記者会見

岸田外務大臣臨時会見記録

(平成28年12月16日(金曜日)16時25分 於:官邸エントランスホール)

冒頭発言

【岸田外務大臣】昨日から今日にかけまして日露両首脳間で,和やかでくつろいだ雰囲気の中,信頼関係に基づく充実した意見交換が行われました。元島民の墓参や,故郷への自由な訪問,そして,日露両国の特別な制度の下での共同経済活動,平和条約問題等において,大きな成果を上げることが出来たと感じています。平和条約の締結に向けた重要な一歩となる訪日になったと考えます。

質疑応答

【記者】今回,総理は二日間の首脳会談を受けて大きな一歩と成果を語られていましたけども,今回の最大の焦点であった北方領土問題について,大臣は率直に解決に向けてどのような進展があったとお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】私も率直に大きな一歩を踏み出したと感じています。北方四島における共同経済活動,これにつきましても平和条約問題を解決する両首脳自らの真摯な決意を表明しつつ,四島における共同経済活動について協議を開始する,こうしたことを発表した次第です。これは,四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するためにも共同経済活動に関するこの協議を通じて北方四島の開発に我が国が参画していくこと,これは大変意義があると考えます。こういった点から平和条約締結に向けた重要な一歩になり得ると考えます。

【記者】共同経済活動について,特別な制度の交渉に入るということだと思うんですけれども,ただ四島については双方ともに主権の問題など,以前隔たりがあるように見受けられたのですけれども,大臣としては具体的に今後,交渉においてどのように具体化していくというふうにとお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】これはプレス向けの声明の中にも明らかにしているように,日露双方は日露両国間の条約によって共同経済活動を実施するための法的基盤を作ることを検討する,ここで一致をしています。これは,我が国の法的な立場にこの経済活動が矛盾しない,このことが確保されるものであると考えます。いずれにしましても,このプレス向けの声明の中にも我が国の立場を害するものではない,こういったことについて確認をしています。

【記者】先ほど触れられましたが,共同経済活動がどうして北方領土の返還につながるのか,もう少し説明していただけますか。

【岸田外務大臣】声明の中でもありますように,平和条約問題を解決する両首脳間の決意が表明され,そして,共同経済活動についての協議を開始する,こういった内容が明らかにされています。要は,こうした経済共同活動を進めることが平和条約問題を進めていく,こうした取組が両国首脳間で確認をされたわけですので,こうした経済活動を進めていくこと自体が平和条約締結に向けての重要な一歩になると認識をいたします。

【記者】5月のソチでの首脳会談で新しいアプローチと話していましたが,今回一定の結果が出たと思うんですが,このように共同経済活動を用いて条約交渉を進めるというのが新しいアプローチなのでしょうか。

【岸田外務大臣】新しいアプローチについては,今までの様々な議論の中身について明らかにすることは,今現在,控えなければならないと思っています。ただ,こうしたアプローチの結果,今日,両首脳間で確認されたような成果につながってきたと考えます。引き続き,このアプローチに基づいて努力を続けていかなければならない,このように認識しております。

【記者】旧島民の自由訪問に関する協議,或いは共同経済活動についての協議,それぞれ大臣としてはどれくらいの目途で結果に導きたいとお考えですか。

【岸田外務大臣】これは,スケジュール感の話でしょうか。元島民の方の墓参等につきましては出来るだけ早く調整を行っていきたい,このように思っています。それ以外につきましても日露間でしっかり意思疎通を図りながら前進を図っていかなければならない課題だと思っています。

【記者】共同経済活動をされる場合に,日本として四島の開発に参画することは有意義であるというふうに大臣仰られましたけれども,四島が発展することによって,二国間では特別な制度下にあるということですが,多国間においてはロシアの実効支配が強まるのではないかという見方も強まると思うのですが。

【岸田外務大臣】この取組,国際約束を含め,共同経済活動の実施のためのしかるべき法的基盤を整理することを検討する,これは日露間のみにおいて進められる話であると考えます。これは日露間に特別な制度を創設するものであると考えます。こうした取り組みを進めることは平和条約問題を考えましても,大きな一歩であると考えています。

【記者】いまですね,ロシアに対してウクライナのクリミア編入を巡ってG7が経済制裁を科しています。今回の日本の二国間の経済関係の緩和というのはG7の協調路線に矛盾するのではないかと思うのですが。

【岸田外務大臣】これは経済制裁には何も触れるものはありません。今回の経済協力は経済制裁の内容に矛盾するものは何もないと考えています。ご指摘の点は当たらないと考えます。

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