・G20や国連などのマルチの枠組みにおきまして、緊密に連携してきております。引き続き、米国を含む各国との間で意思疎通を図りながら、積極的な役割を果たしていきたいと思っております。
それから、現在、先ほど申し上げたように、米国政府は今評価中だということですけれども、御指摘の協力覚書への影響も含めて、この段階では、ちょっと、予断を持って、申し上げることは控えたいと思います。
米国は、これまで、国際保健の取組の重要な貢献者でありました。したがって、我が国としては、引き続き、米国を含む各国と連携するということを念頭に置いて、取組を進めていきたいと思っております。
それから、パンデミック条項についてもお尋ねがありましたか。「パンデミック条約」、交渉につきましては、我が国としては、パンデミックの予防、備え、及び対応に資する国際的な規範の整備、そして、その強化は重要であるという観点から、引き続き交渉に建設的に参加していきたいと考えております。
それから、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)のナレッジハブにつきましては、設置に向けて調整中と理解しておりますけれども、詳細は中心的にこれに関与している厚労省及び財務省にお尋ねいただければと思います。
そして、以上でよろしかったですかね。もう1個何かありましたか。
【フリー・ジャーナリスト 高橋氏】USAIDから「グローバルヘルスと人間の安全保障運営委員会」、あるいは、この委員会が事務局を置く国際日本国際交流センター、JCIEに資金が流れていた事実というのはございますでしょうか。
【岩屋外務大臣】外務省として、USAIDの資金の流れの逐一については承知しておりません。
ウクライナ支援
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本氏】ウクライナ政策について質問します。トランプ政権発足後、米国のウクライナ政策が、戦争継続から停戦案へと変換されましたが、石破総理は、2月24日のG7首脳TV会議にて、「日本はG7と連携し、今後もウクライナ支援と対露制裁を継続する」意向を表明されました。過去2年間の日本政府のウクライナ支援総額は、121億ドル、約1兆7,000億円にのぼると言われています。米国では、イーロン・マスク氏が、「上院の予算案にウクライナの予算が多いのは、政治家へのキックバックがあるためである」と、「X(エックス)」上で指摘し、また、USAIDの解体に着手するなど、米国は確実に、また大きく舵を切っているように見えます。また現在、財務省解体デモの勢いが拡大しており、「政治家や官僚は、日本国民のために予算を使うべきだ」との怒りを訴えています。国の予算は、国民の生活の底支えのためにこそ使われるべきだと考えますが、岩屋大臣の考えをお聞かせください。よろしくお願いいたします。
【岩屋外務大臣】ロシアによるウクライナ侵略への対応にあたっては、私(岩屋大臣)どもは、欧州とインド太平洋の安全保障は一体不可分であると。このような力による一方的な現状変更の試みは、世界のどこであれ、許してはならないという強い危機感の下で、自らの問題として、この問題に取り組んできているところでございます。
この考え方に基づいて、御指摘のように、これまで、人道、財政、復旧・復興の分野で総額120億ドル以上の支援を表明し、また着実に実施してまいりました。
現在、ウクライナをめぐって、国際社会において様々な動きが出てきておりますが、我が国としては、それらの動きを注視しながら、G7を始めとする国際社会と緊密に連携し、今後とも対ウクライナ支援を継続していく考えでございます。
このウクライナ支援を含めて、我が国の様々な外交政策について、国民の皆様に御理解いただけるように、その意義を説明する努力は、もちろんこの記者会見の場を含めて、様々な機会を捉えて、行ってきておりますし、これからも、しっかりと努力を尽くしていきたいと考えております。
国会審議
【共同通信 阪口記者】国会について、ちょっとお尋ねしたいと思います。本日、先ほど総理が、高額療養費制度の利用者負担の上限の引き上げの政府方針を見直す方針を示されました。もちろん所掌外だと存じておりますけれども、政府のこういった当初の方針を見直すというのは、なかなか政治決断というか、重い決断だと思います。ずっと今国会、少数与党として苦労されてきた面あって、岩屋さんも、ずっと熟議ということを重んじていらっしゃったと思いますけれども、今回の総理の、こういった重大な御判断をどのように受け止めてらっしゃるか、近くで御覧になっていて、どのような御苦労があったとお見受けされているのか、御感想あれば伺いたいです。よろしくお願いいたします。
【岩屋外務大臣】その件については、所掌外でございますので、必ずしも詳細について正確に存じているわけではありませんけれども、やはり少数与党という環境の中で、与野党がしっかり熟議して、コンセンサスを作り上げていくという努力は、とても大切なことだと思います。今、お尋ねがあった高額療養費の件も、そういう話合いの中で、の方向性が出されてきたのではないかと考えているところでございます。