記者会見
岸田外務大臣会見記録
(平成25年10月15日(火曜日)10時14分 於:本省記者会見室)
冒頭発言
(1)日豪外相会談
【岸田外務大臣】先週の記者会見でもお知らせしたとおり,本日,豪のビショップ外相と会談し,日豪関係の更なる強化の契機とする考えです。
(2)ヘーグ英外務大臣の来日・日英戦略対話
【岸田外務大臣】明16日ですが,英のヘ-グ外相を外務省賓客としてお迎えし,第二回日英外相戦略対話を行います。これまで私(大臣)はヘ-グ外相と2回の会談,そして4回の電話会談を行うなど,北朝鮮やシリア情勢等について緊密に連絡を取り合い信頼関係を築いて参りました。今回の戦略対話では東アジアの安全保障環境や安倍政権の安全保障政策についてヘ-グ外相の理解を更に深めていただきつつ,今後の日英安全保障協力が向かうべき方向性について認識の共有を図りたいと思っております。
秋の例大祭における靖国神社参拝
【共同通信 斎藤記者】靖国神社の関係で改めてお伺いしたいと思います。
前回のぶら下がり会見のときに大臣は,明確に行く行かないというコメントをされなかったという記憶があるのですけれども,改めてこの段階で,もしもう一つ踏み込んだコメントがあれば紹介いただきたい,これが1点目です。
2つ目は,ご案内のとおりで,前の宏池会会長の古賀誠さん,日本遺族会会長として,何度かA級戦犯の分祀について言及してきた経緯がございますが,分祀をめぐる議論について大臣は何かご所見がありましたら,紹介していただきたいと思います。
【岸田外務大臣】まず私(大臣)の対応につきましては,従来から申し上げておりますように,私(大臣)自身は安倍内閣の外務大臣として適切に対応していきたいと考えております。従来と申し上げることは変わっておりません。
そして,この分祀論についてのお話ですが,いずれにしましても,どの国であれ,国のために命を捧げた方々に尊崇の念をあらわすことは当然のことだと思っております。そして,その上で,今,ご指摘のような様々な議論が存在することは承知しております。ただ,その部分について具体的に私(大臣)の立場から何か申し上げることは控えるべきではないかと考えます。
POWの訪日事業
【朝日新聞 菊池記者】この後あります米のPOWの件でお伺いしたいのですけれども,米の議会調査局の報告書によると,安倍首相が過去の侵略の歴史を否定する見方も持っているとして,今後このPOWの訪日,招待事業を継続するかどうか不透明だと指摘しているのですけれども,大臣はこのPOWの訪日事業の意義をどう考えているのかということについてと,来年度以降,この事業を継続されるお考えがあるかどうかについて教えていただきたいと思うのですが。
【岸田外務大臣】まず米の報告書については,私(大臣)は内容を把握しておりませんので,確認してみたいと思います。そして,事業自体につきましては,先の大戦における我が国の対応,そしてそれに対する考え方,こうしたものにつきまして,ご理解をいただくために,こうした事業というものは大変重要だと認識をしております。
こうした我が国の姿勢や考え方をしっかりと表す事業というのは,今後も重要なのではないかと私(大臣)は認識をしております。
水俣条約
【フリーランス 上出氏】先般,岸田大臣も出席されて,水俣病の国際条約の締結が行われました。そのときの安倍首相の,既に日本は問題を克服しているということに関しては,かなり厳しい批判があちこちからありました。
例えば日経新聞の春秋などには,いろいろな問題が残っているのに,これはちょっとおかしいのではないかと,先般の放射能のコントロールと同じように認識を欠いている,国際的な認識からいくとちょっとおかしいのではないかということが,春秋だけではなくて,結構かなりいろいろなところから聞かれるのですが,このことについては,大臣として当事者でもあられるのですけれども,どのように受けとめますでしょうか。
【岸田外務大臣】当日のビデオを通じての安倍総理の挨拶ですが,安倍総理のこの発言,「克服」という言葉を使われたということですが,これは我が国が水俣病発生以後,様々な努力を続け,そして今日まで,あらゆる水銀のリスク低減のために努力をしてきたということ。また,水俣を初め,現地の方々も環境先進地域として様々な努力を今日まで続けてきたということ。こういったことを申し上げたかったということであります。
事実,総理自身も同じ挨拶の中に,水俣病によって倒れられた方に哀悼の意を表し,そして,今なお闘病を続けておられる方に対し,心からお見舞いを申し上げる,こうした発言をされておられます。こうした水俣における努力は,引き続き続けていかなければならない,決して終わったものではないという認識は示しておられると受けとめております。
いずれにしましても,政府としまして,引き続き解決に向けて今後もしっかりと努力を続けていかなければならない,こうした問題だと私(大臣)は認識しております。
【フリーランス 上出氏】わかりました。そうすると,一部で出ている安倍首相に対しての批判的な言辞というのは適切ではないと思っておられるということでよろしいですか。
【岸田外務大臣】安倍総理自身,今,申し上げたような思いで申し上げているというように私(大臣)は理解しておりますし,ぜひ関係府省の方々にも,そのように受けとめていただきたいと思っております。引き続き政府としまして,解決に向けて努力を続けていかなければならない,こういった思いを強くしております。
核兵器の人道的影響に関する共同ステートメント
【毎日新聞 福岡記者】先週,大臣が発表された国連第一委員会で今週にも出る予定の核不使用の共同声明についてなのですけれども,広島の選挙区ということで,大臣ご自身が,まず,かなり今回思いというものもあったのかどうかということと,あと,どのようにイニシアティブを発揮されたのかという点をお願いいたします。
【岸田外務大臣】ご指摘の共同ステートメントにつきましては,内容において核兵器の人道的影響に対する認識につきましては,唯一の戦争被爆国である我が国としまして,一致できるというふうに従来から思っております。
その上で,我が国の厳しい安全保障環境との関係におきまして,この共同ステートメントの文言につきまして,関係各国と協議を続けてきた,こういった経緯があります。
私(大臣)自身,この共同ステートメント発出において中心的な役割を果たしているニュージーランドあるいはマレーシアを初め,各国の外相に直接お会いして,我が国のこうした考え方を説明し,協力を要請してきた,こういったことでありました。また,事務的にも関係各国と調整を続けてきた,こうした努力を続けてきました。
今回,関係国との調整の結果,修文が行われ,我が国として指示し得る,こうした判断に至ったこと,このことは,1つ大きな前進だというように受けとめています。ぜひ,共同ステートメント等,様々な努力を今後も続けていきたいと思いますし,また,来年は,我が国,広島でNPDIの外相会談もあります。こうした外交日程もにらみながら,この核兵器に対する軍縮,不拡散の議論を我が国としてしっかりリードしていきたいと考えております。大きな目標であります核兵器のない世界実現に向けて,私(大臣)も引き続き努力をしていきたいと考えております。
【NHK 渡辺記者】今回,日本政府として,岸田外相として支持しうるということで会見で発表されましたけれども,具体的に修文ですけれども,前回ネックになった,いかなる状況下でもというものが残っているということが取材で分かっているのですが,それが残った上で何が一番ポイントになったということなのでしょうか。今回の署名,声明を支持していくという考え方を表すにあたってのポイントになった部分を教えてもらえますでしょうか。
【岸田外務大臣】今回の共同ステートメントに賛成するという我が国の対応,この発表に至る過程は今申し上げたとおりであります。ただ,この中身,具体的な文言につきましては,まだ共同ステートメント自体が発出されておりません。その具体的な文言について取り上げて論ずることは相手国との関係もありますので,正式に共同ステートメントが発出するまでは控えさせていただきたいと思っています。
秋の臨時国会
【産経新聞 水内記者】本日から秋の臨時国会だということで,NSCや秘密保全法案など外交にとって重要な課題が臨時国会は特に多いのですけれども,外務省としてどのような方針でこの臨時国会に臨まれますでしょうか。
【岸田外務大臣】この臨時国会には,御指摘の法案に加えて13本の条約,協定がかかることになっております。それぞれ外務省にとって大変重要な法案であり条約であり協定だと思っております。こうした多くの課題を,この国会において御議論いただかなければなりません。是非,外務省としましても,しっかりと対応していかなければならないと存じます。是非,多くの結果をだすべく,この臨時国会においても努力をしていきたい,このように思っています。
核兵器の人道的影響に関する共同ステートメント
【中国新聞 藤村記者】先ほどの共同声明の関係ですけれども,二点あります。
一点目は,被爆国の日本が今回4回目の共同声明で初めて賛同するということで,これが与える影響や効果をどういうように考えていらっしゃるかということと,もう一つは,例えば本日,豪の外務大臣と会談されますけれども,同じ同盟国で核の傘というか,そういう中にいる国に対して,日本としても,今回賛同するということで,何か呼びかていくような,賛同を働きかけてくおつもりがあるのかということをお願いします。
【岸田外務大臣】まず,この共同ステートメントに我が国も賛同するということは,今後も核兵器の軍縮不拡散を,唯一の戦争被爆国としてリードしていく上において,これは意義あることであると考えております。そして,様々な国々,関係各国に対しては,我が国の考え方を引き続きしっかり説明をしていかなければならないと思っています。
核兵器の人道的影響に対する正確な認識と,そして,我が国の置かれている厳しい安全保障環境に対する冷静な認識と,こうした二つの認識に立って現実的,具体的に軍縮・不拡散を進めていかなければならないという考え方,こういったことを引き続きしっかり説明し,より多くの国々に協力を仰ぎながら核兵器のない世界という大きな目標に向けて努力を続けていきたいと考えています。