記者会見
岸田外務大臣臨時会見記録
(平成28年5月2日(月曜日)12時00分 於:タイ王国・バンコク チュラロンコン大学)
質疑応答
【記者】先ほどのスピーチの中で,大臣は「生きた」連結性というものを日本の協力のキーワードとして使われて,道路や橋を作って終わりにしないという協力をするというお話をされました。これは,同様にこの地域への関与を深める中国との違いというのを意識された言葉なのでしょうか。そのあたりの,この言葉にこめられた意義を教えていただければと思います。
【岸田外務大臣】別に中国を意識したというものではありません。要は日本の強みをしっかりとアピールするべきだという趣旨で申し上げさせていただきました。まずは良質なインフラ整備に努める,しかしそれだけではとどまらない,それをより効果的に活用するためには,さまざまな制度改革も必要だし人材育成も必要ですと,そういったソフト面が合わさることによって,良質なインフラがより効果的に活きてくる,これこそ日本の支援の強みであり特色である,こうした日本のありようについて説明をさせていただいた次第です。
【記者】別件で恐縮なんですけども,台湾が漁民保護を目的に沖ノ鳥島に巡視船を派遣しました。受け止めと今後の日本政府の対応を教えてください。
【岸田外務大臣】まず出港したということは承知をしております。こうした出港が行われたということについては遺憾なことであり,我が国として申し入れを引き続き行っています。我が国としては,国連海洋法上,沖ノ鳥島,島として認められていると考えていますし,排他的経済水域は存在すると考えています。台湾側の一方的な主張,独自の主張は受け入れられないと考えています。
【記者】また別の話で恐縮ですけれども,一部報道で,京都大学の准教授が北制裁で制裁者リストにあがったという指摘,報道がありました。事実関係の確認と,もしそうだとしたら,日本のそういった技術に対して,北朝鮮の核・ミサイルが触手を伸ばしているということになりますけれども,どういうふうに防いでいった方がよいと思われますでしょうか。
【岸田外務大臣】まず,報道は承知しています。そして,我が国としては,すでに独自の措置を発表しているわけですが,この措置の対象となる核・ミサイル技術者につきましては,関係省庁からの情報を踏まえて,政府全体として総合的に判断する,こういったことになっています。ただ,これは従来いろいろな課題やケースにおける措置の時と同様に,個別具体的な人名ですとか内容については明らかにしない,これが従来からの方針です。よって,今回のケースにおいても,具体的な内容については控えたいと思います。
【記者】台湾に戻りますが,先ほどおっしゃった申し入れというのは,具体的に抗議ではなくてどの機関からどの機関に対して申し入れを行ったのでしょうか。
【岸田外務大臣】どの機関からどの機関というのは具体的には確認をいたしますが,先ほど申し上げました我が国の立場,考え方を説明をし,そして,このように台湾側から船が出航している,こういったことについては遺憾であるという考え方,こういったものを申し入れているというものだと承知をしています。
【記者】午前中,首相と表敬されたと思うんですけれども,具体的にはどのようなやりとりがあったかご紹介いただけますか。
【岸田外務大臣】プラユット首相とのやりとりですが,まずは二国間協力について意見交換を行いました。先方からタイの経済政策について説明があって,日本企業を大変重視している,こういった話がありました。さらなる投資環境整備に取り組みたい,こういったことでありました。私の方からは先ほど講演をさせていただきました「日メコン連結性イニシアティブ」,これについて説明をし,プラユット首相からも賛同を得た,こういったやりとりがありました。さらにはダウェー開発の話もありました。これはタイ,ミャンマー,日本,3カ国でしっかり協力をしていかなければならない,連携について引き続き努力をしていく,こういった点で一致をした,こういったことでありました。そして,その後に,海洋の安全保障に関して,ASEANとしっかりと協力していかなければならない,こういったことについて意見交換を行いました。そしてプラユット首相からは,たぶんこれは去年までなのか,ASEANにおける対中調整国をついこの間までタイが務めていた,こういったことがありましたので,その経験等について紹介もありました。いずれにせよ,国際法に基づいて対応していくべきである,国際法の重要性については一致できたと考えております。そして,プラユット首相からはタイの国内政治について説明がありました。私の方からは,8月に憲法案に対する国民投票が予定されていますが,こうした民政復帰のプロセスが進むことについて期待を申し上げた,そんなやりとりがありました。大きくいってその3点でしょうか。
【記者】海洋安保のところは大臣の方からタイに改めてASEANの一体性の強化に向けて積極的な役割を果たしてほしいというような要請はされたという理解でよろしいでしょうか。
【岸田外務大臣】ASEANの一体性は重要であるということは申し上げました。