UNDP総裁 ヘレン・クラーク様
世界銀行専務理事 マフムド・モヒルディン様
御列席の皆様
本日は,この「MDGsの達成とビジネスの可能性」と題しましたシンポジウムにおいてご挨拶させていただく機会を賜りまして,誠にありがとうございます。
昨日と本日,日本政府は,UNDP, ユニセフ,世銀そしてJICAとともに,MDGsフォローアップ会合を開催しました。
昨年9月に開催された「MDGs国連首脳会合」では,サブサハラ・アフリカや南アジアといった地域や,保健や教育といった分野において十分な進展がみられないとの評価がなされました。そして,効果的なアプローチに基づく,さらなる努力が必要という共通認識に至りました。
MDGsの達成を目指すに当たって,開発援助や途上国自身の取組だけでなく,民間部門を含む幅広い関係者の力を結集する必要があることは,国際社会の共通認識です。そうした中,菅総理自らが国連で皆様にお約束した今回のMDGsフォローアップ会合では,2015年までの残された時間で追求すべき真に効果的な手法,及び2015年以降の開発目標のあり方について議論を深めることができました。
御列席の皆様
3月11日の東日本大震災では, 150以上の国や地域,UNDP及び世銀をはじめとした40以上もの国際機関から,温かい御支援の申し出をいただきました。とりわけ,貧困や自然災害等の様々な困難に直面している地域からも,小さな子供までもが,自らのお小遣いを削って日本のために寄付をしてくれたことは,日本国民に,日本と世界との深い「絆」をあらためて実感させました。このたび,震災から間もない時期にもかかわらず,予定どおり東京でフォローアップ会合を開催することにしたのは,国際社会から示された支援への感謝と,引き続き国際社会に対する責任を果たしていく意志を示すためでもあります。
我が国は,今回の震災を受けて,政府,国際機関,民間,市民社会が一体となって試練に立ち向かうことの重要性を再確認しました。たとえば,先月の大型連休中,8万人にも及ぶ市民団体やボランティアの皆様が被災者の支援に活躍されました。また,例えば本日パネリストを務められるヤマハ発動機は,途上国で使用されているポータブル発電機を被災地に提供されました。パナソニック・グループは,災害対策の経験が豊富なUNDPと連携し,これまで途上国で提供してきた太陽光発電装置及びソーラー・ランタンを震災直後に被災地に提供されました。
まさに,途上国の開発支援のために培われてきた日本の技術が日本自身のためにも役立っているのです。MDGsの達成のために官民連携を推進することは,日本の技術や人材を活性化させ,日本が国際社会に開かれた国として,より元気になることにつながっていくのです。
御列席の皆様
MDGsを達成するためには,国際機関,企業及び市民社会の皆様が,それぞれの知恵,技術,経験や情報を持ち寄る必要があります。この観点から,日本政府は,国連システムにおけるMDGsの中核的な推進役であるUNDPと連携し,日・UNDPパートナーシップ基金への拠出を通して,MDGs達成に貢献しています。また,世銀日本基金を通じて,世界銀行による人材育成や脆弱者支援をお手伝いしたり,国際金融公社の日本信託基金を通じて,公社がお持ちのビジネスや金融の知見を生かした支援を行っています。
御列席の皆様
我が国は,民間部門との連携も,一層積極的に推進していきます。経済産業省は,BOP(ビー・オー・ピー)ビジネスの推進に向け,「BOPビジネス支援センター」を設立して総合的な支援に取り組んでいます。JICAやJETROも,BOPビジネス立ち上げのための調査や,現地でのパートナーシップ構築,ノウハウの提供などを行っています。さらに,外務省やJICA, 国際機関が持つ世界的なネットワークを通じて集約した開発ニーズや現場の知見をつき合わせ,民間部門と協力することで,MDGsの達成を促進してまいります。そのために,外務省は,官民協力のための枠組み「MDGs官民連携ネットワーク」を立ち上げました。
こうした連携の中から,革新的な開発の手法が生まれ,また,ともにMDGsに取り込む一体感,連帯感が生まれることを期待しています。
御列席の皆様
ビジネスとは,言うまでもなく,利益を追求するものです。利益を上げようという発想から入るビジネスを完全に否定するものではありません。しかしながら,利益追求しか頭にないようなビジネスは,決して長続きしません。
日本国民は,東日本大震災の被災者を支援し,復興に取り組む中で,「人の役に立つ喜び」をあらためて感じ,またそれこそが生きる喜びにつながるのだということを実感しています。ビジネスもまた,人の役に立つ形で,人との「絆」を実感する中で利益を上げてこそ,ビジネスモデルとして確立され,長続きするのだと確信します。
本日皆様に,MDGs達成に向けたビジネスの役割について御議論いただく中で,このような視点も念頭に置いていただければ,私としても大変うれしく思います。
御清聴ありがとうございました。