記者会見

岩屋外務大臣臨時会見記録

(令和6年12月25日(水曜日)14時36分 於:中国・北京)

冒頭発言

(大臣)本日、午前11時から、中国の王毅(おう・き)外交部長との間で、合計、約3時間近くになりましたけれども、外相会談並びにワーキングランチを行いました。本日が、私にとりましても初めての、対面での会談となりましたが、幅広い内容について、大変率直かつ、突っ込んだやり取りができたと感じております。王毅部長との間でも、今後に繋がる個人的な関係を築くことができたのではないかと考えております。

 王毅部長との間におきましては、日中の両首脳で確認をしたとおり、「戦略的互恵関係」を包括的に推進し、「建設的かつ安定的な関係」を構築する、その大きな方向性の下に、来年のハイレベルの意思疎通・往来の機会も見据えまして、日中関係を進めていくことで一致をいたしました。また、そうした中で、課題と懸案を減らし、協力と連携を増やしていくために互いに努力していくということでも一致をいたしました。今回の私の訪中がそのきっかけになればというふうに思っているところでございます。

 また、来年の最も早い適切な時期に王毅部長の訪日を実現し、その際、ハイレベルの経済対話を開催することで一致をいたしました。これから、具体的な調整を進めていきたいと思っております。

 また、ALPS処理水の海洋放出と日本産水産物の輸入規制につきましては、9月の発表を、両国できちんと実施をしていくことで一致をいたしました。私から、日本産水産物の輸入規制の撤廃を、早期に実現するように求めたところでございます。その他にも、日本産牛肉の輸入再開、精米の輸入拡大にかかる当局間協議の早期再開を確認をいたしました。これ以外にも、日中間の協力案件について、幅広く議論を行ったところでございます。

 さらに、私の方から、尖閣諸島を巡る情勢を含む、東シナ海情勢や、中国軍の活動の活発化、ブイ、中国による一方的資源開発といった様々な懸案について、深刻な懸念を伝え、中国側の対応を求めました。ブイにつきましては、与那国島南方の我が国排他的経済水域内において新たに一つ確認をしたところでありまして、中国によって設置されたものと思われますので、即時撤去を求めたところでございます。

 加えて、中国による短期滞在査証の緩和もある中で、日中両国間の人的往来を増やす上で、日本人の安心・安全の確保のための協力も課題となっております。本日の会談では、私から、この点についても、中国側の協力を改めて求めたところです。

 ワーキングランチでは、二国間関係にとどまらず、地域情勢や国際社会の直面する課題についても議論を深めました。国際社会が大きな変動の時を迎える中、国際社会に責任を有する、日中両国としても、しっかり対応していこう、ということを確認をしたところでございます。

 また、本日は外相会談に先立ちまして、李強(り・きょう)国務院総理への表敬も行いました。李強総理との間では、石破総理と李強総理、また、習近平(しゅう・きんぺい)国家主席との会談を踏まえまして、議論を行い、改めて日中関係の大きな方向性を確認したところでございます。

 この後は、ハイレベル人的・文化交流対話及び劉建超(りゅう・けんちょう)党対外連絡部長との夕食会を予定をしております。人的交流や文化交流は、両国民の相互理解の基礎となるものでありまして、そうした観点から、いかに、この人的・文化的交流を時代を踏まえた形で促進していくか、議論を深めたいと思っております。

 冒頭、私からは以上でございます。

質疑応答

(記者)日本の外務大臣の中国訪問は1年8か月ぶりです。また、石破総理も就任以降、李首相や習主席と立て続けに会談しておりますが、大臣は現在の日中関係はどのような状況にあると認識されているでしょうか。その上で、今回の訪問をどう位置づけて、来年以降の両国間の外交につなげていくお考えでしょうか。冒頭発言と少し重なりますが、王毅外相の訪日に関するやりとりや、中国側の反応もあれば、お願いします。

 また、日中間にはですね、水産物の輸入停止措置という懸案が残っています。冒頭発言と少し重なりますけれども、輸入再開に向けてどのような話し合いが行われて、中国側がどのような反応だったのかも教えてください。

(大臣)この11月にですね、石破総理と習主席は、南米ペルーにおきまして会談をして、「戦略的互恵関係」の包括的な推進と、「建設的かつ安定的な関係」の構築、という大きな方向性を確認をいたしました。本日、王毅部長との間では、そうした両首脳での、確認事項といいますか、確認された方向性に沿って、互いに、これから、努力をしていこうということで、一致をみたところでございます。本日の会談を踏まえまして、これから、来年以降、ハイレベルの意思疎通、往来の機会をですね、増やしていきたいと、いうふうに考えております。で、大事なことは、もちろん、日中間に様々な、懸案や課題がありますけれども、その懸案や課題を一つずつ、減らしていく、そして、協力と連携の機会を、増やしていく、ということが、大事だというふうに思っておりまして、そのために、私も努力をしていきたいと思っています。王毅部長につきましては、できるだけ来年の早い時期に、訪日を実現してもらいたいと思っておりまして、そのときに、ハイレベルの、経済対話をですね、是非、実施をしようということで一致をいたしました。具体的には、これから調整をして参りたいと思っております。それからお尋ねの、水産物の輸入規制については先ほども申し上げましたけれども、この9月に発表された日中両政府による発表をですね、しっかり実行していこうと、実施をしていこうと、いうことで一致をいたしました。やり取りの詳細については、控えさせていただきたいと思いますが、輸入規制の撤廃が早期に実現するようにですね、これから、進めて、努力をして参りたいと思っております。政府としては、引き続き、中国側に対して、輸入回復の早期実現を、求めてまいります。

(記者)日中間には、尖閣諸島を含む東シナ海での中国の覇権的な動きであったり、邦人の拘束・犯罪被害といった在留邦人の安全などの日本にとって譲れない課題もあります。会談を経て、これらの課題の解決が可能か、どのような手応えを得たかお聞かせ願います。また、台湾周辺ではですね、引き続き中国軍が活発に活動していて、緊張の高い状態が続いています。日本としてこの地域のエスカレーション管理にどのように関与をしていくか。あともう一つ、国際社会全体では米中対立が基調となる中、日本としてこのあたりどのような立ち位置を取るべきか。また、これに関する今日の会談で話題になったか。また、冒頭でブイが新たに発見されたとのことですが、いつ発見されたかなど基本的で事実関係が分かれば、教えてください。

(大臣)私から、尖閣諸島を巡る情勢を含む東シナ海情勢、中国軍の活動の活発化、ブイの問題、中国による一方的資源開発といった様々な懸案について、我が方の深刻な懸念を伝えました。そして、中国側の対応を求めたところでございます。さらには邦人拘束事案については、拘束されている邦人の早期の釈放を求めました。

 日中関係を進めるためには、こうした課題や懸案を減らしていく必要があり、そのためには様々なレベルで意思疎通を深めていくことが重要だと考えております。こうした観点から、安全保障分野に関して、本日の外相会談において、来年できるだけ早くに日中安保対話を開催することで一致をみたところでございます。

 今日は先程申し上げた案件について、しっかりと対応を求めましたけれども、そういう安保対話を通じても、更に対応を求めていきたいと考えております。

 また、台湾については、本日の会談においても、最近の軍事情勢を含む動向を我が方は注視している旨伝えました。そして台湾海峡の平和と安定が我が国を含む国際社会にとって極めて重要である旨改めて強調したところでございます。台湾をめぐる問題が、対話により平和的に解決されることを期待するというのが我が国の一貫した立場・姿勢でございますが、これを改めて伝えたところであります。

 米中関係については、本日の会談の主たる議題ではありませんでしたが、米中両国の関係の安定は、今日の国際社会にとって極めて重要であると考えております。我が国は、引き続き同盟国たる米国との強固な信頼関係の下に、中国とも意思疎通をしながら、米国は正しくリーダーシップを発揮してもらわなければなりませんが、それと同時に中国に対しても大国としての責任を果たしていくように求めましたし、そのことを今後も強く働きかけていきたいと思っております。

 最後にブイについては、今般与那国島南方の我が国排他的経済水域内において新たに確認をされました。そして昨日海上保安庁が航行警報を発出したところでございます。今日の会談では私から今回新たに確認されたブイを含め、我が国EEZに設置されているブイの即時撤去を求めたところでございます。まさか私がくるので新たにブイを置いたわけではないと私は思っていますが、新たに確認されたブイは外観上から推察するに設置後、一定の期間が経過している可能性があると考えておりまして、いずれにしましても、こうした行為は我が国としては受け入れられず、また日中関係にマイナスの影響しかないということを申し上げました。また、こうした観点を含め、中国側に対しては、適切な対応を求めて参ります。

(記者)国際関係についてお伺いしたいのですが、一連の会談において、現在世界・地域情勢に影響を与えているロシアと北朝鮮の軍事を含む接近に関して中国側と意見交換は行ったのでしょうか。重ねて、それに関連してウクライナ情勢に関しても一連の会談で意見交換を行ったのでしょうか。また、来月に迫ったトランプ米政権の発足については一連の会談で話題に上ったのでしょうか。

(大臣)ワーキングランチにおいて、核・ミサイル問題及び拉致問題を含む北朝鮮への対応について議論を行いました。私から、北朝鮮による核・ミサイル活動や、北朝鮮兵士のウクライナでの戦闘参加を含むロシアとの軍事協力の進展に対する深刻な懸念を表明し、中国が重要な役割を果たすことを期待するということを申し上げました。また、私から、拉致問題の即時解決に向けて、中国側の協力を改めて要請をしたところでございます。

 ウクライナ情勢についても議論を行いました。詳細は控えますが、中国も国際社会の平和と安全の維持に責任ある役割を是非果たしてもらうよう申し上げたところであります。

 トランプ政権の発足については、本日の会談の主たる話題ではありませんでしたが、やはり米中両国の関係の安定は、国際社会全体にとっても大事だということを申し上げました。我が国としても、米国の同盟国として、また中国の隣国として、そういう関係を構築していただけるように汗をかきたいというふうに思っているところでございます。

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