記者会見
林外務大臣会見記録
(令和4年12月27日(火曜日)10時57分 於:本省会見室)
中国の新型コロナ感染急拡大の影響
【NHK 今井記者】中国での新型コロナウイルス感染拡大についてお尋ねします。中国では、各地で感染が急拡大していますが、こうした中で、中国政府は、昨日、新型コロナウイルスの水際対策を見直し、来月8日から入国後の隔離措置を撤廃すると発表しました。政府として、こうした状況をどのように見ているのでしょうか。
また、中国の地方都市や農村部にある薬局で、解熱剤や抗原検査キットが売り切れたり、値段が高騰したりするなどの影響が出ているとの一部報道もございます。来月には、旧正月の春節を迎え、人々の移動が活発になることから、感染者が更に増えるのではないかという懸念もありますが、邦人の健康・安全の確保のために、具体的にどういった対応をしていくおつもりでしょうか。
【林外務大臣】中国における新型コロナの感染状況につきましては、政府として、鋭意情報収集をしておりまして、在留邦人を含む市民生活や日系企業の活動、また中国経済に与える影響について注視しております。
その中で、今後の水際対策につきましては、感染拡大防止と社会経済活動のバランスを取りつつ、内外の感染状況やニーズ、主要国の水際措置の状況等を踏まえながら、関係各省と緊密に連携しながら適切に判断してまいります。
なお、今後、新たにWHOで「懸念すべき変異株」として指定されるような事態が発生する場合には、当然のことながら、これに機動的に対処していく考えでございます。
両岸情勢、林外務大臣の中国訪問
【共同通信 植田記者】関連して2点、中国について2点お伺いします。中国軍は、25日、台湾周辺の海空域軍事演習を実施しました。米国と台湾による挑発への対応としていますが、日本政府としての受け止めをお伺いします。また、これに関連して、大臣の訪中に関して、その後の調整状況をお伺いします。
【林外務大臣】今、ご指摘のありました、中国側による発表及び中国軍の活動に関する台湾側の発表については承知しておりますが、こうした動きの一つ一つについてコメントすることは差し控えたいと思います。
いずれにしても、台湾海峡の平和と安定、これは我が国の安全保障はもとより、国際社会全体の安定にとっても重要でございます。台湾をめぐる問題が、対話により平和的に解決されることを期待するというのが従来からの一貫した立場であります。この点、これまでも、日米や日米韓、日豪、G7を始め、各国との間で、台湾海峡の平和と安定の重要性について、一致しているところでございます。
こうした立場を中国側に直接伝えるとともに、各国の共通の立場として、明確に発信していくということが重要だと考えております。引き続き、両岸関係の推移を注視しながら、しっかりとこのような外交努力を続けてまいりたいと思っております。
その上で、私(林大臣)の訪中については、現時点で決まっていることは何もございません。引き続き、具体的な時期を調整してまいりたいと考えております。
安全保障能力強化支援のための新たな無償資金協力の枠組み
【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
日本のメディアは、外務省が、20億円の資金を安全保障能力を強化する目的で同志国に供与すると報じています。これらの同志国には、中東の国々も含まれ、安全保障能力強化のために日本の資金を得ることができるのでしょうか。
【林外務大臣】我が国が、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に置かれる中で、力による一方的な現状変更抑止をしまして、特に、インド太平洋地域における平和と安定を確保し、我が国にとって望ましい安全保障環境を創出するためには、我が国自身の防衛力の抜本的強化に加えまして、同志国の安全保障能力・抑止力、これを向上させることが不可欠でございます。
こうした目的を達成するため、開発途上国の経済社会開発を目的とするODAとは別に、同志国の安全保障上のニーズに応えて、資機材の供与等を行う、軍等が裨益者となる新たな無償による資金協力の枠組みを導入することにしておりまして、そのための経費として、令和5年度外務省予算に20億円を計上したものでございます。 対象国等の詳細については、予算が成立した暁には、相手国のニーズ等を踏まえて、政府部内で更に検討を進めていくということになっております。
中国からの入国者に対する我が国の水際措置
【朝日新聞 野平記者】冒頭の中国に関する水際対策に関する質問の関連なんですけれども、先ほど大臣、新たに「懸念すべき変異株」などがあれば、機動的に対応していくとおっしゃられました。春節で、たくさんの訪日客が、来られることも見込まれます。水際対策を緩和したことも相まって、多くの方が来られるのではないかという中で、春節前に、水際対策をすべきじゃないかという声が、国民玉木代表などからも上がっているんですけれども、この点について、春節前の何らかの対策というのは検討されていますでしょうか。
【林外務大臣】今後の水際対策については、先ほども申し上げましたが、感染拡大防止と社会経済活動のバランス、これを取りながら、内外の感染状況やニーズ、主要国の水際措置の状況等を踏まえながら、関係各省と緊密に連携しながら、適切に判断してまいります。
また、政府として、中国が通知を出して、防疫措置の緩和ということしておりますが、この通知を含めて、中国における水際措置を含む防疫措置が、中国経済や市民生活、民間交流等に与える影響について、これも引き続き、注視していきたいと考えております。
米国海兵隊員による車輌窃盗及び交通事故
【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】米軍岩国基地所属の海兵隊員が整備工場に侵入し、新車を盗み、追突事故を起こしておきながら、日米地位協定により、身柄確保も弁償もされないという事態になっています。沖縄で繰り返されてきた米兵の不祥事と、それを罰することができない不条理が、本州でも起きています。安保3文書改定で、自衛隊の指揮権を米軍に委ねることが明らかになっていますが、これは主権の放棄であり、このまま日米軍の垂直統合が進めば、米兵の無法ぶりに拍車がかかることが危惧されます。地位協定を抜本的に見直し、対等な協定にすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
【林外務大臣】今月3日ですが、岩国市におきまして、米海兵隊員が、車両窃盗及び交通事故を起こしたということは遺憾でありまして、政府としても、米側に対しまして、綱紀粛正及び被害者への真摯な対応等について、強く申し入れているところでございます。本件事案については、現在、米側当局とも協力の上で、警察により必要な捜査が行われていると承知しております。
米軍人等による事件・事故は、地元の皆様に大きな不安を与えるものであり、あってはならないものであります。今後も、米側に対して、様々な機会に事件・事故防止の徹底を求めてまいります。
日米地位協定は、同協定の合意議事録等を含んだ大きな法的枠組みであり、政府としては、事案に応じて、効果的に、かつ、機敏に対応できる最も適切な取組を通じまして、一つ一つの具体的な問題に対応してきております。 そうした取組を積み上げることによって、日米地位協定のあるべき姿を、不断に追求してまいりたいと考えております。
国連改革
【読売新聞 阿部記者】先日放送されたテレビ番組で、ごめんなさい、国連の安保理改革についてお尋ねします。先日テレビ番組で、大臣、安保理改革について、非常任理事国という立場と、G7議長国という立場の両方を組み合わせて、うまく組み合わせて進めたいということをおっしゃっていたと思いますけれども、これ、具体的に、どういうのをイメージされているのか。あと、改めて国連安保理改革の必要性について、どうお考えかお聞かせください。
【林外務大臣】来年1月から、日本はG7の議長国として、国際社会の諸問題への対応について議論の流れづくり、これを主導していくということになります。同時に、ロシアのウクライナ侵略等に対して有効に対応できていない安保理に入りまして、その中から、安保理が本来の責任を果たすよう貢献していく、こういうことになります。
これらは、いずれも「法の支配」に基づく国際秩序を堅持していく上で、機動的に組み合わせていくべきものだと考えております。日本が安保理議長を務める1月12日に、議長として、「法の支配」をテーマとする閣僚級公開討論、これを主催するのも、その一環であります。
そして、「法の支配」には、まさに多国間主義というのが不可欠になります。その中核たるべき国連の信頼回復というのが非常に必要になってきますので、その安保理改革というのが、その重要な一環になります。私(林大臣)が、今、ご紹介いただいたような発言をしたのは、こうした関連性について述べたものでございます。
いずれにいたしましても、安保理改革については、議論のための議論ではなくて、改革実現に向けた行動を開始すべきだと考えております。引き続き、G4(日、独、印、伯)や、米英仏、それからアフリカを含む多くの国々と連携しながら、安保理改革を含む国連の機能強化、これに取り組んでまいりたいと考えております。