記者会見

上川外務大臣会見記録

(令和6年5月10日(金曜日)15時57分 於:本省会見室)

上川外務大臣会見の様子

冒頭発言

TICAD事務局設置・ロゴの公募

【上川外務大臣】先般、アフリカの多様性を体現する3か国、具体的には、マダガスカル、コートジボワール、ナイジェリアを訪問しました。
 今回の訪問で印象的だったのは、街から感じるエネルギー、特に、多くの子供や若者の笑顔です。アフリカが持つダイナミズムやポテンシャル、日本に対する強い期待を肌で感じました。
女性を含む日本の若者が、既にアフリカで新たなビジネスや課題に挑戦している姿を見ることができたのは、うれしい驚きでした。
 また、アフリカでは、連結性強化が課題となっていることから、訪問を通じて地域のハブとなる拠点作りを意識しました。3か国で、大学・病院・港湾・図書館の関係者と議論する中で、多くのすばらしい取組を、「点」のレベルにとどめず、「面」のレベルに展開していく必要性を感じました。
 こうした考えを含め、本年8月のTICAD閣僚会合、更には来年のTICAD9に向け、具体的な準備を進めるため、従来よりも少し早く、来週、外務省内にTICAD事務局を立ち上げます。
 今後、TICADプロセスを通じて、アフリカ経済のダイナミズムを日本に取り組むとともに、アフリカの経済成長及び平和と安定を実現する方策を、アフリカとともに創り上げる、「共創」をしていく考えであります。
 なお、TICAD9につきましては、現在ロゴマークを公募しております。応募締め切りは、6月7日金曜日となっておりますので、皆様奮って応募いただければと思います。
 私(上川大臣)からは以上です。

ロシアによるウクライナ侵略、北方領土問題

【北海道新聞 今井記者】ロシアの関係で伺います。7日に就任式が行われ、プーチン大統領の5期目がスタートしました。ウクライナ侵略を続けるプーチン政権は、西側との対決姿勢を鮮明にしております。ウクライナの平和の実現のため、日本として果たしていきたい役割を教えてください。
また、北方領土問題についてもお伺いします。領土問題の解決のため、どのような姿勢で対露外交に臨むお考えでしょうか。北方領土の元島民の平均年齢は、現在90歳近く、時間がありません。どのような形で、いつまでに領土問題を解決したいか、具体的に教えてください。

【上川外務大臣】まず、一点目、ロシアによるウクライナ侵略でありますが、この国際秩序の根幹を揺るがす暴挙であります。引き続き、我が国は、一日も早く、ウクライナの公正かつ永続的な平和を実現するべく、G7を始めとする国際社会と連携をし、厳しい対露制裁を講じるとともに、強力なウクライナ支援にしっかり取り組んでまいります。
 北方領土問題に関してということでありますが、ロシアによるウクライナ侵略によりまして日露関係は厳しい状況にあり、残念ながら、現在、平和条約交渉について、何か具体的に申し上げられる状況にはありませんが、政府といたしましては、北方領土問題を解決し、平和条約を締結するとの方針を堅持してまいりたいというふうに考えております。
 元島民の方の平均年齢が90歳近くになる中におきまして、問題の解決のために全力を尽くしてまいりたいと考えております。

プーチン大統領就任式演説(戦略部隊)

【共同通信 西山記者】同じくロシアのプーチン大統領の、対ドイツ戦勝79年を祝う式典に関してですが、プーチン大統領の演説の中で、「戦略部隊は常に戦闘準備ができている」と述べ、核戦力の核戦略部隊の存在を誇示しました。ウクライナ侵攻が続く中での発言でありますが、外務省としての受け止めを教えてください。

【上川外務大臣】5月9日に実施されました「大祖国戦争勝利79周年記念軍事パレード」に際する演説におきまして、プーチン大統領は、ロシアの戦略部隊は常に戦闘準備状態にある旨述べたと承知しております。
 これまでもロシアが、ウクライナ侵略の文脈において、核兵器の使用を示唆するような発言を繰り返してきていることは、極めて憂慮すべきと考えております。
 我が国は、唯一の戦争被爆国として、ロシアによる核の威嚇、ましてやその使用はあってはならないと考えております。こうした日本の立場につきましては、ロシア側に機会あるごとに伝えるとともに、国際社会に対しても訴えてきておりまして、こうした取組を今後も続けてまいりたいと考えております。

イスラエル・パレスチナ情勢(米国による弾薬輸送停止)

【NHK 五十嵐記者】中東情勢の関連で伺います。米国のオースティン国防長官は、イスラエルへの弾薬の輸送を一部停止した旨明らかにしました。米国は、イスラエルによるガザ地区南部ラファハへの、大規模な地上作戦を支持しない立場を示していて、イスラエルに対し、慎重な対応を促す狙いもあるとみられています。受け止めや、日本政府の対応を伺います。

【上川外務大臣】第三国間のやり取りの一つ一つにコメントすることは、差し控えさせていただきます。
 いずれにせよ、我が国としては、さきのG7外相会合においても一致したとおり、ラファハへの全面的な軍事作戦には反対であり、人道支援活動が可能な環境が持続的に確保され、また、人質の解放が実現するよう、即時の停戦を求めるとともに、それが持続可能な停戦につながることを強く期待しています。我が国といたしましても、事態の沈静化に向け、引き続き、あらゆる外交努力を行ってまいります。

ウクライナの平和に関するサミット

【毎日新聞 森口記者】岸田首相が、G7サミット後にスイスで行われる「ウクライナの平和に関するサミット」に参加する方向で調整していることが分かりました。岸田首相が直接平和サミットに参加する意義と、日本として、どのように議論に参加して、どのような成果を望むかを教えてください。

【上川外務大臣】今月の2日、アムヘルト・スイス大統領は、6月15日、16日に、スイス・ルツェルン近郊のビュルゲンシュトックにおきまして、「ウクライナの平和に関するサミット」を開催する旨発表したと承知しております。
 同サミットへの日本政府からの出席者については決まっておりません。
 同サミットにつきましては、公正かつ永続的な平和の実現に向けたウクライナの取組を、国際社会が支持する姿を示すために重要な会議であると認識しており、我が国といたしましては、各国と連携をしながら、しっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

イスラエル・パレスチナ情勢(ラファハへの攻撃、パレスチナの国家承認)

【アナドル通信社 メルジャン・フルカン記者】中東の危機について質問したいと思います。イスラエルは、ラファハ市への攻撃を拡大しており、米国はイスラエルのラファハ市への地上攻撃を開始した場合、イスラエルの武器支援を全て打ち切る可能性があると発表しました。イスラエルのラファハへの攻撃を防ぐために、日本政府は何ができるでしょうか。ガザ地区のこうした状況に関する日本政府の最新の立場を説明していただけますか。さらに、パレスチナと外交関係を樹立する国の数も増加しています。日本政府は、パレスチナを国家として承認する新たな一歩を踏み出すつもりですか。お願いします。

【上川外務大臣】戦闘が長期化する中にありまして、現地の危機的な人道状況が更に深刻さを増していることを深く憂慮しております。我が国としては、さきのG7外相会合においても一致したとおり、ラファハへの全面的な軍事作戦には反対であり、人道支援活動が可能な環境が持続的に確保され、また、人質の解放が実現するよう、即時の停戦を求めるとともに、それが持続可能な停戦につながることを強く期待しているところであります。
 同時に、人道アクセス確保の観点から、ラファハ検問所の再開が重要と考えます。こうした点も含め、引き続き、イスラエルへの働きかけを始めとした外交努力を、粘り強く積極的に行っていく所存でございます。
 また昨日、東エルサレムにありますUNRWA本部に対して、放火などの破壊行為が行われ、当面閉鎖されることとなったとの報に接しました。事実関係の詳細は確認中でありますが、パレスチナ難民支援におきまして、UNRWAは不可欠な役割を果たしており、また国連施設に対して、このような破壊等が行われることは、決して受け入れられないものであります。国際機関の任務が適切に遂行できる環境が整えられる必要があり、イスラエルに対し、しかるべく対応をするよう求めていきたいと考えております。
 我が国は、先般のパレスチナが国連加盟に係る安保理決議案につきまして、パレスチナが国連加盟に係る要件を満たしているとの認識の下、中東和平の実現に向けて和平交渉を通じた、国家の樹立を促進する等の観点を含め、総合的に判断をし賛成しました。他方で、我が国がパレスチナの国連加盟に関する安保理決議に賛成したことと、パレスチナを国家として承認することは別個の問題であり、我が国の現状立場に変更はないところであります。
 引き続き、我が国は、当事者間の交渉を通じた「二国家解決」を支持し、独立国家樹立に向けたパレスチナ人の希望を理解し、これに向けたパレスチナの努力を支援してまいります。

静岡県知事選

【読売新聞 上村記者】政務の関係でお伺いします。大臣のご地元、静岡県で県知事選が告示されました。先日の衆院補選では、自民党が不戦敗も含めて3連敗した後の大型の地方選挙でもあります。今回の知事選、何が問われる選挙だと、大臣ご自身お考えか、お聞かせください。あと、併せて、この県知事選の選挙戦に対する大臣の活動や関与の仕方もお聞かせください。

【上川外務大臣】この記者会見でありますが、外務大臣としての立場で対応する場でありまして、地方選挙に関してお答えをするということに関しましては、差し控えさせていただきたいと思っております。

日本への原爆投下に関する米国での発言

【毎日新聞 森口記者】米国の公聴会での米国高官の発言についてお伺いします。米国の上院公聴会で、米の制服組トップの高官による広島・長崎への原爆の投下が世界大戦を終わらせたとする発言がありました。本日の衆院の外務委員会で、大臣は米国政府などに、日本側の会見を申し入れたことを明らかにされていますが、改めて、その内容と、この件に関する大臣の受け止めを教えてください。

【上川外務大臣】御指摘のやり取りでありますが、承知しているところであります。広島及び長崎に関する発言は適切ではなかったと考えております。
 我が国としては、広島及び長崎に対します原爆投下は、大変多くの尊い命を奪い、また、病気や障害などで、言葉に尽くせない苦難を強いた、人道上極めて遺憾な事態をもたらしたものと認識しております。
 また、政府といたしましては、かねてから明らかにしてきたとおり、核兵器の使用は、その絶大な破壊力・殺傷力の故に、国際法の思想的基盤であります、人道主義の精神に合致しないと考えているところであります。
 このような広島及び長崎に対します、原爆投下に関します日本側の考え方は変わりはなく、この点につきまして、米国側にも繰り返し伝えてきており、今般、改めて米側には申し入れたところであります。
 いずれにいたしましても、我が国は唯一の戦争被爆国として、人類に多大な惨禍をもたらしうる核兵器が将来二度と使用されることのないよう、「核兵器のない世界」の実現に向けて、米国とも協力をしながら、現実的かつ実践的な取組を、積み重ねてきているところでございます。こうした基本的な考え方にのっとって対応しているところであります。

【中国新聞 宮野記者】関連してお伺いできればと思うんですが、先日、ウォルバーグ下院議員が、広島・長崎に核兵器の使用を促すような発言をされたときには、米側への申入れ等はなかったのですが、今回の米高官の発言だったり、グラハム上院議員の、最初質問がきっかけだったと思うんですが、今回対応が違うというのは、何か理由があるんでしょうか。

【上川外務大臣】あまり時間を経ずして、こうした二つの広島・長崎に係る原爆に関する発言があり、それらの内容については、いろいろな文脈の中でのことではありますが、適切でないものがございました。
 先般の発言については、その議員の個人的な関係の中での発言ということでありましたし、またその後、その意図について、ご自分の問題意識に基づいて、発言・釈明を更に加えている状況です。他方、今回の発言はまさに、米国の公式の公聴会の席で発言されたものでありまして、特に、中東情勢に関わる文脈の中で、二つの被爆について触れることを認めることは難しいという認識の下で、今おっしゃったような異なる対応になったものであり、そうした方向で、今、動いているところであります。

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