記者会見
茂木外務大臣会見記録
(令和3年10月5日(火曜日)10時51分 於:本省会見室)
冒頭発言
外務大臣としての抱負
【茂木外務大臣】安倍内閣、菅内閣に続いて、岸田内閣においても、外務大臣を務めることになりました。また、よろしくお願いいたします。
新型コロナの感染の世界的な拡大によって、この1年半ぐらい、なかなか対面での外交と、これも制約を受ける形になりましたが、これまで2年間で、200回以上にわたる電話会談、そしてオンラインのテレビ会議で積み重ねてきたところであります。
また、昨年8月のロンドンでの日英EPAの協議、これから始まりまして、欧米、アジア、中東、アフリカ、中南米等52か国・地域を訪問して、各国外相との間で個人的な信頼関係、こういったものを築き上げ、「包容力と力強さを兼ね備えた外交」を展開してまいりました。
まずは、国際的にも最重要課題であります、新型コロナ対策、ワクチンの公平なアクセスの確保のために、日本は6月2日にワクチン・サミット、これを共催をいたしまして、また、東南アジアの国々、太平洋島嶼国等々に対して、ワクチンの現物での供与を進め、更には、ワクチンがその国に届いた後、接種現場まで、そのワクチンを届けていく「ラスト・ワン・マイル支援」、これも積極的に進めてきました。こういった日本の取組は、世界的にも非常に高く評価をされておりまして、新型コロナを克服すべく、今後も積極的な役割を果たしていきたいと思っております。
先進国において、ある程度ワクチンの接種が進んで、感染が落ち着いてきても、仮にどこかの国で、まだそういったワクチンの接種も進まずに、ウイルスが残っているということになりましたら、感染再拡大のリスクというのは残っているわけでありまして、‘No one is safe until everyone is safe.’(訳:すべての人が安全になるまでは、誰も安全ではない)と、こういった形で、途上国への支援等も含めた取組というのを進めていきたいと思っております。
一方、地域の安全保障環境、これに目を向けますと、最近の北朝鮮によります核・ミサイルの活動、更には尖閣周辺を含みます東シナ海における一方的な現状変更の試みをはじめ、日本を取り巻く安全保障環境、これは厳しさを増しているところであります。
また、日本が提唱している、「自由で開かれたインド太平洋」、このインド太平洋地域、まさに世界の成長センターでありますが、同時にパワー・バランスの変化、これも激しいとこういう地域でありまして、そういった中で、私(茂木大臣)は就任以来、ブリンケン国務長官をはじめ、米国との間で、確固たる信頼関係を築いて、日本の外交安全保障の基軸であります日米同盟の強化に努めてきました。
そして、今日も早速、岸田総理、バイデン米大統領と電話会談を実施したところであります。20分間、非常に打ち解けたといいますか、電話会談だったと。これまでもオバマ政権時代、岸田総理、外相としてバイデン副大統領と何度もお会いしているようでありまして、これから「ジョー」、「フミオ」と、こういった名前で呼び合うということも決まったようでありまして、信頼関係も深めて欲しいなと、こんなふうに考えているところであります。国家安全保障政策、これを一層戦略的かつ体系的なものとしつつ、日米同盟の抑止力・対処力の強化に取り組んでいきたいと考えております。
また日本が推進してきました「自由で開かれたインド太平洋」のビジョン、これは様々な広がりを見せているところであります。民主主義、法の支配、人権等の基本的価値に基づく、このビジョンの実現に向けて、日米豪印、QUADをはじめ、ASEAN、そしてまた、欧州とも協力の分野、これを更に広げていきたいと思っております。
そして、こういった協力は、これまでのインフラ整備であったりとか、海上安全保障の分野からワクチンでの協力であったり、気候変動での協力であったり、また、サプライチェーンの強靱化と、様々な分野の協力に広がってきている。協力の分野といったものも広げていきたいし、様々な協力の枠組み、これも作り、また連携をしていきたい、こんなふうに考えております。
日本の隣国との関係も重要であります。難しい問題、これもあるのは事実でありますが、だからこそ中国、韓国、ロシアなどとは、ハイレベルな意思疎通を継続してきたわけであります。こういった中で、主張すべきはしっかりと主張する、また、問題をマネージしつつ、安定的な関係構築に取り組んでいきたいと考えております。
経済分野でありますが、TPPに始まって、日米貿易協定、日英EPA、更にRCEPの締結など、日本は自由で開かれた公正な経済圏の拡大、更には、デジタル分野での新たなルール作りに、まさしくリーダーシップを発揮してきたと、また、各国からもそのように評価をされているんだと思っております。近々、MC12の会合なども予定をされておりまして、引き続き、日本ならではの経済外交を力強く推進していきたいと思っております。そして、経済の時代が変わってきていますから、21世紀のグローバルな経済、新しい経済に合った、様々なルールであったりとか体制、こういったものも創って射かなければならないと思っております。
気候変動について、2050年の「カーボンニュートラル」、そして2030年の温室効果ガス46%削減を目指して、国内の取組、これを進めるともに、国際社会と連携をし、SDGsの達成に向けた取組の強化といった、地球規模課題への対応などにもしっかりと取り組んでいきたいと考えております。
また、岸田新政権の下、唯一の戦争被爆国として、米国をはじめとする核兵器国を、核兵器のない世界の実現に向けて引っ張っていく、このような役割を日本はしっかり果たさなければならないと考えております。その観点から、来年1月に開催が見込まれますNPT運用検討会議を含め、政府として、一層の取組を進めていきたいと思います。
私(茂木大臣)は、政治を志して以来、「過去と自然は変えられないが、未来と社会は変えることができる」ということを自らの信条としてまいりました。コロナをはじめ、現在の危機を、「未来と社会を変える」チャンスと捉えて、外務大臣としてこれまで築いてきた各国のカウンターパートとの信頼関係であったりとか、様々な経験、これを土台に、全力で外交を推進し、国際社会における日本のプレゼンス、更に高めていきたいと考えております。以上です。
経済安全保障担当大臣との連携
【NHK 山本記者】経済安全保障について伺います。岸田政権では、経済安全保障を担当する新しい閣僚ポストを設けられましたけれども、外務省内にも関係する部署があると思います。連携というのは、どのように図っていくことになるのでしょうか。
【茂木外務大臣】まず、この安全保障の裾野、これは伝統的な分野にとどまらず、経済・技術分野に急速に拡大をしておりまして、経済安全保障の分野で国家間の競争が顕在化をしてきているわけであります。特に戦略的物資や重要技術の確保と、そして、技術の流出防止と、これが今まで以上に重要になってきていると考えております。今年の6月、閣議決定されました「骨太方針2021」において、「経済安全保障の取組について、今後、施策を推進していく上で必要となる制度整備を含めた措置を講ずるべく検討を進める」と、このようにされているところでありまして、まさに岸田総理、そういった中で、経済安全保障の担当大臣を設けるということにしたわけでありますが、関係省庁が連携をしながら、経済安全保障の確保に向けた政府全体として必要な取組、着実に進めていくと。
外務省としても、新設の経済安全保障担当大臣と連携をしながら、これはやはり政府全体の取組、政府一丸での取組ということになりますので、積極的に貢献していきたいと考えております。
台湾情勢(中国軍機の台湾防空識別圏侵入)
【朝日新聞 相原記者】台湾情勢について伺います。昨日、台湾国防部が、中国軍機が台湾の防空識別圏に50機以上へ侵入したと発表しました。米国もそれを受けて、深刻な懸念を表明しています。大臣の所感というか、受け止めをお願いします。
【茂木外務大臣】ご指摘の動向、承知をいたしております。日本としては、台湾海峡の平和と安定が重要であると考えておりまして、これにつきましては、今年3月16日の日米「2+2」においても、4月16日の日米首脳会談においても確認をした点であります。台湾を巡ります問題が、当事者間の直接の対話によって平和的に解決されることを期待するというのが、従来からの一貫した立場でありまして、政府として引き続き、関連動向を注視していきたいと、また同時に、単に注視をするだけではなくて、様々な事態、こういったことも考えながら、どのような対応が取り得るのか、また、どのような準備を進めなければいけないのか、こういったこともしっかり検討していきたいと思っております。
対露外交
【NHK 渡辺記者】茂木大臣、これまでの日露関係も含めて取り組んでいらっしゃったと思いますけれども、今回また新しく岸田政権になりまして、コロナ禍の中でなかなか対面での平和条約交渉が出来ていないと思うんですが、今後、今、対面外交がだんだん再開してきている中で、今後、大臣としましてロシアとの北方領土問題を含む平和条約交渉、どうやって取り組んでいく考えなのか、改めてお聞かせください。
【茂木外務大臣】いや、対面外交、出来てないと言いましたけど、つい先日、国連でラヴロフ外相と会ってきましたし、そこで平和条約締結問題を含め、幅広い日露関係全体を互恵的に発展させていくという考えを、私(茂木大臣)の方からも申し上げまして、日露関係全体の発展に向けて今後も様々な機会を通じて議論継続していくということでラヴロフ外相とも一致をいたしております。領土問題を解決して平和条約を締結する、この方針の下で、しっかりと交渉に取り組んでいきたいと思います。
新政権の外交方針
【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
続投に祝意を表します。大臣は、これまでに築かれてきた土台に基づき、日本の外交政策に大きな変更はないと仰いましたが、岸田総理のいわゆる「ハト派」と呼ばれる、穏健的もしくは穏健的すぎるアプローチの下で、どのように外交を展開されるおつもりでしょうか。
【茂木外務大臣】日本外交の基軸、まさに日米同盟にあると、更には「自由で開かれたインド太平洋」を実現していく、更には経済分野、新しいルール作り、こういったことで世界を引っ張っていく、同時に新型コロナ、そして気候変動問題等、国際社会全体に共通する課題についても連携しながら、しっかり日本として貢献していく、こういった考え方は変わらないと思っております。
岸田総理、これまで築いてきた日本への「信頼」、これは非常に大きいものがあると、私(茂木大臣)は考えております。それは中東においてもそうでありますが、いろいろな国から日本は信頼をされている。こういった信頼を基礎にして「民主主義を守り抜く覚悟」、「我が国の平和と安全を守り抜く覚悟」、「人類に貢献し、国際社会を主導する覚悟」、この三つの覚悟を持って、毅然とした外交安全保障を進める、このことを明言しているわけでありまして、そういった方針には、私(茂木大臣)は全く変わりないと思っております。