記者会見
岩屋外務大臣臨時会見記録
(令和7年1月21日(火曜日)18時53分 於:ワシントン(米国))
冒頭発言
私から、今回の訪米についてご報告を申し上げたいと思います。トランプ大統領の就任式に出席するとともに、 ルビオ国務長官をはじめとする新政権の関係者と面談し、信頼関係を構築するために一昨日から米国を訪問しております。米国からの招待によりまして、日本の外務大臣が米国大統領の就任式に出席するのは今回が初めてのことでありましたけれども、 非常に荘厳な式典でありました。今回、こうした形で就任式に招待をいただいたということは、トランプ新政権が日米関係を重視しているということも表れだと受け止めております。トランプ大統領、ヴァンス副大統領のご就任に改めて心からのお祝いを申し上げたいと思います。
先ほどルビオ国務長官との間で日米外相会談を実施いたしました。ルビオ長官は、昨日、議会の承認を受けたばかりであり、満票での承認だったということでございますが、事実上、就任初日での会談となりました。幅広い分野について率直な議論、意見交換ができたと思っております。
会談では、まず私からルビオ長官への就任のお祝いを申し上げました。また、今後とも、日米同盟を新たな高みに引き上げていく、そして自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて緊密に協力していこうということで一致したところでございます。その他にも、経済。あるいは地域情勢などについても意見交換を行いました。かつてなく強固になった日米関係を一層強化していくべく、引き続き日米間でしっかり緊密に連携していきたいというふうに思っております。
また、豪州及びインドの外務大臣とも 今回二国間会談を行いました。また、日米豪印のクワッドの外相会合にも出席をしたところでございます。
豪州のウォン外務大臣とは、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けて、米国や他の同志国との重層的な協力を推進して、特別な戦略的パートナーシップのさらなる深化に取り組むことを確認いたしました。
インドも我が国とは特別な戦略的パートナーシップという関係にありますが、インドのジャイシャンカル外務大臣とは、安全保障、経済、人的交流の幅広い分野での二国間協力の具体的取り組みについて議論を行ったところでございます。
日米豪印の外相会合につきましては、 米国新政権の発足の翌日というかつてない早いタイミングで、ルビオ新国務長官にとって初となる会談として開催できたことは大きな意義があったと考えております。会合では、インド太平洋情勢について戦略的な観点から議論を行い、自由で開かれたインド太平洋の実現に向けた協力を4カ国で引き続き推進をしていこうということで一致をいたしました。この観点から、次回の日米豪印の首脳会合に向けた準備を行うとともに、今後の外相会合を定期的に開催していく。ということでも一致をしたところでございます。そして、米国の新政権のもとでの初となる共同声明も発出することができました。
それから、ホワイトハウスにてウォルツ国家安全保障担当大統領補佐官と意見交換を行いました。この後、ハガティ、元大使ですね、現連邦上院議員とも懇談をする予定でございます。
今回の米国訪問では、トランプ政権発足直後に米国の新政権との関係者の間で信頼関係を構築するとともに、様々なレベルで緊密に意思疎通をすることができたと思っております。その意味で大きな意義があったと考えております。 また、日米豪印の外相会合を政権発足直後のこのタイミングで開催できたことは、この枠組みの重要性を示す上で画期的だったとも考えております。 今後とも、私のカウンターパートとなったルビオ国務長官をはじめ、トランプ新政権の関係者との間であらゆるレベルで緊密に連携をし、日米同盟をさらなる高みに引き上げていきたいという風に思っております。そして、何よりも大事なことは、来る日米首脳会談が有意義なものとなるようにしっかり連携していきたいと思います。
私からは以上です。
質疑応答
(記者)日米外相会談についてお尋ねします。トランプ大統領が掲げている関税の一律引き上げや同盟国・同志国への防衛費引き上げ、駐留経費の負担増額要求についてはどのようなやりとりがありましたでしょうか。また、今後もこうした要求が出てきた場合どう対応されていく考えでしょうか。トランプ大統領も日本製鉄によるUSスチール買収に反対を掲げておりまして、日米経済関係の悪化が懸念されますけれども。この点についても議論されたのかどうかお尋ねします。
(大臣)ルビオ長官との間で幅広い分野について議論を行いました。防衛努力につきましては私の方から説明をさせていただきました。私が6年前、防衛大臣の時の予算からするとですね、それを倍額にするという方向にあって、今着実に作業を進めております。すでに65パーセント増になっているわけでありまして、国家安全保障戦略に掲げた計画を我が国はしっかり実行していくということを説明をさせていただいたところでございます。
経済分野についても意見交換を行いました。私からは、日本企業による対米投資や経済安全保障を含む日米経済関係の重要性を申し上げてですね、そのことは確認ができたと思っております。 対米投資で言うと、我が国は5年連続でトップ、最大の投資国でございます。さらに、この投資を拡大していく考えであるということもお伝えをしましたし、それのためには、この我が国からの米国への投資についての不安や懸念というものはぜひ払拭する努力をしていただきたいということも申し上げたところでございます。そういう安全保障、あるいは経済協力、 幅広い分野についてしっかりと意見交換をすることができた。理解を深めることができたのではないか。というふうに考えております。
(記者)同盟・同志国連携についてお伺いします。トランプ大統領はマルチの枠組みを重視していないと言われてきました。今回の日米外相会談を含めて、一連の会合ではこの点についてのマルチの協力についてどのような議論が交わされて、どのような方向性を確認されたのかお聞かせください。また、日米韓についてはですね韓国が政情不安となりまして、バイデン大統領の下で始まった日米比も継続の見通しは不透明と言われています。これらの枠組みの継続を日本としてはどのように考えて、トランプ政権に対してどう働きかけていくのかお考えをお聞かせください。
(大臣)トランプ政権がもしかするとマルチの枠組みを重視していないのではないかということが世情、言われてきたりしておりましたが、私の今回の印象では全然そんなことはないと、政権発足直後にですね。日米豪印、クワッドの外相会合が早速に持たれたっていうことを1つ取ってみてもですね、そういうマルチの枠組みをしっかりと重視しておられるのではないかというふうに受け止めております。特に今日などは、そのルビオ新長官が国務省に初登庁された1時間後ぐらいにですね、この会合が開催されているわけですから、そのスピーディーな取り組みに敬意を表したいというふうに思っているところでございます。また、ルビオ国務長官にとっては初のですね、その会談ということになったわけでもありまして、共同声明も発出することができましたし、しっかりとこのマルチの枠組みに取り組んでいただいているという風に受け止めております。それからなんでしたっけ。
(記者)日米韓、日米比の今後について。
(大臣)そういう地域の情勢についてもですね、議論をいたしました。詳細な中身は控えたいと思いますけども、日米韓、それから日米フィリピンで、私が先週韓国、フィリピンに行った時のこともですね、説明をさせていただいて、こういった枠組みをこれからも大事にしていきましょうということを申し上げましたが、これはご理解がいただけたのではないかと考えております。
(記者)ルビオ長官、ウォルツ補佐官との会談についてお伺いします。大臣から来る日米首脳会談というご発言がありましたが、首脳会談の日程や場所などについて、今回の会談で決まったことはありますでしょうか。どういったやりとりがあったのかを教えてください。石破総理はですね中国側から早期の訪中を要請されております。石破総理の対米、対中外交について大臣はどのようなスケジュール感で進めていくべきとお考えでしょうか。また、今日の会談の中では尖閣諸島の日米安保条約第五条への適用についての発言はされたのでしょうか。もう一つ、東アジア情勢に関連してお聞かせください。トランプ新大統領の発言にもありましたが、北朝鮮の核保有は認めないという立場について日米両国で確認したかについてもお聞かせください。
(大臣)まず、総理の訪米についてですね、ルビオ国務長官、それからウォルツ補佐官との間でもお話をさせていただいて、今、精力的に調整をいただいているところでございます。当方で申し上げますと、国会との関係もございますし、米国の方では例えば所信表明演説等との兼ね合いなどもあったりしてですね、双方の最も都合がつく適切な時期にできるだけ早く開催をしようと、そのための調整を急ごうということでは今日は確認することができましたが、この段階で何月何日っていうところまで確定できているわけではございません。それから、核保有の前の話はもう一つなんでしたでしょうか。
(記者)尖閣の五条適用と対中対米外交のスケジュール感についてです。
(大臣)石破総理としては、かねてからおっしゃっておられるように、できるだけ早いタイミングで訪米をして日米首脳会談を実施したいっていうお考えだと思いますし、中国についてもですね、機会を見て訪問されたいってことをおっしゃっておられます。今、米国とはもうすでに日程の調整に入っておりますので、ぜひ、日米首脳会談をできるだけ早期に実現をしたいという風に考えております。外務省としては。それから、核保有という、要はトランプ大統領の発言についてのお話だと思います。それには逐一見解を申し上げることは控えたいという風に思いますけれども、この北朝鮮は核の廃絶をしなければならない。これまでの一連の国連の決議等にも基づいてですね。しっかり、それを履行していかなければいけないっていう我々の考え方に変わりありませんし、米国側の考え方にも変わりはない。という風に考えております。
(記者)尖閣の五条適用についてはいかがでしょうか。
(大臣)それについては、もちろん大事なところでございますけれども、 重要な問題であるだけにですね、日米首脳会談においてしっかりと確認してフィードバック、コンクリートにしていただくということが望ましいのではないかと思っております。そのための下準備はしっかりしております。
(記者)日米外相会談についてお伺いしますけれども、ルビオ長官はですね指名公聴会等で中国との向き合い方が最も重視する外交政策になる。と発言をなさっています。今日の対話の中で中国との向き合い方につきまして大臣との間で一致した点はございますでしょうか。
(大臣)日米豪印っていう枠組みについてもそうですけれども、米国のその外交方針もおそらくそうだと思うし、我々もそうなんですけれども、特定の国をですね、対象に何か考えているということではなくてですね、やっぱりこう自由で開かれたインド太平洋、FOIPを実現していこうとしているわけですから、その平和や安定を脅かす行為、行動についてはですね、これはしっかり抑止をする。あるいは対処していかなければいけない。と、こういう観点での意見交換はしっかりさせていただいたところでございます。
(記者)日米外相会談についてですが、ルビオさんの所管ではないのですが、一律関税の引き上げということについてはトランプさんは再三言及されていまして、この点について大臣からはなにか伝えられたのでしょうか。また、北朝鮮の核保有に関してですが、大臣は北朝鮮が実際に使える核兵器を保有しているとお考えでしょうか。
(大臣)はい。まず、関税については具体的に取り上げては議論をしておりません。米国が実際にですね、これからどういう政策をとられるかということをよく見て、適切に対処をしていきたいという風に考えております。それから、北の核能力についてですけれども、これまで数次にわたる、核実験を起こしてきたということは事実でしょうし、その運搬手段でありますミサイル等についてもですね、 類似の発射を繰り返してきているわけでございますけれども、我々の目標は、この核の保有を認めるべきではない、非核化ということを達成しなければいけないという風に考えておりますので、その方向で 米国をはじめ国際社会としっかりと緊密に連携していきたいと考えております。