記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成26年11月21日(金曜日)10時00分 於:本省会見室)

特定秘密保護法案

【フリーランス 上出記者】10月に開始時期を閣議決定した特定秘密保護法案がこのままでいくと選挙期間中の12月10日に施行されます。それに関して質問させてください。先日,民放テレビなどで安倍首相が明快に「もしこの特定秘密保護法案が報道のことで立件されるようなことがあったら,私は辞任します。」とはっきりおっしゃっておりました。これはあくまでもテロとかスパイとかそういうことだと,一般市民の人には累は及ばないものであると明確におっしゃっているんです。ただ,私たちフリーランスもそうなんですけれども,答弁では報道関係者の中に入るようなのですが,一般市民の中でも色々な活動をされて健康の問題だとか,原発,あるいは基地の問題とか色んな一般市民の方,あるいは研究者の方が情報を集めるということが結構あって,そういうことも取材になるのかということも含めてなんですが,そういった一般市民の方が立件されるようなことはない,というように解釈してよろしいのでしょうか。そういうことがあったら,辞任すると首相はおっしゃったのかどうか。あるいは,岸田大臣自身はどう考えておられますか。普通の情報集めについて,一般市民の方に累は及ばないと明確に言って頂けるのかどうか教えてください。

【岸田外務大臣】総理の発言は,報道の自由等が大変重要であるということをおっしゃりたかったのだと理解をいたします。そして,ご質問につきましては,まず,この法律自体が適切に施行されることが重要だと考えていますし,適切に施行されたならば,ご指摘のような心配は生じることはありえないと私も思っております。

衆議院解散総選挙

【共同通信 斉藤記者】衆議院解散総選挙に関係してお伺いいたします。今回の解散総選挙では,経済政策・消費税増税先送り等々が争点になるというように伝えられていますが,一方で外交・安全保障も重要なテーマとして当然これから議論されていくことが予測されます。そうした中で,これまで外務大臣を務められてきた岸田さんから見て,安倍政権のこれまでの外交実績をどのようにアピールし,そして,今後衆議院選に向けて,今後の日本外交どう進めていくと訴えていくのかについてご見解をお願いします。

【岸田外務大臣】安倍政権,政権交代が行われてからまもなく2年になるわけですが,その間,地球儀を俯瞰する外交あるいは積極的平和主義,こうした考え方を示しながら外交安全保障政策を進めてきました。こうした我が国の取り組みについては多くの国々に対して丁寧に説明を行い,理解を得てきていると感じています。来年,国連創設70周年,戦後70周年という大きな節目の年を迎えます。是非,今後とも我が国は戦後70年間,平和国家として歩んできた歩みを確認し,国際社会に対してしっかり示しながら未来に向けて貢献する考えや取り組みをしっかり示していかなければならないと考えています。
 そして,今回,衆議院解散総選挙ということになりますが,こうした外交をしっかりと進めていく上においても国内の政治が安定し,しっかりしていることが大変重要だということを感じます。是非,こうした解散総選挙を通じまして改めて国民の声を聞き,そして国民の選挙を通じての様々な声を受け止めることによって政権がしっかり力を得て,しっかり政治が日本の国内で進められることを期待していきたいと思っております。

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 平山記者】今の関連で,衆議院の解散に関してお伺いします。
 一昨日,菅官房長官が,集団的自衛権行使容認は衆院選の争点にはならないと発言しました。といいましても,集団的自衛権は,解釈改憲という手続も含め,世論が二分された政策かと思い ます。
集団的自衛権の行使容認が今回の争点になるのかどうか,大臣のご見解をお伺いしたいと思います。

【岸田外務大臣】集団的自衛権につきましては,これまでの衆議院選挙あるいは参議院選挙におきましても,自民党として選挙公約の中で,集団的自衛権の行使を可能にする。こういった公約を明記し,それを掲げて選挙を行ってきました。こうした公約のもとに何度か選挙を行い,そして選挙で国民の皆様方から支持を得てきた。こういったことが行われてきました。ですので,官房長官の発言はそういった点を踏まえての発言だと理解をしています。
 集団的自衛権そのものについては,今,申し上げたとおりでありますが,今後,国会におきましては安保法制の整備等,さまざまな議論が行われることが予想されます。そうした議論を進めていく上においても,選挙を通じて国民の皆様方から政権,そして与党がしっかりとした推進力をいただくことは大変重要ではないか。このように考えます。

【NHK 栗原記者】次の衆議院選挙についてなのですけれども,その勝敗ラインについて,安倍総理大臣は今週火曜日の記者会見で,自公で過半数ということをおっしゃっていたのですが,その後,与党の幹事長,国対委員長の会談などで,絶対安定多数を目指すという話もありました。
 岸田大臣ご自身,今回の次の選挙ではどれくらい与党あるいは自民党で目指すべきだとお考えでしょうか。

【岸田外務大臣】今の質問ですが,勝敗ラインという言葉と目標という言葉と,今,質問の中にもちょっと入りまじっておりました。目標というものと最低ラインというものでは受けとめ方,答えも違ってくるのではないかと思います。
 ですので,私(大臣)自身,そういったさまざまな意見等を参考に,自民党員の一人として努力をしなければいけないと考えております。ですから,私(大臣)自身から最低ラインとか勝敗ライン,あるいは目標を何か申し上げることは控えたいと思いますが,そういった議論を参考に,一人の候補者として,そして自民党員として努力をしたいと考えます。

今後の外交日程

【読売新聞 仲川記者】選挙の話はひとまず置いて,この間,解散後,年末にかけて大切な外交日程もあるかと思うのですけれども,1つは日中韓の外相,外務大臣の会合ができればということで一致していると思います。それの日程の調整状況がどのようになっているかというのが1つ。
 あと,日韓局長級協議についての日程がどのようになっているのか,テーマなどを教えていただけますでしょうか。

【岸田外務大臣】日中韓の3カ国の外相会談,首脳会談につきましては,開催に向けて努力するということにおいて一致をしていると理解しています。そして現在,議長国は韓国でありますので,韓国を中心に開催に向けて努力が続けられることを期待しております。現状,具体的な日程は決まっておりませんが,我が国としましては,対話を重視する立場から絶えず,この日中韓の外相会談,あるいは首脳会談を重視してきました。ぜひ,開催に向けて前向きな努力を期待したいと考えています。
 そして,もう一つの日韓の局長級協議ですが,開催に向けて前向きに調整努力を続けてきました。結果としまして,27日,伊原アジア大洋州局長がソウルを訪問しまして,李相徳韓国外交部東北アジア局長との間において,日韓間の諸課題につきまして協議を行う予定にしております。

近隣諸国との外交

【朝日新聞 松井記者】近隣諸国との外交を重視してきた派閥のトップとしてお聞きしたいのですが,近隣外交は今,ちょうど改善に向けて一歩を踏み出したばかりですけれども,現状をどのように考えて,今後,課題は何であるとお考えですか。

【岸田外務大臣】近隣諸国との関係につきましては,国によってさまざまな違いがあります。その中でありまして,なかなか高い政治のレベルでの対話が進んでこなかった日中間あるいは日韓間,こういった二国間関係において対話の動きが生じていることについては歓迎すべきことであると思います。
 ただ,これはまだ現状,スタートの段階であって,これから引き続きさまざまなレベルで,さまざまな分野において具体的な努力を続けていかなければなりません。こうした対話と協力を積み重ねることによって,ぜひ具体的な成果につなげていきたいと存じます。これから引き続き,努力が求められると認識をしています。

衆議院解散総選挙

【共同通信 市ノ瀬記者】また解散に戻るのですけれども,19日,20日と,弊社のほうで衆院選向けのトレンド調査,世論調査をしましたところ,安倍総理がこの時期に解散を表明するのを理解できるとした人が30%だったのに対し,理解できないとした人が60%に上りました。
 それで今回,野党のほうからも大義なき解散とか,解散の理由はあるのかというような指摘も出ておりますが,この辺の疑問に対して大臣はどのようにご説明されるでしょうか。

【岸田外務大臣】安倍総理は,18日に行われた記者会見におきまして,解散総選挙については,消費税を10%に引き上げることを18カ月延期することですとか,今,行っている経済政策を今後とも続けていくべきかどうか。こういったことについて,国民の信を問う。こういった発言をされたと記憶しています。
 こうしたことに加えて,我が国は今,さまざまな大きな課題を抱えています。原発再稼働を初めとする,エネルギーの未来をどう考えていくか。更には,経済政策の中においても,構造改革,成長戦略をやり切ることができるかどうか。
 また,安全保障法制につきましても今後,国会において大きな議論が行われることが予想されますし,また,日中関係,日韓関係,この近隣諸国との関係につきましても動き始めたわけですが,これから引き続き,また努力を続けていかなければならない。このように,さまざまな課題が存在します。
 こうした課題に立ち向かうために,国民の声を聞き,国民から力をいただき,政治として推進力をいただくこと。これは選挙において大変重要なことではないかと考えます。ぜひ,今回の選挙をこうした前向きな選挙にしたいものだなと私(大臣)は思っています。

日中関係

【毎日新聞 鈴木記者】外交に戻るのですけれども,中国が尖閣諸島上空を含む防空識別区を発表してから23日で丸1年になります。この間,日本政府としても衝突回避に向けて働きかけというものを続けてきたかと思うのですが,改めてこの1年の取り組みの総括と,それから現状ある,あるいは今後の課題についてご指摘をいただければと思います。

【岸田外務大臣】ご指摘の「東シナ海防空識別区」の問題を初め,この東シナ海海域においてはさまざまな緊張状態が存在いたします。そういった状況を前にしまして,政治の高いレベルにおける対話が重要であるということを従来から申し上げてきました。そして,その中において特に不測の事態を回避するための,防衛当局を始め現場における意思疎通が重要であるということも申し上げてきました。
 その中にありまして,日中高級事務レベル海洋協議において,防衛当局間の海上連絡メカニズムにつきましては運用を開始するということで一致しておりますし,そして,その点につきましては先日の日中首脳会談においても,事務レベルでの協議を進める,開始に向けて努力をする。こういったことが確認されています。ぜひ,こうした作業を進め,一日も早い,こうしたメカニズムの運用開始を行いたいと思っています。
 こうしたさまざまなレベルにおける意思疎通の努力を続けることによって,日中関係をしっかりと安定させていかなければならない。このように考えます。

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