記者会見

外務大臣会見記録(平成18年8月)


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外務大臣会見記録(平成18年8月30日(水曜日)18時15分~ 於:本省中央玄関)

北方四島周辺水域における日本漁船に対する銃撃・拿捕事件

(問)今回の事件で乗組員2人が今日解放されましたが、大臣のご所見は。

(外務大臣)16日に発生して、約2週間というところですが、無事二人解放され、帰ってきた人たちも疲れているみたいですが、病気のようではないので、この後いろいろ事情を聞いて対処したいと思います。

(問)坂下船長についてはまだ身柄拘束の状況が続きそうですが、外務省としてはどうするお考えですか。

(外務大臣)これは向こうの法律の話になるので、向こうの法律によって裁かれる、対応するということになるので、これに関しては向こうの話なので事情がよくわからない、こちらも帰ってきた二人からよく事情を聞いた上で対応を考えなければならないと思っています。

(問)ロシア政府としては、船長については刑事訴追をするという方針を日本政府に伝えてきていると理解していいのですか。

(外務大臣)そのようにしようとしているという意図があることは知っています。

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外務大臣会見記録(平成18年8月25日(金曜日)11時07分~於:本省会見室)

閣議・閣僚懇談会

(外務大臣)消費者物価指数というものの新たな基準の切り換えを5年ぶりにやります。前回の分と今回の分との切り換えの部分の説明が多分難しいと思います。今月から切り換えた結果、新基準では旧基準に比べて0.5ポイント低くなりました。物価が下がったということですが、今まで通りのやり方でやるとプラスになっています。基準の切り替えをしたことによって、先月までの基準だったら消費者物価はプラスになって、今月の分は基準を切り換えたから下がった。だから、マイナスじゃないですかと言うのはちょっと待って下さい。そういった面をよく見て、水準をよく見てもらわないと、ただただ耳で聞いてもあまりわからないところです。総合防災訓練を9月1日に予定通り行うという話が沓掛防災担当大臣から、文化功労者の話について小坂文部科学大臣から発言がありました。松田大臣からリビア及びベトナム訪問について、猪口大臣からトリニダード・トバゴ及びニカラグア訪問について、杉浦法務大臣からカメルーン、ガボン及び西アフリカの沖にある島であるカーボベルデ、こういった国々への訪問についてそれぞれ報告がありました。いずれも今のは戦略的な外交の一環として各大臣に訪問をお願いしているもので今まで日本の閣僚が行ったことのない国への訪問の一環です。川崎厚生労働大臣から日本からも出ているWHO事務局長選挙の関係でタイへの訪問、及び戦略的な外交の一環でマダガスカルへ訪問したことについて。中川農林水産大臣は同じくアラブ首長国連邦及びサウジアラビアへ。所謂GCC(湾岸協力理事会)という湾岸諸国との間の自由貿易協定の意見交換の為に行ってきました。同じく小池環境大臣がツバル及びフィジーへ戦略的な外交の一環として訪問しました。
 閣僚懇談会では、公共調達の適正化について谷垣財務大臣から公益法人との随意契約等々の話がありました。北側国土交通大臣から「住んで良し、訪れて良しのまちづくり」について、福島県のアスファルト道路を撤去して砂利道の街道を復活した例やこれまで地域再生に向けた取り組みをされた地方、八戸や阿寒湖等々、色々努力をされた方々の例を100選んだという報告がありました。

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「平和構築を担う人材とは ~アジアにおける平和構築分野の人材育成に関するセミナー~」

(外務大臣)8月28日(月曜日)、29(火曜日)に、アジアにおける平和構築分野の人材育成に関するセミナーを国連大学で行います。国連大学と外務省の共催ということになりますが、アジアにおいて平和構築分野の人材育成ということのセミナーを開こうと思っています。背景は、これは確かどこかの講演で前に述べたと思いますが、少なくとも平和構築というものを行った場合に、内紛とか内戦等が終わった後、行政官が丸々全部いなくなっている。もしくは地方税、地方議会等々、何のことだか全然意味が分からないという国々もたくさんあります。軍隊はあるけれど警察がよくできていない、裁判制度が全然できていない、徴税方法を含めて国を造っていく時、内戦や内紛が終わった後の国造り等々を考えていった時に、官僚、裁判官を含めて役人が育っていませんから、そういった部分はある程度訓練してやらないとどうにもならない。私共としてはこういったものは日本が最もできる分野であると考えます。経済企画をやります、こういった分野で通したらこうなるのですというのは、まず統計ができていなければ話になりません。まずその統計の取り方。何の統計を何の為に取るのか、その取り方はこうです。そしてこれを分析するのはこうですと。経済企画庁長官の時に随分世界中に人を出しましたが、これは発展途上国においてはほとんど統計の元となる資料がなく、統計の取り方もできていないことがあります。たくさん挙がっている統計というのは、我々と同じようにやった統計だと思って見ていますが、実は全然背景はなくて、適当に大体こんなものというような感じで流れている分を新聞がそのまま書いているだけ。そういうのは日本が行った方がいいですよ。ですから、それは違うでしょう、こうやって作るのですと、人をずいぶん海外に送った分が、今少しずつできあがりつつあるのですが、そういったものを含めて、更にこれをきちんと訓練するということを人材開発としてやっていきます。もちろん日本人も海外に行ったら訓練します。そして同時に向こう側もそういったものを訓練します。人を出します。バングラデシュというのは例えば人口比でたぶん世界で一番PKOに人を出している所だと思います。色々な所で人を出している。しかし、その出されている人の質、訓練の度合い等々を更にレベルアップして何とかしていくことを考えたらいいのではないかということで、平和構築分野の人材育成。これは国連と話をした上でやっトいることをスタートさせます。

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日中21世紀交流事業 中国高校生第一期長期招聘事業の開始

(外務大臣)日中21世紀交流事業の一環として、37名の中国人高校生が1年間ホームステイをしに来ます。既に実施しました10日間のショートステイについては、1回目は200人、2回目は250人の高校生が来日していますので、その後を受けて、1年間の招聘事業を始めることにしています。9月7日から1年間の日程で滞在することになっています。宮城、茨城、沖縄、高知といろいろ全国あちこちで、中国を受け入れてもらえるというのは大変喜ばしいことだと思っています。

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イラン核問題

(問)六カ国が出した包括的提案に対して、イランはウラン濃縮を停止しないという内容を含んだ回答を示されたようですが、これについてどう受けとめていらっしゃいますか。今後、制裁論議が高まっていく可能性があるのですが、この中で日本はどう対応していきますか。

(外務大臣)日本が北朝鮮に対して出した国連安保理決議1695号の次の1696号がイランに対する国連安保理決議です。基本的には1696号に従わせていくことになると思っていますので、早い話が濃縮関連・再処理活動を停止するということだと思います。この回答の内容は我々が直接知らされているわけではありません。これはEU3+3に対する回答ですから日本はこれに対して直接関与しているわけではありませんし、イラン側の回答については非公表の話でもありますので、我々はコメントする立場にありません。基本的にはそういうことです。今後やるべき事は1696号に従ってやっていくというのが基本です。

(問)あと一週間くらいで期限を迎えますが、制裁に入っていく上で、非常任理事国としてのやり方というか、日本はイランとの関係も深いかと思うのですが国際社会をどう取りまとめていくのでしょうか。

(外務大臣)これはイランが答える内容に依るところが大きいです。イランは大体交渉させたら、絨毯を買った時と同じような感じだと思えばいいとよく聞きますが、とにかく往来が激しいところですから。従って、書いてある内容の行間を読む、裏を読むというのがものすごく難しいところなのだと思います。従って日本としては安保理決議1696号の通りにやってもらいますという事なのですが、その内容が金融制裁になっているとか想定はできますけれども、今の段階で日本としては予測を含めて言うのはちょっと危ない橋なので、簡単には言えないという立場です。それが基本です。そして一番大事なところは核の話なのであって、こちらもこの間の北朝鮮の地下核実験の話、ミサイルの話など物騒な話がたくさんありますし、そういったものに関して一番被害を身近に感じたのが韓国、日本だと思います。このような状況下にあって、日本は自国の石油の利権の為とか自国の利益の為だけとかの話で安易に譲ることは出来ない。被爆経験のある唯一の国としても日本としてはこのような話は基本として国際社会との協調が大切であると思います。

(問)今仰った北朝鮮の地下核実験ですが、米軍の対応を含めて各国からの反応も出ているのですが、政府としてどのような情報を集めているでしょうか。

(外務大臣)これはインテリジェンスに係る話なので、随分色々ありますが、今この話に関して多く言えることはないのですが、少なくとも先程言ったように安保理決議1696号に基づいてIAEA等々の処置に政府も言うことをきちんと言わなければいけないことになっています。これはミサイルの話と違って、地下でやる話なので更にどこがどれぐらい進んでいるのかというのを上から見たり、情報を聞くというのは極めて難しいことは確かです。そういった事を含めて情報収集並びに分析はきちんと行っていますけれども、色々な意味で難しく、細目答えることはできません。

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北方四島周辺水域における日本漁船に対する銃撃・拿捕事件

(問)まだ3人が拘留されていますが、拘留期限が26日に切れるそうですが、先方から処分についての連絡等は入っていないのでしょうか。

(外務大臣)今の段階でお話できることはありません。

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麻生大臣の総裁選出馬表明

(問)閣議後に総理に正式な出馬表明について報告はされましたか。

(外務大臣)ありません。

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外務大臣会見記録(平成18年8月16日(水曜日)13時04分~於:本省中央玄関)

北方四島周辺水域における日本漁船の銃撃・拿捕事件

(問)今回はロシアに日本の漁船が拿捕されるという事案が起きましたが。

(外務大臣)既に一部報道で流れていますように、本日午前、ロシアによる日本漁船の銃撃、拿捕という事件が起きています。ことの重大性というものを鑑みると、人命に関わっているとの話もありますので、私の方から、原田欧州局長をして、在京ロシア大使が今不在ですので臨時代理大使を呼んで事情説明を求めると同時に、拿捕された漁船の直ちの釈放、また身柄拘束をされているというのであれば、その人の解放等々を申し入れ、いわゆる即時解放というのを求めさせています。乗員1名死亡という噂もありますので、事実確認が取れていませんから、引き続きこの問題に関しては重大な関心を持ってことに臨みたいということです。モスクワにおいては、齋藤大使の方から、ロシア当局に対して同様の申し入れを行っているということだと思いますが、ことを調べた上で、私の方からも直接、在京臨時代理大使に対して申し入れを行うという予定になっています。

(問)日本人乗組員の安否についてですが。

(外務大臣)正確なところは今の段階ではわかっていません。

(問)1名死亡、1名重傷、それから死亡もしくは重傷という話があるのですが。

(外務大臣)今はお答えできません。

(問)先程、ロシアの臨時代理大使が、拿捕した地点はロシアの領海内だとおっしゃっていたのですが、それについていかがでしょうか。

(外務大臣)ロシア側の言い分とこちら側の調査との詳しい説明がきちんとできない段階では、マルともバツとも答えられません。

(問)今後、拿捕とか銃撃とかいう事例を避けるために、何かルール作りのようなものを考えるお考えはありますでしょうか。

(外務大臣)前々からその話はずっと継続中の懸案の一つだと思います。

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外務大臣会見記録(平成18年8月15日(火曜日)11時07分~於:本省会見室)

靖国神社

(問)今朝、小泉総理が靖国神社を参拝されましたが、大臣の受けとめをお聞かせください。

(外務大臣)毎回行っておられますので。8月15日に行くという話は5年前の総裁選挙の時に4候補とも全員行くと言っていました。8月15日には行かないと言ったのは私だけだったと記憶しますけれども、私は他の日にちに行きますということを申し上げたのですが、小泉総理は総理になられて前倒しにされたのですよね、8月13日だったかな。何のためかよく意味はわかりません。そこのところは知りません。結果的には同じ話になったので、8月13日に何のために変えられたのかはよくわかりませんでしたが、今回はその時の公約を実行されるというお気持ちがお強かったのではないでしょうか。気持ちを忖度すればそういう感じになったと思います。

(問)大臣は先日発表された「私見」の中で、靖国のとらえ方について、当局の政治からは遠ざけて、政治的なバックグラウンドのないところで議論するのが良いとおっしゃっておられる。今回の総理の参拝というのはそういう意味では逆に混乱をまた招く、海外からの批判も出るのではないでしょうか。

(外務大臣)それはこの5年間ほとんど変わりませんから。特にこれだからというような感じがしているわけではありません。8月に行くからどうとか、4月の例大祭、秋の例大祭に行かれても同じような話が出てくるところなのだと思います。

(問)先日、私見を発表されてその考え方を示されたのですが、総理大臣が靖国参拝することが国内でも国外でも注目を浴びる事態となったことについてどうお考えですか。

(外務大臣)私に言わせると、英霊側にしてみても遺族側にしてみても、8月15日にかかわらず参拝が静かに行われるということを最も期待をしているのが実情だと思います。これが政治問題化してきたり、ましてや政局化しているなどというのは全く望んでいないことだと思います。従って、私の場合は私案として、宗教法人である間は公人だ私人だという話に限らず、9条だ、19条だ、20条だと憲法の話がまた絡んできたりしますから、なるべく政治とは一番遠いところに置いておかれて然るべきなのだと私自身はそう思っています。遺族も英霊もたぶん同じことを望んでおられると思います。ましてや、近隣から何か言われるからというような話は全く望んでいないというのが実情。かたわら靖国で祀るというのは、国と、行かれた兵隊もしくは軍人、色々立場がおありになるとは思いますが、勇んで行った方もおられますでしょうし、赤紙で嫌々徴集させられた方もいらっしゃる。亡くなられた260万人の方々にはそれぞれ色々な思いがおありだと私はそう思います。ただ、いずれも亡くなった後は英霊として祀るという国との約束ですから、そういった意味では国として祀る、国は最高の栄誉を持ってそれを祀るという義務を果たさねばならないと私自身はそう思っています。

(問)中国、韓国が今日の小泉首相の参拝に反発していますが、今後の中国、韓国への外交の影響はどのようにお考えになりますか。

(外務大臣)中国と韓国からは過去4年間も同じような話をしていましたので、同じようにこれまで通り、きちんと小泉総理の気持ちを丁寧に説明していくということだと思います。

(問)今日は大臣は靖国神社に参拝されますでしょうか。

(外務大臣)今日はありません。

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外務大臣会見記録(平成18年8月8日(火曜日)10時40分~於:本省会見室)

閣議

(外務大臣)閣議では、レバノンの人道支援に関する緊急無償資金協力について、200万ドルの支援の具体化の話をしました。イラク及びクエートの訪問について話をしました。官房長官から、閣僚等の外国訪問の戦略的な実施についての報告があり、今まで閣僚が行ったことのない中東アフリカのウガンダ共和国、カメルーン共和国、ガボン共和国、カーボベルデ共和国、リベリア共和国等々16カ国に新たに行っていただいていますが、引き続きこれを遂行していくという話をしており、この一連の外国訪問の話を私共外務省としても支援致しますので宜しくお願いしますと申し上げました。二階経済産業大臣からも話がありました。

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靖国神社

(問)8月15日に大臣は靖国神社を参拝するお考えはありますか。

(外務大臣)今日の朝日新聞の投稿に関して、字数が足りない部分があったかと思いますので、靖国神社についての私見をまとめたものをお渡しします。それを読んでいただくと今のような質問は出ないと思います。

(問)この文章を読みますと靖国神社の組織を変えるべきだという話が出ていますが、それは変えるまで参拝しないということですか。

(外務大臣)適切に判断するという今まで申し上げているのと同じようなことを何回も答えていると思います。

(問)今の質問に対して、それから推測してくれということですか。

(外務大臣)今の質問に対しては、今渡したものをよく読んでみてください。少なくとも、参拝すべきだ、参拝すべきではないという話ではなくて、基本的に靖国神社というものの在り方について考えねばならない時期に来ているのではないかということを申し上げています。だから、参拝するとかしないとか、8月15日がどうしたとかいうような話ばかりではなくて、もう少し、そもそも靖国神社というものの在り方自体についてもう一回検討する時期に来ているのではありませんかという話をきちんと自分なりに書いているつもりです。

(問)靖国神社の祀り方は基本的に神道で、そこからまるっきり宗教色を抜くと靖国神社の本質が変わるような気がするのですが。

(外務大臣)靖国神社がどうあるべきかということについては、靖国神社が考えるところであって、何回も申し上げましたように、立法とか行政府から一宗教法人の在り方についてどうこう申し上げることは明らかに越権行為ではありませんかと、ずっと申し上げている通りです。従って今回書いた事も果たしてこれは分を超えているところもあるかもしれないと書いてあると思うのですが、そういった上で、少なくとも今のままの宗教法人のままでありうる間は、少なくとも私人とか公人とかいう話になって、所謂、行く行かない、私人公人という矮小化した話になるというのは避けられない。それは政教分離の話に関わってくるからそこのところは難しいのではないかと。従って宗教法人というものの形を変えるような形にしないと具合が悪くはありませんか。
 思い返せば、少なくともこれは陸軍省、海軍省の施設だったのです。今でも靖国神社は神社本庁には属していない数少ない神社の一つだと思います。従って戦後、陸軍省、海軍省の所管から所謂法人に変わったのは赤十字がそうだと思います。日本赤十字社は確か陸軍省、海軍省の所管だったと思いますが、昭和23年頃にその所管を変えて特別立法で今の赤十字ができたという経緯があります。この靖国神社についても、宗教法人ではなくて、元々は陸軍省、海軍省所属の追悼施設だったというのがそもそもの経緯です。明治2年に出来た「東京招魂社」として確か明治12 年に靖国神社として、別格官幣社に変えたというのが歴史的背景だったと思います。従って、それまでは神社というより一種の靖国招魂社という社だったわけですから、その原点というものを考えると、少なくともその段階でどういうようなお祀りの仕方があるのかというのは、新しい法人で伝統に則られておやりになったらいかがですかということをそこに書いています。

(問)そうすると神道色をまるっきりなくすということですか。

(外務大臣)それは新しい団体でお考えになることであって、私達がそれをとやかくいうことではないのではないかと思います。ましてや新聞社が言うのもいかがなものかということだろうと思います。

(問)まるっきり宗教色を無くすと、今まで言われている独立の無宗教の施設とどう違うのか。「靖国」という名前が残るだけではないかという気もするのですが、この辺の本質的な違いというものは。

(外務大臣)いい指摘だと思います。違いは伝統的な格式に戻ると書いていますので、その伝統的なものをどうされるかは自分達でお決めになれば宜しいと思います。これを従来、明治2年からずっと続けているからこれでいくというのであれば、それはそれでいいのだと私は思います。従って今、千鳥ヶ淵の話と一緒なのではないかと仰いましたが、千鳥ヶ淵に祀られているのは英霊ではありません。戦没者だと思います。元々の経緯を詳しく読まれた上で聞いておられると思うのですが、あの話の元々の最初の3行目位のところから経緯が書いてあると思いますが、そこを読んでいただければ少なくとも靖国神社というものは国のために尊い命を捧げた英霊を祀ることを目的としているのであって、片方は被災された戦没者の鎮魂を目的としていると書いてあって、元々のいきさつが全く違うように作ってあると思います。

(問)今、総裁選も含めて、靖国についての議論は、中国や韓国が問題視しているから当座参拝を見送ると谷垣氏などは仰ってますが、麻生大臣の文書を拝読すると、日本人として日本の国のために亡くなった方をどう扱うかという国内問題として基本的に捉えていると読めるのですが、そういう理解でよろしいですか。

(外務大臣)私は基本的にこれを国際問題だと思ったことは一回もありません。これはずっと国内問題の話であって、政局にすべきでもない。これは政治の問題なのかもしれませんが、政局にする話ではない。ましてや海外から言われたからなんていうのは全くありません。

(問)こちらには宗教法人ではなく特殊法人にすべきだと書かれていますが、その実態は死者を神として祀るという精神的な思いとか、鳥居が残ったり外形的に変わらないということになった場合、名前が変わっても神道における宗教という意味合いが残るかと思われますが、その場合でも宗教法人で無くすことによって、憲法に抵触しないと考えますか。

(外務大臣)宗教法人ではないわけですから、法律的には宗教法人ではない。何の法人にされるかは、新たに内閣府所管の特殊法人にされるのか、厚労省所管の特殊法人にされるのかは検討されて然るべきだと思います。どのような形で今後これをやっていくのかということは新しい法人で考えられるべきなのであって、キリスト教式がいいとか仏教式がいいとか何式がいいとか無宗教がいいとか色々言われるだろうと思いますが、私は基本的にこれまで地鎮祭やら何やらを見た上で、あれは宗教だという裁判はこれまで何回も行われたと思いますが、いずれも宗教というものではないという結論を既に地裁で出しておられて、答は出ているのです。

(問)最近、政調会長がこうした無宗教化の法案の検討のようなことを発言されていますが、大臣としては、どれくらいの時期からこういうものを考えられていたのか。

(外務大臣)1月頃でしたか、天皇陛下のご親拝の話をした時に、一新聞社がえらく歪めて伝えたことがありました。あの頃既に、これはもう少しきちんと、あまりにも飛び飛びに持っている手記の一つだけをぽこっと使われて話をされるというのが、まあ長くやれないのだし仕様がないのかもしれませんが、そういうものをきちんと一回書類にして整理しておく必要があるのではないかと思っていました。一月頃から文章にしようかなと思って、自分なりにこれまでの手記をつないで、正確でないところは調べていました。そのうち、海外からもいろいろ言われるようになりましたので、少しここのところはもうちょっときちんとしないと更におかしくなるなと思ったのが最初です。後は基本的にはこういったものは本来の趣旨というものは、一番の元はやはりこういった新聞記者会見の騒ぎの対象になるべき話ではありませんよ、こんなものは。私は基本的にそう思っています。こういうものは国のために命を捧げた人達に対して、敬意と感謝を持って、そして亡くなられた方々の御霊の永遠の静謐な祈りの場に於いてきちんとお祀りがされる。そして遺族含めて皆が静かに、わんわん言われることなくそこに参拝できる。しかも外国の方達も、勿論日本の政府要人も、天皇陛下は勿論、そういった方々が静かに参拝出来るという環境を整えるにはどうすればいいかというのが、私の基本的な考え方の元です。従って8月15日だとか何とかという話に矮小化するという状況を避けたい。避けるべきだと思っています。

(問)これを読むと全ての前提が靖国神社の自発性のみによる任意解散ということになりますが、これについての大臣の見通しはどうですか。

(外務大臣)南部さんという宮司がいますが、学習院の同窓会の会合の中で、国からお預かりした靖国神社をいつの日か国にお返しするべきということを会合の最初に話していました。

(問)1月頃から書類にしてまとめて発表することを考えていたと仰いましたが、このタイミングに発表した理由は何ですか。

(外務大臣)8月15日より前に発表したいと思っていました。8月15日になってからですと後追いみたいな話になりますから。8月15日の前にしておかないと、次の11日が閣議がないので、今日しかないのかなということです。

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外務大臣会見記録(平成18年8月1日(火曜日)10時53分~於:本省会見室)

イラク勤務者に対する大臣表彰

(外務大臣)イラクのサマーワ事務所勤務者及びイラク戦争が始まった以後の在イラク大使館勤務者に対して顕彰式典を11時10分から行う予定です。退避勧告の対象となっているイラクにおいて、生命・身体の危険を顧みずに職務に精励した者に対する顕彰として、外務大臣表彰という形で顕彰するもので、陸上自衛隊と外務省が車の両輪となって行ってきたサマーワにおける人道復興支援活動が、陸上自衛隊の部分と外務省のこの関係のサマーワの部分では何れも終了しておりますので、サマーワ事務所員が日本に帰国した機会を捉えて行うものです。

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機構改革

(外務大臣)もう一点は、御存知のように本日外務省の機構改革を行います。ポイントは二つ。一つは、経済協力局と国際社会協力部の一部を統合して「国際協力局」を創設します。もう一つは、アジア大洋州局に「南部アジア部」を設置します。後ほど新機構発足式を行って、詳しく説明する予定です。

(問)機構改革について改めて抱負をお聞かせください。

(外務大臣)年度の途中で機構改革というのは、これまであまり役所の世界では例はありません。なかなかない事をやらせてもらったのは、ODAに関連して、政府、内閣の方も海外経済協力会議というのを立ち上げておられますので、それに外務省の方も対応できるように一元化しておくという必要性が非常にことを急いでいましたというのが一つ。もう一つは、アジアは世界の人口の6割近くにまでなっていて、その中に中国とインドという巨大な、その二国だけで20億を超える国民がおられるということに対して、アジア大洋州局が従来のままの対応ということになると限界があります。インドと中国というものの関係を考えた場合、これはとてもではないが対応できないので分担をするぐらいのことをしておかないと機能的ではない。今、インドと中国が非常に大きな二つの経済成長国になっていますから、BRICsと言われる表現がよく使われますが、そういった国になっていますから、それに対する対応を外務省としても考えた機構改革と理解して頂ければ良いと思います。

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閣議

(外務大臣)閣議に関して。平成18年度防衛白書について額賀防衛庁長官から、日米安保協議委員会等々について、32回目の防衛白書が出ます。中川農林水産大臣からWTOについて、G6閣僚会議等々の報告の話がありました。同じく二階経済産業大臣からも同様の報告がありました。私の方からは22日から28日までの、フィリピンでは日比国交正常化50周年式典の話、19年ぶりの外務大臣訪問となったバングラデシュの話、マレーシアでの一連の話をしました。白南淳・北朝鮮外相について、イランのモッタキ外相の突然の訪問等について報告しました。

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日本の集団的自衛権についての憲法解釈

(問)安倍官房長官が最近の著書で、日本の集団的自衛権が行使できないという憲法解釈について疑問を呈していますが、大臣御自身はどのようにお考えですか。

(外務大臣)法律を守って国が潰れてしまったのでは具合が悪いなという感じはしていましたが、色々前から論争があるところですからこれについて個人的な見解を述べてもあまり意味がないと思います。集団的自衛権というのは、前文の話と内容の話でずれがある等々、色々指摘があるところです。

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イランの核問題

(問)イランの核問題ですが、安保理で決議が採択されました。その意義について。

(外務大臣)北朝鮮の安保理決議1695号に続いて1696号というのが、昨日日本時間の夜11時を過ぎていましたが、採択が行われました。イランの核問題を解決していくためには大きなステップの一つだと思います。それとEU3+3、EUの三カ国と米露等々の主要国から提示された包括案というものを出していますので、これを一日も早く受け入れて欲しい。イエスかノーの答になってきているほど、もう時間は詰まっていると思います。マレーシアでイランのモッタキ外相から話を是非ということだったので、時間を割いてモッタキ・イラン外相とも話はしましたが、この話に関してはかなり何回となくソラナ代表が言っていますので、真摯に話し合わなくてはいけないという話は、短い時間の中でしました。時間を作るのは向こうですから。そういった意味では、米国が言ったのではなく、EUのソラナ代表が3回言ったのだからその話を聞かないと。米国が言っているのではありませんと。このソラナ代表の話というのは世界中が支持しますから、これは早いところやらないと国連安保理決議にすっと上がってきますよという話をしました。結果的にそういう形になっていますので、それに対する答は8月31日までに出さないとこの決議は更に上に上がっていき、実行していくということになっていかざるを得ないと思います。対応というのは、私共の方から強く、時間は今から約一ヶ月間と限られていますので、その間の対応、答の出し方というのが一番大事なところだと思います。

(問)今回決議が経済制裁発動に繋がるような形で明示されたというのは、かなりの意味があるのではありませんか。

(外務大臣)これは経済制裁発動、いわゆる制裁処置を講ずるということを求めているわけではなく、核の濃縮関連・再処理活動の停止等々を義務づけるというのがこの1696号の中身で、経済制裁を主として書いているわけではありません。今の話は8月31日以降どうなるかというその次の段階だと思います。

(問)今までのイランの対応からすればなかなか決議を受け入れない。その場合、アザデガン油田など、日本のエネルギー戦略に影響というは。

(外務大臣)核のためにアザデガンの話の趣旨を変えるつもりはありません。核の方が優先です。

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