記者会見
上川外務大臣臨時会見記録
(令和5年10月28日(土曜日)21時30分 於:リーガロイヤルホテル大阪)
冒頭発言
【上川外務大臣】本日、我が国がG7議長国として開催するG7大阪・堺貿易大臣会合に、西村経済産業大臣と共に共同議長として参加をしました。伝統的な貿易都市である、大阪・堺にて、この会合を開催できることを大変嬉しく思います。
現在、国際社会は、緊張度を増すイスラエル・パレスチナ情勢、ロシアによるウクライナ侵略、パンデミック、気候変動等、山積する課題に直面しています。今回の会合では、貿易を巡る様々な課題に対し、我々G7が、G7を越えた国際的なパートナーと連携しつつ、解決策を提示していけるよう、議論を主導していきたいと考えております。
こういった考えの下、開会セッションでは、私(大臣)からは、世界の安定と成長の基盤であるWTOを中核とする多角的貿易体制を維持・強化するため、G7が率先してWTO改革を推進していくべきことを強調いたしました。また、経済的威圧といった戦略的課題に対抗するためG7が政策調整を行う必要性や、世界経済の持続可能な発展のため、G7を越えた国際的なパートナーとの連携の重要性も再確認しました。
次のサプライチェーン強靱化に関するアウトリーチセッションでは、5か国の招待国、3つの国際機関及びG7の産業界の代表7名が参加して率直な議論を行いました。その中で、多くの参加者から、信頼できるパートナーと共に強靱なサプライチェーンを構築していく取組を通じ、包摂的かつ持続可能な成長を実現することの重要性が指摘されました。
その後に行われた地元主催歓迎レセプションでは、私(大臣)からは、大阪・堺の経験に学びつつ、経済界をはじめ大阪・堺の皆様と密接に協力しながら、世界、日本、そして大阪・堺の繁栄のために一層尽力する旨をお伝えしました。
続けて行われましたワーキング・ディナーでは、大阪、北海道、福島をはじめとした日本各地の食材を用いた料理を堪能しつつ、招待国や国際機関の参加も得て、貿易と持続可能性に関するセッションを実施いたしました。そこでは、気候変動、食料安全保障の強化等のグローバルな課題への取組について活発な議論を行い、世界経済の持続可能な発展のため、G7を越えた国際的なパートナーとの連携を強化していくということを確認しました。
また、この機会を捉え、各国参加閣僚や国際機関の代表との間で個別に会談も行いました。
WTO初の女性事務局長であるオコンジョWTO事務局長とは昼食を共にしつつ会談をいたしました。来年2月の第13回WTO閣僚会議(MC13)、そしてその後も見据え、WTOを中核とする多角的貿易体制の維持・強化に向け引き続き協力していくことを確認しました。また、私(大臣)から、WPS(女性・平和・安全保障)についての取組について紹介の上、ジェンダー、出自等の別に関わらず貿易に参画できるようになるための包摂性の観点や、「誰一人取り残さない」というSDGsの理念を踏まえることが重要である旨述べ、双方で緊密に協力していくことで一致いたしました。
カナダのイン大臣と会談をしました。重要鉱物を含むサプライチェーンの強靭化、CPTPPを含むインド太平洋地域における経済秩序、経済安全保障、WPS(女性・平和・安全保障)等の多岐にわたる課題において日・カナダ間で協力をし、自由で開かれたインド太平洋(FOIP)の実現に向けて協力関係を一層強化していくことで一致しました。カナダの女性起業家支援の取組も踏まえた連携を進めていくことでも一致しました。
また、私(大臣)と西村経済産業大臣と、ドムブロウスキス欧州委員会上級副委員長との間で日EUハイレベル経済対話を開催しました。本年6月にオンラインで開催されて以来の開催です。冒頭、昨年10月から交渉を続けてきた日EU・EPAのデータフロー規定の交渉が大筋合意に至ったことを確認・歓迎し、早期署名に向けた作業の加速化を確認しました。会合では、経済的威圧への対処や強靱なサプライチェーンの構築等を始めとする日EU協力について幅広く意見交換を行ったほか、日EU間で事務レベルの「透明、強靱で持続可能なサプライチェーンを構築するための政策に関する国際協力作業部会(
Working Group on International Collaboration on Policies for Building More Transparent Resilient and Sustainable Supply Changes)」を設置することで一致しました。
明日は、自由で公正な貿易、公平な競争条件、経済的威圧やサプライチェーンの強靱化を含む経済安全保障などについて議論を行い、G7としての連携を確認する予定であります。また、明日の会合終了時には閣僚声明を発出し、議長国による記者会見を行う予定であります。
私(大臣)からは以上です。
質疑応答
【記者】今回の会合では、「経済的威圧」についても議論が交わされるものと思いますが、どのように議論をリードしていくお考えか、また、中国の処理水をめぐる日本産水産物の禁輸措置について日本としては会合でどのように訴える予定なのか、大臣のお考えをお願いします。
【上川外務大臣】経済的威圧や、公平な競争条件を歪める非市場的政策及び慣行は、自由で公正なルールに基づく多角的貿易体制への最大のチャレンジであり、国際社会が連携して対応すべき課題であると考えております。
本日のセッションでは、私からはその旨を述べたところでありますが、明日午後のセッションにおきましても、こうした観点からG7で更に議論を重ね、G7の共通理解を深めるとともに、G7共同の取組を具体的に議論してまいりたいと考えております。
また、ALPS処理水の海洋放出に関しましては、我が国は、安全性を最優先にしながら実施しているところであります。加えて、高い透明性を持って科学的根拠に基づく説明を誠実に行っており、本日のセッションでも、参加国・機関に対しまして、こうした点につきまして改めて説明を行ったところであります。
日本産水産物に対する輸入規制措置につきましては、明日のセッションにおきまして、科学的根拠に基づく冷静な対応が必要とされる点を改めて提起してまいりたいと考えております。
【記者】来月にはAPEC首脳会議が予定されていますけれども、今回のG7貿易相会合での議論も踏まえて、どのような議論や成果を期待するでしょうか。また、APECでは閣僚会議も予定されていますが、大臣ご自身の出席について、調整状況について教えてください。
【上川外務大臣】来月開催されますAPEC首脳・閣僚会議におきましては、本年の議長である米国が掲げました、「全ての人々にとって強靭で持続可能な未来を創造」というテーマの下、包摂的かつ持続可能な成長について議論が行われる予定でございます。
今回のG7大阪・堺貿易大臣会合の成果も踏まえつつ、開かれた、そしてダイナミックで、強靱かつ平和なアジア太平洋共同体に向けた議論を主導してまいりたいと考えております。
APEC閣僚会議への出席につきましては、現在調整中であります。
【上川外務大臣】まず、現時点でイスラエル政府から本格的な地上侵攻を開始したとの発表はなされていないと承知しておりますが、いずれにせよ、現地の緊張度は刻一刻と増しており、情勢は全く予断を許さない状況であります。我が国といたしましても、深刻な懸念をもって情勢を注視しているところであります。
従来から申し上げているところでありますが、我が国は、ハマス等によるテロ攻撃を断固として非難した上で、3つの方針、1つ目は人質の即時解放・一般市民の安全確保、第2にすべての当事者が国際法を踏まえて行動すること、そして3点目、事態の早期沈静化を一貫して求めてきているところであります。
我が国といたしましては、事態の早期沈静化、人道的休止及び人道支援活動が可能な環境の確保に向けまして、各国と連携しつつ、関係者に働きかけるなど、積極的に取り組んでいく所存でございます。昨日も私(大臣)からコーヘン駐日イスラエル大使に対しまして、人道的休止及び人道アクセス確保のための協力を直接要請したところであります。また、イスラエル及びパレスチナの情勢は非常に流動的でありまして、政府として、引き続き、邦人の方々の安全確保のために全力を挙げて対応して参る所存です。
また、ご指摘頂いたハマス資産凍結等につきましては、事柄の性質上、お答えは差し控えさせていただきます。
また、日本時間28日朝、国連総会の緊急特別会合におきまして、ガザ情勢に関する総会決議が採択されたところであります。
本決議案には、ガザの人道状況に対処するための重要かつ前向きな要素が含まれており、我が国として支持できる内容も含まれておりました。
一方で、テロ攻撃への強い非難に関する言及がなく、全ての加盟国が国際法に従って自国及び自国民を守る権利の重要性に関する言及がないなど、全体として、内容面でバランスを欠いているところであります。
こうした理由から、我が国として総合的に判断いたしまして、本決議案には棄権いたしました。
安保理は国際の平和及び安全の維持に主要な責任を負っているところであります。安保理が本件事態への対応にしかるべき役割を果たすことが重要との考えに基づきまして、我が国はこの安保理の一員として、引き続き他の理事国とも連携をし、積極的な役割を果たしていく所存でございます。