記者会見
茂木外務大臣臨時会見記録
(令和2年2月15日(土曜日)18時31分 於:ドイツ・ミュンヘン)
冒頭発言
【茂木外務大臣】今日の午後の日程でありますが,16時から約30分間,王毅(オウ・キ)国務委員兼外交部長と日中外相会談を行いました。王毅国務委員とは,新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向け,引き続き緊密に連携をしていくことで一致をいたしました。私(大臣)からは引き続き,中国に対する支援を惜しまない旨述べたところであります。また私(大臣)から,湖北省に在住する邦人の帰国のために中国が全面的に協力してくれていることを日本として高く評価している旨述べるとともに,今度第5便になるわけでありますが,希望する邦人全員の帰国に対する支援を改めて要請したのに対しまして,王毅国務委員からは邦人の安全や健康のために全力を尽くしたいと述べるとともに,日本のこれまでの様々な支援に対してですね,感謝の意が述べられたところであります。また,今春のですね習近平(シュウ・キンペイ)国家主席のですね,国賓訪日についても引き続き日中両国で緊密に連携して準備を進めていくことで,一致をいたしました。
続いて,17時からラヴロフ外務大臣と約1時間,日露外相会談を行いました。平和条約交渉について,昨年末の外相会談を踏まえて,交渉を前進させるための方策について,私(大臣)の考えを,より具体的にですね,伝えたところであります。フェーズが変わってきている,こんなふうに思っております。ロシア側とは原則論をお互いに戦わす,こういったことではなくて,より前向きな話し合いに入っておりまして,基本的な立場の違いを埋めていくための共同作業を進め,協議を進展させていきたい,このように思っております。また,共同経済活動については,今月行われた包括的局長級作業部会での議論や本年実施するプロジェクトを念頭にですね,今後の協議の進め方について議論いたしました。また,元島民の方々が北方四島への訪問に関して,要望されている措置,ちょうど先日,北方領土の日にですね,総理に島民の皆さんとお会いになって,いくつかの具体的な要望がありましたので,そのこともお伝えして,前向きな検討を依頼したところであります。その上でですね,今回の会談での議論を踏まえて,まず,速やかに次官級協議を開催し,フォローアップさせることで一致をいたしました。また,私(大臣)からラヴロフ外相の早期の訪日を招待いたしまして,日程調整することになりました。
今日一日を振り返ってみますと,各国の首脳,閣僚が一堂に会し,国際社会が直面する様々な安全保障上の課題に対して議論を行う場に,日本の外務大臣として参加をし,「自由で開かれたインド太平洋」の実現をはじめ,我が国の取り組みを発信できたことは,たいへん有意義であった,そのように考えております。また,日露平和条約交渉や,北朝鮮,中東情勢,さらには,新型コロナウイルス感染症への対応など,課題が山積をする中で,各国のカウンターパートとしっかり議論を行えたことはたいへん有意義だった,こんなふうに思っております。
質疑応答
【記者】まず日露でちょっとお伺いしたいのですが,新しいフェーズに入ったと大臣仰っておりましたが,これまでの会談では双方,原則論のぶつけ合いだったと思うのですが,その段階を脱したというのは,そのきっかけは何かあったのでしょうか。
【茂木外務大臣】きっかけがあったかどうかは分かりませんが,12月からかなり,前回8時間議論をやっておりますから,かなり突っ込んだ議論ができましたし,今日はさらにそれを踏まえての議論ができたと思っております。原則論をこれまでやってきたこと自体が悪かったと言うつもりはありませんが,前回,そして今回ですね,そういった今まであったような原則論より,よりどうやって問題を解決していこうか,お互いにどういう形だったら受け入れられる解決策があるのか,それについての議論を進めている段階だと思っております。
【記者】関連なんですけれども,平和条約交渉を進めていくための具体的な提案と,共同経済活動ですとか人道的な,元島民の方への人道的措置といった,いわゆる新しいアプローチの取組というのはどのような相互作用を持つと大臣ご自身としてお考えか,ご認識を伺いたいのと,もう一点,先ほどロシアのほうで憲法改正が今議論開始されていますけれども,その中で国内法が国際法に優越するという規定のことであるとか,領土の割譲の禁止というのも盛り込むという提案がなされています。そういったことが今日の会談に何らかの影響を及ぼしたというような感触はなかったでしょうか。
【茂木外務大臣】まず二つ目からお答えしますと,ロシアでの憲法改正の動きについて,様々な報道がなされていることも踏まえて議論を行いましたが,具体的なやりとり,まさに外交交渉,このですね,平和条約交渉でありますから,それにつきましては差し控えたいと思っております。ロシアの内政,外交を含みます動向については,常日頃から関心を持って注視している,このことに変わりはありませんし,また政府として領土問題を解決して平和条約を締結するという基本方針のもと,引き続き粘り強く交渉していく,この方針にも変わりはございません。そしてあの,新しいアプローチ,四島での経済共同活動,去年パイロットプロジェクトを行って,今年からそれを本格化させていくと,かなり今日具体的な議論ができたところでありますし,そういったことを通じて,また元島民に対する人道的な措置についても,今まで以上のことができるような形で要望もさせていただきました。そういった一つ一つの積み重ね,信頼の醸成,これが平和条約交渉に向けての追い風になる,このように考えております。
【記者】今の共同経済活動の関係なんですけれども,次官級協議等これから行われるということですが,今日の段階ではこれまでの試験的なプロジェクトを踏まえて何か具体的にこう,優先的に行うとか,今年はこういったものを具体化しようといったさらに一歩進んだようなものっていうのは実際あったのでしょうか。会談が長くなったのでその分結構お話されたのではと思っておりまして。
【茂木外務大臣】いや,今日長くなったのは平和条約交渉の話です。基本的には。ただ,共同経済活動についても,昨年のパイロットプロジェクトを踏まえて,観光が一番成果が出るというかですね,そうであると思いますけれど,それも含めてですね,本年実施をしますプロジェクトについて,協議を加速させるということでお互い一致をしたところです。
【記者】先ほどの憲法改正についてですけれども,これがもし本当に実現したら,やはり平和条約締結交渉に対して大きな障害になりかねない話だと思います。大臣何かこれに対して懸念を表明されたのか。二点目はですね,先ほど平和条約締結交渉の中で新たなフェーズに入った,これは日本側から何か提案したということですか。それともロシア側から何か提案があったのか。そのあたりを教えていただけますでしょうか。
【茂木外務大臣】まず一点目でありますが,先ほど申し上げたように,ロシアでの憲法改正の動きについて様々な報道がなされていることも踏まえて,今日は議論を行いました。それから…。
【記者】懸念は表明されてないんですか,そこは。
【茂木外務大臣】先ほど申し上げたように,具体的なやりとりについてはまさに交渉事であります。これはまとめていかなくちゃならない交渉です。どういった形のやりとりをしているか,一つ一つを言うことは交渉にとって私(大臣)はプラスになるとは思っておりません。
【記者】二点目はいかがでしょうか。
【茂木外務大臣】もう一回言ってください。
【記者】先ほどの新たなフェーズですね。日本側から何か提案されたのか,それともロシア側から何か提案があったのでしょうか。
【茂木外務大臣】お互いの信頼関係,こういうものがあって議論は進む,こんなふうに思っております。議論すべき項目等々については,私(大臣)から提案しましたが,そういったものについてどう議論していこうか,こういうことはお互いに意見を出し合ったということです。
【記者】二点あります。一点目は今の平和条約締結交渉の関係で,新しいフェーズに入られるということを模索してらっしゃるということについては分かりましたが,ロシア側はこれまでも,第二次大戦の結果であることを認めろという,かなり厳しい原則的な立場を仰ってましたけれども,今歩み寄る作業の中で,日本として領土問題を解決して平和条約を締結するという基本方針は,これは変わっていないということでよろしいのか,というのが一点と。
【茂木外務大臣】結構です。
【記者】二点目は,5月9日の対独戦勝記念日に総理が参加されるかどうかということについて,ロシア側がすでに招待をしているということになっていますけれども,また総理も検討されているということですが,今日の会談の中で日本政府として総理はどうされるのかということについて何かメッセージをお伝えになったのでしょうか。
【茂木外務大臣】今日はありません。
【記者】二点あります。今のと関連してまず一点なんですけれども,首相の5月9日に合わせたロシア訪問というのは,話題にもなっていない状態なのかというのが一点と,あと日中の方なんですけれども,習近平さんの国賓来日について,王毅さんからはどういった意思が示されたのでしょうか。
【茂木外務大臣】ちょっと今の質問ですと,話題にしなかったことがおかしいようなあれですけれど,そうではなくて,ご指摘の式典への安倍総理の出席については,今,検討中ということでありまして,決まっていません。次の首脳会談の日程については外交ルートを通じて調整していくことになっておりますので,あえて今回限られた時間の中で,大切なこと,相当内容の細かいことを話をしなければならない,深いことを話をしなければならない,こういうことで,すでに検討している,協議をしている項目でありますからあえて触れられなかった,こういう形になります。もう一点は何でしたか。
【記者】もう一点は,日中の関係なんですけれども,王毅さんからは習近平さんの国賓来日についてどのような意思が示されたのでしょうか。
【茂木外務大臣】王毅国務委員の方からはですね,習近平国家主席の国賓訪問,ぜひ実現したい,そのような,そして日中関係を新たな高みに持っていきたい,こういう発言がありました。
【記者】重ねて確認です。王毅さんから国賓訪問をぜひ実現したいというのは,時期についても先送りとかではなく,4月中,これまでの予定通りにという趣旨で仰ったのでしょうか。
【茂木外務大臣】それで結構だと思います。