記者会見

河野外務大臣会見記録

(令和元年6月4日(火曜日)14時40分 於:本省会見室)

冒頭発言

ベトナム・ハノイにおけるASEAN - JAPAN DAY開催

【河野外務大臣】本日,ベトナムのハノイでASEAN - JAPAN DAYが開催されております。今日開催されているシンポジウムでは,ハイテク農業,スマートシティ,高齢化といった,日本とASEANの間で今後期待されている政治,経済,あるいは社会分野での協力について,このシンポジウムでは幅広い議論が行われることになっております。
 7月には文化面の交流として,ASEAN各国及び日本からアーティストが参加する音楽イベントも開催が予定されております。日本からは例えばEXILEのATSUSHIさんが参加する予定と聞いております。こういう機会を通じて日本とASEANの間の相互理解,あるいは友好協力関係が一層強化されることを期待したいと思います。

天安門事件から30年

【NHK 奥住記者】天安門事件から今日でちょうど30年になるんですけれども,中国政府は軍の鎮圧は正しかったとする立場を今も変えていないんですけれども,事件から30年の所感をお願いしたいのと,併せて中国では今もインターネットの規制ですとか言論統制によって,政府への批判というのは徹底して押さえ込まれていますけれども,こうした状況をどのようにご覧になるか,併せてお願いします。

【河野外務大臣】自由とか基本的人権,あるいは法の支配といったものは,国際的に共有されるべき価値観だと思っております。それはおそらく中国国内においても同じであって,自由・基本的人権・法の支配というのは,中国においても保障されるべきものだろうと考えております。日本として,中国とまだ再開はされておりませんけれども,人権対話のような枠組みもございますし,様々な場面でこうした問題についての対話というのもやってまいりたいと思います。

【共同通信 江藤記者】現在の中国の人権状況に対する大臣の受け止めを教えてください。

【河野外務大臣】中国の国内で人権に関する懸念があるということは,外相会談あるいは首脳間でも中国に伝えてきているところです。政治体制は違いますけれども,基本的人権,法の支配あるいは自由といった価値観というものは,中国と共有できる国際的な普遍的な価値観ではないかと思っております。

【読売新聞 梁田記者】いま日本は中国とは関係が改善している状態ですけれども,例えば米国とか欧州の諸国とは正に価値観をめぐってもかなり対立が深刻になっているという指摘もあります。日本がそういった中で果たせる役,中国を国際社会に関与させるために果たせる役割にはどういうものがあるとお考えか。また先ほど大臣ご自身がご指摘になった人権対話がもう止まった状態で9年,10年近くになりますけれども,動かすためにはどういった,動かす必要があるかということと,どういうふうにしたら再開できるか,現時点でのお考え方をお伺いできればと思います。

【河野外務大臣】人権対話の再開については,日本側から中国側にも申し入れているところです。欧米の価値観,あるいはアジアの価値観,一番の根本的なところは同じなんだろうと思いますが,いろいろな部分で違っている部分というのもあるのかなという気がしております。例えば中国は政治体制が少し違いますからあれですけれども,アジアの中での民主化ということについては,これまでも欧米と日本と少し違う立場の中で,例えばG7の外相会合などで議論してまいりましたので,日本としてアジアの考え方というものを少し強調していくことが大事なのではないかと思っております。もちろん中国も日本とはかなり文化的なものを共有するところはあるわけですが,政治体制が違う中でも普遍的な共有できる価値観ということについては,これからも日中の間で議論していきたいと思います。

日朝関係

【朝日新聞 清宮記者】北朝鮮の関連でお伺いしたいんですけれども,北朝鮮のメディアが河野大臣を名指しで批判したり,条件なしでの首脳会談の開催について厚かましいと言ったりしていますが,受け止めがあればお願いします。あと,今週,ウランバートル対話,国際会議があると思うんですが,北朝鮮側が来た場合,接触についてどういうことを伝えるなどあればお願いします。

【河野外務大臣】北朝鮮の報道にいちいちコメントすることもないのかなと思っておりますが,安倍総理が拉致被害者のご家族が高齢化する中で,1日も早い解決をすべくあらゆるチャンスを捉えて行動していきたいというふうにおっしゃっておりますし,総理ご自身が金正恩(キム・ジョンウン)委員長と直接向き合っていく用意があるということを,これまでも繰り返し述べられてきているわけでございます。
 日本としては日朝平壌宣言に謳っているように,核・ミサイルそして拉致問題を包括的に解決し,国交正常化をする,そういう方針にはなんら変わりはないわけでございますので,その方針に沿ってやってまいりたいと思います。ウランバートルにしろ,どこにしろ,接触があれば接触がありますし,なければないというところは変わらないと思います。

イラン情勢

【毎日新聞 秋山記者】イラン情勢についてお伺いします。大臣は先般,イラン・米国双方に自制を促してきたというお考えを示されましたけれども,最近の米側との接触では,日本からどういった点を働きかけられたのでしょうか。それと,アメリカの基本方針としては,昨年,ポンペオ国務長官が12項目のイランに対する要求というのを明らかにされましたけれども,これについては,大臣はどういうふうに評価されてらっしゃいますでしょうか。

【河野外務大臣】日本として地域の安定に寄与できるところは,しっかり寄与していきたいと思っておりますし,対話を通じた地域の安定化というのが必要だというところは,そのとおりだろうと思っております。様々なやり取りについて今対外的に申し上げられるべきものはございませんが,日本として果たすべき役割があれば,それをしっかり果たしていきたいと思っております。

天安門事件から30年

【共同通信 斎藤記者】もう1回,話題を天安門,中国に戻したいんですが,先ほどの話で大臣が民主化のあり方について,欧米とアジアとは違うんじゃないかと。アジアの考え方とおっしゃられました。そこでお伺いしたいんですけれども,欧米と違う民主化あるいは人権をめぐるアジアの考え方,大臣,何か分かりやすい言葉で解説いただけないでしょうか。

【河野外務大臣】欧米が今のような自由とか民主主義,基本的人権というものを打ち立てるには,それなりに長い年月をかけてきていると思います。アジアの多くは植民地から解放されて新しい政治体制を始めてきたわけで,欧米と比べるとまだまだ時間は短いわけであります。
 前に,私(大臣)がどこかで申し上げたのは,ローマがイギリスから撤退したのは紀元400年だったか,そこからイギリスは千数百年かけて,今の政治体制を作ってきたわけで,イギリスがビルマから撤退したのは,まだ1世紀もたってないわけですから,それだけの時間的な長さの差があるにも関わらず,今すぐ同じようにやれというのは,これはなかなか難しいものがあって,一歩ずつ確実に前進をしているのが大事なことで,ハイハイをしている赤ちゃんに全力疾走しろと言っても,それはボルトのようには走れませんよと。だけど,いずれ立ち上がってヨチヨチ歩きでも歩きだすわけだから,そこはしっかり寄り添って,必要なら転ばないように手を差し伸べるというのが大事なんだろうと思っております。

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