記者会見
林外務大臣会見記録
(令和4年4月12日(火曜日)15時58分 於:本省会見室)
ウクライナ情勢(東南アジア諸国との連携)
【毎日新聞 今野記者】対露姿勢に関して、アジアの諸国と共闘する姿勢を示すために大臣が自ら南アジアとかASEANの諸国と会談して、直接働きかけを強めるというお考えはありますでしょうか。
【林外務大臣】ロシアの侵攻後、2月28日でございますが、私(林大臣)自身、東南アジア諸国の駐日大使と会談をいたしました。ロシアのウクライナ侵略に対する日本の立場、これを詳細に説明するとともに、緊密に連携していくことで一致をいたしました。
これを皮切りに、様々なレベルで東南アジア各国への働きかけを重ねて、現地時間3月2日に、東南アジア各国からの賛成や共同提案国入りを得た、「ウクライナに対する侵略」決議が採択をされております。
最近で申し上げますと、この先週末ですが、日・フィリピン「2+2」を行って、私(林大臣)を含む日・フィリピンの外務・防衛4閣僚が「武力行使の即時停止及び部隊のウクライナ領域からの撤退」、これを求める強いメッセージを含む共同声明を発出をいたしました。
また、総理におかれても、直近では3月20日にカンボジアを訪問し、フン・セン首相との間で、同様の共同声明を発出をしております。
こうした機会以外にも、各国との電話会談等を行っておりまして、一つひとつ説明をすることはいたしませんが、今後も、様々な外交機会を活用して、東南アジア諸国との連携を強化してまいりたいと思っております。
日米豪印首脳会合/バイデン大統領の訪日
【読売新聞 阿部記者】バイデン米大統領が、インドのモディ首相とのオンラインの会談の中で、来月、日本を訪問する意向を示されました。ロシアによるウクライナ侵略、続いていますが、こういったタイミングで、大統領が日本を訪問する意義と、あとクワッドの開催も併せて行われる見通しだと思いますけれども、そのことの意義についてもお考えをお聞かせください。
【林外務大臣】日米豪印の首脳会合や、バイデン米大統領の訪日の具体的な日程は、決まっておりませんけれども、本年前半に実施すべく、現在然るべく調整中でございます。
まず、日米豪印ですが、ワクチンやインフラ、それから重要・新興技術などの分野で実践的な協力が既に進展をしてきております。このクワッドは、今や「自由で開かれたインド太平洋」に向けた重層的な取組の中で、中心的な役割を果たしていると言っていいと思います。現下の国際情勢も踏まえて、次回のこの日米豪印首脳会合では、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた協力への力強いコミットメントを、日本から世界に示していく機会としたいと考えております。
また、訪日が実現するということになりますと、バイデン大統領就任後の、初のインド太平洋地域への訪問ということになるわけですが、日米のインド太平洋地域に対するコミットメントを示して、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けた、日米の緊密な連携を確認する機会となるものと期待をしております。
ウクライナ情勢(中国の姿勢)
【朝日新聞 野平記者】先日のNATOの外相会談のことについてお伺いしたいんですけれども、この場で、大臣、中国について、今なおロシアを非難していないと述べられました。これまで、責任ある行動を呼びかけていくと、中国に対しては述べられてきたと思うんですけれども、今回、NATOの外相会合で、一歩踏み込んで、中国を名指しで批判された理由についてお聞かせください。
【林外務大臣】この今般のロシアによるウクライナ侵略に関する中国の立場や、対応の一つひとつについて、政府としてコメントすることは差し控えたいと思いますが、その上で申し上げれば、今、お話があったように、中国は、ウクライナへの侵略を非難する国連安保理決議案や、国連総会での決議案が採択に付された際に、棄権票を投じておりまして、今なおロシアを非難していないということでございます。更に、ロシアが提出した安保理決議案に、中国は、賛成票を投じているということでございます。
中国とロシアは、近年、緊密な関係を維持し、軍事協力も緊密化しており、その動向を関心を持って注視をしております。ウクライナ情勢に関しても、我が国として、中国に対して責任ある活動を呼びかけてきておりまして、引き続き、G7をはじめとした関係国と緊密に連携して対応していきたいと考えております。
中東和平
【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
私の質問は、別の侵略について、中東における侵略についてです。日本はパレスチナ人とパレスチナの和平プロセスについて、主導的な役割を果たしてきました。しかし、イスラエルが占領、軍事侵攻、侵略を続ける中、パレスチナ自治区の状況は悪化していると言われています。最近では、イスラエルの占領軍が4人のパレスチナ人を殺害し、殺害された者の中には6人の子供を持つ母親も含まれていました。今回の殺害は、テルアビブで起きたパレスチナ人による襲撃への復讐であったと思われますが、日本の立場をお聞かせください。また、大臣はイスラエルによる侵略が国際的な制裁の対象になるべきと思われますか。
【林外務大臣】報道によりますと、現地時間の7日に、イスラエルのテルアビブ中心部で発生した銃の乱射事件によって複数の死傷者が出ておりまして、現地時間の10日に、ヨルダン川西岸地区において、イスラエル兵士を刃物で刺したパレスチナ人女性など2人が、イスラエル国防軍により射殺されたというふうに承知をしております。
日本としては、これらを含めて、先月来、暴力行為や衝突により、イスラエル及びパレスチナで多数の死傷者が発生していることを、懸念を持って注視をしております。
日本は、イスラエル、パレスチナ両当事者の抱える問題は、暴力によって解決されるものでは決してなく、当事者間の交渉と相互の信頼を築く努力によってのみ解決をされるものと確信をしております。全ての関係者が、二国家解決に基づく和平への努力を形成する継続をすることの必要性を、改めて強調したいというふうに思っています。
ウクライナ情勢(駐日ロシア大使館外交官及びロシア通商代表部職員の国外退去)
【共同通信 前田記者】ロシアの外交官の追放に関してお伺いをします。外務省は、先週、ロシア大使館の外交官と代表部の職員ら8人の国外退去というのを要請したと思うのですけれども、この方々の出国の状況というか、どういう状況かというのを教えてください。
【林外務大臣】現下のウクライナ情勢も踏まえて、今般、我が国として、総合的に判断した結果、8名の駐日ロシア大使館の外交官及びロシア通商代表部の職員の国外退去を要求することといたしまして、4月8日、この旨森外務事務次官からガルージン駐日ロシア連邦大使に通告をいたしました。
森次官からガルージン大使に対しては、退去する期限、これ、伝達をしておりますが、外交上のやり取りであるため、詳細は差し控えたいと思います。また、現時点で、国外退去を要求した8名が既に出国したかどうかについても、お答えを差し控えたいというふうに思います。
外務省の働き方改革
【産経新聞 石崎記者】働き方改革についてお伺い致します。外務省として、これまで、働き方改革に取り組まれてきたかと思いますけれども、ロシアによるウクライナ侵攻が始まって以降、一部職員の方、長時間労働を余儀なくされているという状況かと思います。今後、情勢の長期化に伴いまして、持続可能な体制を構築していくために、今後、働き方改革、どういうふうな取組をされていくか、大臣のお考えを教えてください。
【林外務大臣】ウクライナ情勢を見ても、明らかなように、国際環境は、かつてないスピードで変化して、それに伴って、外務省の業務も増大をしております。こうした状況を踏まえますと、やはり、外務省の仕事の仕方を抜本的に変えて、世界の速い流れに適切に対応していかなければならないと思っております。
こうした中で、平成30年の12月ですが、事務次官を本部長として「業務改善推進本部」を立ち上げております。また私(林大臣)の下でも、働き方改革・業務合理化等に全省的に取り組んでおるところでございます。
特に、外務省というところは、時差があります在外公館や各国政府とのやり取り、また、国際会議への対応があるということで、テレワークを推進しながら、フレックスタイム制度、更には、早出・遅出勤務制度、こういうものを奨励して、働く時間と場所の柔軟化というのを進めてきておるところでございます。
これに加えて、やはり、オンライン会議システムや省員向けのポータルサイトの立ち上げを含むDXの推進、また、各種手続の簡素化等を始めとする業務合理化、こういったことを進めて、職員のワークライフバランスを向上させていくとともに、「人」にしかできない外交活動に集中できるように、環境整備を更に進めてまいりたいと考えております。
国連改革
【朝日新聞 野平記者】国連改革についてお伺いします。今日の自民党政審で、安保理が機能不全に陥っていることを念頭に、拒否権行使の抑制などを求める提言が、了承されたわけなんですけれども、改めて、外務省、政府として、今後、国連改革について、どのように進めていくお考えかをお聞かせください。
【林外務大臣】自民党において、国連改革に関する提言について動きがあると承知しております。提言の内容をよく拝見させていただいた上で、政府として、何ができるかを考えたいと思っております。
その上でですが、国際社会の平和と安全に大きな責任を持つ、国連の安全保障理事会の常任理事国であるロシアの暴挙、このこと自体が、新たな国際秩序の枠組みの必要性を示していると考えております。
我が国として、やはり、安保理を、この時代にふさわしい組織とするべく、長年、安保理改革の必要性を訴えて、積極的に活動して参りました。特に、安保理の構成が、現在の国際社会の現実を反映するように改革して、常任及び非常任の双方の議席を拡大する、このことが重要だというふうに考えております。
こうした問題意識を共有しております、ブラジル、ドイツ、インドと共に、G4という枠組みで、安保理改革に取り組んできておるところでございます。また、各国とのカウンターパート、私(林大臣)との会談等において、私(林大臣)から国連安保理改革の必要について、取り上げるようにいたしております。これ、各国の複雑な利害が絡み合うわけでございまして、決して簡単ではないと、こういうふうに思いますが、岸田政権の下で、引き続き、多くの国々と協力して、日本の常任委理事国入りを含む安保理改革の実現に向けてリーダーシップをとってまいりたいと考えております。