記者会見
林外務大臣会見記録
(令和5年3月10日(金曜日)15時21分 於:本省会見室)
冒頭発言 MPIA(多数国間暫定上訴仲裁アレンジメント)への参加
【林外務大臣】午前中に報道発表を行ないましたが、本日の閣議におきまして、WTOの紛争解決制度における上級委員会が、現在、機能停止をしていることを受けまして、我が国として、多数国間暫定上訴仲裁アレンジメント、MPIAに参加することが閣議了解をされました。
MPIAは、WTO協定が定める仲裁制度をもって、上級委員会の機能を代替させるべく、EUを始めとする有志国が立ち上げました暫定的な枠組みであります。
WTOの紛争解決制度の予見可能性を高めて、ルールに基づく多角的貿易体制を維持・強化する観点から、今般、このアレンジメントに参加することとしたものであります。
なお、我が国は、これまでも、WTOの紛争解決制度、これを改革すべく、国際的な議論に積極的に参加してきました。引き続き、WTO改革に向けた取組を主導してまいります。
私(林大臣)からは以上です。
日韓首脳会談
【NHK 岩澤記者】日韓首脳会談について伺います。政府は、来週、日韓首脳会談を行うと発表しましたが、今回の会談で期待される成果は何か伺います。
また、首脳会談に同席するかも含めて、大臣が韓国の尹(ユン)大統領の訪日に、どのように関与するかも併せてお願いします。
【林外務大臣】3月16日から17日まで、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領及び同令夫人が訪日予定でございますが、その際に行われる日韓首脳会談の内容、また、私(林大臣)の同席等について、現時点で私(林大臣)から予断をもってお答えすることは差し控えたいと思います。
韓国は、国際社会における様々な課題の対応に協力していくべき重要な隣国であります。今回の訪日に際して、首脳同士で、率直なやり取りが行われて、国交正常化以来の友好協力関係に基づき、日韓関係が、更に発展するということを期待しております。
北朝鮮による短距離弾道ミサイル発射への日米韓の対応
【産経新聞 岡田記者】昨日、北朝鮮が9日に、朝鮮半島の西側の海域に向けて、短距離弾道ミサイルを発射しました。昨日は、先ほどもありましたけれども、韓国の尹大統領の訪日が発表されまして、日韓関係は正常化に向かっている中ですが、また、日米韓の安全保障協力というのも進んできていると思いますが、今後、その日米韓、日韓、また、日米での、その北朝鮮をめぐって、どのように対応して、連携を強化していくお考えか改めて教えてください。
【林外務大臣】御指摘の、ミサイル発射に関する韓国軍当局の発表や、北朝鮮の発表、承知しておるところでございます。
日韓は、北朝鮮への対応を始め、国際社会における様々な課題への対応に協力していくべき重要な隣国同士であります。来週には、尹大統領の訪日も予定されているなど、尹政権の発足以降、日韓間では、首脳間を含めて、緊密な意思疎通が行われてきております。日本政府として、現下の戦略環境に鑑み、安全保障面を含めて、日韓・日米韓の戦略的連携を強化してまいります。
今後とも、日米、日米韓で緊密に連携をいたしまして、国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行、これを進めて、北朝鮮の非核化を目指します。
日韓関係(旧朝鮮半島出身労働者問題、レーダー照射)
【共同通信 植田記者】関連して日韓関係についてお伺いします。元徴用工問題をめぐる韓国政府の解決策発表を受けまして、関係改善に向けた機運が高まっていますが、日韓がなお抱える、韓国海軍による自衛隊のレーダー照射問題や、輸出管理強化措置などの懸案に、どのように取り組む考えかお伺いします。
また、韓国側は、今回の尹大統領の来日に、経済界の代表団が同行します。経団連との会合の予定の有無や、日韓の経済界の交流に対する期待について、見解をお伺いします。
【林外務大臣】韓国は、国際社会における様々な課題への対応、これに協力していくべき、重要な隣国でございます。今回の訪日に際して、首脳同士で率直なやり取りが行われ、国交正常化以来の友好協力関係に基づき、日韓関係が、更に発展することを期待しております。
レーダー照射事案でございますが、防衛省・自衛隊として、再発防止も含めた懸案の解決のために、引き続き、韓国側と緊密に意思疎通を図っていく考えというふうに承知しております。
また、2019年7月に公表いたしました、韓国向け輸出管理の運用見直しは、安全保障の観点から輸出管理を適切に実施するために、実施したものでございます。
今般、輸出管理に関する日韓の懸案事項につきまして、日韓双方が、2019年7月以前の状態に戻すべく、関連の二国間の協議を速やかに行っていく、ということにしたところでございます。
国会開会中の閣僚の外国訪問
【読売新聞 阿部記者】G20外相会合の対応を巡って、今週の7日に、自民党と公明党の幹事長・国対委員長が会談して、国会開会中の閣僚の海外出張について、柔軟に認めるべきだという認識で一致しました。これから、野党とも対応を協議するということですけれども、今回のG20外相会合での大臣の欠席を受けての、与党のこうした動きをどう受け止めますか。ご見解をお聞かせください。
【林外務大臣】国会開会中の閣僚の外国訪問につきまして、国会において様々な動きがあるということは承知しております。
国会対応、そして海外出張含めた外交活動も、共に重要でございます。今後とも、国会のを御理解を得つつ、積極的な外交活動を展開していきたいと考えております。
古賀誠元幹事長発言
【朝日新聞 上地記者】昨日収録されたテレビ番組で、宏池会の元会長である古賀誠元幹事長が、将来の総裁候補や宏池会の継承者として、林大臣の名前を挙げました。そのことに対する受け止めと、このような期待に、どう答えるかお考えをお聞かせください。
【林外務大臣】御指摘の報道は承知しております。外務大臣として、この場でコメントすることは差し控えたいと思います。その上で申し上げれば、宏池会座長として、また岸田内閣の外務大臣として、今与えられた職責、これをしっかりと果たしてまいりたいと考えております。
ALPS処理水
【ロイター通信 ムラカミ記者】
(以下は英語にて発言)
福島第一原子力発電所の事故から明日で12年を迎えます。今年ALPS処理水を海洋放出する決定については理解を示している国もありますが、懸念の声も聞かれます。例えば、日本がALPS処理水を海洋放出した場合、香港政府(ママ)は福島県産海産物の輸入停止を検討していると報道されています。ALPS処理水の海洋放出に対する懸念を和らげるために日本が行っている取組について、どの程度成功していると思われますか。また、未だ懸念の声が聞かれることについてどのようにお考えですか。よろしくお願いいたします。
【林外務大臣】ALPS処理水の取扱いについてですが、日本はこれまで国際法を厳守し、国際慣行を十分踏まえて、環境及び人の健康と安全への影響を最大限に考慮した措置をとってきております。こうした対応については、高い関心を有している近隣諸国・地域を含めた国際社会に対しまして、科学的根拠に基づき、透明性を持って丁寧に説明してきております。
こうした中で、2月に行いました日・ミクロネシア首脳会談で、パニュエロ大統領は、海洋という共有資源を傷つけないという日本の意図、また技術力への深い信頼とともに、日本の取組を認め、以前ほどの恐れや懸念は、もはや有していないと、こう表明されたところでございます。
さらに、先般訪日されましたクールシ国連総会議長に対し、私(林大臣)から説明をいたしまして、先方から理解が示されたところでございます。
ALPS処理水の海洋放出は、環境及び人の健康に害がないということ、これをしっかりと確保した上で実施をされるわけでございます。今後も、専門的知見を有するIAEAによるレビューを受けつつ、あらゆる機会を通じて、科学的根拠に基づいて、高い透明性を持って国際社会に説明し、理解醸成に取り組んでまいりたいと考えております。
日韓のシャトル外交
【NHK 岩澤記者】日韓のシャトル外交について伺います。日韓の首脳による相互訪問は、国際会議などを除いて2011年を最後に行われていませんが、日韓関係にとって、このシャトル外交の重要性をどのようにお考えでしょうか。また、来週行われる日韓首脳会談を機に、このシャトル外交が再開するご期待は、大臣はお持ちでしょうか。
【林外務大臣】3月16日から17日まで、韓国の尹錫悦大統領及び同令夫人が訪日予定でありますが、その際に行われる日韓首脳会談の内容について、今お尋ねのあった件も含めて、現時点で私(林大臣)から予断をもってお答えすることは差し控えたいと、こういうふうに思っております。
中国の全人代における習近平・国家主席の選出
【共同通信 植田記者】日中関係についてお伺いします。中国の全人代は10日、全体会議を開き習近平(しゅう・きんぺい)国家主席の3選を代表の投票で決めました。日本政府の受け止めと、祝電を送るなどの考えがあるのか、対応をお伺いします。
【林外務大臣】本日、第14期全国人民代表大会におきまして、習近平・総書記が国家主席として選出されたというふうに承知しております。
中国との間には、様々な可能性とともに数多くの課題や懸案、これが存在しております。同時に日中両国は、地域と世界の平和と繁栄に対して、大きな責任を有しているわけでございます。
中国とは、昨年11月の日中首脳会談で得られた前向きなモメンタムを維持しながら、主張すべきは主張し、責任ある行動を強く求めつつ、諸懸案を含めて、首脳間を始めとする対話をしっかりと重ね、共通の課題については協力する、「建設的かつ安定的な関係」、これを日中双方の努力で構築してまいります。
なお、選出されたことを受けまして、これまでの両国間の慣例にのっとり、岸田総理から祝電を発送しております。