記者会見
上川外務大臣臨時会見記録
(令和6年1月17日(水曜日)9時40分 於:トルコ・アンカラ)
冒頭発言
【上川外務大臣】本日、約2週間の外遊を終え、帰国します。計9か国を訪問し、新年良いスタートを切ることができました。個別の成果については既に発信してきておりますので、ここでは私(大臣)自身の所感を簡潔に申し上げます。
まず、訪問した全ての国・国際機関の皆様から、能登半島地震に対するお見舞いを頂きました。私からは、日本政府として、岸田総理を筆頭に全力を懸けて取り組んでいることをお伝えするとともに、温かいお言葉に心から謝意を表明いたしました。
その上で、今回の外遊結果につきまして、3点申し上げます。
第一に、同志国間の結束の拡大・深化であります。特に、我が国が率先してウクライナを支援していくとの強い姿勢は各国から歓迎されました。また、新たに「北欧外交イニシアティブ」を発表し、北欧諸国との関係を発展させるとの力強いメッセージを出しました。国交樹立100周年を迎えるトルコとの間でも、更なる関係強化で一致いたしました。 加えて、政府間のみならず、官民が連携して取り組むことで、こうした取組が一層力強いものになるということを確信いたしました。
第二に、「首脳外交」のフォローアップと下準備であります。ウクライナでは、ゼレンスキー大統領から、昨年のG7議長としての岸田総理の貢献への謝意が繰り返し表明されました。また、米国では、岸田総理の公式訪米に向けて、踏み込んだ議論を行うことができました。引き続き、岸田外交を支えるとともに、国際社会においてしっかりと日本の存在感を示してまいります。
第三に、私(大臣)が外務大臣就任以降、重視してきた外交課題に関する取組であります。キーウとワルシャワでのウクライナ女性、ウクライナの子どもたちとの面会や、その後の北欧・米国での面会など、計7件のWPS関連の面会を行いました。また、日本の外相として初めてICJ、ICC、ITLOSという3つの国際司法機関を訪れ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化することの重要性を訴えました。更に、昨日のアンカラ大学訪問を含め、未来を担うユース世代とも触れ合いました。
今回の訪問の成果を、今後の具体的な取組に繋げていくことが極めて重要であります。私(大臣)自身、昨年のG7広島サミットの成果も踏まえつつ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化し、人間の尊厳が守られる世界を確保していくべく、引き続き取り組んでまいります。 私(大臣)から以上です。
質疑応答
【記者】台湾関連でお伺いします。台湾総統選で大臣が発出された頼氏への祝意の談話に対し、中国側が「内政干渉だ」などと抗議しました。これについての受け止めを伺います。
【上川外務大臣】今般の台湾総統選挙に関しましては、これは中国側の立場の表明があり、日本側に対しても抗議がありましたが、受け止めを含めまして、これは外交上のやり取りの詳細について差し控えさせていただきます。
その上で申し上げれば、台湾は、日本にとって、自由、民主主義、法の支配、基本的人権といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人であります。そのような台湾における民主的な選挙の円滑な実施に対し、我が国はこれまでも、祝意を表明してきております。なお、台湾との関係につきましては、1972年の日中共同声明を踏まえ、非政府間の実務関係として維持していくというのが、日本政府の従来からの一貫した立場であります。この立場を踏まえつつ、日台間の協力と交流の更なる深化を図っていきます。
【記者】イスラエル・パレスチナ情勢について伺います。イスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突が始まってから14日で100日となり、ガザではこれまでに1万人以上の子どもが殺害されたという報道もあります。また、イスラエルの攻撃はジェノサイドにあたるとして、南アフリカが国際司法裁判所に提訴した訴訟の審理も始まりました。今回大臣はウクライナを訪問され、欧州の国際司法機関も視察されるなど、外遊全体を通して「法の支配」や「WPS」といったテーマを強く訴えてこられましたが、ガザ情勢においても例外はないと思うのですけども、今回の外遊を通して、改めて中東情勢をどう考えられたか、これまでと考え方が変わった部分もあればよろしくお願いします。
【上川外務大臣】ハマス等によりますテロ攻撃から100日以上がたってもなお、人質となりました多数の人々の解放は実現しておらず、拘束されました方々、そしてその御家族は、今なお大変な苦痛を強いられています。同時に、ガザ地区でも連日、多数の子供達、女性、高齢者を含みます死傷者が発生しているのも事実であります。我が国として、こうした危機的な人道状況を引き続き深刻に懸念をしております。
また、ホーシー派による、紅海を始めとするアラビア半島周辺海域における航行の権利及び自由、これを妨害する試みを断固非難いたします。地域の情勢は全く予断を許さない状況となっておりまして、重大な関心をもって注視しております。
一連の会談におきまして、各国の外相とは、ガザの人道的危機を一刻も早く終わらせるために何をすべきかということにつきまして真剣に議論をし、共に取り組んでいくという強い決意を確認し合いました。イスラエル・パレスチナ双方の当事者が受け入れることができる状況を一日も早く作る必要があり、そのために、関連の国連安保理決議の誠実な実施を含め、あらゆる努力をしてくことが重要と考えております。
今回の一連の訪問の成果も踏まえまして、情勢の早期沈静化、そして、地域の安定化に向けまして、引き続き粘り強く積極的に取り組んでいく決意であります。