記者会見

岸田外務大臣会見記録

(平成25年6月7日(金曜日)10時38分 於:本省会見室)

冒頭発言-ニュージーランド訪問について

【岸田外務大臣】諸般の事情が許せば、明日8日から10日までの日程でニュージーランド(オークランド)を訪問いたします。
 基本的価値を共有し、自由貿易を推進するニュージーランドは、我が国の主要なパートナーです。今回の訪問ではマカリー外務大臣をはじめ、要人との会談を行い、地域の諸問題やTPPを含む経済連携などについて、協力を一層進めていくことを確認したいと考えております。

北極評議会オブザーバー資格承認

【産経新聞 杉本記者】少し前の話で恐縮ですが、北極についてお伺いしたいのですけれども、先般、北極評議会に日本のオブザーバー参加が認められました。この意義と今後、北極海の開発などに対して日本はどのような関与を行っていくか、お考えをお聞かせください。

【岸田外務大臣】5月15日、スウェーデンのキルナで開催されました北極評議会、第8回目の閣僚会合ですが、ここにおきまして我が国のオブザーバー資格が承認をされました。
 我が国は、2009年7月に北極評議会(AC)のオブザーバー資格を申請しておりましたので、今回これが承認されたこと、歓迎をしたいと思っています。
 そして、我が国はこのACのオブザーバーとして、これまでよりも安定した地位でACの諸会合に参加することができると考えています。ACメンバー国や北極圏に居住する先住民の方々とも協力しながら、ACの作業部会の活動への参加等を通じて、ACの活動に対し、より本格的な形で協力していきたいと考えております。
 北極圏につきましては、近年、北極海において気候変動の影響から解氷が進み、北極海における航路の商業利用あるいは資源開発の可能性が増大しています。
 一方で、これらの活動がもたらす環境への影響ですとか、北極圏に居住する先住民族などの生活への影響といった問題点も指摘をされております。北極をめぐる変化は国際社会で大きな注目を浴びております。我が国としても海洋国家として、そして地球環境を重視する国家として、北極に関する国際的な議論に適切に参画していきたいと考えております。
 今回のオブザーバー承認の実現につきましては、今後の我が国の北極海に関する取り組みを前進させることにおいて一つの弾みになると考えています。

歴史認識問題

【フリーランス 上出氏】既に、この記者会見あるいは国会などで答弁されたことに少し重なるかもしれませんが、国連における例の慰安婦問題、それから歴史認識についての動きについて質問いたします。事務総長の潘基文さんが先日、日本の新聞のインタビューに答えられて、国際社会は納得していないというようなことを言っておられます。それに先立ちまして、国連の人権条約に基づく拷問禁止委員会が、こういった繰り返し公人による発言が行われている、事実に反することが繰り返されているということで、日本政府に対しての勧告というものを出すということが報じられております。これに対しての事実関係と、現実に日本政府に対しての勧告ということですので、それは政府としてどう対応していくのか、あるいは外務大臣のお考え、これに対しての受けとめ方などについてお答えいただければと思います。

【岸田外務大臣】この問題に関しての国内の発言に関連して、さまざまな議論や意見が国際社会の中にあるということ、これは十分承知しております。ただ、この慰安婦問題につきましては、筆舌に尽くしがたいつらい思いをされた方々のことを思うときに心が痛むという思い、そして立場、これは歴代内閣と我が内閣、全く変わっておりません。我が国、我が内閣の立場、考え方、これがまだ十分国際社会の中で理解されていないとしたならば、これは引き続きしっかりと説明し、理解を得ていかなければならないと存じます。さまざまな発言があったとしても、我が国の立場や考え方、我が政府の考え方、立場、これは従来と全く変わりない、そして、今申し上げた立場であるということ、これを引き続きしっかりと説明し、理解を得るべく、外交の場においてもしっかりと努力をしていきたいと考えています。

【フリーランス 上出氏】関連ですが、国連の委員会でこういう勧告が出されたということが報じられていることについては、どういうように受けとめていますか。

【岸田外務大臣】我が国は、外交におきましても20世紀、そして過去の歴史の中で多くの戦争があり、女性の人権が損なわれてきました。
しかし、21世紀こそは人権侵害のない世紀にしなければいけないということで、一貫して外交努力を続けてきました。こうした戦後長年にわたる我が国の外交姿勢や外交努力もしっかりと理解してもらわなければなりませんし、加えて、慰安婦問題に関する我が国の立場、こういったものを引き続きしっかりと説明していきたいと考えています。
 こういった努力を引き続き、続けていきたいと考えています。

米中首脳会談

【NHK 坂本記者】米中首脳会談が2日間にわたって行われますけれども、これに関する期待と日本政府としてどういった点に注目しているか。とりわけ、ワシントンのほうで高官が、太平洋地域での領有権争いも議題になるであろうという話をしていまして、恐らく尖閣諸島をめぐる問題についても意見が交わされるのではないかと思うのですけれども、このあたりはどのように注目していらっしゃるか、大臣のご意見をお聞かせください。

【岸田外務大臣】まず、米中首脳会談については、米国が中国に対して関与を進めることは、地域や国際社会における平和と安定の観点からは望ましいことだと思っています。
 このような観点から、今回の会談において、アジア太平洋地域の平和と安定にとって、建設的な議論が行われることを期待したいと考えております。
 米中間のやり取りについて、この場で予断をもってコメントするというのは控えさせていただきたいとは思いますが、我が国は平素から米国との間で緊密な意思疎通を図っております。その米国と中国、ぜひ平和と安定にとって建設的な議論が行われることを我が国としても期待したいと考えています。

ユース非核特使

【中国新聞 藤村記者】ユース非核特使についてですけれども、大臣が表明されてから2か月が経とうとしていますけれども、進捗状況はどのような感じなのでしょうか。

【岸田外務大臣】先のNPDI外相会議におきまして、ユース非核特使を私(大臣)の方から提案させていただきました。
 従来からある非核特使という制度も大変意義ある制度であると思っていますが、被爆者の高齢化を考えますときに世代を超えて、こうした被爆の実相や思いを伝えていくという点でユース非核特使、大変意義ある提案だということで歓迎をされたところであります。このユース非核特使について、こうしたNPDI外相会議でのやりとりを踏まえて、今、具体的に制度設計、あるいは任命につきまして作業を続けているところであります。現状、作業は急がしておりますが、具体的なものが出来上がったという報告まで受けておりません。今一度、確認をしたいと思います。

北朝鮮情勢

【NHK 広内記者】北朝鮮の問題について伺います。北朝鮮側が韓国に対話を提案して韓国側も受け入れました。この南北対話の動きについてどのようにとらえていらっしゃるかということと、引き続き北朝鮮側にどのような行動を求めていくお考えか、改めて聞かせてください。

【岸田外務大臣】対話につきましては、6日に韓国政府は北朝鮮に対し、開城工業団地の正常化、あるいは金剛山観光再開等のために6月12日にソウルで南北長官級会談を開催することを提案したと承知をしております。これは、北朝鮮側から南北当局間会談開催を含む4項目の提案があったことを受けて、韓国側より具体的な日時等を提案したものと承知をしております。現時点では南北長官級会談の詳細は明らかになっておりませんが、我が国としては関心を持って注視をしております。そして、対話が実現するというのであれば、歓迎したいと存じます。また、この対話ですが、南北間の動き、これは是非、北朝鮮の非核化、その他諸懸案の解決につながる必要があると考えております。是非、こうした諸懸案の解決につながるような具体的な、真摯な対話であるならば、これは歓迎したいと思っております。
 いずれにしましても、引き続き韓国、米国、また関係国と緊密に連携しながら対応していきたいと考えております。

尖閣諸島

【朝日新聞 山岸記者】中国での野中元官房長官の発言に関連してですけれども、この会談には大臣の派閥の前の会長であります古賀誠前代議士さんも同席しておられました。野中さんの一連の発言に関して、大臣と古賀前会長との間でどういったやり取りがあったのか、何らかの説明を聞かれたのか、その辺の経緯をお願いします。

【岸田外務大臣】古賀誠前宏池会会長が昨日、野中先生の発言について紹介された総会の場には私(大臣)も出席しておりましたので、この発言はもちろん承知しております。ただ、これは訪中について紹介したという内容の発言でありました。そして、野中元官房長官の発言そのものにつきましては、これは一個人の発言でありますので、政府の立場からはコメントは控えたいと思っています。
 いずれにせよ、この尖閣諸島は歴史的にも、あるいは国際法的にも我が国固有の領土であり、事実、有効に我が国は支配をしております。尖閣諸島をめぐって解決すべき領有権の問題はそもそも存在しない。よって、棚上げとか現状維持ということについては、棚上げすべき問題そのものが存在しない。これが我が国の立場であり、この立場は全く変わっておりません。
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