演説

山根外務副大臣演説

第20回AU閣僚執行理事会における山根副大臣メッセージ

平成24年1月26日

英語版仏語版

ミチャ・オンド・ビレAU閣僚執行理事会議長,
ジャン・ピンAU委員会委員長,
AU加盟国大臣・代表団長の皆様,

1.冒頭

 第20回AU閣僚執行理事会開催に当たり,心からお祝い申し上げます。
 アフリカは,アジアの次の経済フロンティアとして存在感を増している「希望と機会の大陸」です。そのアフリカの地で,皆様にお会いできることを嬉しく思っています。

 昨年3月,我が国が未曾有の大震災に見舞われてからまもなく1年が経ちます。この間,アフリカ各国政府より,多くのお見舞いと総額2,000万ドル以上の御支援をいただきましたことに深謝します。また,自らも厳しい状況に置かれている方々が多い中,アフリカ各国の国民の皆様からも直接激励と御支援をいただきました。私たちは,このようなアフリカの友人の温かい気持ちに,深い感動を覚え,勇気をいただきました。我が国は,皆様方の連帯の気持ちに応えるべく,日本の復旧・復興に全力を挙げるとともに,今後も力強く対アフリカ外交を推進します。

2.TICAD

(第5回アフリカ開発会議(TICAD V))

 今般,TICAD Vを2013年6月1日から3日までの3日間,横浜にて開催することを決定しました。

 TICAD Vは,1993年に始まったTICADプロセス20周年の節目にあたる会合であり,AU委員会が共催者となって初めて行われる会合でもあります。我が国としては,昨今のアフリカを巡る大きな変化を反映した,アフリカ開発に関する新たな方向性を打ち出せる会合にしたいと考えます。

このTICAD Vの成功に向け,皆様方の御協力,並びにTICAD Vへの各国首脳の御参加を是非とも宜しくお願いいたします。

また,この機会に,アフリカの感染症等の疾病対策に貢献した個人・団体を表彰する第2回野口英世アフリカ賞の授賞式も開催します。

(第4回TICAD閣僚級フォローアップ会合)

 また,TICAD Vに先立ち,2008年に行われたTICAD IV以降,毎年アフリカにて開催してきたTICAD閣僚級フォローアップ会合を,本年5月5日,6日に,モロッコにて開催します。今次会合は,TICAD Vに向けた最後のフォローアップ会合であると同時に,来年予定している閣僚級準備会議を経て,TICAD Vに向けた一連の準備プロセスの出発点となる会合でもあります。アフリカ諸国からも,担当閣僚のご出席を賜りたく存じます。

3.日本の対アフリカ政策

(日本の対アフリカ外交の三本柱)

 TICAD Vに向けた準備の年である2012年,我が国は,1)平和と安定への貢献,2)開発支援と貿易投資の拡大,3)グローバルな課題への対応,を三本柱として,これまで以上に積極的な対アフリカ外交を推進します。

(平和と安定への貢献)

 我が国は,平和と安定は全ての土台であると考え,アフリカにおける民主化や政治的安定に向けた取組の進展を歓迎します。その一方で,南北スーダンや「アフリカの角」等の不安定な情勢,大統領選挙時等の政治的混乱,多くの人命を奪うテロ事件の発生等,国家の安定と人々の安全に対する脅威の存在に重大な懸念を有し,平和と安定の確立に貢献すべく努力しています。
 我が国は独立したばかりの南スーダンで活動する国連南スーダン共和国ミッション(UNMISS)への自衛隊の派遣を開始しました。また,南北スーダン間の交渉円滑化のための働きかけや,両国の平和の定着のための支援を行っています。
 戦闘が続くソマリアに対しては,我が国は,ソマリア暫定連邦「政府」(TFG)やアフリカ連合ソマリア・ミッション(AMISOM)の治安能力強化や人道支援等,ソマリア情勢の安定化のための支援を実施するとともに,アデン湾における海賊対処行動等のソマリア海賊対策を行っています。また,アフリカ各地のPKO訓練センターへの支援も継続します。

(開発支援と貿易投資の拡大)

 「希望と機会の大陸」として,国際社会の期待と注目を集めているアフリカは,アジアの次の経済フロンティアとして,存在感を増しています。我が国は,TICADプロセスを基軸とした開発支援に積極的に取り組むとともに,ビジネス・パートナーとしてのアフリカにも注目しています。この観点から,我が国はこれまで5回にわたり,多くの企業が参加する貿易投資促進官民合同ミッションをアフリカ大陸の各地域に派遣しました。私自身,昨年10月に同ミッションの団長として南北スーダン,ケニアを訪問し,大きな可能性を実感しました。

(グローバルな課題への対応)

 また,我が国は,アフリカとの間にある絆を土台にして,グローバルな課題にも共に取り組んでいきたいと考えています。

 気候変動問題に関し,我が国は,COP17の成果をふまえ,将来枠組みの構築に向けた国際的議論に積極的に貢献していくとともに,特にアフリカを始めとする脆弱国に対する支援を引き続き重視します。また,「アフリカ・グリーン成長戦略」最終報告を本年中に取りまとめ,TICAD Vにつなげていきたいと考えています。

 国連安保理改革を実現するために,我が国は,加盟国が柔軟性をもち,透明性の高い意見交換を通じた相互理解を深化することにより,立場の違いを乗り越え,現実的な改革案を探ることが不可欠と信じています。我が国としては,どうしたら改革を実現することができるのかについて,現実的な観点からアフリカ各国と対話を行っていく考えです。

4.日AU関係の深化

 我が国は,このような対アフリカ外交推進のため,今日ますますアフリカでの存在感を強めるAUを重視し,その活動を積極的に支援しています。この日本の姿勢は,今回で5回連続となるこのAU閣僚執行理事会への我が国政務レベルの出席やAU委員会のTICAD共催者化にまさに現れています。

 例えば,平和安保分野では,南北スーダン間の係争やダルフール問題の解決に取り組むAUハイレベル履行パネル(AUHIP)を日本は支援しています。
 また,開発分野においては,汎アフリカ大学(PAU)構想につき,東部PAUのリードセマティック・パートナー(LTP)への就任のために必要な具体的な協議を関係機関と行っています。さらに,生産性向上のための日本式システムである「カイゼン」プログラムをAU委員会に導入するための支援についても,具体的検討を開始しています。

5.結語

 私は,アフリカには,人類の起源のみならず,我々の未来があると信じています。TICAD Vを来年に控えた2012年は,日本とアフリカの未来にとって非常に重要な年となります。また日本にとっては,アフリカを始めとする国際社会の支えの中で,震災を乗り越え,更なる発展を目指す年です。また,アフリカにとっては,2011年に経験した各地の政治的混乱や「アフリカの角」の飢饉等の苦難を乗り越え,新たな歩みを進めていく年であると承知しています。我が国は,今回の震災で改めて認識された日本とアフリカの間の絆と連帯をさらに深めつつ,共に前に進んでいきたいと願っていることを述べ,私のメッセージとさせていただきます。

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