演説

山根外務副大臣挨拶

山根外務副大臣
ジュネーブ軍縮会議演説

平成24年2月28日

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議長
トカエフ事務局長
御列席の皆様

 本日、歴史あるジュネーブ軍縮会議の場に立つ機会をいただいたことを大変光栄に思います。軍縮会議を長年の停滞から再活性化させるための議長の努力を歓迎します。

 一年前、我が国は、東日本大震災という未曾有の災害にみまわれました。その際に国際社会から様々な支援をいただいたことは、国際社会の温かい連帯の現れとして深く感謝しております。我が国は、東日本大震災を機に、国際社会との絆の重要性を改めて認識しました。国際社会からの支援に応えるためにも、我が国は、これまでの歴史体験を踏まえ、軍縮を通じた国際社会の平和と安定の構築に、引き続き積極的に取り組んで参ります。

議長

 2009年のオバマ大統領によるプラハ演説以降、核軍縮の気運が高まりました。軍縮会議では、同年に作業計画が採択され、核軍縮、兵器用核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)、消極的安全保障(NSA)及び宇宙空間における軍備競争の防止(PAROS)等の重要な課題の扱いについて合意を見ました。それにもかかわらず、その後、これまで重要な軍縮条約を誕生させてきた軍縮会議が停滞していることを、世界全体が懸念しています。

 もちろん、この状況を打開するために、様々な試みがなされてきたことは承知しています。2010年には、国連事務総長による「軍縮会議再活性化に関するハイレベル会合」が開催されました。昨年の国連総会でも、再活性化に関する決議案が3本も提出され、いかに軍縮会議を前進させるかについて、活発な議論が行われてきました。しかしながら、有効な打開策は未だに模索中です。

 多国間軍縮交渉を軍縮会議の外で行うことへの根強い反発がある一方、本年、軍縮会議が、実質的作業の開始を可能にする作業計画を採択・実施できない場合、本来軍縮会議で扱うとされていた議題が、その枠外で交渉・議論されることとなる可能性があります。とりわけ、多国間核軍縮交渉の次なる段階がFMCTであることには、国際社会の一致した理解と支持があるにも関わらず、軍縮会議においてFMCTの条約交渉を早期に開始することができなければ、軍縮会議の存在意義が問われることになります。その意味で、今年は軍縮会議にとって、死活的な重要性を持っています。

 私は、この機会に、ジュネーブにお集まりの各国代表の皆様に対し、このような危機感を政治レベルで広く共有し、こうした状況を速やかに克服する必要性を訴えたいと考えます。

議長

 我が国は、核軍縮に向けた多国間の努力として、NPT体制の維持・強化を重視しています。本年からは、2015年のNPT運用検討プロセスが開始されます。NPT体制の維持・強化には、核軍縮・核不拡散・原子力の平和的利用の三本柱のバランスのとれた進展が必要不可欠です。我が国は、豪州とともに、NPT運用検討プロセスへの貢献として、地域横断的な10か国によるグループであるNPDIを立ち上げ、これまで外相レベルの会合を3度行いました。NPDIは、核兵器のない世界の実現に向けた、現実的な提案を行ってきています。次回会合は4月に、トルコにおいて開催する予定です。2010年行動計画の着実な実施に向け、政治的意思を発信し、具体的な提案を行っていく考えです。

議長

 我が国は、核兵器使用の惨禍の実相を将来の世代に継承していくことを自らの責務として、軍縮・不拡散教育に取り組んできました。我が国は、東日本大震災の影響により開催が延期となっていた「軍縮・不拡散教育グローバル・フォーラム」を、国連大学との共催で、本年8月10日と11日に、長崎市で開催することを決定しました。政府、国際機関、市民社会から幅広い参加を得て、軍縮・不拡散教育の重要性の認識共有や連携の促進、さらなる取り組みの発展に寄与することを目指します。軍縮会議メンバー国の皆様も、広島・長崎平和記念式典と併せて、この会議に出席していただければ幸いです。

議長

 最後になりますが、昨年11月、ニューヨークに続いて、ここ欧州国連本部にも、広島市、長崎市の常設「原爆展」が開設されました。皆様は既に御覧になられたことと思います。この展示が、核兵器使用の惨禍の実相に対する理解の促進に繋がり、軍縮に向けた国際社会全体による取組強化の必要性に対する認識が、更に深まることを期待します。また、あらためて、トカエフ事務局長及びチクバイゼ国連欧州本部図書館長を始め、原爆展の開設に御尽力いただいた国連関係者の皆様に、感謝の意を表します。

 御静聴ありがとうございました。


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