記者会見
河野外務大臣会見記録
(平成30年8月31日(金曜日)12時16分 於:本省会見室)
冒頭発言
(1)河野外務大臣のコーカサス3か国及びドイツ訪問
【河野外務大臣】9月2日から7日まで,アルメニア,ジョージア,アゼルバイジャン,ドイツを訪問いたします。
アルメニア,ジョージア,アゼルバイジャンでは,大統領,首相,外務大臣など,各国政府要人への表敬及び会談を行う予定です。
アルメニア,ジョージアは日本の外務大臣は初の訪問と聞いております。アゼルバイジャンについては,高村外務大臣以来19年ぶりだそうでございますが,今回の訪問を通じて各国との一層の関係の強化を図り,コーカサス地域の日本の取組を強めていきたいと考えております。
ドイツでは,メルケル首相を表敬し,マース外務大臣と会談を実施するとともに,与党キリスト教民主・社会同盟院内会派の会合に出席する予定です。
(2)ジャパン・ハウス ロンドン グランドオープニング
【河野外務大臣】今年6月に開館したジャパン・ハウス ロンドンのグランドオープニングの式典が9月13日に開催される予定です。
この式典には,英国王室よりケンブリッジ公爵殿下が参加を予定されております。また日本からは,麻生太郎副総理が出席する予定です。
グランドオープニング式典では,ラグビーワールドカップ2019から2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会にかけて,「日英文化季間」というふうにしようという紹介も行う予定です。
(3)「夏休み『たびレジ』登録推進書記官」委嘱とSNS等でのキャンペーン
【河野外務大臣】「夏休み『たびレジ』登録推進書記官」を委嘱したケンドーコバヤシさん。今日がキャンペーン最終日ですが,本日正午の数字が,49万7,634人と,大使昇格まであと2,400弱ということなので,何とか頑張っていただきたいと思っておりますが,この「たびレジ」への登録は,海外での安全対策に有効だと思いますので,是非,海外へ渡航される皆様には「たびレジ」の登録をしていただきたいと思っております。
(4)北朝鮮への渡航自粛要請
【河野外務大臣】今,日本政府としては,北朝鮮への渡航を国民の皆様に自粛していただくよう要請をしております。自粛の要請でございますが,なぜ,そういう自粛要請を政府がお願いをしているかということを,是非,ご理解をいただきたいと思います。国交もありませんし,在外の公館もございませんので事件・事故が起こった際,日本政府として俊敏に対応するということができかねない状況になることも予想されますので,渡航自粛を是非守っていただきたいと思っております。
ロシア極東軍事演習
【読売新聞 梁田記者】先日,ロシアの政府が年次の極東での大規模な軍事演習の実施について発表しました。丁度,その当該期間は安倍総理の訪露も予定されているところですけれども,その期間にそれだけ大規模な演習が日本の近くで行われるということ,またその期間に今回初めて中国も参加するということで,それに対してどのようにお考えをお持ちか伺えればと思います。
【河野外務大臣】極東の軍事演習に関しては,日本としても注視してまいりたいと思っております。日本を取り巻く安全保障環境は厳しくなっているという認識をしておりますが,少し様々なものをしっかり見ていきたいと思います。
平成31年度外務省概算要求
【毎日新聞 田辺記者】予算が発表されましたけれども,大臣,前回の時は就任間もなくで,あまりご自分のカラーを出せなかったと思うんですけれども,今回の予算についてはどのように評価されていますか。ODAの増額だったり,チャーター機の計上だったりも含めてお願いします。
【河野外務大臣】財政の状況が極めて厳しい中,外務省の関連予算についても相当しっかり精査をしたつもりでございます。
外務大臣の海外出張にできれば閣僚の専用機というのを使いたいという希望はありましたが,財政上の制約等を考え、来年度は少しチャーター機の予算を増額していただきたいということをお願いしております。
またODAについては,これは使い途,あるいはその効果,その他国際機関を使うのか,あるいはほかのやり方をするのか,JICAを使うかどうか,そういうことも含め,今,有識者で議論をしていただいているところでございますので,少しODAのやり方というものについては,検討を加えてまいりたいと思っております。
その一方で,例えばアメリカがUNRWAに対する資金の凍結をする,あるいは戦後,難民,避難民の数が最大になっているというような人権的な問題が大きくなっているということを考えれば,日本としてもやらなければならない部分というのは,しっかり対応できるような予算が必要かなとも思いますので,これは今後12月に向けて,財政当局としっかり議論をしてまいりたいと思っております。
【朝日新聞 田嶋記者】チャーター機,今おっしゃっていただきましたけれど,かなり増額されて,外務省の説明だと,河野大臣の外遊を基準にして計算するとこのぐらいの額だということなんですけれども,大臣,歴代の外務大臣の中でもかなり出張に行かれる,トップクラスで行かれていて,ただ来年度,正直どなたが外務大臣をやられているか分からない中で,予算の要求が過剰になってしまうという懸念はないでしょうか。
【河野外務大臣】河野外務大臣の出張を基準にという説明があったという話ですが,恐らく今後の外務大臣が,我が国の外務大臣として,これがベースになるんだろうと思っております。
これだけ国際化が進み国際的な問題が増える中で,日本が今の外交的な影響力を維持しようとすれば,恐らくこの一年間の海外出張というのは,日本の外務大臣としてぎりぎり最低限かなと,これ以上海外出張を減らすということは,日本の外交の影響力をそぐことになろうかと思いますので,今後どなたが外務大臣をやるにしても,このレベルを下回ることはあり得ないと考えております。
国連人種差別撤廃委員会による対日審査総括所見の公表
【NHK 石井記者】慰安婦問題に関してですが,国連の人種差別の委員会が慰安婦問題に関する日本の取組について,不十分だという勧告を出していますけれども,これまでも理解を求める日本政府の努力があったかと思うのですが,そうした中でこういった勧告が出たということと,理解不十分だったということに対する受け止め,どういうふうにお考えでしょうか。
【河野外務大臣】この委員会で取り上げるべきものではないということははっきりしておりますので,これが繰り返しそういうことが行われるということは,この委員会の存在意義ということにも関わってこようかと思っております。
【NHK 石井記者】となると,どういうふうに対応されていくんでしょうか。
【河野外務大臣】今,事務総長あるいは国連総会議長が,国連の改革あるいは再活性化ということを盛んにおっしゃっておりますので,その中できちんと委員会としてマンデートのあるものに集中して,しっかりと議論をするというような改革が必要なのではないかと思います。
【NHK 石井記者】慰安婦そのものに関するそういった受け止めが出ているということに関してはどうでしょうか。
【河野外務大臣】この問題については,日韓合意を両国がしっかり履行するということに尽きると考えております。
北朝鮮における邦人旅行者の拘束疑い事案
【共同通信 池田記者】先般,北朝鮮で邦人が拘束された件について伺いたいのですが,大臣,先日の会見で,拘束された本人から日本政府として事情を聞きたいとおっしゃってましたけれども,その後,日本政府として事情は聞かれたんでしょうか。
【河野外務大臣】事情,伺いました。
【共同通信 池田記者】その中で,本人はどのような行為をして拘束されたのかであるとか,拘束中の状況についてどのようなことが分かったんでしょうか。
【河野外務大臣】いろいろお話は伺いましたが,公にするべきものではないと思いますので,中身は差し控えたいと思います。
【共同通信 池田記者】その聴取自体は,すでに完了したと考えてよろしいんでしょうか。
【河野外務大臣】話は伺いました。
河野外務大臣のコーカサス3か国訪問
【北海道新聞 十亀記者】コーカサスの3か国訪問なんですけれども,大臣としてこの地域をどのように評価していて,中長期的にどのような関係を築きたいと考えているのか教えてください。
【河野外務大臣】アジアとヨーロッパをつなぐ結節点ということもありますし,また,イラン,トルコといった中東地域,イスラム地域へも窓を開いている地域ということでもありますので,地政学的にこれから非常に重要になってくるのではないかと考えております。
そういう意味で,日本としてこの3か国,なかなかコーカサスは3か国,地域全体としてというふうにいかないのが現状ではありますから,それぞれの国との二国間ということになってしまうのかもしれませんが,関係を強化していきたいと思っております。特に,国連総会で,「GUAM+1」という枠組みで会合も開いておりますので,こうした3か国としっかり日本が協力していけるような,そういうイニシアティブをしっかり出していきたいと考えています。
平成31年度外務省概算要求
【東京新聞 大杉記者】概算要求に関係してなんですけど,来年,外交日程じゃなくて,日本で国際会議がたくさんありますし,再来年は東京五輪もあって,外国の要人がたくさん来る機会がこの2年間,増えると思うですけれども,それに対応する外務省として,どのように今お考えなのかお聞かせ願えますか。
【河野外務大臣】G20もあれば即位の礼もあります。またワールドカップということも考えれば,それに合わせて外国の要人もいらっしゃってくださると思いますので,首脳会談,あるいはそれに付随した外相会談というものが,かなり短期間にまとまって行えるのではないかと思っております。
それだけ期間が短い間にたくさんの会談をやらなければいけませんから,それぞれの部局の負担は若干増えるかもしれませんけれども,せっかくのいい機会ですので,そこはきちんとやれるだけこなしていきたいと思っております。接遇について,しっかりできるように予算要求はさせていただきましたので,そこはしっかり対応してまいりたいと思います。
北朝鮮情勢(非核化の進捗状況)
【NHK 石井記者】北朝鮮の非核化に関連してなんですけども,先日,ポンぺオ国務長官が訪朝を中止してから,その間も米朝間で様々な応酬があるかと思うんですけれども,今そういった応酬が続いている,いわゆる非核化が進んでいないという評価もあるかと思うんですけれども,外務大臣としてどういう受け止めていらっしゃるのか,あと非核化に日本も関与していくという考えあるかと思うですけれども,こういう状況で,どういった関与がはたしてできるのかお聞かせください。
【河野外務大臣】今の時点で,やはり国連の安保理決議を国際社会が一致して履行するということが,非核化に向けて何よりも大切だと考えております。特に「瀬取り」について,非常に北朝鮮が活発に行っておりますので,「瀬取り」に対応するオペレーションというのを国際社会としてしっかりやらなければならないと思っております。
先般,太平洋艦隊司令部に伺ったときもこの話をいたしましたし,サンフランシスコでのポンぺオ長官との間の電話会談でも,このオペレーションをもう少し厳格にステップアップしていかなければいけないということでも一致をいたしました。
また,オーストラリアの新しい外務大臣を始め,様々,これまでオペレーションに関連してきてくださった国と,このオペレーションの厳格化についても話をしておりますので,少ししっかり対応ができるようにやってまいりたいと思っております。
【NHK 石井記者】膠着状態だと思うんですけれども,その打開には何が必要だとお考えでしょうか。
【河野外務大臣】北朝鮮との交渉というのはこういうものだと,恐らく国際社会として共通の理解があろうかと思います。これを打開するためには,しっかりと安保理決議を履行するということに尽きると考えています。
北朝鮮情勢(日朝高官の接触)
【日経新聞 林記者】先日,ワシントンポストが,北村情報官がベトナムで北朝鮮関係者と接触したという報道を流しましたけれども,情報機関の当局者が外交交渉をすることについて,大臣のお考えをお聞かせください。
【河野外務大臣】北朝鮮とは,様々なルートで様々なやり取りをしております。それ以上,北朝鮮との今の日本とのやり取りについて,何か肯定をしたり,否定をしたりということは避けたいと思います。
【日経新聞 林記者】事実関係ではなくて,外務当局ではなく,情報機関が乗り出すことについてはどう思われますか。
【河野外務大臣】先ほど申し上げたように,様々なルートで様々なやりとりを,これまでもやってきております。
外遊時における日系人訪問
【毎日新聞 田辺記者】先日の外遊でも日系人の方を訪問されたり,G20の時も南米で日系人の方,訪問されたと思うんですけれども,日系人との交流というのが一つはあると思うんですが,その先のですね,外務大臣が時間を割いて行く以上,二国間の関係であったり,また外交戦略上,経済上の狙いというのは何かあるんでしょうか。
【河野外務大臣】日系人が多くいる中南米の国々,あるいはアメリカ,日系人の方々が築いてきたその国の中での日系人に対する信頼というものが,やはり日本に対する信頼に,そのまま投影されてきていると思います。そういう意味でそれぞれの国の日系人社会というのは,日本の外交にとって非常に大きなアセットになっていると考えておりますので,やはり日系人社会と日本との絆というものをしっかり再構築し,強化していくということが,日本の外交の強化にそのままつながっていると私(大臣)は思っておりますので,これからも様々な地域の日系人社会との絆というものをしっかりと築いていけるような活動をしていきたいと思っています。
石油各社によるイラン原油の輸入停止
【NHK 石井記者】イラン産原油の輸入問題についてお伺いますが,報道でも民間の石油会社がイランからの輸入を停止する動きというものが報じられていたり,また,日米間の交渉も続けられていると思うんですが,現状,実際どういう状況なのか,適用除外を求めるという動きもあったかと思うんですけれども,どうなっているのかと言えば,やはりこれも膠着状態だと思うですけれども,11月にも迫る制裁発動の期限も踏まえて,どういうふうに対応していくお考えでしょうか。
【河野外務大臣】日本はJCPOAの前と後で,特に原油の輸入量を増やしたということはありませんので,これについては制裁の,当然,適用除外にされるべきと考えております。今,アメリカ政府との間で,少なくとも現状については制裁の適用除外にすべきという交渉をやっているところですので,これは粘り強くやっていきたいと考えております。