記者会見

岩屋外務大臣会見記録

(令和6年12月17日(火曜日)14時28分 於:本省会見室)

(動画)岩屋外務大臣会見の様子

冒頭発言

スヴィリデンコ・ウクライナ第一副首相の訪日

【岩屋外務大臣】冒頭、私(岩屋大臣)から、一つご報告がございます。
 昨日、訪日中のスヴィリデンコ・ウクライナ第一副首相兼経済相と会談を行いました。私(岩屋大臣)の、11月のウクライナ訪問時以来の再会でございました。
 また、スヴィリデンコ第一副首相は、昨日、関係省庁や企業関係者による日本ウクライナ経済合同会議にも参加をされました。こうした取組を契機といたしまして、日本企業によるウクライナの復旧・復興への参画が、一層進展することを期待しております。
 このように、私(岩屋大臣)のウクライナ訪問を早速フォローアップできましたことは、大変有益だったと思っております。ウクライナにおける公正かつ永続的な平和の実現や、ウクライナの復旧・復興に向けて、今後とも、官民一体となって取り組んでまいりたいと思います。
 冒頭、私(岩屋大臣)からは、以上です。

ウクライナ情勢(北朝鮮兵死傷者)

【共同通信 阪口記者】北朝鮮の情勢について伺います。米国の国防総省の報道官は、ウクライナが越境攻撃を続けるロシアの西部で、戦闘に参加した北朝鮮兵に死傷者が出たことを、米国側として初めて認めました。日本政府として、北朝鮮兵の死傷者が出たことについて、どのような認識を持っているのか、出たこと自体への受け止めを伺います。併せて、EUと米国は、北朝鮮の国防相と人民軍の副参謀総長の資産凍結などの制裁対象を追加したと発表いたしました。日本としての対応、検討状況についてお尋ねします。

【岩屋外務大臣】今、お話がありましたように、米国国防省の報道官は、ウクライナでの戦闘に参加している、ウクライナとの戦闘に参加している北朝鮮兵士に、死傷者が出たことを示す兆候があると述べたと承知しております。
 我が国として、北朝鮮兵士が、ウクライナに対する戦闘に参加していることは認識しておりまして、米国や韓国等と協力して、関連情報の収集・分析を進めております。その上で、死傷者に関する内容を含めて、その内容について、明らかにすることは差し控えたいと思います。
 いずれにしても、最近の、この北朝鮮によるロシアへの兵士の派遣、それから、ロシアによる、北朝鮮からの弾道ミサイルを含む武器・弾薬の調達、及び使用といった、最近の露朝軍事協力の進展の動きを、強く非難したいと思います。
 これはウクライナ情勢の悪化を招くのみならず、我が国を取り巻く安全保障環境に与える影響の観点からも、深刻に憂慮すべきものであると考えております。
 昨日は、同志国とともに、露朝協力を非難する外相共同声明を発出したところです。同志国というのは、G7、プラス、オーストラリア、韓国、ニュージーランドということでございます。
 そして、我が国としての制裁の状況ですが、米国などと歩調を合わせて、露朝軍事協力に関する追加制裁を、今、検討しております。詳細については、現在調整中でありまして、追って正式に発表する予定でございます。
 引き続き、このウクライナの情勢については、関連情報の収集・分析をしっかり行ってまいりたいと思いますし、関連する安保理決議の完全な履行、そして、ウクライナに一日も早く公正な平和が訪れるように、国際社会と緊密に連携して取り組んでいきたいと思っております。

石破総理とトランプ次期大統領の会談

【時事通信 川上記者】米国のトランプ次期大統領は、16日の記者会見で、大統領就任前の石破総理との会談に意欲を示しました。11月の南米外遊時に調整されていた会談は、トランプ氏側から、ローガン法に基づき、就任前の外交交渉は制限されているなどと説明があり、見送られましたが、今回のトランプ氏の発言について、どのように受け止めていらっしゃるか伺います。また、今後の対応についても、併せて教えてください。

【岩屋外務大臣】御指摘の発言は、報道等を通じて承知しております。トランプ次期大統領は、日本を重視するという趣旨の前向きな発言をしていただいておりまして、そのことは歓迎申し上げたいと思います。
 その上で、石破総理と次期大統領との会談につきましては、トランプ次期大統領の陣営側と、意思疎通を、今、継続をしております。その中身は、相手のあることでもございまして、明らかにすることは控えさせていただきたいと思いますけれども、いずれにしても、双方の都合の良い時期に会談を行って、じっくり意見を交わし、首脳同士の人間関係・信頼関係を構築していただきたいと思っているところでございます。

トランプ次期大統領と孫正義氏の面会

【日経新聞 馬場記者】トランプ次期政権と、日本からの投資についてお伺いします。ソフトバンク・グループの孫正義会長は、米国のトランプ次期大統領と面会し、15兆円の投資を表明されました。日本企業との関係では、トランプ氏は、USスチールによる買収を阻止するとも発言されておりますけど、政府としては、どちらも日本企業の投資として、日米双方にプラスだと考えておられると思いますけれども、この時期、トランプ政権に向けて、どう日本として、その投資の拡大の意義を訴えていかれるかお伺いします。

【岩屋外務大臣】ソフトバンクの孫さんが、トランプ氏次期大統領に会って、大型の投資案件を提案されたということは、日米の経済関係が、より発展していくという意味で、大変結構なことだったと感じております。
 その上で、USスチールの買収案件については、ご承知のように、手続がまだ進行中というか、年内にも、シフィウス(CFIUS)という、組織からの審判・判断がくだされると承知しておりまして、これについては、個別の企業の経営に関する事案でございますので、政府として、コメントすることは控えたいと思います。
 いずれにしても、日米相互の投資の拡大を含めた経済関係の一層の強化、それから、インド太平洋全体の、この経済成長の実現、また、経済安全保障分野における協力というものは、日米双方にとって不可欠な事柄だと認識しております。
 政府としては、日米経済関係の更なる深化・発展を進めていけるように、米、新政権、次期政権と緊密に、意思疎通していきたいと考えております。

国会審議

【NHK 米津記者】臨時国会に、話題を移させていただきます。臨時国会では、今年度の補正予算が、今日成立する見通しとなっています。また、政治資金規正法の再改正についても、与野党協議の結果、政策活動費を廃止する法案などが、今日、衆議院で可決される方針で、この国会で改正する、改正が実現する公算が大きくなっています。少数与党として臨んでいる今国会の、これまでの運びと議論の成果を、閣僚として、どのように評価されているでしょうか、お願いします。

【岩屋外務大臣】少数与党としての国会運営全般について、外務大臣としての立場からお答えすることは控えたいと思うのですけれども、政治家個人として申し上げれば、少数与党になったことによって、野党の皆さんの意見をしっかり聞かなければいけない。そうでなければ、予算も法律も、成立させることが難しいという、今、局面を迎えているわけで。そういう意味で言いますと、与党側も、より謙虚に丁寧にならなければいけない。野党の皆さん方も、やはり国政の推進に対して、一定の責任を持っていただかなくてはいけないという状況の中で、私(岩屋大臣)は、これまでにない熟議の国会が、徐々に実現しつつあるんではないかなと、政治家個人としては、感じているところでございます。
 その意味で、これからも政府、あるいは与党としては、謙虚に丁寧に野党の皆さん方に呼びかけ、また、その声も聞かせていただいて、納得と共感が得られる国政を推進していかなければいけないと感じているところでございます。

対ウクライナ支援

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】ウクライナについて伺います。
 大臣は、12月3日の会見で、ウクライナの汚職の実態についての役人の支援金横領額は、最大50%というポーランドの元労働副大臣の発言を全く承知していないとされ、肝心のウクライナの汚職の現状を大臣自身が認識しているか否かについては言及されませんでした。IWJは、都内で、今年、G7司法大臣会合を主催した法務省のウクライナ汚職対策タスクフォースに直接取材し、G7各国と、日本国内では、外務省も含め、ウクライナの厳しい汚職の現状については、関係者全員の認識が一致しているとの説明を得ました。ウクライナの汚職は、G7各国の共通認識であり、国内では、関係各省庁が共有している問題です。にもかかわらず、全く承知していないとして使途の追跡調査も行わず、総額1兆8000億円にも上る日本国民の血税を汚職と横領の泥沼に投げ込むことは許されないと考えますが、御説明をお願いいたします。

【岩屋外務大臣】まず、御指摘のような、貴社と法務省とのやり取りについて、私(岩屋大臣)として、外務大臣として、お答えする立場にありませんが、私(岩屋大臣)は、御指摘の内容は当たらないと考えております。
 確かに、かつて、ウクライナには、汚職というものがはびこっていることが、言われた時があったと承知しておりますが、日本政府としては、これまで行ってきた、また、これからも行っていく、対ウクライナ支援が適切に実施されることが重要だと考えておりまして、ウクライナ政府を初めとした関係機関と密接に連携して然るべく対応を行ってきているところでございます。今後とも、こういう取組を、しっかり継続していきたいと思っております。
 また、かつては、という話を今しましたが、現在、ウクライナは、汚職対策をはじめ、司法、企業統治といった分野における改革の実施に取り組んでいると承知しておりまして、我が国としても、このようなウクライナの取組を、しっかり支援していきたいと考えているところです。
 どうぞ。

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】関連で。今の話を聞くと、法務省と外務省の間に、認識の乖離みたいなのがあると思うんですけど、それは、どういうふうに、法務省の方に合わせて、法務省が間違っているのか、岩屋大臣の意見の方が正しいのか。

【岩屋外務大臣】法務省と、特にこの点で認識をすり合わせようという考えはありませんが、先ほども申し上げたとおり、我が方としては、ウクライナ支援が適切に実施されるということが、言うまでもなく、何より重要なことでございますので、そのことをしっかり念頭に置いて、これからも、その取組をしてまいりたいと考えております。

次期駐日米国大使人事

【朝日新聞 里見記者】米国のトランプ次期政権の話題に、また戻るんですけれども、先ほど、次期駐日大使に、実業家のグラスさんが就くというような発表がありました。この方、以前、官房長官会見でも、もう既にこの質問があるので、ちょっと、また別の角度で、中国の関係で伺いたいんですけれども、以前、ポルトガル大使のときに、ファーウェイの5G導入などをめぐって、いろいろと対中強硬論を持ってらっしゃる方というふうな評価もある中で、今、日本と中国が関係改善していく中で、これ、どういうふうに影響していくと、現時点で見られているのかというのをお尋ねできたらと思っております。

【岩屋外務大臣】現地時間の16日に、トランプ次期大統領はSNSにおいて、ジョージ・グラス元駐ポルトガル大使を次期駐日大使として発表したと承知しております。
 米国の駐日大使というのは、言うまでもなく、日米両国の懸け橋の役割を担う、極めて重要なポストだと思います。今後、正式な指名や上院の承認が行われていくと承知しておりますが、早期に着任をされて、日米関係のために御尽力をいただくということを期待をしたいと思います。
 今、ご指摘のあった、これまでのジョージ・グラス氏の発言というのは、私(岩屋大臣)もよく承知しておりませんが、いずれにしても、次期米国駐日大使とは、しっかりと連携して、日米同盟を更に強固にし、新たな高みに引き上げていくために、ともに働いていきたいと、協力し合っていきたいと考えております。

シリア情勢(ゴラン高原入植拡大)

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
 (以下は英語にて発言)
 シリア情勢について質問します。イスラエルがシリア領土への拡張を続けていることについて、日本の立場をお伺いします。これまで、日本とG7は、イスラエルがシリアの軍事施設を理不尽に爆撃していることへの批判や非難を控えていますが、これは間違いなく、イスラエルによる更なる攻撃、更なるシリア領土への拡大を助長し、地域の不安定化につながっていると考えますが、いかがでしょうか。

【岩屋外務大臣】御指摘のイスラエルの動向についてですけれども、正直、少し心配しております。
 我が国としては、これまでも、一貫して述べているとおり、イスラエルによるゴラン高原併合を認めない立場でございます。
 今回のような措置が、域内の緊張を更に高めるということを憂慮しておりますし、本件をめぐる動向を懸念を持って、注視しております。
 また、イスラエルの、いわゆる入植活動も、国際法違反であると思っておりまして、我が国は、イスラエル政府に対して、入植活動の完全凍結を繰り返し呼びかけてきております。改めて、そのことを強く求めたいと思っております。
 シリアの動向も、今、重大な関心を持って注視しております。この行方については、予断を持って申し上げることは控えたいと思いますが、我が国のみならず、国際社会は、シリアにおける暴力の全てが停止されて、何よりもシリア国民にとって、より良い国造りが再開されることを、心から期待しているところでございますが、そういうシリアでの情勢にも、大きな影響が及びかねないということで、重大な関心をもって、イスラエルの動向も注視していかなければいけないと思っております。
 今月12日に発出したG7首脳声明におきましても、全ての当事者に対し、シリアの領土的一体性と国家的統一性を維持して、シリアの独立と主権を尊重するように求めるとともに、イスラエルとシリアの間のゴラン高原を監視する、国連兵力引き離し監視隊への支持を、改めて表明をしたところでございます。
 私(岩屋大臣)、かつてゴラン高原というのは視察で行ったことがありまして、是非、ここでの平穏が、これからも保たれていかなければならないと思っております。
 我が国としては、引き続き、全ての当事者に対し、もちろん、イスラエルだけではなく、全ての当事者に対して、暴力の即時停止、国際人道法を含む国際法の遵守、中東地域全体の、緊張緩和に向けた必要な措置をとることを、強く求めていきたいと思いますし、そのために日本外交としての役割をしっかり果たしていきたいと思っております。

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