記者会見
林外務大臣会見記録
(令和4年3月11日(金曜日)11時34分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)東日本大震災から11年
【林外務大臣】まず、本日、東日本大震災の発災から11度目となる3月11日を迎えました。この機会に、改めて、震災によって亡くなられた方々の御冥福をお祈りするとともに、御遺族の方々、被災された全ての方々にお見舞いを申し上げます。また、これまでに世界中から頂いたご支援、励ましのお言葉に改めて心から感謝を申し上げます。
震災から11年が経過をいたしましたが、風評被害の払しょくや日本産食品に対する輸入規制の撤廃は、引き続き政府の重要課題であります。「東北の復興なくして日本の再生なし」との強い思いの下で、外相会談等のあらゆる機会を捉えて、また、在外公館や海外で築いた人脈といった外務省の持つリソース、これを最大限に活用しながら、日本産食品等の安全性確保に向けた我が国の取組につき情報発信を行ってまいります。
(2)ウクライナ及び周辺国における緊急人道支援
【林外務大臣】次に、ロシア軍は、ウクライナ各地で激しい攻撃を続けており、学校、病院、住宅等も攻撃し、多数の民間人に死傷者が発生しています。また、ウクライナから200万人を超える市民が第三国に避難をしております。このような状況を我が国としても深刻に懸念をしております。
本日、日本政府は、ウクライナ国内で影響を受けている人々、また、周辺国に避難している人々に対する緊急人道支援の実施を決定をいたしました。
これは、先月27日に岸田総理が表明した1億ドルの緊急人道支援の具体化となります。国連等からの支援要請を踏まえて、現地で活動する国際機関及び日本のNGOと調整を行った結果、一時的避難施設、保健・医療、水・衛生、食料、子どもの保護といった緊急性の高い分野で人道支援を行うものであります。
日本政府と日本の国民の心は、ウクライナと共にあります。日本は、引き続き、G7を始めとする国際社会と連携しながら、ウクライナの人々に寄り添った支援を実施していきます。
(3)2021年版開発協力白書
【林外務大臣】そして、もう一件、本日の閣議におきまして、「2021年版開発協力白書」の公表について発言をいたしました。
この白書は、昨年1年間の我が国の開発協力に関する動きを紹介するものです。今回の白書では、冒頭第I部の「特集」として、新型コロナ対策支援について紹介をし、COVAXワクチン・サミットや東京栄養サミットの開催、ワクチンの供与やコールド・チェーンの整備などについて掲載をしております。
この白書を通じて、開発協力に対する国民の皆様の理解と一層の支持を得つつ、国際社会における開発協力や地球規模課題への取組を、引き続き、積極的に推進してまいります。私(林大臣)からは以上でございます。
北朝鮮による弾道ミサイル発射
【時事通信 田中記者】北朝鮮についてお伺いします。北朝鮮が、ここ最近行った2回の弾道ミサイル発射が、ICBMだったとの分析がなされました。北朝鮮は、かねてから、ICBMと核実験、凍結してきたものについて再開することを示唆していましたが、今後、核実験の再開にまで踏み込んでくるかどうか、というところについての、懸念とか認識について教えてください。
【林外務大臣】防衛省と米国政府から発表がありましたとおり、2月27日及び3月5日に北朝鮮が発射した弾道ミサイルについて、米国政府と緊密に連携しつつ分析を進めた結果、いずれも新型ICBM級の弾道ミサイルであると評価するに至ったところでございます。また、これらは当該ミサイルの最大射程での発射試験を行う前に、何らかの機能の検証を行うことを目的として発射された可能性があると考えられていると承知しております。
今般のような、事態を更に緊迫化させる弾道ミサイル発射を含め、一連の北朝鮮の行動は、我が国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できないと考えます。関連する安保理決議に違反し、国際社会に背を向ける行為にほかならず、強く非難をいたします。
今後の対応については、外交面や制裁の観点も含め、米国や韓国とも連携しつつ、検討をしてまいります。以上です。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国次期大統領の選出(「佐渡島の金山」)
【新潟日報 遠藤記者】韓国大統領選の結果を踏まえて、「佐渡島(さど)の金山」の世界遺産登録について伺います。世界遺産登録に向けて、これまで韓国政府、反発してきたわけですけれども、尹(ユン)新政権に対して、どのように対話・説明していくお考えなのかということと、結果は、革新から保守政権への政権交代となりましたけれども、このことが「佐渡島の金山」の世界遺産登録に、どのように影響していると考えるか、その2点お願いします。
【林外務大臣】今般の韓国大統領選挙におきまして、尹錫悦(ユン・ソンニョル)次期大統領が選出されて、岸田総理から、及び私(林大臣)から、祝意を示すメッセージを発出をいたしました。また、先ほど岸田総理は、尹次期大統領と電話会談を行ったところでございます。
日韓は、お互いにとって重要な隣国であります。国際社会が時代を画する変化に直面する中、健全な日韓関係は、ルールに基づく国際秩序を実現し、地域及び世界の平和、安定及び繁栄を確保する上でも不可欠であります。また、日韓米3か国の連携も重要であります。
1965年の国交正常化以来築いてきた日韓の友好協力関係の基盤に基づいて、日韓関係を発展させていく必要があり、尹次期大統領のリーダーシップに期待をいたします。日韓関係改善のため、尹次期大統領と緊密に協力をしていく考えでございます。
また、佐渡島(さど)についてお尋ねがありましたけれども、この件については、これまでも申し上げてきておりますように、「佐渡島の金山」の文化遺産としての素晴らしい価値が、ユネスコにおいて評価されるよう、韓国を含む関係国と冷静かつ丁寧な議論を行っていく考えであり、2月1日に設置をされました「世界遺産登録等に向けたタスクフォース」の下で検討をしてまいります。
尹次期大統領始め、新政権とも、本件につき冷静かつ丁寧な議論を行っていく考えでございます。
北朝鮮による弾道ミサイル発射
【朝日新聞 野平記者】冒頭の質問とも被るんですけれども、北朝鮮の弾道ミサイルの発射について、金正恩(キム・ジョンウン)総書記は、今年の1月に、ICBMの再開と併せての核実験の再開というのも示唆していて、報道で北朝鮮北部の核実験場の復旧とみられる動きがあるというようなものも出ています。日本政府として、こうした動きというのを把握しているのかどうかという点と、今後の北朝鮮の動きについて、どのように分析しているかを教えてください。
【林外務大臣】今回の北朝鮮側の意図について、日本として断定的にお答えすることは差し控えたいと思いますが、これまでにも、北朝鮮が2021年の1月の党大会において、ICBM級関連事業の推進に言及していることなどを踏まえれば、引き続き、弾道ミサイルの長射程化を追求する姿勢であることには変わりはないというふうに見られます。
いずれにせよ、今回のような事態を更に緊迫させる弾道ミサイル発射を含めて、一連の北朝鮮の行動は、我が国、地域及び国際社会の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できないと考えます。
政府としては、今後とも、日米、日米韓で緊密に連携するとともに、国際社会とも協力しながら、関連する国連安保理決議の完全な履行を進めて、北朝鮮の完全な非核化を目指してまいります。
ロシア軍による北方領土での訓練
【読売新聞 阿部記者】昨日、ロシアの国防省が、北方領土で地対空ミサイルの訓練を行ったというふうに発表しました。日本や米国等が、経済制裁と圧力を強めている中で、こうした日本に対して牽制する狙いもあるとみられますが、日本政府として、どのように分析しているのかと、抗議を含めて日本側の対応についてお聞かせください。
【林外務大臣】ご指摘の発表、これはロシア側がやったと思いますが、現在、事実関係を確認中でございます。いずれにしても、これまでも北方四島における、ロシアによる軍備の強化については、これら諸島に関するわが国の立場と相いれず、受入れられず、抗議をしてきております。北方領土におけるロシア軍の動向については、日ごろから注視をし、情報収集を行ってきているところであり、引き続き、適切に対応していきたいと考えております。
ウクライナ情勢(避難した人の受入れ)
【共同通信 小笠原記者】ウクライナからの、避難民・避難者について伺います。大臣からご言及ありましたように、200万人を超える避難者が出ている中で、改めて日本政府が受入れる意義と、国際社会が、その受入れの面で、日本に期待する役割について、どう考えていらっしゃいますでしょうか。あともう一点、日本政府は受入れ体制について調整中ということにされていると思いますが、調整の現時点での進捗状況についてお願いいたします。
【林外務大臣】政府として、ウクライナから第三国に避難された方々の我が国への受入れを進めているところでございます。
現在、我が国には、在留資格を有するウクライナ人が約1,900人いらっしゃると承知をしております。まず、その方々の親族、知人の方々の受入れを行っていますが、それに留まらず、人道的な観点から対応していくという考えでございます。
手続等ですが、日本に親族や知人がおられる方については、短期査証、これを発給し、入国を認めることにしております。また、日本に親族や知人がいない方についても、人道上の配慮の要否、これを個別に判断して、配慮が必要な場合には、原則として、短期査証を発給することなどによって、入国を認めることになります。
また、受入れた方々の状況を踏まえながら、更に人道的な観点からいかなる対応を行うべきかについて、政府全体として、スピード感をもって対応してまいりたいというふうに思っております。
在大阪中国総領事の発言
【産経新聞 杉本記者】中国の大阪総領事の薛剣(せつけん)さんについてお伺いします。この方が、ロシアのウクライナ侵攻に関して、日本が学ぶべき教訓というのをSNSで投稿しておりまして「弱い人は強い人に喧嘩を売るな」というような投稿をしております。こうした薛剣氏のその言動が、好ましからざる人物に該当するかどうかも含めて、外務省としての受け止めをお聞かせいただいてもよろしいでしょうか。
【林外務大臣】個人の発信の一つひとつについてコメントすることは差し控えたいというふうに思います。いずれにせよ、ロシアによるウクライナ侵略に関しては、今こそ、国際秩序の根幹、これを守り抜くために、国際社会が結束して毅然と対応することが重要であるというふうに考えております。