記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成28年2月2日(火曜日)10時15分 於:本省会見室)

冒頭発言

ベトナム及びインド向け10年間有効の商用数次ビザの導入

【岸田外務大臣】まず,冒頭私(大臣)の方から1件あります。安倍政権成立以降,訪日外国人の数は,成立時836万人でしたが,昨年は1,973万人を記録いたしました。大幅に増加をしております。訪日外国人のさらなる増加を目指し,2月15日から,ベトナム及びインド各国民の商用目的の方,そして文化人・知識人に対する数次ビザの有効期間を最長5年から最長10年に伸長するなど,ビザ緩和措置を開始いたします。最長10年有効のビザを我が国が導入するのはこれが初めてです。
 これによりまして,ベトナム及びインドとのビジネス面での利便性の向上に加え,リピーターの増加による観光立国推進への貢献も期待しております。私(大臣)から以上です。

国連女子差別撤廃委員会質問事項への日本政府回答

【産経新聞 田北記者】2月15日からジュネーブのほうで国連の女子差別撤廃委員会が開かれます。そこで,対日審査が行われるのですけれども,最近日本政府は,委員会のほうに対して,ある回答を寄せていて,その中で強制連行の証拠は確認できなかったという内容のものを出しているのですけれども,このような回答を出すに当たっての政府の考え,それをちょっと説明していただければと思います。

【岸田外務大臣】まず,ご指摘の回答につきましては,かねてより国連女子差別撤廃委員会から質問が出されておりました。
 こうした質問が出されていたところ,昨年末,日韓外相会談におきまして,慰安婦問題に関する両国の合意がなされ,この合意を踏まえて,慰安婦問題をめぐる現在の状況を丁寧に説明し,そして,理解を得ることが重要であるとの考えに基づいて,必要な説明を行ったものであります。

【産経新聞 田北記者】それについて関連なのですけれども,今回の回答の内容というのは国内的には珍しいものでも何でもないのですけれども,これまでの女子差別撤廃委員会とかは,ほかの委員会に関して,このような内容の回答をされたことがないと思うのですが,今回,改めて,このようにちゃんと説明するということに当たっては,それは,どういう,先ほど,考えと言われましたけれども,改めて言っていただけませんでしょうか。

【岸田外務大臣】改めてこのような回答をした理由ということですが,これは,質問をされたから,質問に答えたということです。

【産経新聞 田北記者】今までのところでは,そういう回答はされていなかったのですね,どちらかというと・・・。

【岸田外務大臣】これは国連女子差別撤廃委員会から質問が,我が国に出された。その質問に,今,申し上げましたように,現在の状況等を丁寧に説明した上で,必要な説明を行ったということです。なぜ,今なのか,どうしてそういう答えをしたのか,それは,質問が出されたから,その質問に丁寧に答えたということであります。

内閣支持率

【フリーランス 上出記者】直接大臣の所管とは関係ないのですが質問させてください。
 最近,この数日以内の世論調査では,各紙,内閣支持率が,今まで40%台だったところも50%になったり,毎日新聞などの場合,8ポイント上昇したりしています。
 このことについて,どう考えるかということなのですが,私が聞き及ぶ範囲で年末の日韓外相会談の成果,それから,甘利大臣が,本当は疑惑が多いので,下がるのではないかと思ったけれども,上がったということで,この質問をしているのですが,甘利大臣の会見の仕方が非常によかったということ,あと,この甘利さんの疑惑は,週刊誌が先行したと,だから,新聞などが,本当は政治と金の問題を徹底検証すべきところが,どうしても気が引けるというか,及び腰になって徹底検証されていないとか,そういういくつかの理由らしきものが,私には聞こえるのです。
 大臣は,このことをどのように受けとめておられますでしょうか。内閣支持率が,普通ならば,非常に大きな,甘利さんの問題があるにもかかわらず,大変上がっているということをどうお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】おっしゃるように昨年末から年明けにかけていろいろなことがありました。様々な出来事が発生して,様々な動きがありました。世論調査の数字というのは,そうしたものが全て盛り込まれた上で,一定の数字で出てくるわけですので,その内容について,どれがプラス要素だったのか,どれがマイナス要素だったのか,これは,きめ細かく申し上げるのは難しいかと思います。様々な動き,そして,それに対する評価の総和が世論調査においては一定の数字で出てくるものだと思います。
 結果として,内閣の支持率が上がっているということであるならば,それは歓迎すべきことではありますが,ただ,今,申し上げましたように,様々な要素が含まれていると考えますので,これはよく,冷静に分析しなければならないと思いますし,いずれにしましても,引き続き,緊張感を持って国会にも臨んでいかなければならないと思いますし,内閣も冷静に,そして,丁寧に,活動を続けていかなければならない,このように考えます。

【フリーランス 上出記者】岸田外相自身は,こういう世論調査の結果は,意外という感じはしましたか。というのは,やはり,大抵ああいう問題があると,下がることが多いのですけれども,その辺は,いかがでございましょうか。

【岸田外務大臣】甘利大臣の出来事等の後ですので,世論調査の数字には,注目はしておりました。
 ただ,先ほども申し上げましたように,それ以外にも年末から年明けにかけて,様々な動きもありましたので,その全体を見た上での数字だと受けとめています。冷静に受けとめたいと思いますし,いずれにせよ,緊張感は,引き続きしっかり持っていかなければならないと思います。

尖閣諸島三島の取得・保有

【朝日新聞 安倍記者】米国の国務省がクリントン前国務長官の私用メールを公開しました。その中で,2012年の段階ですけれども,尖閣諸島をめぐって,中国は,日本の国有化の必要性を理解すると米国側に伝えていたという内容があったということが明らかになりましたが,これは,日本側が中国の反応を過小評価していたとも言える内容のわけですけれども,これについて,大臣としては,どのように評価されているのでしょうか。

【岸田外務大臣】ご指摘の点については私(大臣)も報道等で承知しています。ただ,ご指摘の点は,第三国の政府内でのやりとりですので,私(大臣)の立場から,それについてコメントする立場にはない,そのように考えます。

水銀に関する水俣条約の受諾に関する閣議決定

【熊本日日新聞 山口記者】今日の閣議で,水銀に関する水俣条約が閣議決定されたと聞いております。大臣は13年10月に熊本であった外交会議にも出席されて外交交渉に臨まれたと思いますが,水俣病の経験を踏まえてですね,今後日本として,外務省として水銀対策にどう取り組むか,ご所感をお尋ねします。

【岸田外務大臣】ご指摘のように,本日水銀に関する水俣条約の受諾が閣議決定されました。そしてこれからニューヨーク時間で2日,日本時間で3日になると思いますが,ニューヨークの国連本部において,この条約の受諾書の寄託が行われると承知をしています。
 この条約は,水銀が人の健康,あるいは環境に及ぼすリスクを低減するために包括的な規制を定める条約であり,大変重要な条約であると認識をしております。この条約は水俣という名がつけられ,そして我が国の熊本において採択された条約です。我が国としましては引き続き,国際社会と協力しつつ,条約の早期発効,そして効果的な実施,こういったものにしっかりと貢献をしていきたいと考えます。

北朝鮮関連

【NHK 栗原記者】毎回伺っている話ですけれども,北朝鮮の核実験をめぐって安保理で議論が続いています。その政府として最新の状況と,あわせて北朝鮮が発射の兆候が見られる,北のミサイルの件についてもですね,どのようなことを把握されているのかと,あと,中国も含めて関係国にどのような働きかけを行っていくお考えかということについて,最新の状況をお伺いできますでしょうか。

【岸田外務大臣】北朝鮮の核実験に対する国連安保理の決議につきましては,強い内容の決議を採択するべきであるという考えに基づいて,関係国と連絡を取り合い,意思疎通を図っています。昨日も韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)長官と電話会談を行い,こうした取り組みを継続していくことについて一致をしたところであります。
 現状においては,まだ採択される決議の中身ですとか,採択の時期等については決まっておりませんが,各国がしっかり連携をすることによって強い決議の採択を実現することは大変重要であると考えています。引き続き連携や意思疎通に努めていきたいと考えています。
 そして北朝鮮のミサイルに関する情報ですが,この情報につきましては引き続き各国とも連携しながら情報収集ですとか,分析に努めています。ただ,現状の具体的な中身については,インテリジェンスに関わるものであり公の場で申し上げるのは控えなければなりません。いずれにしましても国民の安全や安心に関わる重大な課題であり,引き続き政府を挙げて全力で対応していきたいと思います。対応に万全を期すよう努力をいたします。以上です。

【時事通信 石垣記者】北朝鮮の決議ですけれども,間もなく核実験から1か月になろうとしていますけれども,いつまでにという目標,目処をですね,日米韓でだいたい共通認識というのはあるのでしょうか。

【岸田外務大臣】国連の安保理の決議の内容ですとか,採択の時期については関係国の間で様々なやり取りをし,意見交換は行っています。特に日米韓の間では緊密な意思疎通を図っているところです。ただ,今まだ議論の最中であり,この国連の場においても,また二国間においても様々なやり取りが行われています。具体的な目処等について明らかにするのは,今は適切ではないと思います。できるだけ早い時期に決議を採択するという点では一致をしています。是非,引き続き努力を続けたいと思っています。

伊勢志摩サミット関連

【共同通信 河内記者】G7のサミットの関係で,5月の伊勢志摩サミット成功に向けて安倍総理が米国などG7を歴訪して各国首脳と会談するという報道がありますが,日程の検討状況はいかがというのが一点と,政府としてサミット成功に向けて,その安倍首相とG7首脳との意思疎通強化の必要性をどうお考えになっているか,という点についてお願いします。

【岸田外務大臣】今年,我が国は国連の安保理非常任理事国を始め,様々な役割を果たし,大きな責任を国際社会において負わなければなりません。その中にあって伊勢志摩サミットは,そのハイライトになる会議であると考えています。この重要な伊勢志摩サミットに向けて,安倍総理がG7各国の首脳としっかり意思疎通を図っていく,しっかり準備を行う,これは大変重要なことだと思っています。意思疎通を図るべく,いろいろ努力はしたいと思っていますが,この安倍総理の外国訪問等ですね,具体的な日程等についてはまだ何も決まっておりません。どのような意思疎通を図ることが効果的なのか等も含めてですね,しっかり検討していきたいと考えています。

ジカ熱緊急事態宣言

【NHK 栗原記者】今,中南米で流行しているジカ熱についてなんですが,ヨーロッパ時間の1日にWHOがですね,緊急事態を宣言しました。日本にも来る可能性のあるこの病気ですけれども,政府として対策などについてどのようにお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】まず,2月1日にWHOが緊急事態宣言を行ったと承知をしています。今年はですね,ブラジルでリオ・オリンピック,パラリンピックが開催される予定になっています。多くのアスリート,観光客がブラジル,あるいは南米を訪問することが予想されます。そういった中ですので,今回の緊急事態宣言,我が国としましても重く受け止めています。外務省としましても万全を期すために1月15日以降,ブラジルを含む中南米におけるジカ熱流行国,あるいは地域を対象に,感染症広域情報を発出し,あるいは更新をしています。それ以外にもホームページですとか,メールを通じまして情報提供,あるいは注意喚起を実施しております。今回,WHOの緊急事態宣言が発せられましたので,こうした取り組みは一層強化していかなければならないと考えます。引き続きそうした対応を強化しながら事態の推移を注視していきたいと考えます。

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