エタ・バンダAU閣僚執行理事会議長
ジャン・ピンAU委員長
AU加盟国大臣・代表団長の皆様
(冒頭)
第18回AU閣僚執行理事会の開催にあたり,心からのお祝いを申し上げます。また,この開会式においてスピーチの機会を頂戴し,大変光栄に存じます。
本日私は,日本政府が力強く展開していく対アフリカ外交の3本の柱を説明します。その上で,アフリカ外交を進める中で,我が国としてAUとの関係をより強固なものとする決意であることを申し述べます。
(我が国の対アフリカ政策)
我が国の対アフリカ政策の第1の柱は,「平和と安定への貢献」です。
1945年の終戦以降,平和国家として着実な歩みを遂げてきた我が国は,「平和と安定」に最も重きを置く国の1つです。
今般スーダンで行われた歴史的な南部住民投票が大きな混乱もなく,予定通り概ね平和裡に行われたことに祝意を表します。スーダンにおける平和の定着のためには,今後発表される投票結果を南北スーダン当事者が受け入れ,引き続きパートナーとして協力していくことが重要です。我が国は今般の住民投票に監視団を派遣する等の支援を行いましたが,今後も積極的に南北の和平プロセスを支援していく考えです。
また,私は昨日までジブチを訪問してきましたが,大きな脅威となっている海賊問題の解決やテロ拡散の温床とも言えるソマリア情勢の安定のため,我が国は,ソマリア及び周辺国の治安の向上や人道・インフラ面での支援等を継続していきます。
このような課題を抱えるアフリカにおける平和の定着に向け,我が国は,アフリカPKO訓練センター支援等の協力を今後も積極的に実施していきます。
平和と安定のためには,ガバナンスの向上及び民主主義の定着も重要です。
我が国は,チュニジアとの友好関係がしっかり維持されることを希求しつつ,ガンヌーシ首相が新内閣組閣を発表し,報道の自由,公正な選挙等を約束したことを重視します。近い将来行われる大統領選挙が,平穏裡に自由かつ公正に実施されることを強く期待します。
コートジボワールでは,大統領選挙結果を巡り死者を伴う衝突が起きるという憂慮すべき事態となり,現在も予断を許さない状況が続いています。我が国としては,AU,ECOWAS,国連等と足並みをそろえ,ウワタラ大統領当選というコートジボワール国民の意思が尊重される形での早期かつ平和裡の解決を期待します。
第2の柱は,「開発支援と貿易投資の拡大」です。
我が国は,自らの経験や技術力等を活かして,今後とも積極的な協力を行っていく考えです。
具体的には,TICAD IVで表明した2012年までの対アフリカODA倍増の公約を確実に実施していきます。TICAD IV以降毎年アフリカにて開催してきた閣僚級フォローアップ会合を,本年4月末から5月第1週を目処にセネガルで開催する予定です。アフリカ諸国からも,是非担当閣僚のご出席を賜りたく存じます。
また,我が国は,昨年11月,アフリカの災害対策等人道支援のために計約3.8億ドルの追加的支援を決定しました。アフリカにおける達成が大きな課題となっているMDGsに関しては,昨年9月のMDGs国連首脳会合にて保健,教育分野の「菅コミットメント」を発表しました。我が国は,こうした支援を通じ,アフリカの開発支援に引き続き積極的に取り組んでいきます。
アフリカは,前原外務大臣が重視する経済外交においても重要な位置を占めています。我が国としては,TICAD IVのもう一つの公約である民間投資倍増支援に必要なファイナンスの実施や官民ミッションの派遣等を通じて,官民連携を推進しつつ,貿易投資の拡大に取り組んでいきます。
第3の柱は,「グローバルな課題への対応」です。我が国は,アフリカ諸国とこれまでに築いてきた太い絆と信頼に基づき,グローバルな課題の解決にもアフリカの関係の皆様と力を合わせて貢献していきたいと考えます。
気候変動については,我が国は,すべての主要排出国が参加する公平かつ実効的な国際的枠組みを構築する新しい1つの包括的な法的文書の速やかな採択を目指します。また,アフリカに対するものも含めコミットした3年間150億ドルの支援を着実に実施します。COP17に向けては,カンクン合意を踏まえ,こうした枠組みを実効的なものとするため,議長国の南アをはじめとするアフリカ諸国と協力していきます。
また,現在の国際社会を代表するにふさわしい正統性を備えた安保理を早期に実現する必要があります。我が国は,アフリカの代表性向上を含め,早期に具体的な成果を得るべく,アフリカ諸国と協力していきたいと考えます。
(日・AU関係の強化)
このような広範な分野に亘ってアフリカと協力を進めていく上で,AUとの協力は欠かせません。AUもまた,我が国との協力関係を特別に重視してくれいているものと確信いたします。昨年8月のピン委員長訪日の機会に発出された「日・AU協力強化に関する共同コミュニケ」は,この基盤となります。前原大臣の下でも,このコミュニケをしっかり引き継ぎ,人間の安全保障の実現に向けた協力強化を含め,AUとの協力関係を強化して参ります。
とりわけ,本年はAU委員会のTICAD共催者化後の最初の年です。我が国としては,AU委員会と緊密な連携を図りながら,また,アフリカ側の一層のオーナーシップを期待しながら,TICAD閣僚級フォローアップ会合の準備を含めたTICADプロセスを進めていきます。
我が国は,コミュニケに沿って,汎アフリカ大学構想実現及びアフリカ・インフラ開発プログラム(PIDA)の策定支援に向けた本邦コンサルタントの貢献等も進めています。また,AU委員会に対する技術協力も検討します。
このような積み重ねにより日・AU協力関係をより強く深いものとすべく,AUと協力していきたいと考えます。
(結語)
今回のAU総会のテーマは,「共有する価値(Shared Value)」であると伺っています。我が国としては,我が国とアフリカ,我が国とAUが,平和と繁栄というまさに共有する価値を目指して,手を取り合って歩みを進めていくことを期待します。我が国としてもそのための支援と努力は惜しみません。
ご静聴ありがとうございました。