記者会見
林外務大臣会見記録
(令和4年3月25日(金曜日)12時04分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)ウクライナ及び周辺国への追加的人道支援
【林外務大臣】私(林大臣)から、まず、日本時間の昨晩行われましたG7首脳会議におきまして、岸田総理大臣は、人道状況についての深刻な懸念をG7首脳と共有した上で、ウクライナとその周辺国に対する1億ドルの追加的な人道支援を行う旨表明をいたしました。
新たに表明した追加的緊急人道支援は、既に決定済みの1億ドルの支援同様、ウクライナ及び周辺国に対して、UNHCR、UNICEF、WFP、ICRC等の国際機関や日本のNGOを通じて実施する予定でございまして、引き続きニーズの高い避難民向けの保健・医療サービスの提供、食料配布等に加え、多くの避難民を受け入れ自国経済への影響が深刻なモルドバにおける支援活動や、国際社会が懸念している食料安全保障にも対応すべく、国際機関や日本のNGOと、急ぎその具体的内容の調整を行っているところでございます。
また、岸田総理は、ウクライナの経済を下支えするため、世銀と協調しました1億ドルの借款を速やかに供与することも表明をいたしました。これは2月15日の日・ウクライナ首脳電話会談において、岸田総理よりゼレンスキー大統領に対して、我が国として、少なくとも1億ドル規模の借款による支援を緊急に供与する用意がある旨表明したことを受け、世界銀行とも協議の上、同銀行によるウクライナ向けの開発政策借款に対する協調融資として行うこととしたものであります。
更に、周辺国に滞在する避難民支援のため、物資協力や医療・保健等の分野での人的貢献を行うことも検討しているということを説明をいたしました。
日本政府と日本国民の心は、ウクライナと共にあります。日本は、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携しながら、ウクライナの人々に寄り添った支援を実施してまいります。
(2)国際協力機構(JICA)及び国際交流基金理事長の任命
【林外務大臣】次に、本日4月1日付けで国際協力機構(JICA)の理事長に田中明彦氏を任命すること、また、国際交流基金の理事長に現職の梅本和義氏を再任することを決定をいたしました。
JICAの田中氏は、開発協力の経験や深い見識に加え、外国の首脳級との関係を築く力を有しております。今後、実務や現場とアカデミズムとの優れたバランス感覚をもって、JICAをダイナミックに活性化することを期待をしております。
国際交流基金の梅本氏は、現理事長として取り組むべき課題についての問題意識を有し、海外事務所を有する組織を運営する上で不可欠な知識と調整能力を備えており、引き続き、その見識や能力を生かして、国際交流基金事業の強いけん引力となっていただくことを期待をしております。私(林大臣)からは以上でございます。
ウクライナ情勢(ロシアによる生物・化学兵器使用への懸念)
【日本経済新聞 三木記者】ウクライナに関連してお伺いします。ロシアがウクライナで生物や化学兵器を使うというような懸念が国際社会に出ており、昨日の総理のぶら下がりでも一部言及がありました。日本として、どのようにリスクを捉えられているのかと、対応策についてお伺いします。
【林外務大臣】ロシア軍は、ウクライナ各地で激しい攻撃を続けており、学校、病院、住宅等も攻撃し、多数の民間人に死傷者が発生をしております。民間人や民間施設への攻撃は、国際法違反であり、断じて正当化できないものであり、強く非難をいたします。
この戦況の見通しについて予断をもってお答えすることは差し控えますが、生物・化学兵器、核兵器について申し上げますと、日本政府として、生物・化学兵器の使用は、いかなる場所、いかなる主体、いかなる状況においても容認され得ないと考えておりまして、また、唯一の戦争被爆国であり、核兵器の非人道性、これを知る我が国として、核兵器による威嚇も、ましてや使用も決してあってはならないと考えております。
なお、昨日のG7首脳会合に際して発出した声明においては、G7として、ロシアが締約国となっている国際条約の下での同国の義務を想起すること、同国による根拠のない偽情報キャンペーンを断固として糾弾すること等を表明をしたところでございます。
北朝鮮による弾道ミサイル発射(北朝鮮への追加制裁)
【テレビ朝日 澤井記者】ミサイル発射を繰り返している北朝鮮への追加制裁についてお伺いします。大臣、今朝も「国連安保理を含めて毅然とした対応を行う」というふうに述べられていますけれども、常任理事国の中には、ロシアだったり中国がいる中で、この今、ウクライナ情勢の中で、なかなか一致した行動をとるのは難しい状況だと思うんですけれども、このことへの認識と、米国は先ほど、北朝鮮への個人団体などへの独自制裁を発表していますけれども、日本としても、米国や韓国と連携しながら、こうした独自の制裁というのを行う用意があるのか、調整状況を教えてください。
【林外務大臣】昨日24日ですが、北朝鮮が新型ICBM級とみられる弾道ミサイル、発射いたしました。先般のICBM級の弾道ミサイルに続きまして、北朝鮮がこのような挑発行為を行い、しかも我が国のEEZ内に落下したこと、これは、我が国の安全保障にとって重大かつ差し迫った脅威であり、また、国際社会に対する明白かつ深刻な挑戦であり、到底看過できない暴挙であります。
今般のような、事態を更に緊迫化させる弾道ミサイル発射を含めて、一連の北朝鮮の行動、これは、日本、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できないと考えます。関連する安保理決議に違反し、国際社会に背を向ける行為にほかならず、強く非難をいたします。北朝鮮に対して北京の「大使館」ルートを通じて厳重に抗議をいたしました。
政府としては、北朝鮮に対する対応について、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的な解決に向けて、何が最も効果的かという観点から、不断に検討してきております。
今後とも、日米、日米韓で緊密に連携するとともに、国際社会とも協力をしながら、関連する国連安保理決議の完全な履行を進めて、北朝鮮の非核化を目指してまいります。
また、今後の対応、制裁というお尋ねでございましたが、今後の対応については、制裁なども含めて、米国や韓国とも連携しつつ、検討してまいりたいと考えております。
ウクライナ情勢(ロシアによる侵略への対応)
【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
日本は、ロシアに停戦やウクライナからの撤退を迫る上で、更に制裁を科すことこそ唯一の政策と考えるか。もしくは、制裁の代わりとして、国際的な支持に基づく外交的アプローチのほうが、停戦に向けて、より実効的な解決策と考えるか。
【林外務大臣】ありがとうございます。ロシアによるウクライナ侵略は、力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為であります。明白な国際法違反であり、断じて許容できず、厳しく非難をいたします。
一刻も早く、ロシアの侵略を止めさせ、ロシア軍を撤退させるために、我が国としては、まずはG7各国、そして国際社会と共に、ロシアに対して強い制裁措置をとっていくことが必要だというふうに考えておりまして、昨日のG7首脳会合でも改めてこの点が確認をされました。
こうした認識の下で、我が国としては、まず「最恵国待遇」の撤回のための法改正案を今国会提出に向けて準備を進めること、輸出禁止対象に81の軍事関連団体を追加すること、オリガルヒ等を制裁対象に追加すること、更に贅沢品の輸出禁止措置を来週初めに導入すること、デジタル資産を用いた制裁回避に対応するため、法改正案を今国会提出に向けて準備を進めることを表明したところであります。
これを受けまして、本日、ロシア連邦関係者に対する資産凍結等の措置、ロシア連邦の特定団体への輸出等に係る禁止措置、奢侈品の輸出禁止措置について、必要な閣議了解を行ったところでございます。
引き続き、G7を始めとする国際社会と連携して適切に対応していく考えでございます。