記者会見
岸田外務大臣臨時会見記録
(平成29年7月6日(木曜日)12時00分 於:ベルギー・ブリュッセル)
冒頭発言
【岸田外務大臣】本日午前11時から50分間に亘り行われました日EU定期首脳協議において,私とマルムストローム欧州委員との間で,昨日5日合意いたしました日EU・EPAの大枠合意の内容が,安倍総理とトゥスク欧州理事会議長,そしてユンカー欧州委員長との間において最終確認され,共同記者会見で発表されました。本交渉は2013年の春より開始をし,すでに4年以上が経過をしており,その間一貫して,国内のセンシティビティに配慮しながら,守るべきは守り,攻めるべきは攻める,一進一退の激しい交渉を続けて参りました。本日ここに大枠合意が最終確認されたこと,大変嬉しく思っています。
日EU・EPAは,大規模な先進経済圏間の初めての経済連携協定であり,その大枠合意の内容は,自由貿易の牽引役である日EUが,世界に範を示すに足る,包括的でレベルの高い,且つバランスのとれたものであると自負することができると考えています。保護主義的な動きの中で共同の価値観を共有する日EUが,世界に向けて前向きで力強いメッセージを送ることができたと考えます。
また,明日,明後日のG20においても,総理から我が国が自由貿易の旗を高く掲げ続けている成果として,世界に力強く示していただけるものであると考えます。今後,本日までの成果を確固たるものにするために,早急に残余の論点をまとめ,署名,締結,発効に至るまでのプロセスを進めることが極めて重要になります。日EUが率先して自由貿易の旗を高く掲げ続けるためにも,本協定の交渉の担当大臣として,引き続き全力を傾注していく所存であります。
なお,先ほど総理の発言の中にもありましたとおり,今後は石原大臣を中心として,政府一丸となって,国内対策に向けても努力を続けていきたいと考えております。私からは以上です。
質疑応答
【記者】自動車と自動車部品,そしてチーズについて交渉結果を改めてお話いただけますか。
【岸田外務大臣】まず,乳製品全体としましては,今回の交渉においてTPP並に抑えることができたと受け止めています。そしてその中にあって最も関心を集めたのが,ご指摘のチーズということになるわけですが,そしてチーズの中でも特に注目を集めたのがソフト系のチーズということでありました。このソフト系のチーズについては,横断的な関税割当とすることができました。枠の数量,これは国内消費の動向を考慮し,そして国内の消費量の伸びの範囲内に押さえることができた,こうした交渉結果であると認識をしています。国内の生産拡大と両立できる範囲に留めることができた,ということで関係者の理解を得られる結果であると認識しています。そして,自動車,自動車部品ということにつきましては,基本的に我が国が求める自由化を獲得することができた交渉であると考えています。多くの品目で関税即時撤廃で合意することができました。その即時撤廃でない場合においてもEU側の関税撤廃期間の短縮を獲得することができました。要は関税撤廃ということについては100%実現できたというこということであります。そして自動車部品につきましても,輸出額の92.1%が即時に関税撤廃されます。これは韓国EU・FTAにおける内容,90.2%を上回る水準であると承知しています。こういったことで,多きな成果を上げることができた,このように考えております。
【記者】自動車については産業界からも待ち望む声が多かった訳ですが,チーズについても国内の理解は十分に得られると大臣としてはお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】基本的な考え方を先ほど申し上げましたが,こういった考え方を説明することによって国内の関係者の皆様方にもご理解いただけるものであると認識をしています。もちろん,先ほど申し上げました国内対策,これにつきましても政府一丸としてしっかり行っていく,このことも併せて重要であると考えます。
【記者】品目で子細に見ますと,一つ一つはTPPの譲歩水準をさらに深掘っているものもあると思います。こういったものについてTPPの各参加国に求められたときにどのように対応していくのでしょうか。
【岸田外務大臣】この評価,見方の問題ではあると思います。説明の仕方として,先ほど申したように,乳製品ということで全体を見たならば間違いなくこれはTPP並に押さえることができたと説明できると我々は認識をしています。詳細については,交渉の結果ですから,いろいろな結果,数字が出ておりますが,国内の関係者の皆様方にもTPP並に押さえることができた,こういった説明をしっかり行っていきたいと思います。そして必ずや理解が得られる結果であると我々は信じています。
【記者】署名や締結のスケジュール感については具体的に・・・
【岸田外務大臣】これからプロセスとしては,協定のテキストを先ず確定しなければなりませんし,日EU・EPAの場合は関係国の言語に翻訳しなければならない,聞きましたら24カ国語なんだそうであります。こうした作業があります。その先に署名があり,そして国会の承認をいただいた上での締結ということになります。相手の作業具もいろいろな要素として絡んできますので,今から確定的に申し上げることはできないと思いますが,先ほど,「2019年の早いうちに」という発言をユンカー委員長はされていたと記憶をしています。ただ,日本側は,先ほど申し上げたように,相手の作業の進み具合等もありますから,今確定的なことは申し上げるのは控えます。できるだけ今言った作業を,早期に実現するために今から努力を始めたいと思います。