記者会見
茂木外務大臣会見記録
(令和3年2月5日(金曜日)17時42分 於:本省会見室)
北方領土交渉
【NHK 山本記者】明後日、2月7日が北方領土の日ということで、日露の平和条約交渉と共同経済活動の基本的なところで伺いたいんですけれども、この1年、コロナの影響があって、対面での交渉とか協議、事務レベルも含めてですけれども、難しい状況が続いていると思いますけれども、この交渉の進展ですとか、共同経済活動の事業化に向けて、現状、交渉状況はどのようになっていて、今後どのような見通しを描いていらっしゃるのでしょうか、お願いします。
【茂木外務大臣】確かに昨年を振り返ってみますと、その前の年、2019年の末に、モスクワで交渉責任者でありますラヴロフ外相と8時間にわたる交渉など、会談を重ねてきました。今後に向けた展開が見えてきた矢先で、昨年、新型コロナの世界的な感染拡大ということで、それ以降の対面の協議が進められなかったということは残念でありますが、昨年10月の外相会談でも平和条約交渉を含め、引き続き議論を重ねていくということで一致をしておりますし、菅総理とプーチン大統領の間でも、しっかり平和条約交渉を含めて、日露間のやり取り、継続していくということで一致していると、このように理解をいたしております。
正直申し上げて、戦後70年以上も残された課題の解決、これは容易ではないと考えておりますが、これまでの交渉を通じて、両国で一致できる部分、また、立場が異なる部分も明確になってきている、このように感じておりまして、交渉責任者として領土問題を解決して、平和条約を締結するという目標に向かって、引き続き全力で取り組んでいきたいと、そんなふうに思っております。
更に四島での事業、更には人道的な措置につきましても、昨年はコロナの影響でほとんど実施をできなかったわけでありますが、コロナの状況、これが改善をしましたら、再び再開をするということで一致をしておりますので、いずれにしても、しっかり日露間であったりとか、当局の間、関係者の間で、これからも準備に向けたいろいろな協議を進めていきたいと思っています。
ミャンマー情勢(制裁の可能性)
【読売新聞 福田記者】ミャンマー情勢についてお伺いします。スー・チー氏らの拘束を巡って、米国政府が制裁の再開についても示唆しています。スー・チー氏らの拘束が長期化した場合、日本政府としても制裁を検討するのかどうか、この点についてお願いします。
【茂木外務大臣】まず、日本として、ミャンマーにおいて緊急事態宣言がなされて、民主化プロセスが損なわれる事態が生じていることに対して、重大な懸念を有しているところでありまして、事案発生当日に、その旨の外務大臣談話、これを既に発出をいたしております。
日本はこれまでミャンマーにおける民主化プロセス、これを強く支持し、その進展に向けた支援を行ってきておりまして、これに逆行する動きは極めて残念だと考えております。
おそらく国際社会の中でも、日本は国軍を含めミャンマー側に様々な意思疎通のルートを持っている国でありまして、一昨日、日英の「2+2」、そこでも「日本はどう見ているんだ」、こういった質問をかなり受けたりもしましたので、国際的にそういう認識もあるのだと思っております。
昨日もちょうど昼休みに、現地の丸山大使に、現地の邦人の安全の状況もありますから連絡を取って、今後の進め方等々、指示をしたところでありますが、ミャンマーにおいて民主的な政治体制が早期に回復されることを、改めて国軍に対して強く求めていく方針であります。
まずはそういったコミュニケーションをとって、その上でのミャンマーの動向等々を見極める必要があると思っております。そういった事態の推移を注視しながら、また関係国とも連携をしながら、G7での外相の共同声明も出しているわけでありまして、今後の対応というのは考えていきたいと思っています。
日本版マグニツキー法
【読売新聞 福田記者】関連してですね、与野党から、日本版のマグニツキー法の制定を求める声も上がっています。この点について、大臣の見解をお願いします。
【茂木外務大臣】まず、日本は人権を普遍的な価値であって、人権擁護、これは全ての国の基本的な責務であると、そのように考えております。こうした考えの下、日本は深刻な人権被害に対してはしっかり声を上げる一方で、対話と協力を基本として、民主化であったり、人権擁護に向けた努力を行っている国との間では、二国間対話や協力を積み重ねて、自主的な取組、これを促してきたわけであります。
そういう中で、今お話があったような、一方的に人権侵害を認定して制裁を課すような制度、これを日本も導入すべきかについては、今申し上げたような日本のこれまでの人権外交の進め方との関係であったりとか、国際社会、全体の動向など様々な観点から、不断に分析検討していく必要があると思っております。
北アフリカ地域における日本のテロ対策
【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
北西アフリカ地域におけるテロについてお伺いします。昨4日にチュニジアにおいて同国軍兵士4名が死亡するテロ事件が発生したことにより、同地域においてテロが再発していると考えます。日本も同地域においては、8年前にアルジェリアにて日本人10名がテロ攻撃の犠牲となりました。大臣は、当時経産大臣だったと承知します。同地域におけるこのようなテロ攻撃の防止や、日本の利益の保護に向けた取組についてお聞かせください。
【茂木外務大臣】
(以下は日本語にて発言)
テロ、チュニジアで発生したわけでありますが、いかなる理由によっても正当化することはできず、日本はあらゆる形態のテロ行為を断固として非難をいたします。
日本は北アフリカ地域におけるテロ対策として、様々な取組をこれまでも実施をしてきております。お話があったチュニジアにおいては、国境管理能力の向上のための支援も実施してきておりますし、日チュニジア・テロ対話を実施して、治安当局も含む先方政府と様々な意見交換を行ってきております。
私も昨年の12月、チュニジアを訪問して、サイード大統領であったり、ムシーシー首相と会談をしまして、こうした治安分野を含めて、緊密に連携していくことを確認したところでありまして、今後も関係国とも連携しつつ、引き続き地域の平和と安定の実現に取り組んでいきたいと思っております。
ミャンマー情勢(国軍との意思疎通)
【産経新聞 石鍋記者】ミャンマー情勢に関連してお伺いいたします。大臣も先ほど、国際社会の中でも、日本は軍を含めて様々な意思疎通のルートがあるというようなことをおっしゃいましたけれども、今現在、すでに軍への呼びかけ、日本政府の考えを伝えるといったことも、実際にしているという理解でよろしいでしょうか。よろしくお願いします。
【茂木外務大臣】まさに今これ、非常にセンシティブなイシューであります。様々な形でのやり取りがどこまで進んでいるかにつきましては、ちょっと今日の段階ではコメントを控えさせていただきます。
バイデン米国大統領の外交方針演説
【産経新聞 石鍋記者】今日ですね、米国のバイデン大統領が外交演説を行いました。中国やロシアに対しては厳しい姿勢を示す一方で、日本を含む同盟国、あるいは有志国との連携を強調するような内容だったと思います。大臣の受け止めを改めてお願いします。
【茂木外務大臣】昨日のバイデン大統領の外交政策に関する演説でありますけれども、キーワード「アメリカ・イズ・バック(America is back)」という言葉でありまして、世界の様々な課題に対して、米国としてリーダーシップを発揮していくと、こういう意思を示しておりました。
また外交政策を展開していく上で、同盟国との連携というものが重要であり、日本を含めた同盟国の首脳と電話会談を行ったと、このことも言及しておりました。我が国としては、このようなバイデン政権、また、バイデン大統領の姿勢を高く評価いたしております。
私も先日、ブリンケン国務長官と電話会談を行った際も、地域情勢であったりとか、「自由で開かれたインド太平洋」の重要性について意見交換を行いまして、コロナ対策、気候変動などの、国際社会が直面する諸課題についても緊密に連携をしていくというところで一致しているところであります。
民主主義国間のつながりということで、G7の再活性化、これについても、意見の一致を見たところであります。今後も、菅総理とバイデン大統領、そして私(大臣)とブリンケン国務長官の間など、様々なレベルで日米間の連携を図って、日米同盟、より一層強化をするとともに、「自由で開かれたインド太平洋」をはじめ様々な協力を、日米を中心に、更に関係国も巻き込んでいきたいと、こんなふうに思っています。
WTO事務局長選挙
【NHK 山本記者】WTOの事務局長選についてですけれども、韓国の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長がですね、立候補を取り下げるという考えを明らかにしました。これで候補者はナイジェリアの候補者1人となるわけですけども、大臣、受け止めがあればお願いいたします。
【茂木外務大臣】韓国政府、今日、WTO事務局長選から辞退する意向を表明したと承知をいたしております。我が国は、新型コロナで回復途上にある世界経済の回復、更にはWTO改革を進めるという観点から、昨年の9月、アゼベド前事務局長が辞任して以降、空席が続いてきたWTOの事務局長を、できるだけ早く選出するよう、各国にこれまでも呼びかけてきたところであります。
昨年行われました選出手続におきまして、ナイジェリアのオコンジョ・イウェアラ候補が、幅広い多くの加盟国の支持を集めたことが確認をされているところでありまして、韓国政府、辞退をするということでありまして、今後、米国を含みます全ての加盟国が手続にしたがって、全会一致でオコンジョ候補を速やかに選出をして、山積する課題にともに取り組むことを期待いたしております。