記者会見
茂木外務大臣臨時会見記録
(令和7年11月12日(水曜日)15時25分 於:ナイアガラ地域(カナダ))
冒頭発言
【茂木外務大臣】先程、2日間にわたりますG7外相会合の全ての日程が終わったところであります。
今回のG7外相会合では、国際社会が直面する主要課題である中東・ウクライナ情勢に加え、我が国が重視をする自由で開かれたインド太平洋などについて、2日間、じっくりと議論を行いました。
国際社会の諸課題に対応していくに当たっては、自由、民主主義、法の支配といった基本的価値と戦略的利益を共有し、機動的かつ効果的に機能しているG7の役割は極めて重要です。このことはG7各国の外相と改めて確認をいたしました。
まずウクライナ情勢について、G7各国は即時停戦の重要性を確認し、公正かつ永続的な和平を実現すべく、G7として連携していくことを確認いたしました。私からは、日本は「ウクライナと共にある」との我が国の立場を改めて表明しました。各国と連携して、引き続きウクライナ支援と対露制裁に取り組んでいきたいと思っております。
中東情勢については、ガザ紛争終結のための包括的計画へのG7の支持、そして、全ての当事者が同計画に建設的に関与していくことの重要性を確認いたしました。私からは、二国家解決の実現に向けて、日本として早期復旧・復興支援等、パレスチナの「国づくり」にも積極的に役割を果たす決意を述べたところです。
インド太平洋情勢については、東シナ海・南シナ海情勢、北朝鮮の核・ミサイル問題を中心に議論を行いました。その中で、G7として法の支配に基づく自由で開かれたインド太平洋の重要性を改めて確認いたしました。加えて、私から拉致問題の即時解決に向けたG7各国の理解と協力を改めて求めました。
2日目の今日は、招待国も加わる形で、海洋安全保障やエネルギー安全保障と重要鉱物を巡る課題などについて議論を行いました。私からは、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」、これは海洋安全保障に関わる問題でありますけど、それからレアアースを含みます重要鉱物のサプライチェーン強靱化の重要性を強調し、G7及び同志国で協調していくことで一致をしたところであります。
また、この機会を活用して今年の議長国でありますカナダ、そして来年の議長国になりますフランス、さらには英国及びウクライナの外相と二国間会談の実施いたしました。
2日間にわたります議論を通じて、より幅広い分野で、安全保障環境が一層厳しさを増している、こういう認識を共有し、G7として緊密に意思疎通を行い、連携していくことがさらに重要となってきていることを確認したところであります。
最後に、今年一年のG7議長国カナダの取り組みに敬意を表するとともに、アナンド外相のおもてなしにも感謝したいと思っております。
質疑応答
FOIPに関する議論
【記者】今回のG7外相会合での「自由で開かれたインド太平洋」の議論について伺います。大臣は出発前に「G7の議論にインド太平洋の視点を打ち込んで具体的な協力を進めていきたい」と仰っていましたが、今回の会合で、「自由で開かれたインド太平洋」を巡ってどのような議論が行われ、大臣としてその議論をどのように評価されているか教えてください。
【大臣】今回のG7外相会合では、FOIP、この基本的な考え方はもちろんでありますが、この下でわが国が行っている、連結性の強化であったり、地域の能力構築といった実践的な協力についても説明をさせていただき、同志国での連携の重要性を訴えたところであります。日本がFOIPを提唱して、来年でちょうど10年を迎えることになるわけでありますが、G7及び招待国の外相に我が国ならではのインド太平洋の視点からの考え方をしっかり打ち込み、今後一層具体的な協力を進めていくために議論を深めることができたと考えています。
G7の構成から考えまして、ヨーロッパと北米の国、そして、アジアからは日本だけということでありまして、もちろんそれぞれの国がインド太平洋に関連をするわけでありますけど、その中でも一番中心にある国として、このインド太平洋で今起こっている様々な課題であったりとか問題、また協力等についても説明をさせていただいたところであります。
経済安保及び海洋安保に関する議論
【記者】冒頭御発言もありました経済安全保障の分野について伺います。会合の中でも主要な議題となったと思いますけれども、中国によるレアアースの輸出管理や、東シナ海・南シナ海での威圧的な行動に世界的な懸念が広がっています。G7の場で経済安全保障や海洋安全保障の分野でどのような議論があって、日本としてどのような立場を示したのか、個別会談でのやり取りも含め、各国とこれらの分野について連携をどのように深めていくか、お考えをお尋ねします。
【大臣】冒頭もお話ししましたけれど、今日2日目はG7各国に加えて招待国の外相とともに海洋安全保障、そしてエネルギー安全保障、重要鉱物、こういった問題を中心に、経済安全保障、この議論をかなり時間をかけて行ったところであります。特に私からは、経済安全保障について、特定国に依存しない強靭なサプライチェーンを構築することの重要性、これを強調し、多くの国から賛同を得られたところであります。
こうしたG7外相会合での議論や、また各国の個別会談において、情勢認識について私の方からかなり細かく説明もしましたし、共有するとともに、我が国として、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の重要性を強調したところであります。今後も海洋安全保障への脅威にどう協働して対処していくか、またサプライチェーンの強靭化を含む経済安全保障の取組について、遅れてる部分もあります、相当キャッチアップしていかなければいけない、同盟国・同志国やグローバルサウスの国々との連携、こういったものも深めていきたいと考えています。
欧州やカナダとの安全保障面での連携強化
【記者】大臣は今回の会合に合わせてカナダ、イギリス、フランスの外相と個別に会談されました。日本にとって米国との同盟が基軸ではありますが、近年は欧州やカナダとの安全保障面での連携が深まっています。大臣は欧州やカナダとの安全保障面での連携の重要性をどのようにお考えか、また大臣としてどのように取り組みたいとお考えか教えてください。
【大臣】ロシアによるウクライナ侵略、これは国際秩序の根幹を揺るがすものであることは何度も強調してきたところであります。そして、これは欧州にとどまるものではなく、欧州・大西洋でも起こっていることとインド太平洋の安全保障、これは不可分である、こんなふうに考えております。こうした状況の下で、我が国として基本的価値を共有する欧州諸国やカナダとの間で安全保障面での連携、これを米国に限らず進めることは重要だと考えております。
今回会談しました英国については、今年の夏に英空母打撃群が日本に寄港しましたし、また、日英伊のグローバル戦闘航空プログラムも進展をしているところであります。また、カナダとの間では、今年の7月に日本とカナダの情報保護協定が署名をされまして、昨日、私とアナンド外相との間で防衛装備品・技術移転協定への早期署名についても一致するなど、安全保障分野での協力も確実に進んでいるところでありまして、我が国としては「自由で開かれたインド太平洋」を外交の柱として、時代の変化に合わせて進化していく、こういった意味で言うと、米国はもちろん最大の同盟国でありますけれど、基本的な価値を共有する欧州の同志国やカナダとの連携強化が極めて重要になってきていると考えております。
大臣による動画発信
【記者】SNSでの情報発信について伺います。大臣は、10月に再び外務大臣に就任されてから、国際会議でショート動画を撮影し、発信されています。中には400万回以上の再生回数を上回るものもあり、今回のG7でも空港に到着された動画が100万回以上の再生回数になっています。こうした取り組みの狙いと反響の大きさについて、大臣の受け止めをお願いいたします。
【大臣】このSNSは急に大臣になって始めたわけではないんですけれど、我が国の外交の現場や最前線での取組をしっかり説明・発信をするということは、外交に対する国民の皆様の理解を得る上で極めて重要なことであると考えております。そして、これまでもSNSをいろいろとやってきてですね、時にはユーモアがあったりとか、非常に臨場感があったり、わかりやすい、こういう動画が再生回数多いんだなと、こんなふうに感じたところでありまして、外務大臣に就任して以来、外国訪問の機会を捉えて、例えば空港であったりとか、電車の駅であったりとか、またその途中の場面であったり、また会議全体が終わってから、その総括とかそのような機会に、できるだけ自分の言葉で発信をするようにしております。それが多くの国民に評価してもらえるということは大変嬉しいことだと思っております。
外交は国民の理解、そしてまた信頼があってこそ成り立つという意味で、これからも発信を強化していきたいと思っております。
台湾有事に関する総理発言
【記者】高市総理の国会答弁について伺います。台湾有事は存立危機事態になりうると国会答弁を巡って、野党側から軌道修正、撤回を求める声が出ています。中国は、内政に乱暴に干渉したと日本側に抗議したことを明らかにしています。この総理答弁への大臣の認識を伺いたいのと、関連して、大阪に駐在する中国の総領事のSNSへの投稿を巡って、自民党の外交部会などはペルソナ・ノン・グラータに指定することも含めた対応を政府に求め、一部の野党からも、同様の指摘が上がっていますけれども、今後の政府対応を伺いたいのと、また日中関係、これに与える影響についても教えていただければと思います。
【大臣】まず、いかなる事態が存立危機事態に該当するかについては、実際に発生した事態の個別具体的な状況に即して、政府が全ての情報をもとに総合的に判断するということになっております。総理の発言も、その趣旨で行われたものと理解をしております。
また、いずれにしても、台湾海峡の平和と安定は、日本の安全保障はもとより国際社会の安定にとっても重要であり、台湾を巡る問題が、対話により平和的に解決されることを期待する、これが我が国の一貫した立場であります。
また、御指摘の中国の大阪総領事の投稿は、在外公館の長の発信として極めて不適切であると考えております。外務省及び在中国大使館から中国側に対して、こうした投稿は極めて不適切である旨の申入れを行い、厳しく抗議し、関連の投稿の速やかな削除を求めるとともに、適切な対応を強く求めているところであります。その後、関連の投稿の一部は閲覧できない状況にあると承知いたしております。
中国の大阪総領事による複数回にわたるこういう不適切な発信は遺憾であり、先月末の日中首脳会談や日中外相電話会談でも確認をした、日中関係の大きな方向性に影響が出ないよう、中国側に対して引き続き、適切な対応を中国側が取るよう強く求めていくところであります。

