平成24年9月
外務省は,9月30日(日曜日),文京シビックセンター(小ホール)にて「大学生国際問題討論会 2012」を開催しました。本年度の論題は「日本政府は,わが国経済が厳しい情勢に直面する中でも,アフリカ向けODAを一層強化すべきである」でした。全国各地から37チームの参加登録があり,そのうちの35チームから提出された立論書の事前選考を経て,本選出場権を得た4チームによって白熱した議論が展開されました。当日は台風の接近による荒天が予報される中,100名を超える傍聴者が参加し,極めてレベルの高い論戦が戦わされた結果,「神戸大学大学院」チームが優勝しました。表彰式において3名の審査委員からそれぞれ講評をいただいた後,審査委員と出場者との間で和やかな雰囲気の中で有意義な意見交換会も行われました。
今回,本事業の広報活動にご協力頂きました各大学,大学院等教育機関の教職員の皆様,ディベート団体,弁論サークル等の関連団体の皆様には厚く御礼申し上げます。
森下紘樹さん 神戸大学大学院国際協力研究科
藪 恭兵さん 神戸大学大学院法学研究科
松浪昌伸さん 明治大学大学院政治経済学研究科
高須拓夢さん 明治大学大学院政治経済学研究科
矢野智史さん 京都大学大学院公共政策教育部
三野翔平さん 同志社大学政策学部
保戸塚弘明さん 早稲田大学大学院政治学研究科
佐藤王也さん 京都大学農学部
本日は,これから台風が近づいているようで,交通機関が少し乱れてしまうかもしれない危険の中でご参加いただき,大変ありがとうございました。またディベートを繰り広げた皆さん方,お疲れ様です。今日は大変に楽しく審査させていただきました。私自身ディベートという形式で議論をした経験があまりないので,今日はディベートの面白さというものを楽しませていただきました。肯定,否定どちら側にも回るということで,問題に対する深い理解,しかも色々な面から理解をしていないと,どちらの立場としても問題を主張できない,反論できないと思います。その意味で,今回アフリカの問題に関して様々な観点から出場者の皆さんは準備をされたと思いますし,ここで観客として傍聴された方々にとっても,それぞれのプレゼンターの問題提起と反論を通じて勉強されたと思います。アフリカの問題について日本人である我々がどう考えるのか,ということは実は難しい問題だと思います。今回,肯定側の方々がどういう理由でもってアフリカの援助を肯定しようとされるのかに,私は関心がありました。多くのプレゼンターが議論の中で出されたのは,日本企業もしくは日本経済に対する影響という点でした。この点は確かに大事なことですし,ODAというのは税金を使っておりますから,国民もしくは企業に対するサービスということは常に考えなければならないことだと思います。ただ私が今日お聴きして思いますのは,もう少し広い視点も含めていただいて良かったのでないか。アフリカにおける経済成長,それによる貧困削減,もしくは所得格差の是正問題は,私は国際的な公共財であると思っています。つまり貧困問題は,その国だけの問題ではなく,例えば治安ということを通じて,他の国にも影響を及ぼします。所得格差の問題も同じような影響があります。国際公共財をどう提供するかということが,実はODAの問題のひとつのポイントであると思います。公共財ということは経済学を学んだ皆さんはよくご存知かもしれませんが,これはマーケットメカニズムだけでは充分提供できない問題であるということがそのひとつの特徴です。もうひとつ,国際という言葉がつくということは,つまり日本だけが提供する義務を負っている訳ではない。他の国々,今回のケースではDAC諸国になりますが,DAC諸国はおそらく共通してそれらに関して責任を持っている。そこで日本が拠出すること,さらに今よりも増額することについてどう考えるのか,それがもう少し論点として含まれていれば,話として拡がったのではないかと思います。また,もっとそういう議論がでてくるのではないかと私は期待していたのですが,援助は時には命を救うことになります。例えば100万円を援助に使っときにどれだけの数の命を救えるか,という問題も当然生じてくると思います。勿論そこには色んな考え方があっていいと思います。そのことについて論じる機会でもあったのではないかと思います。来年TICAD Vが開催され,皆さんも新聞記事やニュースなどで目にする機会も増えると思いますが,他の国の人たちを援助することというのはどういうことなのか,単なる施しや慈悲,もしくは日本企業の経済的利益ということ以外のところを考えると,一体どういうことになるのかということも考える機会になって貰えればいいのではないかと思います。私は今日のプレゼンテーションを聴いて非常にレベルが高い,さすがに35チームの中から選ばれた4チームであると思いました。今後もアフリカの問題を追及されるかどうかはそれぞれだと思いますが,若い人たちが様々な角度から真摯に学んでそれぞれ意見をぶつけ合う機会があったということは非常に有意義であったと思います。参加者の皆様方,主催者の方々にお礼を申し上げたいと思います。どうもありがとうございました。
今日は天候が非常に悪い中,お集まりいただき,最後まで残って聴いていただいた皆さんにはあらためてお礼を申し上げたいと思います。また今日,本選に残った4チームとしてこの場で優れたディベートを繰り広げた8人のディベーターに対しても,あらためてその労が多かったと思います。私としても非常に有り難い機会であったと感謝しています。今年のディベートのテーマでこうした問題があえて取り上げられたということは,皮肉な見方をすると外務省も来年のTICAD Vに向けて,自分達がどのようにアフリカの問題に向き合っていけばいいのかということについて,あらためて若い皆さんに知恵を出して欲しいというメッセージもあったようにも感じています。私も日本の対アフリカ外交について最近論文を執筆した経験があるのですが,日本の外交政策においては,アフリカという地域をどういうふうに位置づけるのかに極めて苦労してきた経験を有しているという歴史があったと思いますし,今日の立論の中にも出ていましたが,アフリカというのは一体何か,一部では勿論サハラ以南のアフリカと定義をされておられましたし,アフリカ大陸全体,54カ国現在ございますけれども,その全体に関わる問題ということでもあるかもしれません。しかし,アフリカというのは決して1つではありません。その中には国のレベルで極めて多様性がありますし,国内においても地域的な多様性もあるというように,如何に対応していけば良いのか,選択と集中という言葉もありますけれども,何を選択しどこに集中していけばよいのか,ということも決して簡単な課題ではないという面を持っていると思います。先ほど福西審査委員も仰ったとおり,アフリカの問題というのはアフリカだけの問題ではありませんし,日本がそのアフリカに対して支援をするということも日本だけの問題とは必ずしも考えられない部分があります。アフリカが抱えている問題は,世界に開かれているこの狭い地球に住んでいる人々全てに関わってくる問題であると思います。私自身は,今日も一部で議論がありましたとおりガバナンスが悪い,あるいは脆弱国家である,といったようなことで考えられるアフリカの政治の問題を扱っていますが,今日のディベートの中で挙げられていた幾つかの問題というのは日常的に考察しようとしているものですし,それらは数値的にはなかなか捉えにくいという面もあると常々思っています。とはいえ,伺ったところによると今年の討論会に対する応募が35チームと,これまでにない多数だったということで,事前に審査をさせていただいた私や審査委員長もかなり苦労した面があった訳ですけれども,逆にそうした若い皆さんがアフリカに関する目を向けてくださっていることに勇気をもらいました。来年はアフリカの開発問題と向き合うTICAD Vという5年に一回の大きな会合がありますけれど,それを新たな起点として色々な形でアフリカの問題について若い人たちに将来的なことを考えていただければいいと思いますし,今日のこの機会がそのひとつの助けになれば良かったと思います。
今日は楽しかったです。私は,社説の編集をやっていまして,毎日午前11時から午後1時ごろまで,明日の朝刊の社説をどうするかについて,今日のような激しい議論をやっています。皆さん,このまま連れて行って手伝ってもらいたいぐらい,しっかりしていました。決勝もそうですし,準決勝も掛け値なしに僅差でした。審査は本当に苦労しました。そういう意味で,今日ここにいらしたチームの皆さん全員大変優秀です。アフリカと言いますと,私の新聞社では,TICAD IVのころ,アフリカ特集の紙面を一面から中面まで作ったときに,ロック歌手,U2のボノさんとブームタウン・ラッツのボブ・ゲルドフさん,有名なアフリカ支援コンサートをやった組合せですが,この2人と共同編集ということで編集局に招いて一日,編集作業をやったことがあります。夕方,まさに今ごろの時間でしたか,明日の紙面をどうするかというときに,その2人が,私の2,3m前に座っていたのですが,中国はあれほどアフリカで援助をしているのに,日本のプレゼンスが少ないのは何故か,と問いつめられました。そのとき,私は論理だった反駁がなかなか出来ませんでした。アフリカに対して意識が薄かったと反省しています。今日非常に印象的だったのは,試合で肯定側に立った人たちが,日本の利益という以前に,アフリカの人道危機は看過できないと,何回か繰り返し主張されました。その素朴な善意は持ち続けて欲しいと思います。それから,否定側も大変鋭くて,金銭的な援助が貧困を解消するのか,資源開発が貧困を助長しないか等,よく勉強していると感心しました。こういう知的好奇心,そして,困った人の助けになりたい善意。使い方によっては傲岸になりかねないのですが,そういう素朴な善意を,是非このまま持ち続けていただきたい。もう一つは,まさに今日の討論の技術につながることですが,善意を持っていても理解されないと,力になりません。いざ論戦となったら徹底的に論破する技術を持ち続けていただきたい。今週の国連総会における各国首脳の演説を聞いても,今注目されている領土の論争で,正直言って,日本はちょっと劣勢かなという気がします。もちろん,日本が先に演説をしたという順番の事情もあると思いますが,我々はやや,いいことをしていれば理解されるということを前提にし過ぎかなと思います。皆さんは今日のような,討論の技術を身につける姿勢を,これからも是非,続けてください。ありがとうございました。
討論会の終了後,会場内にて審査委員と出場者の意見交換会を行いました。討論内容につい質疑,議論をはじめ,出場チーム同士での交歓など,終始和やかに有意義な意見交換ができました。
昨年の討論会風景(2011年9月)
外務省が毎年主催しているイベントです。日本の将来を担う知性と個性あふれる学生の皆さんの全国各地からのご参加をお待ちします。
傍聴者も同時に募集します。
日時 | 場所 |
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平成24年9月30日(日曜日)13時00分~ | 文京シビックホール(小ホール) 注 |
(注) 東京都文京区春日1-16-21 文京シビックセンター2階
東京メトロ丸ノ内線・南北線 後楽園駅から徒歩3分
都営地下鉄三田線・大江戸線 春日駅から徒歩3分
JR中央線・総武線 水道橋駅から徒歩10分
日本政府は,わが国経済が厳しい情勢に直面する中でも,アフリカ向けODAを一層強化すべきである
1チーム2名。
(注) チームの構成は,全員が同じ大学・大学院在籍者でなくても可とします。
(注) 各対抗戦において,チーム構成員のそれぞれが最低1回発言することを条件とします。
肯定側立論書の書類選考による事前審査を行い,上位4チームが討論会本戦(準決勝2試合及び決勝戦)への出場権を獲得します。 (注) 出場者の交通費を支給します。(但し,通常の居住地から会場までの外務省規定額となります)。
12時30分~ | 開場・受付開始 |
13時00分~13時15分 | 開会式 |
13時15分~14時00分 | 準決勝第1試合 |
14時00分~14時45分 | 準決勝第2試合 |
14時45分~15時00分 | 休憩/審査 |
15時00分~15時05分 | 決勝戦進出チーム発表 |
15時05分~15時50分 | 決勝戦 |
15時50分~16時05分 | 休憩/最終審査 |
16時05分~16時25分 | 審査結果発表・講評・表彰 |
『外務大臣賞』1チーム:賞状,トロフィー
『優秀賞』 1チーム:賞状,トロフィー
『奨励賞』 2チーム:賞状
傍聴者の参加を歓迎します。会場の座席の都合上,事前の申込者を優先します。
昨年の討論会の模様は,こちらをご覧ください。
大学生及び大学院修士課程/博士課程前期在籍者。(博士課程単位取得退学者や博士号取得者は除く。国籍は問いません。使用言語は日本語。)
応募フォームに必要事項を記入し,8月6日(月曜日)までに下記(4)の宛先まで送付して下さい。チーム名は,簡潔かつ適切な表現にて必ず記入のこと。
参加登録チームは,立論書フォームに肯定側立論書
(注1)を記入し,8月16日(木曜日)24時迄必着で下記(4)の宛先までメールで送付して下さい。
(注1):肯定側立論書は,論題で使用されている主要な言葉を必要に応じて「定義」した上で,現状を分析し,如何なる措置を講じるべきかについての「プラン」を提示し,その結果として「メリット」が発生する過程とその重要性を論証する5分間のスピーチ原稿(A4用紙40字X40行で2枚に収まる程度)にまとめてください。この立論書を実際に討論会本戦で使用するか否かは問いません。
なお,スピーチ原稿ですので,図,表,グラフは添付しないで下さい。
(注2):立論書の受領を確認する意味で,事務局から代表者へ受領通知を返信します。
選考結果は9月上旬,応募されたチームの代表者へメールにて通知します。
傍聴を希望される方は,氏名・所属・連絡先(住所,電話番号,メールアドレス)を明記し,「傍聴希望」とお書きの上,9月26日(水曜日)までに下記(4)の宛先までお申し込み下さい。当日の受付も可能ですが,お席の確約はできませんので,できる限り事前に登録をしてください。
「大学生国際問題討論会2012」事務局
メールアドレス: kokusaimondai@forumone.co.jp
電話 :03-6454-2478
ファックス :03-6454-2482
(注)送付の方法はメールが望ましいですが,不可能な場合はファックスでも可とします。なお,郵送は不可とします。
(注)記載頂いた個人情報は適切に管理し,本事業を遂行するための連絡先情報として利用させて頂きます。御本人の同意なしに目的以外に使用することはありません。
外務省国内広報課 03-3580-3311(内線3849)
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