記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成29年6月2日(金曜日)8時48分 於:官邸エントランスホール)
冒頭発言
(1)米国によるパリ協定脱退表明に対する受け止め
【岸田外務大臣】今般,米国はパリ協定からの脱退を表明しました。
先般のG7サミットで,パリ協定について様々な議論が行われ,我が国を含むG7各国から,気候変動問題は,国際社会全体が取り組むべきグローバルな課題であり,先進国がリーダーシップを発揮することが重要であると指摘をし,米国に対し,その関与の重要性についても説明をしてきました。
私(大臣)も3月16日の日米外相会談において,ティラソン国務長官に対し,パリ協定を含む気候変動問題への国際社会による取組の重要性について,指摘をしてきました。
我が国としては,パリ協定の枠内で米国と協力を重ねたいと考えていたところ,今般,トランプ政権が,パリ協定からの脱退を表明したことは残念です。
他方,米国は引き続き,世界第2位の温室効果ガス排出国であるとともに,環境分野等において,イノベーションを通じた様々な先進的な技術の導入や取組等を行ってきている国でもあります。日本としては,気候変動問題に対処するために,米国と協力していく方法を探求するとともに,パリ協定の締約国と同協定の着実な実施を進めることを通じ,この問題に積極的に取り組んでいきたいと思います。
(2)石川県訪問
【岸田外務大臣】私(大臣)は,明日6月3日から4日,「地方を世界へ」プロジェクトの第五弾として,駐日外交団とともに,石川県を訪問いたします。
当日開催される,百万石まつりの視察や,地元の方々との対話,金沢大学におけるシンポジウム等を通じまして,北陸・石川県の魅力を世界に発信し,一層の活性化に貢献していく考えです。
北朝鮮問題
【記者】北朝鮮への制裁決議をめぐって,アメリカと中国が安保理に制裁決議案を提出しました。それについて受け止めをお願いいたします。
【岸田外務大臣】北朝鮮が累次の安保理決議を無視して,弾道ミサイルの発射,あるいは核実験を繰り返す中にあって,北朝鮮に安保理決議を遵守させるためには,何が効果的であるのか,安保理におきましては,こうした議論が進められており,議論に一定の進捗があると承知をしています。現時点で,安保理内の議論の具体的な内容について述べることは,交渉・協議に支障を来し得ることから差し控えますが,北朝鮮に対し一層の圧力を強化するため,引き続き,米国を始めとする安保理理事国と連携しながら,早期に合意に至るよう,全力を尽くしてまいります。
北方四島への米軍配備に関するプーチン大統領の発言
【記者】ロシアのプーチン大統領が,報道機関のインタビューに答えてですね,北方領土が日本の主権下に入った場合に,米軍が展開するというところについて懸念を示しています。この北方領土の米軍の展開について日本はどう考えているのか,あとは,日露交渉を進めるにあたってですね,このロシアの懸念,どう対応していくのか,このあたりのお考え,お願いいたします。
【岸田外務大臣】プーチン大統領は,平和条約締結後,日米安保条約に従って,日本に引き渡される島に米軍が展開する可能性があるとの,日本人記者からの発言と質問を受けて,今ご指摘になったような発言を行ったと承知をしています。
平和条約締結問題については,安倍総理とプーチン大統領との間も含め,日露間で率直に対話を重ねており,4月の日露首脳会談においても,昨年12月の首脳間の合意事項の具体的な進展を確認したところです。今後とも,両首脳間では平和条約締結問題について建設的な議論が行われて行くものと考えています。そうした中で,メディアを通じたプーチン大統領の発言の一つ一つに対してコメントを行うことは差し控えたいと思います。いずれにせよ,北方四島の帰属の問題を解決して,平和条約を締結するという一貫した政府の方針に基づき,引き続きロシアとの間で,粘り強く交渉を進めていく考えであります。
日韓合意関連
【記者】日韓合意について伺います。先日,国連のグテーレス事務総長と安倍総理がイタリアで会談した際の,日韓合意の内容に触れた,触れないという水掛論争が続いているかと思います。日本政府と今回の国連の言いぶりの違いについて,大臣はどのように考えるかというのが1点と,あと,韓国側はですね,実際,グテーレス事務総長に直接確認して,言及はなかったということを発表しているのですが,日本政府として,今後,何かしらの対応を取るお考えはあるか,その2点を願いします。
【岸田外務大臣】ご指摘の懇談の内容については,既に発表したとおりです。あれ以上でも,あれ以下でもありません。日本の発表ぶりは変わりません。いずれにせよ,日韓両国が合意し,国際社会からも評価されている合意,引き続き,着実に実施されること,重要であると認識をしています。
パリ協定関連
【記者】パリ協定に関連して,トランプ大統領は公平な協定を求めていますが,日本としてはパリ協定の枠組みにとどまって,トランプ大統領が,今後提唱されるかもしれない枠組みには参加しないという理解でいいのですか。
【岸田外務大臣】トランプ大統領のパリ協定に対する考え方,再交渉を始め,いろいろな考え方について詳細をまだ把握はしていませんので,詳細,把握しなければなりませんが,我が国としてはパリ協定の実施,重要であると考えています。その中にあって,気候変動問題において,アメリカの存在というものは大きな影響力があります。是非,日本としては,この気候変動問題に対処するため,米国と協力していく方法,是非,探求していきたい,このように思います。
中国・大連での邦人拘束報道
【記者】今日,一部報道で,5月下旬に,大連で50か60代の日本人男性一人が拘束されたという報道があったんですけれども,事実関係を…。
【岸田外務大臣】確認してからコメントしたいと思います。
釜山総領事の交代
【記者】釜山総領事の交代についてですけれども,交代された森本前総領事,一時帰国中に政府の方針を批判したというふうに言われて,一部問題視する向きがあったかと思うんですけれども,そのことが今回の交代につながったかどうか,このあたり事実関係いかがでしょうか。
【岸田外務大臣】人事につきましては,組織の人事でありますので,全体の中でのありようですとか,様々な点を総合的に勘案して決めたものであります。当然のことながら,その詳細については申し上げることは控えます。
パリ協定関連
【記者】パリ協定に関連してなんですけれども,中国側は協定を堅持するというふうな反応を示しています,それについての評価をどのようにお考えでしょうか。
【岸田外務大臣】我が国の考え方は,先ほど申し上げたとおりであります。我が国としても締結国とも協力しながら,パリ協定の実施について貢献をしていくことは,重要であると考えています。パリ協定については,様々な意見は出るのかもしれませんが,今,世界140か国以上がパリ協定を締結しています。そして国だけではなくして,自治体や企業も気候変動に向けた努力を行っています。こうした大きな流れは変わらないと考えています。