記者会見

河野外務大臣会見記録

(令和元年9月10日(火曜日)10時33分 於:本省会見室)

冒頭発言

故・天野IAEA事務局長の業績を称える取組

【河野外務大臣】おはようございます。何回目の記者会見になるのか分かりませんが。先日亡くなられた天野IAEA事務局長の業績を讃える取組について,私(大臣)からまず申し上げたいと思います。天野事務局長は「平和のための原子力(Atoms for Peace)」に加えて,「平和と開発のための原子力(Atoms for Peace and Development)」ということを提唱されました。この取組は世界中にも広く支持され,天野さんの名前イコールこの「平和と開発のための原子力」という言葉と,多くの国が結びつけているのではないかと思いますが,この象徴でありますIAEAの研究所,サイバースドルフ原子力応用研究所,ウィーン郊外のサイバースドルフに設立された,8つの研究棟を持つ研究所の改修事業を完遂させるため,100万ユーロの支援を行うことを決定いたしました。
 また,今後,天野事務局長のような,軍縮・不拡散分野に精通した国際的な人材を育成するための取組も行っていきたいと思っているところです。IAEAの研究所につきましては,有志国が中心になって,その研究棟に天野事務局長の名前を付けるその調整が行われているところですし,米国のミドルベリー大学でしたかに付随しているジェームズ・マーティン不拡散研究センターでも,天野事務局長の名前を付けた奨学金を創設するという動きがあります。
 IAEAの研究所には,多くの国々からも,これまでも資金面での支援を寄せていただいているところであり,こうした支援を歓迎したいと思います。今後様々な取組によって,天野事務局長の志と業績が長く後世に受け継がれ,国際社会の平和と安定の促進につながっていくことを期待したいと思っております。

河野大臣の2年間の取組・所感

【NHK 高島記者】今日が最後の会見になるかと思います。明日,改造を控え,今の思いをお聞かせ願えますでしょうか。それと,この2年間で十分に取り組めた分野,あるいは積み残したと思うような分野,振り返ってみていかがでしょうか。

【河野外務大臣】まだ何も聞いておりませんので,最後の記者会見になるかどうか分かりませんが,エンバーゴ付きみたいな形になるのかもしれませんけれども。そうですね。いろいろなことがございましたが,どこから話をしていいのかよく分かりませんが。No country shall be left behind.という精神で,延べ123になりますかね,このあいだのウラジオで。訪問した国の数で言うと77,国と地域,香港,パレスチナが含まれていると思います。やはり国連の安保理改革ですとか,あるいは様々な国際選挙,それからアフリカのTICADあるいはPALM,こういうことを考えるとやはり日本の外務大臣,もっともっと出ないといけないかなと思います。衝撃的だったのは,パラオのようなところに初めて日本の外務大臣が来たと言って,本当に地図で見れば隣国でありますから,これはもう少しきちんとやらなければいけないと思いますし,国際会議,いろいろ声をかけていただいて行けなかったものもあれば,多少与野党のご了解・ご理解をいただいて,強行日程で行ったような会議もございましたが,常々申し上げているようにODAが1兆1千億から5千5百億まで半減し,日本は外交に軍事力を使わないという中で裸の外交力が試されている,そういう時代に外務大臣が先頭に立って動くというのは,これから先も必要なのだろうと思います。
 そういう意味で,閣僚専用機が来年の概算要求に入れられなかったのは心残りと言えば心残りでございますが,チャーター機の予算を大幅増にして概算要求に盛り込みましたので,そこはカバーできるところはカバーしたいと思っております。
 個人的には,日露の平和条約の交渉が新たなステージに入ったときに,その交渉の責任者というものをやらせていただいたことは,安倍総理に感謝しているところでございます。半世紀以上にわたってやっている話ですから,そう簡単に交渉がまとまるとは思っておりませんが,新たなステージで交渉が始まったところをやらせていただいたのはありがたいと思っております。
 残念だったのは,昨年の夏ぐらいまでは,私(大臣)と韓国側の康京和(カン・ギョンファ)外交部長官と,日韓を未来志向で新しいステージに押し上げようということでお互い有識者会議,タスクフォースを立ち上げて,いろいろ議論をし,本当にいい提案をいただいて,さあこれからそれを実施に移していこう,特に昨年は小渕・金大中(キム・デジュン)パートナーシップ宣言20周年ということもございましたので,本当に節目のいいタイミングで,康京和長官とはお互い信頼して意思疎通もスムーズにできる仲でありましたし,同じ方向を向いて日韓新時代を作っていこうという意気込みに満ちあふれていた中での大法院判決で,そうした動きが全て止まってしまったというのは非常に残念でございました。
 初当選以来,韓国を何回も訪問し,韓国の政界で大勢友人を作って,その仲間と一緒にこの事業を進めていけると期待をしていた矢先で,こうしたことになってしまったというのは返す返すも残念です。
 あと,河野4箇条ということで,中東外交に深く関与させていただきました。いろいろな会合で日本が参加してほしいと言われるようになりましたし,UNRWAの関連会合で共同議長に声がかかるようにもなりましたし,ヨルダンのアブドッラー国王のアカバ・プロセスでも共同議長ということをやらせていただいたり,麻生太郎さんの「外交の銀座4丁目で小間物屋を開設する」というところまではいったんじゃないかなと。あとは売り上げをいかに上げていくかというところに来たかなと思っております。
 日米関係も,ティラソン国務長官あるいはポンペオ国務長官と,非常にいい関係を築くことができたと思っております。そういう意味では非常に難しい時代になりましたが,この日米同盟を基軸としてこの難しい状況に日本があたっていく,しっかりとした基盤はできていると思っておりますし,マティス国防長官とも,これからいろいろな話をしようねと言っていた矢先に長官がお辞めになってしまいましたが,そのあとをシャナハン長官代行以下引き継いでいただいて,先般の事故の際の内周規制線のガイドラインの改正とか,やれるところはきちんとやらせていただいたと思っております。
 また日中関係も,最初のマニラでの王毅(おう・き)さんとの外相会談と比べると,最後のこの間の日中韓外相会談ではだいぶ雰囲気も変わってきました。日中関係もこの2年,ずいぶん良くなって,習近平(しゅう・きんぺい)主席の国賓訪日というところまで来たわけで,これはずいぶん改善につながってきたと思っております。その他,TICAD,PALM,いろいろありましたし,国連の安保理の議長も務めさせていただきました。
 外務省の人材がその力を最大限に発揮できるような,外務省の働き方改革,霞ヶ関の働き方改革というのは,これはもう急務だと思います。先般も官庁訪問があって,まだおかげさまで外務省はそれなりの人気を得ていると思っておりますけれども,霞ヶ関に必要な優秀な人材をこれからいかに集めていくかというのは,これは相当大変な話になると思いますので,霞ヶ関全体の働き方改革というのは,政府全体としても相当高いプライオリティーでやっていかなければいけないかなと思っているところです。
 今朝,北朝鮮のまた飛翔体の発射がございました。そういう意味でこの北東アジアの安全保障環境というのは,必ずしも好転していると言えないどころか,相当今後も緊迫することが予想されるわけですから,しっかりとした外交努力,米朝プロセスを後押しし,この緊張緩和,信頼醸成に日本としてもしっかり役割を果たしていかなければならないと思っております。私(大臣)からはそんなところでございます。

イラン情勢

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)

 日本は近年,中東地域において存在感を高めており,最近では特に,イランに関する日本のイニシアチブも取られ,外交面ではうまくいっていると考えます。イラン関係の問題について,進展があったかどうかを伺いたいと思います。また,国連総会に際して,安倍総理とローハニ・イラン大統領や,ハメネイ最高指導者が会談を行うという報道がありますが,新しい情報はありますでしょうか。

【河野外務大臣】
(以下は英語にて発言)

 日本とイランは伝統的に友好国であり,良好な外交関係を維持してきました。日本は,イランの人々やイラン政府との対話を続けていきます。安倍総理とローハニ大統領は,ニューヨークでの国連総会に際しての会談日程を調整しており,都合がつけば,会談を行って中東地域の平和と安定に関する問題について議論することになると思います。この会談が,同地域の緊張緩和につながることを期待しています。

河野大臣の外交成果

【共同通信 福田記者】まだちょっと,何も発表されていないので恐縮なんですけれども,先ほどいろいろ総括があったと思うんですけれども,ラカイン州情勢へのコミット,国連安保理で初の議長を務められる,いろいろあると思うんですけれども,大臣として最も大きい外交成果というのは何だというふうに思われますか。

【河野外務大臣】外交成果について,本気で語ると3から4時間かかってしまうと思いますからあれですが。やはり,G7の中で日本がアジアを代表している,あるいは欧米以外の地域を代表している唯一の国ということで,例えばラカイン州の問題,あるいはどういう視点でロシアを見るか,いろんな議論ができたと思っております。相対的に,G7の地位がという議論もあるかもしれませんけれども,少なくともこのG7という枠組みの中で,日本が欧米以外の視点をきちんと議論に持ち込んで,会議だけでなく,カナダのときなんかは夕食会のときでも相当リーダーシップをとって,いろいろアジアからの視点というものを申し上げ,なるほどそうかという反応もありました。そういう意味で欧米以外の,やはり代表としての日本の声をしっかり届けるというのは,G7に限らず大事なことだと思いますし,そういう期待されている日本の役割をしっかりと果たしてこれたのではないかと思っております。

概算要求,日中関係

【産経新聞 原川記者】冒頭の質問に対するお答えの中で言及のあった概算要求と日中関係に関して,それぞれお伺いしたいんですけれども。
 まず概算要求では,国際機関における邦人職員増強というテーマについても増額要求されています。これは,大臣が,1月の外交演説の最後の方でも触れられて強調されたことですけれども,国際機関における邦人職員増強がいかに日本の国益にとって重要なのかということを改めて教えていただきたいのと,これまでの取組の成果,今後の課題について教えてください。
 もう1個が,日中関係と言っても香港情勢なんですけれども,香港の逃亡犯条例をめぐるデモが始まって3か月になって,行政長官が条例の正式撤回を表明した後もまだデモが収まる気配がありません。こういう状況を日本政府としてどう考えておられるか。また日中関係は好転してますけれども,その中でもこの香港問題についてはもっと中国当局に,強いメッセージを発するべきではないかと考えるんですけれども,そのあたりはどう考えておられるんでしょうか。

【河野外務大臣】香港問題の方から先にお答えをいたしますと,先般の日中韓外相会合の中でも,日中の外相会談の中でも,香港問題を取り上げて,私の方から少し日本の見方・主張というのを申し上げさせていただきました。恐らく,外相会談のレベルで,香港問題を直接申し上げているのは,日本が先頭に立っていると言っていいのかもしれません。この香港問題は中国の内政問題だという前提の下で,香港には2万5千人を超える邦人の方が住んでいらっしゃる。ビジネスに携わっていらっしゃる。また,日本からも,大勢の観光客が香港を訪れるということを考えると,邦人の安全確保というのは,日本政府,外務省として極めて重要視し,注視しなければいけないことだと思っております。そういう意味で我々はこの香港情勢について,今後も強い関心を抱いていかなければならないと思っております。
 そういう中で,この香港が一国二制度の下,経済的にも繁栄をするというのは,中国のみならず地域にとっても非常に重要なことだと思いますので,今でもはじめ様々なことが起きておりますが,関係者が平和裡に対話によって,こうした相違点を解決し,問題を解決することが必要だろうというふうに思います。そこは是非,双方の自制と対話を求めていきたいと思います。
 邦人職員に関して申し上げますと,国際機関の職員は国際公務員ですから,日本の利益を別に代弁するためにそこで働いているわけではありません。しかし,そうは言っても国際機関のトップ・幹部に日本人がいるということは,日本のプレゼンスをある面示すということでもありますし,日本の職員が様々な地域・場面でリーダーシップをとるということは,それは日本に対する信頼を裏打ちするという意味でも,非常に大事なことだと思っております。
 外務大臣に就任以来,国際機関のトップに対しては,国際機関への拠出金はダイレクトに日本人の職員数,あるいは幹部への登用,それと関連づけるということを率直に申し上げて,やや嫌われたかもしれませんが,国際機関がそれに対してしっかり反応してくれているというのも事実だろうと思いますし,それでも国連をはじめ,アンダー・レプレゼンテッド(under-represented)という状況に変わりはないというのは,もっともっと努力が必要だと思います。
 ただ,他方,そうは言っても,国際機関が喜んで採りましょうという人材の供給が追いついているかというと,やや最近,そこの部分が心配でございます。2018年末で2017年と比較すると,国連関係機関の職員数32名増えて882人となりました。これでもまだ望ましい人数を下回っているわけですし,その中の半分はJPO経験者です。つまり,日本政府が後押しをして,インターンシップのような感じで,短期行ってそこから採用されるという,そういうルートが半分です。これは,柴山文科大臣にも常々申し上げておりますが,日本の英語教育をなんとかしないと,これはちょっとどうにもならないなというふうに思っております。
 それからもう一つは,やはりこういう職場があるということをもっともっと知ってもらわなければいけないと思いまして,昨年度,国内外でガイダンスを214回,合計,1万3千人来ていただきました。その他に外務省のポストを活用するなど,JPOをしっかり応援をしていかなければいけないと思っていますし,JPO以外の道筋で国連機関に行く人も増やしていかなければならないと思っております。
 任期付で次々と変わっていかなければいけないという日本と,やや違う雇用の慣行であったり,そもそもこの時代,国際機関の公務員というのが日本人にとって魅力ある仕事になっているのかどうか,そういうこともあります。
 先ほど申し上げたような英語教育の問題もあれば,多くの国際機関が要求している修士というものが,日本では例えば文系で修士まで行く人は3%ということを聞いたことがありますが,そもそもその要求と今の日本の教育慣行が合っているかという問題があります。
 ただ,国際機関は,今のスーダンやら南スーダンのように,様々な,なんというんでしょうか,地元の勢力を調整する,あるいは各国の加盟国の国益を調整するというような大きなところから,フィールドで現地の困っている人に寄り添いながら,貧困問題,難民問題,そういうものの,なんというんでしょうか,に取り組んでいく仕事もあれば,ITですとか,財務ですとか,人事ですとか,法務とかいった専門家がもちろん国際機関の中には求められておりますので,自分は関係ないと思わず,是非多くの日本人の方に自分でもやれるところがあるんじゃないかという目で国際機関を見てもらって,果敢にチャレンジいただく。人生の中で国際機関で働いているという,そういう時期があっていいのではないかと思います。外務省として全面的にそういう動きをサポートしていきたいと思っておりますので,是非多くの方に目を向けていただけたらというふうに思います。

北朝鮮関係,日露関係

【読売新聞 梁田記者】冒頭のご発言に絡んで2点伺いたいんですが。これまでの2年間を振り返られた中で,一つ,北朝鮮のことに言及されてましたけれども,今日,飛翔体の発射があって,大臣,先ほど米朝プロセスを後押ししていきたいということをおっしゃっていましたけれども,プロセスに関してあっちの外務次官が協議に応じるというようなことを言いつつもこういったことが起きて,現時点でどういう状況だと,今後,日本としてどういうふうに対応していくべきかというのを改めて伺いたいのと,それからもう1点,日露に関して責任者になれたことに感謝する,交渉責任者になれたことに感謝すると言ってましたが,やはりおじいさまの河野一郎さんの代からずっと関わってこられたということも,すごくご自身の心境の中で大きいかと思います。その中で,まだやはり交渉が停滞している現状に関してどのようにお考えか。また先日,東方経済フォーラムの際に,ラヴロフ外相とお会いになる,接する機会がおありだったかと思いますが,その際にはどういったお話をされたのかお聞かせいただければと思います。

【河野外務大臣】祖父,河野一郎がソ連に行って漁業交渉,また次の年には平和条約の交渉,共同宣言というものに関わってきたというのは,小さい頃からよく聞いておりましたので,それが私が外務大臣になっているときもまだ問題として残っている,またそれに関わることができたというのは非常に,嬉しくというとちょっと言葉が違うかもしれませんが,感慨深いものがあります。
 非常に難しい問題でありますから,そう簡単に短時間で解決できるものとは思っておりませんが,プーチン大統領,安倍首相が加速化をしようという決断をし,合意をし,交渉が新たなステージになったところで,実際に交渉に携わったというのも感慨深いものがございます。これはしっかりこの交渉を続けて何とかこの問題を解決しなければならないと思っておりますので,そう遠くないうちに問題解決につながるということにしなければいけないと思います。
 北朝鮮の問題につきましては,これはもうティラソン国務長官あるいはポンペオ国務長官と何度も話をし,この件については日米,非常に一枚岩でやってこれたと思っております。日米の呼びかけに多くの国が応じてくれて,安保理決議がしっかりと履行されてきた。そして多くの国がこの北朝鮮問題というのは単に北東アジアの安全保障の問題ではなくて,NPT体制に対する挑戦なんだと,我がことなんだという認識を持ってあたってくれているというのは非常にありがたいことだと思います。
 残念ながら瀬取りですとかサイバーですとか,あるいは労働者の問題といったような抜け穴がまだ少し残っておりますが,それをきっちりと塞ぎながら,この米朝プロセスを後押ししていきたいと思っております。そういう中で飛翔体の発射ということがございました。北朝鮮の中がどういうメカニズムで意思決定がされているかというのは,なかなか分かりにくいところはありますが,米朝プロセスがしっかりと進むように,日本としてもこれまで同様に後押しをしていきたいと思います。

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