記者会見
林外務大臣会見記録
(令和4年3月15日(火曜日)15時01分 於:本省会見室)
冒頭発言 ウクライナ情勢(対露制裁措置)
【林外務大臣】ロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナの主権と領土の一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法に深刻に違反するとともに、力による一方的な現状変更を認めないとの国際秩序の根幹を揺るがすものであり、断じて認められず、我が国は最も強い言葉でこれを非難いたします。
このようなウクライナをめぐる現下の情勢を踏まえ、我が国として、ロシア国家院関係者や財閥関係者等のロシア連邦関係者に対する資産凍結等の追加的な措置をとることにし、本日、必要な閣議了解を行ったところであります。
今後も、我が国として、事態の改善に向けて、G7始めとする国際社会と連携して取り組んでまいります。私(林大臣)からは以上でございます。
ウクライナ情勢(中国によるロシア支援の可能性)
【朝日新聞 野平記者】ウクライナ情勢についてお伺いします。中国側が、ロシアの要請に応じて、軍事的・経済的な支援を行う意思を示したとの報道があります。 これについての大臣の受け止めと、あと、米国がこうした情報をNATOの加盟国やアジアの同盟国に伝えたという情報もありますが、日本にも伝達があったのでしょうか、お聞かせください。
【林外務大臣】御指摘のような中国が、ロシアへの軍事支援や経済支援について前向きいな姿勢を示している旨の報道は承知をしております。
報道の逐一についてコメントをすることは差し控えますが、いずれにせよ、ロシアによるウクライナ侵略は、ウクライナ主権と領土一体性を侵害し、武力の行使を禁ずる国際法に深刻に違反するものであります。力による一方的な現状変更を認めないという国際秩序の根幹を揺るがす行為であり、明白な国際法違反であり、強く非難をいたします。
ロシアによるウクライナ侵略について、今こそ、国際秩序の根幹を守り抜くため、国際社会が結束して毅然と対応することが必要であり、米国を始めとする同志国と連携して、中国に対しても責任ある行動を求めてまいります。
【産経新聞 千葉記者】今の質問に関連してなんですけれども、中国、もしくはこれ中国以外の国でもいいんですけれども、ロシアを軍事的・経済的に支援していることが明確になれば、その国に対する何らかの制裁を科すことを検討するお考えはございますでしょうか。
【林外務大臣】先ほど、中国に関する報道についてお答えしたとおりでありますが、我が国は、現在、ロシアに対する制裁、そして、ロシアのこの侵略に対して明白な共同行動をとっているベラルーシについては、既に制裁を行ってきているところでございます。 その他のことにつきましては、仮定の質問でございますので、お答えを差し控えさせていただきたいと思います。
林大臣の外国訪問(トルコ)
【アナドル通信 フルカン記者】日本政府は、ロシア・ウクライナ危機の早急な解決に向けて努力すると宣言した。林大臣のトルコのカウンターパートは、戦争でロシアとウクライナの外務大臣を集めることに成功しました。結局、両国はテーブルに座ることができました。会議では、外交の難しさなど、多くの問題が話し合われました。
日本外務大臣も週末にトルコに訪問する予定である発表されました。この段階で、トルコ訪問から、日本政府として何を期待しますか。具体的には、トルコ側に、トルコのカウンターパートに、どのような外交を提供する予定ですか。
【林外務大臣】私(林大臣)の外国出張については、検討中でございます。
その上でございますが、御質問があったトルコは、地政学上の要衝にあり、地域情勢にも影響を有する、そして、日本にとっては伝統的な友好国でございます。いずれも日本の戦略的パートナーとして、大変重要な国だと考えております。
今、お話があったように、このウクライナ情勢との関係でも、10日に、トルコが仲介する形で、ロシアとウクライナの外相会談が実施をされまして、それぞれ役割を担っておられるということを、評価をしておるところでございます。
林大臣の外国訪問(アラブ首長国連邦(UAE))
【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
今の記者の質問に関連するのですが、恐らく来週予定されているUAE訪問の意義、及び目的を教えてください。日本が石油の輸入を拡大しようとしているサウジアラビアを始め、今回の外遊で他国を訪問する可能性はあるでしょうか。
【林外務大臣】先ほど申し上げたとおり、私(林大臣)の外国出張については、検討中でございます。
その上で、御質問に出てまいりましたUAE、これは日本が輸入をする原油の約3割を供給しているということで、日本の戦略的パートナーとして、大変重要な国だというふうに認識をしております。
また、現下のウクライナ情勢との関係でも、UAEは、国連の安保理非常任理事国を務める、というような役割を担っておられるというふうに評価をしております。
NPT運用検討会議
【中国新聞 樋口記者】8月に正式に開催が決まりましたNPT再検討会議について伺います。まさに、今のウクライナ情勢踏まえて、ロシアが、そういう核による威嚇というのを続けている中で、やはりその被爆国として、どういうふうに核軍縮を進めていくのかというのが問われていると思うんですけれども、日本政府として、その会議はもちろんなんですけど、その会議に向けて、果たすべき役割についての御見解をお願いします。
【林外務大臣】NPTの運用検討会議でございますが、今年の8月1日から26日の日程で、ニューヨークで、国連本部において開催されることがコンセンサスにて決定をされました。NPTは、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石であります。ウクライナ情勢についても、今お触れになっていただきましたけれども、このような状況だからこそ、NPT体制を維持、そして強化するということが、今まで以上に求められておるというふうに考えております。
唯一の戦争被爆国としても、この運用検討会議において、意義ある成果が収められるように、引き続き、全力を尽くしてまいりたいというふうに考えております。
ウクライナ情勢(避難民の受入れ)
【読売新聞 阿部記者】ウクライナから日本に避難することを希望している避難民の受入れについてお尋ねします。各省庁、横断的に取り組むことになると思いますが、外務省として、どういう面で取り組んでいくか、あと、その受入れの意義について、どうお考えかお答えください。
【林外務大臣】我が国は、主権と領土、そして祖国と家族を守ろうと懸命に行動するウクライナの国民と共にあります。こうした観点から、困難に直面するウクライナの人々に対する人道支援として、1億ドルの緊急人道支援の実施を決定したほか、ウクライナとの更なる連帯を示すため、ウクライナから第三国に避難された方々の我が国への受入れ、これを進めているところでございます。
ウクライナからの避難民を受け入れるに当たっては、内閣官房が司令塔となって、法務省、外務省等の関係省庁が連携して、受入れ規模ですとか、避難民への支援の在り方等について、政府全体として、対応を至急検討しておるところでございます。
日本政府は、G7始めとする国際社会と連携しながら、困難に直面するウクライナの人々に寄り添った支援を実施してまいりたいと思っております。
ウクライナ情勢(ロシアの最恵国待遇否定)
【共同通信 前田記者】ロシアの最恵国待遇からの取消しについてお伺いします。先日のG7の首脳声明にも盛り込まれていましたが、ロシアの最恵国待遇からの取消しについて、党内からは、まあ急ぐべきだという声も上がっております。現在の検討状況と、これ法改正が必要なるかどうか、そういったところの見解をお願いいたします。
【林外務大臣】WTO協定上の最恵国待遇には、関税のみならず、輸出入規則や手続など、様々なものが対象になるというふうに承知をしております。我が国はこれまで、G7を始めとする国際社会と緊密に連携して、迅速に、輸出規制を始め、厳しい措置を打ち出してきております。
今後のさらなる具体的な措置の在り方については、引き続き、我が国として、今後の状況を踏まえつつ、G7始めとする国際社会と連携して、適切に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
NPT運用検討会議
【中国新聞 樋口記者】NPTに関連して、まず林大臣が、今の時点で、このNPTに出席して、そういった核軍縮の貢献ということに対して、責任を果たされるお考えがあるのかということと、ロシアが今、明白にというか、核の威嚇というのは、その核保有国に軍縮というのを課しているNPTを揺るがす行為だと思うんですが、ロシアに対して抗議をしたりとか、そういう考えがあるかどうか、この二つをお願いします。
【林外務大臣】まず、この8月に開催が決定されましたNPT再検討会議への日本政府からの出席者については、今後、然るべく検討していきたいと考えております。
また、今回のロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みでありまして、国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難をいたします。 特に、その中で、ロシアが核抑止力部隊の態勢引き上げ、これを決定したことは、情勢の更なる不安定化に繋がりかねない危険な行動であると考えております。我が国は、唯一の戦争被爆国として、核兵器による威嚇も、ましてや使用もあってはならないということを強く訴えていきたいと考えております。
いずれにしても、NPT運用検討会議は「核兵器のない世界」に向けて前進するための貴重な機会であります。同会議で、意義ある成果が収められるように、引き続き全力を尽くしてまいる考えでおります。
国連安保理改革
【朝日新聞 野平記者】国連の安保理改革についてお伺いします。岸田首相が、13日の自民党大会で、国際秩序の再構築というのを掲げられました。政権下で安保理改革の実現を目指すとされています。常任理事国のロシアが拒否権を持つ中で、その機能不全というような指摘もあると思うんですが、大臣として、今、安保理どのような問題があると考えられているかという点と、具体的に、安保理改革をどのような点を改革していくべきだと考えているか、お考えをお聞かせください。
【林外務大臣】国際社会の平和と安全の維持に大きな責任を持つ安保理の常任理事国であるロシアの暴挙、これは、新たな国際秩序の枠組み、この必要性を示していると考えております。
安保理改革については、我が国は、長年、安保理改革の必要性これを訴えて、積極的に活動してきたところでございます。
各国の複雑な利害、これが絡み合う安保理改革、これは簡単ではありませんけれども、岸田政権のもとで、引き続き、多くの国々と協力し、日本の常任理事国入りを含む安保理改革の実現、これに全力を挙げていきたいと考えております。