記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成25年3月19日(火曜日)10時15分 於:本省会見室)

冒頭発言-第5回アフリカ開発会議閣僚級準備会合への出席について

【岸田外務大臣】16日(土曜日)から17日(日曜日)まで、エチオピアを訪問し、TICADV閣僚級準備会合に出席をいたしました。
 共同議長として、6月のTICADVの首脳による宣言案と行動計画案について、議論をとりまとめ、大筋において合意を得ました。
 また、テロとの闘いへの我が国の姿勢を示し、アフリカの平和と安定を実現するため、総額5.5億ドルの支援を表明いたしました。アフリカ側から、評価する声が多く寄せられました。
 さらに、約15か国の外相・閣僚級と会談・懇談を行い、TICADVに向けた協力を要請いたしました。
 加瀬経団連サブサハラ委員会委員長と共に、我が国がオールジャパンとしてアフリカの成長に貢献する姿勢を、参加者に強く印象づけられたと考えております。

イラク戦争に関する検証結果

【朝日新聞 二階堂記者】明日で、イラク戦争開戦から10年ということで関連して伺いたいのですが、昨年は、民主党政権がイラク戦争に関する当時の政府対応についての検証結果というのを公表しました。これについて、岸田大臣、こうした検証を引き続き行う考えはありますでしょうか。あるなしで、それぞれ理由もお聞かせください。

【岸田大臣】まず、2003年3月20日ですから、明日でちょうど10年ということですが、イラク戦争につきましては、前政権の下で検証が行われていたと承知はしております。12月にこのポイントが公表されたということですが、この10年を振り返って、情報収集ですとか分析能力の強化、こういった外交力を強化するという課題については、今後ともしっかり取り組んでいきたいと思っています。ただ、こうした検証につきましては、前政権の検証も一応公表を前提としないという検証だというように聞いております。
 また、様々な国において、様々な検証の動きがあるようですが、現時点では、政府として、あるいは外務省として、更なる検証をすることは考えてはおりません。

【朝日新聞 二階堂記者】省内で検証の必要性はあるというようにお考えでしょうか。

【岸田大臣】改めて、イラク戦争について検証するというようなことは考えてはおりませんが、日本の外交全体については、絶えず不断の検証を行うことは当然なことだと思っています。

【朝日新聞 二階堂記者】小泉総理が当時、開戦した米国を支持したというプロセスについての検証について、今後必要だというようにお考えでしょうか。そうでないというようにお考えでしょうか。

【岸田大臣】現時点では、新たに検証することは考えておりません。

日中関係

【共同通信 斎藤記者】中国では、新外相に王毅元駐日大使が就任しました。この点についてお伺いしたいのですが、一つは、まず、王毅氏について、大臣はどのような人物だという印象をお持ちか、これは1点目です。
 2点目は、新たに就任した王毅氏と日中外相会談、または電話会談を呼びかけるお考えがあるかどうか。
 更に、ラスト1点ですが、こうした王毅氏との会談実現のために、尖閣の日中対立に絡んで、何らかの形で中国に歩み寄る可能性はあるのかどうか。会談の環境整備をするために日本が何らかの譲歩、あるいは歩み寄りをする可能性があるのかどうか、この3点についてお伺いしたいと思います。

【岸田大臣】まず、1点目ですが、王毅新外相には、かつて日本に大使としておられた時代に、個人的にも直接お会いしたことがありますが、日本でのそうした勤務経験もあり、日本通でいらっしゃるというように評価をしております。
 そして、外相会談につきましては、我々は、中国側との対話のドアは常にオープンにしております。新しく就任された王毅外相とも粘り強く意思疎通を図っていく用意があります。
 そして、それの環境整備ということで、尖閣諸島について何か考えているのかという御質問ですが、まず、尖閣諸島に関する我が国の基本的な立場について、譲歩することは全く考えておりません。基本的な立場は変わらないと思っています。
 しかしながら、個別の問題が全体に影響を及ぼさないようにコントロールをしていく、大局的な見地から戦略的互恵関係を進めていく、こうした姿勢は大事にしていかなければならないと考えています。是非、そうした姿勢で意思疎通を図るべく努力をしていきたいと考えております。

TPP

【フリーランス 上出氏】TPP問題について質問いたします。
 首相の参加表明以来、活発に国会でも論戦が行われています。そのかわりちょっと気になることがあります。というのは、関係閣僚の方たちから、交渉は実際には難しいということが明らかにされています。その中で、もし国益に沿わないということが本当にわかれば撤退もするというようなことも言われています。しかし、日本の国際信用を失墜するようなことが本当にできるのか、特に日米共同声明もあったわけですから、日米同盟に与える影響は大きいと思います。軽々しく撤退というのは言ってほしくないという気がするのですが、その辺、外務大臣としてはどのようにお考えでございましょうか。

【岸田大臣】まず、TPPの交渉参加については、総理が国全体、国民全体の利益を考え、我が国の現在だけではなくして将来を見据えたうえで、更には経済的な影響等、様々な影響も勘案したうえで熟慮の末、TPP交渉に参加することが国益に適う最善の道であると最終的に判断されたと考えています。そして、今、離脱の話を御指摘をされましたが、これから交渉に参加しようという段階において、離脱の話を軽々しくする、このこと自体が国益を損なうことになるのではないかと思います。
 確かに難しい交渉が予想はされますが、強い交渉力を持って臨む、国益のために最善を尽くす、今はそれのみだと思っています。

【フリーランス 上出氏】そうすると外務大臣は撤退ということについては反対であるというようなことになりますが、実際には国会論戦の中で、一部の大臣の方が言っておりますが、その辺との整合性はどうなるのでしょうか。

【岸田大臣】これは、そういったことを口にすることは控えるべきだと言っているのであって、強い交渉力が求められる、強い覚悟で臨まなければいけない、こうした姿勢については同じだと思っています。

TPP及びエネルギー政策

【NHK 新井記者】二つお伺いしたいと思います。一つは先ほどのTPPの関連ですけれども、依然米国などとの二国間協議、決着はしていない状況だと思いますが、日本政府として相手があることなので難しいと思いますが、いつごろまでに二国間協議を終えたいというお考えなのかというのが一点と、もう一つ全く別の話題で恐縮ですが、本日、閣議の後にLNGなどの燃料調達コスト引き下げのための関係閣僚会議というのが開かれたと思いますが、ここで決まったことがもしあれば、教えていただければと思います。

【岸田大臣】まず米国との協議ですが、安倍総理がTPP交渉参加を表明したことを受け、米国通商代表部は声明を発表しております。内容として、一つは安倍総理の重要な発表を歓迎する。もう一つは、協議は進展しているが重要な作業は残されている、日本との協議を継続していくことを楽しみにしている。こうした2点がこの声明の中に含まれています。
 このように協議は引き続き続くわけですが、我が国としては、米国の同意が可能な限り速やかに得られるよう、更に取り組んでいく方針でおります。
 いつまでにという御質問ですが、いずれにせよ交渉参加を決めた以上、早く交渉に加わることが国益に適うことになります。できるだけ早く速やかに、米国の同意を得るように期待する、そのために協議をしっかり進めていく、こうしたことだと思っています。
 それから、もう一つの質問、燃料コストの話。閣議の後とおっしゃいましたが、閣議の前に関係閣僚で議論が行われました。内容としましては、詳しくは官房長官にお伺いいただきたいと思いますが、円安が進む中、燃料調達コストの抑制、これは我が国にとって喫緊の課題だと思っています。その中にあって、我が国のLNG調達において官民挙げて価格交渉能力を高めていく必要があるのではないか、こうした問題意識で、その会合を持ちました。
 決まったことというのは特段ありませんが、外務省においてはしっかりと資源外交を展開していかなければならない、供給先を多様化することによって交渉能力をしっかり引き上げていく、こうしたことの重要性を指摘させていただきました。概要は以上です。

イラク戦争に関する検証結果及びTPP

【北海道新聞 渡辺記者】2点お伺いしたいのですが、1点は先ほどのイラクの戦争の関係ですけれども、先ほど検証は行なう考えはないということだったのですが、たしか2007年の国会の時に、イラク特別措置法を延長する際に国会決議で政府の判断も含めて検証を行うというようなことを決議されていると思うのですが、これとの整合性をどのようにお考えなのかということと、もう一点、別でTPPの関係で、今、首席交渉官というのを置くというような話がでていますけれども、この首席交渉官にどういう方が望ましいとお考えか、お考えがあればお聞かせいただけますか。

【岸田大臣】最初の方の国会決議の内容、今、手元に何もないものですから、一応確認をさせてください。それを見た上で整合性について確認をしたいと思います。
 それから、首席交渉官の質問につきましては、政府として強い交渉チームをつくっていかなければいけない、こうした点は確認をしております。
 その交渉チームの中に首席交渉官というものを置くのかどうか、そして誰が相応しいのか、これについてはいずれにせよまだ決まっていない、検討中だと思っています。どういった人間が相応しいかということについては、外務省のみならずオール政府としてどういった人間が相応しいのか、これを考えていくことになると思います。いずれにせよ、これからです。
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