記者会見
岩屋外務大臣会見記録
(令和7年2月12日(水曜日)16時18分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)石破総理の米国訪問への同行
【岩屋外務大臣】冒頭、二つ御報告がございます。
まず、石破総理の米国訪問への同行でございます。
御承知のとおり、去る6日から8日まで、石破総理の米国訪問に同行いたしまして、日米首脳会談に同席をいたしました。率直な意見交換を通じて、石破総理とトランプ大統領との間で個人的な信頼関係を構築するとともに、日米同盟の揺るぎない結束を、国際社会に力強く示すことができたと考えております。
今回の成果を踏まえつつ、私(岩屋大臣)のカウンターパートであるルビオ国務長官を始めとするトランプ政権と、日米同盟を新たな高みに引き上げていくとともに、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、幅広いレベルで連携・協力を更に深めていきたいと考えております。
(2)ミュンヘン安全保障会議及びG7外相会合への出席
【岩屋外務大臣】それからもう一つは、ミュンヘン安全保障会議及びG7外相会合への出席でございます。
諸般の事情が許せば、来る2月14日から16日まで、私(岩屋大臣)は、ドイツのミュンヘンを訪問しまして、ミュンヘン安全保障会議に出席する予定でございます。
同会議では、欧州とアジアの安全保障をテーマとするセッションに出席いたします。そこで、国家安全保障戦略の下で進めている我が国の外交安全保障政策について、発信をしていきたいと思っております。
また、この機会を捉えまして、G7の外相間でも議論を行う予定でございます。国際情勢が激しく揺れ動く中、G7の結束が極めて重要な局面でございますので、各国のカウンターパートとの連携を改めて確認していきたいと考えております。
冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。
石破総理・岩屋大臣の米国訪問
【共同通信 阪口記者】冒頭、御発言がありました石破総理の訪米について伺います。石破総理、初の首脳会談において、トランプ大統領と信頼構築への手応えを度々口にされていると思います。会談に同席された岩屋大臣から見て、どのようなやり取りがそういった信頼関係につながったとお感じになっているか、率直に伺えればと思います。もう一点、会談の少人数会合の時に、冒頭発言の、トランプさんがいらっしゃる前に、岩屋さんが何か言葉を交わして場を温めていらっしゃったようにお見受けしたのですが、どなたとどんな会話があったのか、覚えている範囲でありましたら伺えますでしょうか。
【岩屋外務大臣】私(岩屋大臣)も冒頭の少人数会合から同席をしておりましたけれども、共同記者会見に至るまでの一部始終を通じて、両首脳の信頼関係というものが構築されたのではないかというふうに拝見をしておりました。
行くまでは、ケミストリーが合うのか合わないのかという議論というか話がありましたけれども、ケミストリーがしっかり合ったのではないかなと感じました。特に、少人数会合のときに、石破総理が昨年のトランプ大統領、当時は候補でしたけれども、銃撃事件でありますとか、トランプ大統領が好んで使っておられる「Make America Great Again」というのは、忘れ去られた人々への思いやりではないかと、「自分も日本で一番小さいというか、人口が少ない県の出身で、やはり日本の地方というものをもう一度よみがえらせたいと、そのために地方創生ということをやっているのだ」という話に続いていきましたが、そういう石破総理のお考えを聞いて、トランプ大統領も恐らくいろいろ感じとられたのではないかなと、石破総理の人柄というか、考え方を理解していただいたのではないかなと思いますし。
それから、記者会見の段階では、これも御承知のとおり、テレビで見る限り怖いおじさんだと思っていたとかいう発言とか、それから仮定の質問にはお答えしないというのは、日本の国会の定番の答弁だとか、随所に笑いを誘う石破総理のトークがあった、それにはトランプ大統領も、非常に反応していましたよね。そういう一連のやり取りを通じて、しっかり信頼関係が、信頼関係というのはそんな一朝一夕にできるものではないにしても、それを築いていける土台というものがしっかり構築されたのではないかと思います。
私(岩屋大臣)は、ただ横に付いていただけでございましたけれども、とにかく笑顔でいきましょうと、明るくいきましょう、ということだけを申し上げていたということでございました。
ウクライナ情勢(G7の連携)
【NHK 米津記者】冒頭にありました、ミュンヘン安全保障会議とG7外相会合に関連してお伺いします。米国のトランプ大統領はロシアとウクライナの停戦の実現に意欲を示しつつ、「ウクライナはいつかロシアになるかもしれないし、そうならないかもしれない」と述べるなど、一方的な現状変更を容認するかのような発言も続けています。こうした中、ロシアによるウクライナへの侵攻から間もなく3年となりますが、G7としてどのように結束を図っていくのか、また、日本としてどのような役割を果たしていきたいかお伺いします。
【岩屋外務大臣】トランプ大統領の御発言について、いちいち見解を述べることは控えたいと思いますが、今回のG7の外相会合というのは、やはりウクライナがかなり重要なテーマの一つになると考えております。もうすぐ丸3年を迎えるのですね、この侵略も。国際情勢は、今なお大きく揺れ動いております。分断や対立が残念ながら進んでいる中にあって、価値や原則を共有するG7がしっかり連携を維持・強化することができるか、当然しなければいけないのですけれども、極めてそのことが問われている局面であろうと思います。
ミュンヘン安保会議は、各国外相が一堂に会する機会でありますので、この機会を捉えて、G7でも、外相会合をしっかりやって議論をしたいと思っておりまして、ウクライナ情勢に関して、G7各国のカウンターパートとしっかりと意見交換をし、また、連携を深めていきたいと考えております。
いずれにしても、大事なことは、一日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和を実現する、取り戻すということだと思っておりまして、やはりG7の連携というのは、非常に重要だと思っておりますし、トランプ大統領におかれても、是非このウクライナの平和の回復について、リーダーシップを発揮してもらいたいと思っているところでございます。
米国国際開発庁(USAID)の廃止報道
【読売新聞 植村記者】米国のトランプ政権が、国際開発省、USAIDに無駄が多いとして、廃止に向けた動きを進めています。過去に日本がUSAIDから支援を受けたことはあるのか、あるとしたら、それに対する受け止めをお願いします。また、今回の動きは、途上国などへの援助の在り方について、議論を呼ぶ動きかと思いますが、翻って、政府として、日本の開発援助の重要性を、現在どのように考えていますでしょうか。また、今後、米国が廃止を進めた場合、国際援助に空白ができることが懸念されますが、日本政府は、どのように国際社会における役割を担っていきたいと考えているか伺います。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】御指摘の報道については承知しております。とりあえず、90日止めるということだったと思いますけれども、国際社会が対立と分断を深める中で、我が国としては、グローバル・サウスとの関係をより強化していきたいと思っておりまして、ODAというのは、重要な、そのための外交ツールであると我々は考えております。
我が国は、過去の自然災害において、USAIDから支援を受けたことはございます。これまでに米国との間では、二国間の対話に加えて、G7、G20や国連などマルチの枠組みにおいて、緊密に連携していろいろな国の支援にあたってきているわけでございまして、引き続き、米国を含む各国と意思疎通をしっかり図って、開発協力分野における重要な役割を果たしていきたいと考えておりますので、そういった我々の考え方を、しっかりとお伝えしていきたいなと考えております。
米国による国際刑事裁判所(ICC)制裁
【朝日新聞 里見記者】トランプ大統領の件なんですけれども、関連して。国際刑事裁判所の関係者を制裁する大統領令に署名をしました。ICCに加盟する70以上の国と地域は、制裁を批判する共同声明を発表しておりますが、これに日本は今現状加わっておりません。その理由を一つお尋ねをしたいのですが、それと関連して、発表が日米首脳会談と同日だったので、米国への配慮なんじゃないかという指摘もありますが、この点も踏まえてお願いいたします。
【岩屋外務大臣】御指摘の、ICCに対する米国の制裁に関しての共同声明ですよね。この交渉の経緯については、外交上のやり取りでありますので、差し控えさせていただきたいと思います。
その上で、我が国は、重大な犯罪行為の撲滅と予防、「法の支配」の徹底のために、世界初の常設の国際刑事法廷であります、このICCを一貫して支持しておりますし、そこには元最高検検事で、我が国出身の赤根智子所長を送り出しているわけでございます。
したがって、ICCが独立性を維持し、安全を確保しながら、その活動を全うできることが大切だと思っておりまして、今後の関連の動向を、重大な関心をもって注視をしてまいります。
「法の支配」は、「自由で開かれたインド太平洋」の中核的な理念でもありますし、今般の日米首脳共同声明でも、「自由で開かれたインド太平洋」を堅持すると、あるいはまた、力による一方的な現状変更はこれを認めないと、これも「法の支配」ですよね。そういうことをしっかりとうたっておりますので、この立場も踏まえて、今後、米国とも緊密に連携し、また、対話をしていきたいと思っております。
【毎日新聞 金記者】今のICCの関連で、一方で「法の支配」を重視する日本政府としまして、例えば、そういった非難声明への署名であったり、見える形での対外発信というのも、非常に重要な外交活動になってくると思いますけれども、あらゆる、例えばコミュニケーションチャンネルで、米国に働きかけるというのも一つ、そういった外交活動、あると思いますが、そういった日本政府としての、対外発信であったり、そういった外交活動については、どのようにお考えでしょうか。
【岩屋外務大臣】今般、初の日米首脳会談を行った最大の目的は、同盟国である米国との間で、まずは、首脳間による信頼関係をしっかりと構築すると、そして、日米同盟の今後、あるいは、「自由で開かれたインド太平洋」ということに関して、日米がしっかりと連携していくことを確認するというのが最大の目的でございました。
そういう、信頼の土台というものを築いた上で、やはり日米間で、様々な課題について、これから議論をしていかなければいけない。必要に応じて意見を申し上げることもあるでしょうし、いずれにしても、米国が、やはりこの分断と対立が続く世界の中で、正しくリーダーシップを発揮していただけるように、同盟国として、しっかりと意思疎通を図り、また、必要とあらば支えていくということが大事だと思っておりまして、今おっしゃったような様々な問題が、課題があるわけですけれども、しっかりと日米間で意思疎通を図っていきたいと考えております。
ガザ情勢(住民の域外への移住)
【日経新聞 馬場記者】ガザ情勢についてお伺いします。米国のトランプ大統領は、米国がガザ地区を所有し、再建するために、ガザ住民を周辺国などのガザ域外に移住させるということを表明していますが、政府としてのこちらの発言に対する受け止めを改めてお伺いします。
【岩屋外務大臣】今、御指摘があったトランプ大統領の発言や、その発言をめぐる様々な反応については承知をしております。
我が国としては、ガザ地区で人道危機が継続していることを深刻に懸念しておりまして、停戦合意の着実な履行を通じた人道状況の改善と事態の沈静化に向けて、当事者に対する働きかけを、これからもしっかり行っていきたいと思っております。
また、関係国とも連携して、また、国際機関と連携して、喫緊の人道支援はもとよりですけれども、中長期的な復旧・復興の視野においても、積極的な役割を果たしていかなければいけないと思っております。
我が国としては、将来の独立したパレスチナ国家とイスラエルが、平和かつ安全に共存する「二国家解決」を支持する立場に変わりはございません。
長年の我が国が培ってまいりました地域諸国との信頼関係を基盤にして、米国を始めとする関係国とも緊密に意思疎通して、「平和と繁栄の回廊」構想でありますとか、「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合」、CEAPADと言っておりますが、こういった我が国独自のイニシアティブを推進するなど、引き続き、地域の長期的な平和と安定の確立に向けた外交努力を重ねていきたいと思っております。
ガザ地区については、米国の政権の中でもまだいろいろな意見があると承知しておりますので、しっかり今後の動向を注視していきたいと思っております。
北朝鮮関連(日朝交渉記録の欠落)
【産経新聞 原川記者】2月4日に閣議決定されました、島田洋一衆院議員の質問主意書に対する答弁書の内容に関してお伺いしたいと存じます。この質問主意書の中で島田議員は、平成14年9月、当時の小泉純一郎総理が訪朝された直前に、当時の田中均アジア大洋州局長らが北朝鮮側と行った2回分の交渉記録について、それが欠落しているのではないかということで、外務省における存在について確認する内容でしたけれども、これに対する政府の答弁書の答弁が、「今後の日朝間の協議に支障を来す恐れがあることから、外務省としてお答えすることは差し控えたい」というものでした。しかしながら、この2回分の交渉記録が欠落していることは、過去に政府が何度も認めてきたことでございまして、一例を御紹介しますと、例えば平成28年3月8日の参議院の予算委員会において、当時の岸田文雄外務大臣がこのように答弁されています。「2回の交渉記録、その間の交渉の中で2回、この交渉記録が存在しない、それはそのとおりであります」というふうに、記録は存在しないということを答弁なさっているのですが、ここで質問なのですけれども、過去に政府がこの2回分は存在しないと答弁してきたにも関わらず、今回の答弁書において、外務省としてお答えをすることは差し控えたいというふうに対応を変更されたのは、いかなる理由によるのかということについてお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】今般の質問主意書で問われた点については、過去に質問主意書で問われて閣議決定を経て回答した答弁書が存在しておりますので、今般もそれに沿った形で答弁書を作成したものでございます。
一方、御指摘のように、国会において、当時の安倍総理や岸田外務大臣が2回の日朝交渉について、記録が存在しないという認識を答弁していることも事実でございます。
質問主意書に対する答弁書においても、提出者の問題意識を丁寧に組んで対応すべきではないかと、正直、私(岩屋大臣)も思っております。
一方で、閣議決定した、閣議決定というのも非常に重たい手続でございますので、その答弁書がしっかりあると、一方で時の内閣総理大臣や外務大臣が国会において、これも国会における答弁というのは責任の重たいものでございます。そういうものが並立しているときに、どう判断すべきかということは、今後、しっかり検討しなければいけないと思っているところでございます。
核兵器禁止条約
【中国新聞 宮野記者】日米首脳会談に関係して質問します。会談の中で、日本が掲げている「核兵器のない世界」に向けた議論は、どのような議論がありましたでしょうか。更に、政府が検討を進めているとしている、核兵器禁止条約の第3回締約国会議へのオブザーバー参加は議題に上りましたでしょうか。上ったか上っていないか、そのような対応になった理由とともにお伺いします。
【岩屋外務大臣】先般の日米首脳会談ですが、御承知のように冒頭はたくさんのメディアに囲まれての少人数会合をやった後、ワーキング・ランチという形で本格的な議論に移ったのですが、それでもかなり時間は限定されておりまして、今日も冒頭で申し上げたように、まずは首脳間の信頼関係の構築、そして両国間、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という経済、あるいは安全保障という問題に終始したのが実際でございまして、核禁条約のオブザーバー参加等、核軍縮について特段のやり取りがあったわけではございません。
今後、今度、首脳会談を通じて形成されたと私(岩屋大臣)は思いますが、信頼関係を土台に国際社会が直面する様々な課題について、両国間、首脳レベルはもちろんですけれども、あらゆるレベルでしっかりと意思疎通、意見交換をしていきたいと思っております。
しかし、そもそも核禁条約のオブザーバー参加についてどう判断するかということは言うまでもなく、我が国が主体的に判断すべき事柄でございます。今、外務省としても、過去にオブザーバー参加した国々の状況等に関する検証を行っておりますが、その検証を踏まえた上で、政府として、適切に判断をしていきたいと考えております。
日中関係(中国によるブイの移動)
【読売新聞 植村記者】中国側が尖閣諸島周辺に設置したブイを撤去しました。これまで撤去に後ろ向きだった中国の態度の変更について、どのようなメッセージがあると日本政府で受け止めていますでしょうか。また、これまで日本政府は自らブイを撤去することはせず、中国に自主的に撤去するように求めていましたが、今後もこの方針に変わりはないでしょうか。日本政府が自ら撤去に乗り出さない理由も改めて伺います。よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】まず、事実関係ですけれども、今般、2023年7月に東シナ海の我が国排他的経済水域(EEZ)内で設置が確認されていたブイが、我が国EEZ内に存在していないことを海上保安庁が確認をいたしました。
これを踏まえて、このブイに関する航行警報は2月11日付けで削除されたところでございます。
また、同日、中国外交部は、御指摘のブイが元の場所での作業任務を終えて、科学的な観測の実際の必要性に基づいて、当該ブイについて、自主的かつ技術的な調整を行った旨対外的に説明したと承知しております。
それ以上の背景や経緯等について予断をもって我が方がお答えすることは差し控えたいと思います。
こういったブイの設置は、国連海洋法条約との関係で問題になるものでございます。
しかし、そのようなブイの設置に対して、関係国がどこまで物理的な措置をとることが国際法上許容されるかということについては、海洋法条約に明確な規定はないのです。また、これまでそういった事例の蓄積も見られない状況にございます。
したがって、我が国の対応の在り方につきましては、国際法上の基準があればそれに沿ってやればいいということだと思いますが、その基準が不明確な中でどうするかということについては、総合的な判断が求められるということだと思います。
いずれにしても、我が国としては、引き続いて、あらゆる機会を捉えて、その他のブイにつきましても、中国側に対して撤去を強く求めてまいりたいと考えております。
【China Daily 江記者】
(以下は英語にて質問)
中国は月曜、最近の石破総理とトランプ大統領とのワシントンでの会談及び日米共同声明における日本側の中国関連の否定的な動きについて、日本に厳重に抗議しました。中国はこれらの動きに対し、深刻な懸念と強烈な不満を表明しました。大臣、これに対する回答をお聞かせください。日本はどう対応するのでしょうか。
【岩屋外務大臣】日米首脳会談におきまして、両首脳は、中国をめぐる諸課題についても意見交換を行いました。そして、東シナ海や南シナ海等における力や威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みに反対するということを確認をいたしました。また、両首脳は台湾海峡の平和と安定の重要性を強調したところでございます。
我が国を取り巻く厳しい安全保障環境や、国際社会における中国の果たすべき役割の大きさに鑑みれば、世界がどうあるべきか、その中で日米がどう協力すべきかを話し合うという中で、日米両国の共通の関心事項として、中国についても議論をされるということはむしろ自然なことだと思っております。
我が国は、戦略的な互恵関係を包括的に日中間で進めていこうと、そして建設的で安定的な日中関係を築いていこうという確認された方針の下に、日中関係を進めていきたいと考えておりまして、同盟国である米国との信頼関係というのは大切なものであり、これを土台に我が国の外交・安全保障の問題を考えていかなければいけないわけでありますが、一方、中国に対しては、大国としての責任を果たしていただくように働きかけていきたいと、そして、建設的で安定的な関係、戦略的な互恵関係というものを更に発展をさせていきたいと考えているところでございます。
在ハンガリー邦人被害
【朝日新聞 里見記者】ハンガリーで日本人の女性が亡くなった事件に関連してお尋ねします。この女性は、大使館に事前に相談をしていたという報道もありまして、その場合、いつどのような相談があったのかという事実関係を確認させていただいた上で、大使館の対応の妥当性について、お考えをお尋ねできたらと思います。
【岩屋外務大臣】ハンガリーにおいて邦人女性が御逝去されたことは大変痛ましく、改めて心よりお悔やみを申し上げたいと思います。 御指摘の点についてですが、2022年の6月に、在ハンガリーの日本大使館は、当該邦人女性から元夫との関係についての相談を受けまして、DV被害を受けていることについて、警察に相談することを促すなど、支援を行ってまいりました。
また、当該邦人女性からは、2024年の夏頃に、子供の旅券発給についての照会を受けまして、大使館から未成年者の旅券の発給には共同親権者である元夫の同意も必要であるということを説明いたしましたけれども、その後、お子さんの旅券申請はなされなかったという経緯がございます。
今回の事件発生後に、在ハンガリー大使館は御遺族への支援に当たってきております。御遺族の御意向も踏まえつつ、引き続き、できる限り丁寧な対応及び必要な支援を行っていきたいと考えております。
【テレビ朝日 飯田記者】関連して質問させていただきます。今のハンガリーの女性の被害について、DV被害に遭って大使館に相談があったとき、一般的に大使館は邦人保護の観点からどういう対応をするのでしょうか。また、今回の場合、それができていたのかいなかったのか、その2点をお伺いいたします。
【岩屋外務大臣】邦人からDV被害に関連する相談が在外公館に寄せられた場合には、個別の事情や要望等を踏まえて必要な支援をこれまでも行ってきております。今回の場合についても、先ほど申し上げたように、警察に相談することが良いということを説明し、また必要な支援を行ってきたところでございます。
在外公館においては、言うまでもなく邦人保護が最重要の任務の一つでもありますので、今後とも邦人保護の観点から、できる限り丁寧な対応及び必要な支援を行っていきたいと考えておりますし、改めて私(岩屋大臣)の方からも、そのような指示を出したいと思っております。
トランプ米大統領の発言(ガザ、グリーンランド、カナダ、ウクライナ)
【ラジオ・フランス 西村記者】トランプ大統領の発言についてお聞きします。力や威圧による領域の現状変更の試みは決して認めないことと、日本の政府が主に中国に対して何度も強調しました。にもかかわらず、ガザ地域、グリーンランド、カナダ、ウクライナなどについての、米国大統領の極めて威圧的な発言をめぐって、日本の政府は少なくともマスコミの前で一度もその発言の批判をしませんでした。米国は強い同盟国だから批判しにくいという理由なら、ちょっと恐ろしい状況ではないでしょうか。トランプ政権の4年間にわたって、その姿勢を維持することが可能でしょうか。どうやってバランスを取りながら、米国に批判も含めて本音を言うことができるのでしょうか。
【岩屋外務大臣】トランプ大統領は御指摘の様々な発言をされておられるわけでございますが、その一つ一つにこの段階で確定的な評価をすることは控えたいと思っております。
というのは、様々、実際には流動的ですよね。那辺に落ち着いていくのかということは、よく見極めなければいけないと思っておりますし、その間、様々なレベルでの対話を通じて、我が方の考え方は、伝えるべきものは伝えていきたいと思っております。
大切な同盟関係でありますけれども、あらゆる選択肢はもちろん排除されていないわけです。我が国は主権国家でございますので、我が国は、一般論として申し上げれば、主権及び領土一体性の尊重、そして国連憲章の原則は重要だと考えておりますし、「法の支配」に基づいた自由で開かれた国際秩序の維持強化というものを、最も大切に考えておりますので、そういう考え方に基づいて、米国ともしっかり意思疎通を図っていきたいと思っております。