記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成26年7月22日(火曜日)11時03分 於:省内記者会見室)

ユース非核特使制度

【中国新聞 藤村記者】大臣が昨年提案されて始まったユース非核特使制度なのですけれども,今月で委嘱から1年を迎えるわけですが,この1年の成果と今後の展望について聞かせてください。

【岸田外務大臣】まず,近年,被爆者の方々の高齢化が進む中にあって,唯一の戦争被爆国として,この核兵器使用の惨禍を将来世代に継承していくことが重要であると考えています。そういった考えに基づいて,昨年6月であったと記憶していますが,ユース非核特使の制度を創設した次第です。
 創設後,今日まで35名の若者をユース非核特使として委嘱をさせていただきました。国内外において,核兵器のない世界を積極的に訴えていただいたと感じています。この制度によりまして,核兵器の非人道性についての認識が世界に広がりつつある。このように感じております。
 そして,来年は被爆70周年という節目の年に当たります。この核軍縮の機運が,世代を超えて一層高まることを期待したいと思っています。外務省としましても,引き続き,このユース非核特使制度を積極的に活用していきたいと考えております。

【中国新聞 藤村記者】実際,委嘱された高校生に聞いてみると,若者の代表として気が引き締まったという意見があると同時に,委嘱期間というものは外国の訪問時だけなものですから,皆さん,帰ってから成果を報告するときも非核特使という肩書きで活動したいという意見があるのですけれども,その辺はどうでしょうか。

【岸田外務大臣】是非,ユース非核特使を委嘱させていただいた方々が思い切って活動し,そして,その成果をしっかりと多くの方々に広めていただくために,具体的な運用のあり方については,今のご指摘等も踏まえて工夫はしていかなければならないのではないかと思います。そういったご指摘についても,いま一度よく確認し,今後の運用の参考にさせていただきたいと思います。

マレーシア航空機の墜落

【ヘット・フィナンシェール・ダッグブラット新聞 ルーシンク記者】ウクライナの事件についてでありますけれども,国連安全保障理事会は21日に国際調査団の無制限の立ち入りを求める決議を採択しましたが,そして,外務省の発表によると,真相の究明をしなければならない。そして,日本は必要な協力をするつもりがあるという発表がありましたが,これから国際調査があれば日本の貢献は可能でしょうか。そして,可能であればどのような形の貢献になる可能性が高いでしょうか。

【岸田外務大臣】まず申し上げさせていただきたいことは,今回のマレーシア航空機の墜落によりまして多くの方々の尊い命が失われました。極めて傷ましいことであると思っていますし,大きな衝撃を受けています。オランダあるいはマレーシアをはじめ,この犠牲者を出された全ての国々に対しまして心から哀悼の意を表明させていただきたいと存じます。
 この墜落の原因につきましては,現在,情報の収集あるいは分析中でありますが,撃墜行為による可能性が高いと思っていますし,国際社会として強く非難すべきであると思います。関与した者は,この重大な責任をとらなければならない。このように感じています。
 真相究明につきましては,分離派武装勢力の妨害によって検証活動が円滑に進んでいないことを懸念しております。全ての関係者のアクセスが確保されるよう,この墜落現場へのアクセスが確保されるよう,分離派武装勢力の協力を強く促していきたいと思っております。
 その関係で,ウクライナの主権,そして,一体性を侵害する分離派武装勢力の行動を強く非難いたします。そして,これに対する外部からの支援は情勢の悪化をもたらすものであり,即刻停止すべきであると考えます。そして,ロシアにつきましては武装勢力に対し,和平に向けた対話に応ずるよう,また,マレーシア航空機墜落事件に関する国際的調査に協力するよう,影響力を行使することを求めます。
 その上で,今,ご質問がありました安保理の決議については,21日に調査団に対し,墜落現場への完全かつ無制約のアクセスを即時に提供することを要求する,この国連安保理決議が全会一致で採択されたことは我が国としても歓迎しております。この決議の遵守を強く求めたいと存じます。
 そして,我が国としてどんな協力ができるのかというご質問をいただきました。この部分につきましては,現在,原因究明に向けての調査がICAOですとか,OSCE,さらにはウクライナ政府,そして,犠牲者を出されたオランダ,マレーシアといった国々を中心として調査が進められていると承知をしています。この調査等についても,今,申し上げました関係国とよく意思疎通を図り,協議をしながら,日本として具体的に何を,どんな部分で貢献できるのか,しっかり検討した上で具体的な協力を進めていきたいと考えています。
 関係者との意思疎通は行っておりますが,現時点でまだ具体的に日本としてこれをするという決定までは至っておりませんが,引き続きしっかりと意思疎通を図っていきたい。このように思っています。

日韓関係

【共同通信 斎藤記者】日韓の関係でお伺いしたいのです。明日,ソウルで日韓外務省局長級協議が開かれると聞いております。大臣はこれまで,安倍内閣のさきの河野談話検証有識者報告を踏まえて,その検証の狙いであるとか,あるいはその意義であるとかについて,丁寧に韓国側に説明していくと。このように大臣も,あるいはほかの外務省幹部の方々もこれまで述べられてきたと。このように承知しております。ただ,韓国はこれまで,政府もメディアも,日本側の検証結果の報告に対して必ずしも賛同していないというよりも,かなり批判をしているというのが現状であると思うのです。
 こうした状況の中,大臣としてどう受けとめられているのか。韓国側が日本の説明を十分に理解できないからこういうことになっているのか。それとも,何か日本の説明のほうに問題があるのか。この現状を大臣としてどう認識されているか。この点についてお伺いしたいと思います。

【岸田外務大臣】まず,今回の河野談話の検討作業の報告書ですが,この報告書は,韓国側が主張するような,河野談話を毀損するようなものでは一切なく,その意図あるいは目的は,国内にあった河野談話に対する疑念に対し,客観的事実をもって答えるということであったと認識をしています。
 そして,その結果,河野談話は歴史的事実に基づいて未来志向の日韓関係を築くため,両政府が努力した結果であったことがわかったと認識をしています。ですので,韓国側のこの反応につきましては残念に思っております。
 そもそも,今回の検討は国会の要請に基づいて,河野談話の作成過程等の事実関係を明らかにするため,各界の有識者の指示に従って行われた客観的な作業であります。韓国政府においては,今回の検討結果を冷静に見てほしいと思っています。
 いずれにせよ,日本政府としては今後とも河野談話を見直すことはなく,これを継承するという立場については変わりはありません。この旨は累次にわたり韓国側に明確に説明はしてきておりますが,今後とも,今,申し上げましたような我が国の考え方について丁寧に韓国側に説明は続けていきたいと考えております。

【共同通信 斎藤記者】来年は終戦70年という節目の年になりますが,これまでの間に慰安婦問題を含めた日韓の歴史認識を巡る摩擦,これを収拾したいというような意思を大臣がお持ちかどうかということをお伺いしたいのと,それに向けた知恵があるのかどうか,そして,ミャンマーでARF,8月に開かれます,ここで尹炳世外相と率直に話し合う用意があるのかどうか,この点についてご認識をお伺いしたいと思います。

【岸田外務大臣】現在,日本と韓国の間においては,様々な課題が存在いたします。ただ,課題が存在するからこそ,両国は対話のテーブルにつくべきであるということを申し上げてきました,この方針については全くこれからも変わりはありません。
 日韓局長級協議は継続されております。明日にもまた開催されるわけですが,様々なレベルを通じての対話は続けていきたいと存じます。
 尹炳世外相との間においても,過去2回外相会談は行っておりますが,是非引き続き率直な意見交換を行いたいと思っています。こうした対話の機会は,我が国は引き続き大事にしたいと思っておりますし,対話のドアはオープンであるという方針は今後も変わりがないということは申し上げていきたいと存じます。
 こうした対話の積み重ねによって,来年終戦70年という節目の年,そして,あわせて日韓国交正常化50年という節目の年であると承知をしておりますが,こうした節目の年を未来思考で大局的な観点から両国関係を考えていく,こうした年にしたいと思っています。

集団的自衛権

【フリーランス 上出氏】集団的自衛権の関係で一つ質問します。
 有識者会議のメンバーでもあった岡崎久彦さんが7月1日の発表の後に,これでもう東京湾からペルシャ湾まで日米は共同で行動できるというようなことを言っています。シーレーンの機雷掃海とか,そういうことも念頭において,共に行動ができるのだということを非常に喜んでおりました。
 現実にそういう東京湾からペルシャ湾まで日米が共同で行動できる,軍艦を守っていくことができるなどということは,今の政府のご説明の中では整合性がとれることなのかどうかというあたりをお聞きしたいのですが,いかがでしょうか。
 要するに,相手方がちょっとでも危険な行為を示せば,それを口実にして,先回りして守ることができるというように岡崎さんは言っているのです。

【岸田外務大臣】ご指摘の岡崎さんのご意見については,私(大臣)自身,詳細を承知しておりませんが,政府としましては,この度,我が国の安全保障の法的基盤の基本方針について閣議決定を行いました。その中においてグレーゾ-ンですとか,PKOにおける駆け付け警護ですとか様々な安全保障上の課題について,どう対応するのか,法的基盤の基本方針を定めたわけです。そして,その中に集団的自衛権に関わる部分があり,ただ,再三申し上げておりますように,我が国政府としては,国民の命,そして,平和な暮らしを守るためにどうあるべきかという問題意識の下に,この議論を進めてきました。ですから,その集団的自衛権に関わる部分等につきましても,あくまでも国民の命,あるいは平和な暮らしを守るために,新三要件に当てはまるかどうか,これに基づいてしっかり考えていく,これが基本的な方針です。
 全て具体的な事案につきましても,新三要件にあてはまるかどうか,これをしっかり確認した上で,我が国の対応は考えていくべきだと,このように考えています。

大臣の訪米報道

【共同通信 高木記者】大臣の訪米予定についてお尋ねします。マレーシア機の墜落等を受け日米二国間で,また意思疎通を今後ともしていくのかなと思うのですが,23日にも訪米される方向で調整されているというような報道もございますけれども,大臣が訪米されるご予定があるのか,いつ頃までに訪米されるのか,ご見解をお願いします。

【岸田外務大臣】様々な報道がなされていることは承知をしておりますが,今,私(大臣)自身,訪米する予定はございません,それだけです。

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