記者会見
林外務大臣臨時会見記録
(令和5年9月7日(木曜日)16時44分 於:サウジアラビア・リヤド)
冒頭発言
【林外務大臣】9月3日から5日間にわたりまして、ヨルダン、エジプト、サウジアラビアをそれぞれ訪問し、アラブ連盟での第3回日アラブ政治対話、そして第1回日・エジプト・ヨルダン三者閣僚級協議、そして第1回日・GCC外相会合に出席をいたしました。また、これら会合のマージンで、計13の二国間会談を行いました。
今回の歴訪では、中東地域を含む国際社会が歴史的な転換期にある中で、それぞれの訪問地において、ロシアによるウクライナ侵略、中東、東アジア情勢等の地域・国際情勢について率直な意見交換を行いまして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた連携を確認をし、日本として、中東地域の平和と安定及び発展に引き続き貢献していく、こういう考えをお伝えしたところでございます。また、ALPS処理水の海洋放出について説明をし、各国から日本の取組への理解と信頼が表明をされました。
最初の訪問国のヨルダンでは、アブドッラー国王陛下、また、ハサーウネ首相をそれぞれ表敬し、地域及び国際社会の平和と安定に向けまして、引き続き、緊密に連携していくことで一致をしました。
また、サファディ外相との間で第4回外相間戦略対話を実施いたしました。3月に東京で実施した第3回対話を踏まえまして、戦略的パートナーシップを更に発展させるため、政治・経済・安全保障・難民支援等、幅広い分野で一層の関係強化に取り組むことで一致をいたしました。
次の訪問国エジプトでは、エルシーシ大統領への表敬、そしてシュクリ外務大臣との会談を行いました。4月の岸田総理のエジプト訪問時に「戦略的パートナーシップ」に格上げをされた二国間関係を、経済、経済協力、国際場裏における連携等幅広い分野で一層深化させていくことで一致をいたしました。
アブルゲイト・アラブ連盟事務総長とも会談をし、日本とアラブ連盟との間で、経済、文化、人物交流等の協力を進めていくということで一致をいたしました。さらに、第3回目となる日アラブ政治対話を開催いたしまして、国際社会が歴史的な転換点にある中で、アラブ諸国との間で、地域・国際社会の諸課題に共に取り組む「パートナー」の関係を築きたいということを訴えました。
具体的には、次の3本柱、すなわち中東諸国との中長期的・多角的な経済関係強化、そして、パレスチナを始め地域の平和と安定に向けた取組、そして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた取組をもって協力を深めたいと、という考えを伝えまして、力強い賛同をいただきました。その後、初となる日・エジプト・ヨルダン三者閣僚級協議を開催し、レバノン、パレスチナ及びイラクに対するこれまでの三者協力の進捗を確認をし、今後の協力分野や対象国・地域を拡大していくことで一致をいたしました。
さらに、ここサウジアラビアでは、日・サウジアラビア外相級戦略対話の第1回会合及び日・GCC外相会合第1回会合に出席をいたしました。日・サウジアラビア外相級戦略対話では、ファイサル外相との間で先般の岸田総理のサウジアラビア訪問の成果を踏まえまして、引き続き「日・サウジ・ビジョン2030」の下で、脱炭素化、投資、観光、教育といった分野で協力を一層拡充するとともに、国際社会が直面する諸課題の解決に向けて、一層緊密に連携していくということで一致をしました。
日・GCC外相会合では、日・GCC間で2024年から2028年までの行動計画を更新し、政治、安全保障、貿易・投資、エネルギー、文化等を含む幅広い分野で協力を進めていくということで一致をしました。また、産業界の期待の大きい日・GCC・FTA交渉にきまして、2024年中の再開に向けて調整を進めていくことを改めて確認しました。
また、いずれの会合でも、現下の厳しい国際エネルギー市場を踏まえまして、石油や天然ガスの安定供給と増産への協力も要請をいたしました。今回の中東訪問を通じて、各国との幅広い分野での関係強化に加え、ロシアのウクライナ侵略への対応を始め、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けた連携を確認することができました。今回の訪問を梃子として、中東地域との更なる協力の強化に向け取り組んでまいります。私からは以上です。
質疑応答
【記者】冒頭発言と重なってしまう部分もあるのですが、今回の中東3か国の歴訪を終えての全体としての総括や所感、訪問の意義について改めてお願いいたします。
【林外務大臣】中東地域を含む国際社会が歴史的な転換期にある中で、地域の主要国であるこれら3か国を訪問し、各国との幅広い分野での関係強化、これを確認するとともに、ロシアのウクライナ侵略への対応を始め、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて、連携することを確認できたということであります。
そして、エジプトで開催された第3回日アラブ政治対話におきまして、今後の日アラブ協力について、3本の柱に基づいて進めていきたいと呼びかけたところ、多くの参加国が、地域の平和と安定に向けたこれまでの日本の支援、これを高く評価するとともに、日本との更なる協力の深化について強い期待を表明されました。改めて日・中東諸国間での更なる協力の拡大、これが可能であることを実感いたしました。
同様に、サウジアラビアでは、日・サウジアラビア外相級戦略対話の第1回会合、そして日・GCC外相会合の第1回会合にそれぞれ出席いたしましたが、各国からは、日本との更なる協力強化に向けた強い期待が示されたところであります。
今回の訪問を梃子として、中東地域との更なる協力強化に向け取り組んでまいりたいと思っております。
【記者】サウジとの外相級戦略対話、それから定例化されて始めてとなる、日GCC外相級会合など、初めてとなる会談がいくつかございました。処理水に対する支持が表明されたりですとか、FTA交渉の確認があったりとか、たくさん手応えがあったのではないかと思いますけれども、今後の進展の見通しや期待についてお聞かせください。
【林外務大臣】サウジアラビアを含むGCC諸国は、今日、アラブ・イスラム諸国の外交政策の議論におきまして、主導的な役割を担うようになっております。国際社会のパワーバランスが変動する中で、エネルギーの安定供給の観点留まらず、国際社会の諸課題の解決においてサウジアラビアを含むGCC諸国との協力はより一層重要となってきております。
こうした中で、本年7月の岸田総理の中東訪問における諸合意に基づきまして、今回初となる日・サウジアラビア外相級戦略対話そして日・GCC外相会合を短期間で開催できたこと、そして、地域及び国際情勢について率直な意見を交わし、日本の考えや立場を伝えるとともにですね、今後の協力の在り方について議論できたことは極めて意義が大きいと考えます。
当然、今ご質問にもあったような、我が国の説明に対するALPS処理水についての支持、理解、またFTAの再確認についても、意義があったと考えております。
今回のような日・サウジアラビア外相級戦略対話及び日・GCC外相会合を今後も重ねていってですね、サウジアラビアを含むGCCとの協力・連携、これを一層促進していきたい。と考えております。
【記者】今回訪問されましたエジプト、それからサウジアラビアは中国、ロシアが参加するBRICsに先般加盟が認められました。アラブ諸国の中ではそうした中露への接近が指摘される面もございますけれども、こうした情勢の中で、中東で、日本がさらに存在感を発揮するためにはどういったことが必要だとお考えでしょうか。
【林外務大臣】これまで日本はですね、中東の平和と安定に向けて、特定の価値観を押しつけることなく、現地のニーズに即した息の長い支援を実施して参りました。これによって長年にわたり中東諸国との間で信頼関係を築き上げてくることができたということでございます。今回の訪問でも、日本への信頼や期待が非常に強いことを実感をいたしました。
中東の繁栄イコール日本の繁栄につながる。こうした信念に基づいて、引き続き地域の平和と安定に向けた支援を継続するとともにですね、これまで築いてきた信頼関係を基礎として、政治、経済、文化、教育、エネルギー等幅広い分野に協力の裾野を広げていきたいと考えております。
また、中東地域を含む国際社会が歴史的な転換期にある中で、閣僚レベルでの対話を一層強化していくことが不可欠であると考えております。地域におけるFOIPへの理解の普及も通じて、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持・強化に向けて中東地域と協働すべく、今後も取り組んでまいりたいと考えております。